勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「ふふふふふ、どうやらあの子はころねの逆鱗に触れてしまったようだね」

 

 言ってから、おかゆは口の端を持ち上げます。

 

「シュバ、シュバルバシュバルルバシュバルルシュババ?」

(いや、さすがに沸点が低すぎねえか?)

 

「ですよね。他人ながらちゃんと集団生活できているのか心配になってしまいます」

 

 スバルとるしあは不憫そうにころねを見ました。

 そんな二人にミオが「まあまあ」と話しかけます。

 

「あの二人が言うことは八割方適当だから聞き流してあげてよ。暇つぶしにツッコミを入れてほしいだけなんだ」

 

「なるほど、ツッコミ待ちしているのですね。そうとわかれば相手にしません」

 

 るしあはミオの言葉に頷きます。

 

「なにをぐだぐだ喋ってやがるんだあああ!」

 

 ころねが咆哮するように真上を向いて大声を上げます。

 

「自己紹介するよお!」

 

「するならもっと静かにしてください!」

 

 ころねは顔の角度を元に戻してるしあに向き合いました。

 

「我が名はアンダードッグころね、こと戌神ころね! 白上フブキの左腕え!」

 

 叫ぶころねに「ちょっと」とるしあは思わず苦笑します。

 

「別にどっちの腕でも良いのですが、あなたアンダードッグの意味を分かった上で二つ名にしているのですか?」

 

「シュバア、シュバルバシュババ。シュバシュババ」

(るしあ、相手にするな。聞き流せ)

 

 注意するスバルに「そうでした」とるしあが両手で口元を押さえます。

 

「んだよお、んなもん知らねえよお!」

 

 ころねは「けっ」と吐き捨てるように答えました。

 

「なんとなく響きがカッコイイからつけてんだ! 文句あっかあ!」

 

「行きなさいたまき君!」

 

 るしあの指示を受けてたまき君が前進します。

 そうしながら彼女はレッグバッグに手を伸ばし、フォークを引き抜いてブン! と振るいます。

 そのフォークの先に上級剣レバーケーゼが現れます。

 

「おうおう、そうこなくっちゃなあ!」

 

 対峙するころねもレッグバッグに手を伸ばします。

 彼女がレッグバッグから取り出したのは金色の串です。

 それをブン! と横に振るいます。

 串の先に現れたのは上級剣アメリカンドッグです。

 

「かかってこいやあ!」

 

 ころねの怒声に応えるようにたまき君が飛びかかりました。

 そしてレバーケーゼを振り下ろします。

 そんなたまき君の一刀をころねはアメリカンドッグで受け止めました。

 二撃目三撃目と、たまき君は続けざま剣を振り下ろします。

 ころねはそれらも同じように受け止めていきます。

 しかし、さらにもう一振りとたまき君が剣を振り下ろした直後、

 

「くっ!」

 

 カランカランと音をたて、ころねの串が地面に落ちました。

 彼女はさっきまでフォークを持っていた利き手を苦しそうに押さえます。

 

「ま、参った!」

 

「シュバ!」

(はや!)

 

 「勝負あり! カンカンカアン!」

 

 おかゆは口でゴングを鳴らす声真似をしてからころねに駆け寄ります。

 

「す、すまねえ、おかゆ……」

 

「大丈夫だよころさん、あとはぼくに任せな」

 

 犬耳と犬尻尾を垂らしながらころねは下がっていきました。

 

「さて、ぼくと戦う相手はまたそのアンデッドちゃんでいいのかな?」

 

 数秒で仲間が負けた後だというのにおかゆは余裕然としています。

 

「そうそう、ぼくも自己紹介しておこう」

 

 おかゆはレッグバッグから金色フォークを取り出してブン! と振るいます。

 フォークの先に現れたのは上級剣の餃子です。

 

「ぼくはスカレディーキャットおかゆ、こと猫又おかゆ。白上フブキの右腕だよー」

 

「行きなさいたまき君!」

 

 るしあはたまき君に指示を出します。

 

「ふふふ、さきのころねとの戦いでそのアンデッドちゃんはよく観察させてもらったよ」

 

 おかゆは笑いました。

 

「おそらくその子は剣を縦振りしかできない。違うかい?」

 

 るしあは図星をつかれて思わず「くっ」と呻きます。

 

「やはりか」

 

 おかゆは口角を上げてみせました。

 

「ぼくも随分と舐められたものだよ。でもすぐに明らかとなるよ。そのアンデッドちゃんとぼく、どちらがより強い剣士なのかってことがね」

 

 十数秒後。

 

「くはあっ!」

 

 たまき君は縦振りしかしていないのに、大袈裟に飛ばされたおかゆがごろごろごろんと転がってころねの側までやってきます。

 

「ま、参った……、ぼくの負けだ」

 

 そしてやはり利き手を苦しげに押さえながら敗北宣言します。

 

「ス、スバル先輩、たまき君って本当は強いんじゃないでしょうか?」

 

「シュバルシュババ。シュババシュバルルバシュバルバシュバ」

(騙されるな。それは絶対にありえんシュバ)

 

 そんなことをるしあとスバルが喋っていると、

 

「「うわーん」」

 

 おかゆところねが尻もちつきながら喚きだしました。

 

「リーダー!」

 

「むらおさー!」

 

「ボスー!」

 

「おやぶーん!」

 

「「たすけてー、フブキー!」」

 

 二人はのびのびとした声で助けを求めだします。

 すると、

 

「バリーン!」

 

 ガラスの割れるような音を口に出しながら、誰かが奥の茂みから飛び出してきました。

 

 キツネ耳と尻尾をした白髪の女性です。

 髪は身長の三分の二はあろう長さまで伸ばした長髪で、腰のあたりで大きなリボンで結ばれています。

 パステル調で翡翠色のつぶらな目と透き通るほど真っ白な肌から、一見儚げな少女の印象を与えます。

 しかしそんな彼女の纏っている衣服はとことん軽量化を施した巫女装束のようなもので、白を基調にした上着は脇やへそを大っぴらに露出し、下に履いた袴のような黒いズボンは太もも上半分の位置からバッサリ切り落とされています。

 

 彼女は颯爽ところねとおかゆに振り返りました。

 

「待たせたなおまえたち!」

 

 ころねとおかゆは現れた女性に「「フブキー!」」と呼びかけました。

 女性は二人にキザっぽいジェスチャーを返してからスバルたちの方へ向きます。

 

「わたしはこのアスノミヤコの村長でありチーム・ゲーマーズのリーダーでもある白狐のフブキ、こと白上フブキだ!」

 

 フブキは左手を腰に当て、ファンの声援に応えるイケメンアイドルのような仕草で軽く手を振り肘を突き出すポーズを決めながら自己紹介しはじめます。

 るしあは「あ、はい」とそれに頷きました。

 

「それで、白上に挑みたいっていう勇者はどいつなんだ?」

 

 フブキは腕組みしながらぐるりとスバルたちを見回し、ちょうどレバーケーゼを出しているたまき君のところで目を止めました。

 

「きみ?」

 

「あ、いえ違います」

 

 答えられないたまき君の代わりにるしあが否定します。

 

「シュバルシュバ」

(スバルだよ)

 

 たまき君を引っ張って後ろへ下がるるしあと入れ替わりに、スバルが前に進み出ました。

 

「ア、アヒル?」

 

 フブキは思わず苦笑します。

 それから「何のギャグ?」とミオに尋ねました。

 ミオはそんな彼女に「ギャグじゃないよ」と首を振ります。

 

「うちいつも言ってるよね? すぐ相手を見た目で判断する、それフブキの悪い癖だよ」

 

 ミオにたしなめられたフブキは少し顔をムッとさせてから「いや、だってさ」と言い返そうとしました。

 しかしそんなフブキの言葉を遮るように、彼女の目の前でアヒルスバルが輝きだします。

 

「誰がギャグだって?」

 

 そして人間となったスバルが現れました。

 

「スバ友リーダー、大空スバルだ!」

 

 スバルは名乗ってからフォークを引き抜き、ライトニングウィンナーを取り付けます。

 

「なるほど、これは強敵だ」

 

 呟いて、フブキはころねとおかゆを横見しました。

 

「ころね、おかゆ」

 

「「フブキ―」」

 

 二人は相変わらず腕を押さえて片膝ついています。

 

「そうか、敗れてしまったのだな」

 

 フブキは憂いを帯びた顔でそう言ってから「しかし!」と続けます。

 

「おまえたちのその思い、白上が受け継ぐ!」

 

 フブキは両手を真上に掲げました。

 その手の左右にはそれぞれ串とフォークが握られています。

 

「ころね! おかゆ! 白上に力を貸してくれ!」

 

 叫んでブン! と両腕を振るうと、フブキの左手にはアメリカンドッグが、右手には餃子が現れました。

 

「あー! ころねたちのソーセージがあ!」

 

「いつのまにー」

 

 それを見てようやく、ころねとおかゆは自分たちの串とフォークがないことに気づきます。

 

「いざ勝負!」

 

 フブキはアメリカンドッグと餃子の二刀流でスバルに飛びかかりました。

 

 一方、スバルはそんなフブキに「おい」と冷たく言って眉を顰めます。

 彼女は一歩も動かずにライトニングウィンナーを横なぎに振るいました。

 

「あ」

 

 その一振りがフブキのアメリカンドッグと餃子を弾き返します。

 だけでなく、それらの串とフォークはフブキの手から引っこ抜け、もともとの持ち主であるころねとおかゆの手元に降ってきました。

 

「おまえ、ふざけてんのか?」

 

 スバルはフォークを失ったフブキの鼻先にライトニングウィンナーを突きつけます。

 

「こっちは時間制限があるんだ。さっさとレジェンドソーセージを出して戦えシュバ」

 

「わ、わかった! 悪かった! 悪かったよー!」

 

 謝るフブキにスバルは剣を下げてやります。

 フブキは後ろへ飛び退いてからレッグバッグに手を伸ばしました。

 

「刮目せよ! これぞ我がレジェンドソーセージ!」

 

 彼女は叫びながら虹色フォークを引き抜き、それをブン! と振るいます。

 直後、フォークの先に異様なソーセージが現れました。

 

 それの全長は150センチでやや長め、幅は若干細身のソーセージです。

 しかし異様なのは長さや形よりもその色です。

 黒と紫のもやがソーセージの膜の中いっぱいに詰められ蠢いているような毒々しい色合いと模様で、しかもソーセージの内部がしばしば光を発するたび、脈打つように紫色のもやが反応し不気味に煌めいています。

 

「『毒牙』ポイズンチョリソーだ!」

 

 フブキはそのソーセージ、ポイズンチョリソーを両手もちで構えました。

 

「改めて名乗らせてもらおう! 我が名は白上フブキ! ランキング4位の上位ランカーチーム・ゲーマーズのリーダー白上フブキだ! ちなみに時々間違われるのであらかじめ断っておくが、白上は狐であって決して猫ではない! よく覚えておけ! にゃあああ!」

 

 猫ではないと言っておきながら、フブキは猫が鳴くようなかけ声を上げます。

 

「いや、どっちだよ」

 

「ころさん。狐だよ」

 

 ツッコミを入れるころねにやんわりとおかゆが答えました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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