勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 はあちゃまに対してミオは剣を正道に構えます。

 それから彼女はぴくりとも動きません。

 剣先をはあちゃまに向けたままじっと見据えるミオの威圧感に、周囲のハートンたちがごくりと息をのみます。

 

「なによ、こんなこけおどし」

 

 はあちゃまはそんなミオを鼻で笑い、正面から突っ込みました。

 彼女は駆け出しながら剣を横なぎに振るい、とりあえず邪魔くさいミオの構えるエビフライを払い除けようとします。

 その時です。

 ミオの手の甲にくっきりと血管が浮かび上がります。

 

 彼女はぎゅっとフォークを掴む手に力を入れ固く握り、エビフライを払おうとするはあちゃまのクリスタルサビロイを逆に弾き返します。

 

「ッ!」

 

 はあちゃまは思わず急停止しました。

 一方ミオはここぞとばかりに踏み込んで、腰を落とし左脇に剣を添えます。

 それから彼女は、研ぎ澄まされた鋭い一刀をシュン! と風切り音をさせながら振るいます。

 はあちゃまは持ち前の瞬発力で素早く後方に跳び、それを避けました。

 

「ああー、初見で避けてしまうかあ」

 

 ミオが苦笑しながら悔しそうに口にします。

 

「獣人が。小賢しいことしてくれるじゃない」

 

「ありがとー」

 

 答えてからミオはまた構え直します。

 先程と同じように腰の脇に剣を添え、やや身を屈める抜刀の構えです。

 

「ふん」

 

 対するはあちゃまはさっきのように不用意に飛びかかろうとはしません。

 じりじりじりと隙をうかがうように、横へ横へとずれていきながらミオににじり寄っていきます。

 

 ミオは、わずかでも動けばそんなはあちゃまに隙を見せてしまうと思っているのでしょうか、剣を構えたまま全く動きません。

 はあちゃまの動きを視線で追うだけです。

 そして驚いたことに、彼女ははあちゃまが視界から外れてしまっても振り向こうとすらしません。

 とうとうはあちゃまは石像のように固まったままのミオの背後を取ってしまいます。

 

「……」

 

 あまりにあっけなく後ろを取れたからでしょう、はあちゃまはそこからと攻めるべきかどうか少しばかり躊躇します。

 しかしたとえ何か狙いがあるとしても仕掛けなければ始まらないと腹をくくり、彼女はミオの背中向かって飛び掛かります。

 そして案の定、ミオは狙っていました。

 

 さきほどまでピクリピクリと唯一微動していた狼耳がピタリと止まったかと思えば、まるで背中に目がついているかのように、飛びかかるはあちゃまに反応して動きだします。

 ミオは大きく右足を後ろに引いてからその足場を軸にぐるりと反転することにより一瞬で抜刀の構えのまま向きを変え、クリスタルサビロイを振り下ろそうとするはあちゃまにヒュン! と、また風切り音を鳴らす一太刀を放ちます。

 そのミオの一太刀とはあちゃまの一振りはそれぞれ同程度の力だったのでしょう、双方弾かれ中空に一瞬漂います。

 しかしここで差をつけるのは人間と獣人の、生まれながらに備わる身体能力の違いです。

 ミオははあちゃまより一瞬早く剣を切り返し、続けざまクリスタルサビロイへ打ち込んでいきます。

 

「くっ!」

 

 クリスタルサビロイが大きく弾かれた瞬間、利き手側のはあちゃまの脇があきます。

 ミオはその隙を見逃しません。

 彼女は素早く剣を引き戻してから大きく一歩踏み込んで、再度はあちゃまに向かって抜刀しました。

 

「誰が食らうかそんなもの!」

 

 しかしはあちゃまはそれを読んでいたかのように、クリスタルサビロイをしならせていました。

 生きた蛇のように身体を曲げて突き進むクリスタルサビロイの先端がミオの抜刀を受け止めます。

 二振りのソーセージがガキン! と音をたてた直後、はあちゃまとミオは互いに距離を取るように大きく跳ね退きました。

 

「正直甘く見てたわ。こんなにも厄介なのね、獣人が小賢しく一刀一刀集中して振るってくると」

 

 面倒くさそうにはあちゃまが口にします。

 

「もっと野性味出して何も考えずに突っ込んできなさいよ、獣人」

 

「ちょっとちょっと、獣人が脳筋みたいな偏見言うのやめてもらっていいかな? それにうちなんかはぶっちゃけあんま動きたくない派のオオカミだからさ、こうして相手が動くのを待つスタイルが楽なんよ」

 

「まあいいわ、それならそれで」

 

 そう言ってから、はあちゃまは再びミオへ飛びかかります。

 しかし今度は真正面からです。

 ミオが素早く迎撃の構えを取りますが、それでもおかまいなしに突っ込んできます。

 

 はあちゃまはクリスタルサビロイを横一文字に剣を振るいます。

 ミオはそれを屈みこんで避けてから、はあちゃまに抜刀で反撃しようとします。

 しかしその一太刀は抜き放つことができませんでした。

 というのも、はあちゃまは横なぎに振るった直後にクリスタルサビロイをしならせて、続けざまの攻撃を仕掛けてきたからです。

 ミオは反撃のタイミングを殺されて仕方なく後方へ跳び退き、仕切り直そうとします。

 ですがはあちゃまの猛攻は続きます。

 彼女はしなり曲がったクリスタルサビロイが元の形に戻っていないにも関わらず、それをなお振るってミオに襲い掛かってきたのです。

 

 はあちゃまの隙をついて一太刀入れようと狙うミオは、その追撃も一歩分後ろへ下がってかわします。

 するとはあちゃまは、曲がった形状のクリスタルサビロイにしなりを加えもう一点の曲点を作り、さらに大きく踏み込みながら剣を袈裟斬りに振り下ろしてきました。

 

「ちょっ、くっ!」

 

 一気に複雑化するはあちゃまの攻撃範囲にミオは思わず呻きます。

 

 歪に曲がり折れたクリスタルサビロイを再び避けることはできなくもありません。

 しかしさきほど深く踏み込まれてしまったため、再度後ろへ跳んで避けたとしてもさらに距離を詰められてしまった場合、次の攻撃をどう避けていいかわかりません。

 そして何より気がかりなのが最初にしならされたクリスタルサビロイの曲点で、もしもミオが後方へ飛び退いた直後にそのしなりが戻るようなことになれば、クリスタルサビロイの長いリーチによって彼女はまともにはあちゃまの一撃を受けることになってしまいます。

 

 仕方なくミオはその場で踏みとどまり、はあちゃまの振るう一刀を打ち落とすためにエビフライを抜刀します。

 

 ガキン!

 

 剣と剣が堅い音をたてて衝突します。

 そして双方の剣はよろめくように宙に漂います。

 

 はあちゃまよりわずかに早くフォークの持ち手を握り込んだミオは、再び剣を引いて構え直そうとします。

 その時でした。

 

「!」

 

 いきなりはあちゃまが目前にまで迫ってきて、蹴り込んできました。

 

「うっ!」

 

 鳩尾あたりに重い衝撃が走り、ミオは一瞬息が止まりました。

 気づけば勢いよく飛んでいて、ドシン! と背中を大木にぶつけていました。

 

「痛つ……ッ」

 

 思わずミオは顔を顰めました。

 それから彼女ははあちゃまの方へ目を向けます。

 そして、そのはあちゃまがすでに剣を振りかざしながら今にも自分に斬りかかろうとしているのを認め、四つん這いになりながら慌てて逃げ出すように避けました。

 

 ザン! ドシン! と斬られた大木が倒れ落ちる音を背中にびりびりと感じながら、ミオは急いで立ち上がり反転して剣を構えます。

 はあちゃまはクリスタルサビロイについた木クズを払うために剣を振るっていました。

 

「さすが獣人、逃げ方が堂に入っているわね」

 

「やかましいわ」

 

 言い返すミオに、はあちゃまは再び飛びかかります。

 対するミオも脇本に剣を添えて腰を落とします。

 そして彼女ははあちゃまの振り下ろすクリスタルサビロイにエビフライを打ち込みました。

 

 先程までの剣と剣のぶつかり合いは、そのぶつかる衝撃によって双方怯むような一瞬の間ができたのに、今回はそうはなりませんでした。

 適度な力加減を覚えたのか、はあちゃまは剣同士の衝突直後ひるむことなく次の攻撃へと繋げてきます。

 その二振り目に対し、ミオは再び構えを取り直してから抜刀しました。

 そして抜刀、さらに抜刀と、積極的に剣を振るっていきます。

 

 ミオは、本来であれば相手が隙を見せるまで粘り続ける虎視眈々とした戦闘スタイルなのですが、そうした戦い方は今回ばかりは悪手であると先の打ち合いで理解したようでした。

 しかしかと言って、獣人の身体能力を頼みにゴリ押しして勝てるような甘い相手でもありません。

 ならば止むを得ないというわけで、彼女は持ち前の抜刀ではあちゃまの振るう攻撃一つ一つと打ち合う覚悟を決めたのでした。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 十合二十合とはあちゃまの斬撃に合わせてミオが抜刀します。

 

「息が上がってるわよ」

 

 涼しい顔で指摘するはあちゃまの言うとおり、ミオは「ぜえぜえ」と肩で息をしていました。

 彼女の皮膚という皮膚から汗が吹き出し、滝のようになって滴り落ちていきます。

 

「くっ!」

 

 もはやミオははあちゃまに言い返すことすらしません。

 手が止まったはあちゃまめがけて、鋭い一太刀を抜き放ちます。

 しかし、はあちゃまはさも当然のようにそれを弾き返しました。

 

「さすがに慣れたわ、これだけ打ち合ったらね」

 

「バケモノめ」

 

 吐き捨てるミオを鼻で笑ってから今度ははあちゃまが彼女に剣を振るいます。

 ミオは疲労困憊の身体に鞭打って、はあちゃまの一振りを打ち落とします。

 その時でした。

 二本のソーセージが接しお互いに弾き返された直後、はあちゃまはクリスタルサビロイを大きくしならせました。

 するとクリスタルサビロイは生きた蛇のように打ち合ったばかりのエビフライに飛びかかります。

 そしてその先端をエビフライの剣身に当ててきました。

 

「しまった!」

 

 剣と剣が打ち合った直後の衝撃で手がややしびれていたことに加え、疲労のせいで握力が落ちていたミオは、その不意の追撃によってフォークを手放してしまいました。

 ミオの金色フォークは先端からエビフライを消し、カランカランと乾いた音をたてて地面に落ちます。

 そうして、これ以上とない無防備を晒してしまいます。

 

 フォークを失った無防備の剣士に対し、スバルをはじめとするソーセージ道を重んじる剣士であったなら、相手の目前にソーセージを突きつけ敗北を認めさせるに終わるでしょう。

 しかし、今ミオの目前にいる相手ははあちゃまです。

 

「手放したわね!」

 

 生き生きと口にしながら、急いでフォークを拾おうとしゃがみ込む無防備のミオに、彼女は今までの鬱憤を晴らすようにクリスタルサビロイを容赦なく振るいます。

 

「ぐっ!」

 

 ミオは左脇を強打され、フォークを取れぬまま勢いよく飛ばされました。

 そして大木に身体をぶつけ地面に落ちます。

 彼女は打たれた箇所を押さえて蹲りだしました。

 

「ふふふ、どんな気分かしら?」

 

 はあちゃまは足元に落ちているミオのフォークを遠くへ蹴り飛ばしてから、彼女へ近づいていきます。

 

「でもまだまだ終わらせないわ。私はレジェンドソーセージのスキル奪取を邪魔した者には容赦しないと決めているの」

 

 ミオはよろめきながらも立ち上がろうとします。

 しかしクリスタルサビロイをまともに受けてしまった直後であるため、再び地面に倒れてしまいます。

 

「後悔するのはこれからよ」

 

 言いながら、はあちゃまは満足に動くこともできずソーセージも持っていないミオに、クリスタルサビロイを振りかざして斬りかかろうとします。

 その時でした。

 

「待てよホラー女」

 

 いきなり後ろから話しかけられ、はあちゃまは手を止めました。

 はあちゃまは声の方へ振り返ります。

 

「レジェンド所有者のスキルが欲しいなら、戦う相手を間違えてるだろ」

 

 そこに立っていたのは狐耳に尻尾の白髪少女、

 

「おまえの相手は白上がしてやるよ!」

 

 チーム・ゲーマーズのリーダー、白上フブキでした。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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