勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「ミオさんは大丈夫デショウか?」

 

 フェニックスに乗りながらキアラが心配そうに呟きました。

 

「キアラ、るしあたちよりもフブキたちのほうがずっと心配しているんです。それでも無事のはずだと信じてこうして走っているのですから、不安にさせるようなことを言うのは良くないですよ」

 

 るしあにたしなめられ、キアラは「ごめんなさい」と謝ります。

 すると一緒にフェニックスに乗っているころねとおかゆは「いいよお」「心配してくれてありがとー」と返してくれますが、タイガに乗るフブキからの返事がありません。

 

「フブキさん?」

 

 もしかして気を害してしまったのかと思い、キアラは恐る恐るタイガに乗っているはずのフブキの方を見ます。

 それから「あ」と彼女は息をのみました。

 

「どうしました?」

 

 るしあがキアラに聞きます。

 キアラは首をぶんぶんと振ってから、大声を上げました。

 

「ふ、フブキさんがいマセン!」

 

「シュバア!」

(なにい!)

 

 キアラの叫びを聞いてフェニックスとタイガが慌てて足を止めます。

 正確にはただいなくなっているのではなく、フブキの髪型そっくりのカツラをかぶせられた藁人形が代わりにタイガの背中に置かれており、肝心の本人が消えてしまっています。

 

「いつの間にい」

 

 ころねが額に手を当てて呻くように呟きます。

 

「まさか、ミオさんのところに」

 

 キアラは思わず口にします。

 

「確かめてみるしかありませんね」

 

 るしあが呟きました。

 

「「え?」」

 

 るしあの発言に、皆が彼女の方へ振り返ります。

 

「た、確かめるって、どうやってですか? るしあさん」

 

 キアラがるしあに問いかけます。

 るしあはちらりと彼女の方を見てから「実は」と口を開きます。

 

「るしあにはミオさんとはあちゃまが今どうなっているのか知る手段があるのです」

 

 言いながらるしあはポケットに手を突っ込んで水晶玉を取り出しました。

 

「ちょっと前に気が付いたのですが、るしあとしたことがうっかりたまき君をあの場所に置いて行ってしまっていました。るしあはるしあのアンデッドであるたまき君と視覚、聴覚を同調して、その情報をこの水晶玉に映し出すことができるのです」

 

「シュバルバシュバルルバシュバルルシュババシュバシュバルシュババシュバア」

(さらりと言ってるが相当ひどいことしてるシュバよおまえ)

 

「どうしてそんな大事なことをずっと言ってくれないのデスか!」

 

「さっきから言っているでしょう、ミオさんの厚意を無下にしないように余計な心配をさせず逃げることに専念するべきと思ったからです。しかしフブキさんが一人で引き返したかもしれないとなれば話が別です」

 

 そう言い返してからるしあは目を閉じます。

 るしあが手に持つ水晶玉が光を放ちだします。

 そしてその光が収まったあと、水晶玉のなかにうっすらと何かが映りました。

 

「ミオさん!」

 

 キアラが叫びます。

 水晶玉に映ったのは蹲っているミオでした。

 さらに、水晶玉の端のほうからクリスタルサビロイを手にしたはあちゃまが現れ、ミオに近づいて行くのも映ります。

 

「ど、どうしマショウ!」

 

 慌てふためきながらキアラが聞いた時です。

 

『待てよホラー女』

 

 水晶玉からフブキの声が聞こえてきました。

 映像が移り変わり、フブキの姿が映ります。

 

『レジェンド所有者のスキルが欲しいなら、戦う相手を間違えてるだろ』

 

 言ってフブキはフォークを取り出し、ポイズンチョリソーを構え始めます。

 

「ころさん」

 

 その映像を見たおかゆがころねに呼びかけました。

 

「すぐに引き返すよ」

 

「おうよ」

 

 二人はタイガに乗りはじめます。

 

「シュバア」

(るしあ)

 

 スバルがるしあを見上げます。

 るしあはそれに頷いてから「待ってください」と二人を呼び止めました。

 

「はあちゃまたちを連れてきてしまったのはるしあたちです。るしあたちも一緒に行きます」

 

「いや、きみたちは来なくていいよ」

 

 しかしおかゆがやんわりと断りました。

 

「連れてきてしまったのはきみたちじゃない。きみたちに尾行しているハートンに気づかずアスノミヤコまで案内したミオちゃんだよ。つまりこれはぼくたちゲーマーズの問題さ」

 

「でも」

 

「それに」

 

 おかゆが続けます。

 

「フブキちゃんと戦ってくれたから、大空スバルはもう明日まで人間の姿にはなれないんでしょ? ちょっと言い方がきついかもしれないけど、きみたちがついてきたところで足手まといでしかないよ」

 

 有無を言わさぬ語調でそう言ってから、おかゆはまた「ころさん」ところねに呼びかけます。

 

「おうよ」

 

 ころねはタイガの背中をポンと叩きます。

 タイガは「にゃあ!」と鳴き、おかゆところねを乗せて来た道を走っていきました。

 

「どうしましょう、スバル先輩」

 

「シュバアア」

(うーん)

 

 るしあとスバル、キアラの三人は困った顔をして立ち尽くします。

 一方るしあが手に持つ水晶玉には、ちょうどポイズンチョリソーを振り下ろすフブキが映っていました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「てやあ!」

 

 フブキは一足飛びではあちゃまとの距離を詰めて剣を振り下ろします。

 その一振りが速く鋭いものだったので、はあちゃまは思わず後ろへ跳んで避けました。

 

「ふ、フブキ……」

 

 呻くような声でミオが呼びかけます。

 フブキはそんな彼女のそばまでやってきてから、はあちゃまに向き直りポイズンチョリソーを構えました。

 

「ふふふ、嬉しいわ。戻ってきてくれたのねポイズンチョリソー」

 

「白上フブキだ」

 

「いいえポイズンチョリソーよ、『毒牙』のポイズンチョリソー。あなたの名前なんてどうでもいいわ」

 

「今に忘れられなくしてやる!」

 

 フブキがはあちゃまに突っ込みます。

 その動きは先程以上に速くなっています。

 フブキははあちゃまに向かってポイズンチョリソーを横なぎに振るいました。

 はあちゃまはまた後ろに跳ねてそれを避けます。

 ふぶきはそんな彼女の動きに合わせて大きく踏み込み、返し刀でもう一振り放ちます。

 はあちゃまもその二刀目はクリスタルサビロイで受け止めました。

 

「うりゃあああ!」

 

 フブキは受け止められたクリスタルサビロイを力づくで押しのけてから、またはあちゃまに向かって斬りかかります。

 しかしそう来るだろうと読んでいたのでしょう、はあちゃまはクリスタルサビロイを直前にしならせており、横から飛び出た剣身で再び受け止めます。

 

「まだまだあ!」

 

 ですがフブキの猛攻は止まりません。

 はあちゃまに反撃の糸口を与えぬまま攻め続けます。

 そうして、フブキの嵐のような連撃にはあちゃまは防戦一方となります。

 しかし、

 

「なるほど、大体わかったわ」

 

 唐突に、彼女はそう呟きました。

 そして横なぎに振るわれるフブキの一刀を避けた直後、クリスタルサビロイを振るって反撃します。

 フブキはクリスタルサビロイをはねのけてからすかさず攻撃を続けようとします。

 しかし、はあちゃまは弾かれた直後のクリスタルサビロイをしならせてフブキの横腹に当てました。

 

「あ、う……」

 

 カウンターで受けてしまったフブキの動きが止まります。

 はあちゃまはその隙を見逃しません。

 剣を振りかざしてから、やや前かがみになっているフブキめがけてクリスタルサビロイを振り下ろします。

 その一撃はフブキの左肩へ強かに打ち付けられました。

 

「フブキ!」

 

 ミオが叫びます。

 

「くっ!」

 

 フブキは倒れそうになるところをどうにか踏ん張り、はあちゃまから距離を取ました。

 

「弱すぎるわ」

 

 はあちゃまは吐き捨てるように言いました。

 

「あなた、腐ってもレジェンド所有者でしょ? 剣士としての直感が死んでいるのかしら? ゴリゴリゴリゴリ力押しの脳筋戦法ばかり。これならさっき戦ったそこのオオカミ女の方がよっぽど手強かったわ」

 

「黙れ」

 

「どうせチームメンバーにおんぶにだっこでランキングを駆け上がり、レジェンドソーセージまで持たせてもらってる姫プのお飾りリーダーなんでしょうけど。あなたなんかにポイズンチョリソーはもったいないわ。やはりそのソーセージは私が」

 

「うるせえって言ってんだよ!」

 

 フブキははあちゃまの言葉を遮り怒鳴ります。

 

「ベラベラベラベラ好き放題言いやがって! 白上が弱いだあ? 姫プのお飾りリーダーだあ? はん! んなこたあ本人が一番わかってんだよクソ野郎が!」

 

「フブキ……、違うよ、そんなことないよ……」

 

 ミオが顔を上げて首を振ります。

 しかし激昂しているフブキには彼女の声は聞こえず、姿も視界に映っていません。

 

「でもなあ、だからって白上がおまえに勝てないかって言ったら、それとこれとは話が別なんだよ!」

 

 フブキはそう叫んでから身を屈め、「はあああ!」と喉の奥から声を絞り出しました。

 すると彼女の目が紫に変色します。

 さらに、ポイズンチョリソーから毒々しい黒紫色のもやのようなものが漂いだします。

 

「目えひん剥いてよおく見ろ! これが白上の所有するレジェンドソーセージ、ポイズンチョリソーのスキル『毒牙』!」

 

 フブキは声を張り上げます。

 

「『毒牙』のスキルは十二本のレジェンドソーセージのなかでもトップクラスのバフ効果だ! 体力が15%以下にまで落ちたことを条件に発動可能となり、白上の力を200%まで引き出してくれるまさにチートスキル!」

 

「素敵だわ!」

 

 フブキはバフがかかった凄まじい速さで駆け出し、跳び上がります。

 そしてその勢いをすべて乗せた渾身の一撃をはあちゃまめがけて振り下ろしました。

 

「喰らえ!」

 

 しかしそんなフブキの一刀に対し、はあちゃまは避けようとしません。

 彼女は顔を上げてフブキと向き合い歯を噛み締めたかと思えば、頭上に剣を構えてフブキのポイズンチョリソーを真っ向から受け止めます。

 

 直後、凄まじい轟音が響き渡りました。

 

 はあちゃまの足元の地面もメキメキとひび割れて、彼女の踵部分がやや沈み込みます。

 ですが、それだけです。

 はあちゃまは、バフ強化済みのフブキの攻撃を受け止め切ったのです。

 

「なにい!」

 

 フブキは思わず叫びました。

 

「悲しくなるわ、白上フブキ」

 

 口にすることと裏腹に、はあちゃまは笑みを浮かべます。

 

「まさに猫に小判、あなたはポイズンチョリソーのスキルさえ満足に使用できていない」

 

 言ってから、はあちゃまは剣を受け止めた状態のままフブキを蹴りつけます。

 その箇所は先程クリスタルサビロイを食らった横腹でした。

 フブキは思わず「くっ!」と呻き声を上げて身を屈めます。

 はあちゃまはそんな彼女を今度は思い切りに蹴り飛ばしました。

 フブキはそれをまともに受けてしまいゴロゴロと転がって、それでもやはり痛いのは横腹の方で、そこを押さえながら歯を食いしばります。

 

「さあ、敗北を認めなさい。スキルを使ってすらこの程度のあなたが負けを受け入れないなんておこがましいにも程があるわ」

 

「断る」

 

「負けを認めさえすれば、これ以上苦しまずに済むのよ」

 

「断る!」

 

 立ち上がることすらできず四つん這いになりながらも、フブキはきっぱり否定します。

 

「そう」

 

 はあちゃまはため息をつきました。

 

「なら、その身体に敗北をわからせてあげるしかないわね!」

 

 言ってからフブキに向かって駆けだします。

 そしてフブキの頭上へ、クリスタルサビロイを振り下ろしました。

 フブキはその一刀を受け止めようと剣を構えようとします。

 

「……ッ」

 

 しかし受けてきたダメージが重すぎて、わずかに動きが鈍ります。

 普通の剣士が相手ならばいざ知らず、レジェンド所有者が相手であれば致命的となるわずかな鈍りです。

 フブキの剣は間に合いません。

 

 それでもフブキは、たとえ死んでもこんな相手に敗北など認めるものかと、ぎゅっと目をつむって歯を食いしばりました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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