勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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『し、白上なんかで、いいの?』

 

 ゲーマーズは、フブキとミオ、ころね、おかゆの四人からスタートしたチームでした。

 

『もちろん。うちらのリーダーはフブキだよ』

 

 しかも発足当初、他の三人が上級剣士でフブキ一人だけ未だに下級剣士、にもかかわらず三人はフブキをチームリーダーに推しました。

 

『わかった。じゃあ白上も早く上級剣士になるよ』

 

 フブキが初めて手にしたソーセージは下級剣のチョリソーでした。

 下級剣士の彼女が上級剣士の三人と模擬刀で打ち合っても勝てるはずがなく負けてばかり、それでもミオたちはフブキのことをリーダーだと慕い続けてくれました。

 

『みんなの足を引っ張らないように、一生懸命頑張るから』

 

 フブキはコツコツと鍛錬に励み、順調に上級剣士まで昇級しました。

 チーム管理やメンバー募集も怠ることなくチーム規模を拡大させていき、ランキングもどんどん上げていきました。

 苦労の末にレジェンドソーセージ・ポイズンチョリソーも手に入れ、ゲーマーズをレジェンド所有者のリーダー率いるチームとして台頭させました。

 

 しかし、フブキは自分がゲーマーズのリーダーにふさわしいとは思えませんでした。

 レジェンドソーセージを所持しているにもかかわらず、初期メンバー四人のなかで自分が一番弱いことを自覚していたからです。

 

 それでも、フブキはリーダーを降りることなくチームメンバーを率い続けることにしました。

 フブキはゲーマーズの皆が好きでした。

 そんな皆が自分に期待していることを知っていました。

 そんな皆だからこそ、共に夢を追い求めたいと強く思いました。

 

 フブキは皆の前で虚勢を張るようになりました。

 自分たちのリーダーは実は全然大したことないと思われるのが怖くて、毎日毎日鍛錬をサボって相手チームをなめ切ってるように振舞いながら、誰も見ていないところで必死に鍛錬し続けました。

 仕方ないやつだと呆れられようとも、本気さえ出せばすごいリーダーなんだというリーダー像だけは守り抜きたかったのです。

 

 単純な戦闘力であれば、フブキはゲーマーズの誰にも負けていません。

 ですが、彼女には剣士の直感がありませんでした。

 剣士の直感は戦闘中の好機を捉える際や危機を回避する際に働く剣士の第六感であり、上級剣士以上であれば大なり小なり身に付けているものです。

 しかしフブキは、それをまるで感じ取れないのです。

 剣士として致命的な欠点でした。

 

 だからこそ、フブキは直感の必要ないゴリ押しの戦い方しかできませんでした。

 しかし、その戦法を通用させるためには獣人としても並外れた基礎能力が不可欠です。

 彼女は人目のつかぬところで、毎日毎日ただひたすら剣を振るい続けているのでした。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 剣を振り下ろすはあちゃまに、フブキは目をつむりました。

 

「?」

 

 しかしいつまで経っても痛みがやってきません。

 

「ちがう、よ」

 

 そんなフブキの耳に、ぼそっとか細い声が届きました。

 彼女は思わず目を見開きました。

 

「フブキは、弱くなんてないよ」

 

「ミ、ミオ……?」

 

 フブキの目の前にはミオがいて、はあちゃまの斬撃を受け止めていました。

 ただし、ミオはソーセージを持っていません。

 彼女のフォークははあちゃまによって遠くに蹴り飛ばされてしまっています。

 ミオは、はあちゃまが剣を振り下ろす直前にフブキとはあちゃまの間に入り込み、フブキを庇ってその一刀を身体で受け止めたのでした。

 

「うちもころねもおかゆも、フブキがサボるフリして一人でこっそり鍛錬してるの、ちゃんと知ってるよ。だから別に、うちらはフブキを買い被って推してるわけでもないし、まして姫プのリーダーとして担ぎ上げてるわけでも、ないんよ」

 

 言ってから、ミオはバタンと倒れました。

 

「ミオ!」

 

 フブキは這ってミオの側までやってきて、身体を揺すります。

 

「ミオ! しっかりして、ミオ!」

 

「ふ、フブキ……」

 

 ミオはうっすら目を開けて、フブキを見ました。

 

「フブキはさ、すごい才能があるんだ。ただ、その引き出し方をまだ知らないだけ、なんだよ。ちょっとしたコツさえ掴めば、周りの目なんか忘れて、ソーセージにのめり込みさえすれば、あんたはもっともっと、強いんだ。弱くなんて、ないんだよ」

 

「いいから! もう喋るな!」

 

 フブキが叫びます。

 

「そうよ、死にかけのくせにベラベラとうるさいわ。二人とも」

 

 はあちゃまがフブキとミオに近づいて行きます。

 

「お喋りの続きはヴァルハラの館でゆっくりなさい」

 

 言って、彼女は無防備の二人に向かって剣を振り下ろそうとします。

 その時です。

 

「待てよホラー女」

 

 フブキの声音と調子そっくりの呼びかけが、はあちゃまの背後からしました。

 思わず振り向くはあちゃまに、鋭い突きが放たれます。

 はあちゃまはフブキたちに振り下ろそうとした剣を後ろへ振るい、その一閃を受け止めました。

 彼女めがけて突きだされたのは上級剣の餃子です。

 

「もぐもぐー、おかゆー」

 

 それを手に持つおかゆが笑います。

 おかゆは受け止められた剣を引いて、すぐに次の突きを繰り出しました。

 

「この、鬱陶しい!」

 

「もぐもぐー」

 

 避けても避けても、おかゆは執拗に餃子を突き出します。

 しかも払いのけたところで張り合いもなく弾かれる代わりに、とにかく速く手数が多いのです。

 つまりまともに相手する気がないくせに、ちょっかいは出し続けてくるのです。

 早くフブキを仕留めたいはあちゃまにとって、そうやってちくちくちくちくと突きまわされるような弱攻撃の連突はこれ以上ない嫌がらせでした。

 

「ああ、もう!」

 

 とうとう、はあちゃまはいちいち避けたり受け止めたりするのをやめて、おかゆ本体に向けてクリスタルサビロイを振るいます。

 それははあちゃまの標的がフブキからおかゆに移った瞬間でした。

 

「ころさん!」

 

 おかゆが呼びかけます。

 

「おうよ!」

 

 すると、フブキたちのすぐそばの茂みからころねが飛び出します。

 そして現れるや否や、ころねはフブキとミオを担いで走りだしました。

 

 さすが獣人の隠密能力というべきか、はあちゃまはころねが潜んでいたことにまるで気づけませんでした。

 そのためまるで気配のなかったところからいきなり出現し、あっという間に二人を連れて逃げ去ってしまうころねに、彼女は一瞬だけ呆気に取られてしまいます。

 

「お、追いなさいハートン!」

 

 それでもすぐさまハートンたちへ指示を出します。

 しかし、ころねは人を二人も担いで走っているにもかかわらず、追いかけるハートンたちからどんどん距離を離していきます。

 

「くっ!」

 

 はあちゃまはおかゆに背を向け、急ぎころねを追おうとします。

 

「おっと」

 

 ですが、それより速くおかゆが先回りし、はあちゃまの前に立ち塞がりました。

 

「退きなさい!」

 

 はあちゃまが怒鳴ります。

 おかゆはゆっくり首を振って「いやだよー」と答えました。

 

「ぼくだってねー、ちょっとした足止めくらいはできるんだよー」

 

 おかゆが言い終えるか否かというところで、はあちゃまが剣を振るってきます。

 おかゆは上体を逸らしてそれをかわしました。

 

「この! だから! さっきから、鬱陶しい!」

 

 ただでさえ身のこなしが素早いのに独特の野生の感のようなもので直感が強化されているのか、のらりくらりとおかゆははあちゃまの攻撃を避け続けます。

 それに加えて、先程と打って変わって全く攻めてこようとしないおかゆの姿勢がはあちゃまの苛立ちに拍車をかけます。

 おかゆの剣は近接戦向けの餃子です。

 はあちゃまはそのことを考慮して懐に入られないよう距離を保ちながら剣を振るっているにも関わらず、おかゆからは全く入り込もうという気配がうかがえないのです。

 

「くそ!」

 

 こんなことをしている間にも、フブキを担いだころねはどんどん離れていってしまいます。

 はあちゃまはブン! と横なぎにクリスタルサビロイを大振りしました。

 

「もぐもぐー」

 

 すると目敏くその隙を見つけたおかゆが、すかさず懐へ飛び込んではあちゃまの胸元めがけて餃子を突き出そうとします。

 

「来たわね!」

 

 はあちゃまは思わず声を上げました。

 彼女は振り切ったあとのクリスタルサビロイをしならせ曲げて、迫って来るおかゆの背後から串刺しにしようとします。

 

「おー、っと」

 

 するとおかゆはぴたりと足を止め、まるで後ろに目が付いているかのように屈みこんではあちゃまの一閃を避けました。

 さらに、続けざま振るってくるはあちゃまの猛撃もひらりひらりと避けていきます。

 はあちゃまは、もう相手の有効リーチも何も気にしません。

 とにかく剣を振るい、それをおかゆがことごとくかわします。

 それは一見、頭に血が上ったはあちゃまをおかゆが上手くあしらっているように見えました。

 

「……あれ?」

 

 しかし気が付くと、おかゆは大木を背にしてはあちゃまと向き合っていました。

 背後だけではありません。

 おかゆの左右も木々で塞がれています。

 はあちゃまは逃げ場のないところへ彼女を誘導していたのでした。

 

「随分手間取らせてくれたわね、このクソ猫」

 

 はあちゃまはおかゆの左右の木々もろとも切り倒すつもりなのでしょう、袈裟斬りに剣を振り下ろします。

 

「まだまだー」

 

 しかしおかゆは思いもよらない方法で彼女の一刀を回避しました。

 くるりと反転し背を向けたかと思えば、タタタタタと大木を駆け登りはじめたのです。

 はあちゃまの一振りで小ぶりの木々がバタンバタンと倒れます。

 しかしおかゆの登った大木は多少揺れた程度です。

 おかゆは剣をかわした後も走り続け、大木から分かれた太い枝を逆さの状態で駆けてからピタリと止まり、まるでコウモリのように枝に足の裏側を引っ付けて上下逆さにぶら下がりながら「あはははは、もぐもぐー」と笑いました。

 

「忍者かおのれは!」

 

 怒鳴るはあちゃまはまた剣を振るい、今度はその大木も切り倒します。

 おかゆは木が地面に倒れる前にひょいと飛び降りて着地しようとします。

 しかし、はあちゃまはそのタイミングを狙ってきました。

 おかゆが地に足をつける前に、彼女に向かってクリスタルサビロイを振るいます。

 おかゆはそれを空中でかわしました。

 しかしはあちゃまは避けられることも計算に入れていたようで、直後にクリスタルサビロイをしならせ、おかゆを逆袈裟に斬り上げました。

 

「がっ!」

 

 いくらおかゆでも空中で何度も回避するのは難しいようで、左脇から右肩にかけて赤い線が走り、鮮血が飛び散ります。

 彼女はバタンと背中から地面に倒れて動かなくなりました。

 

「ふん」

 

 はあちゃまはおかゆを斬ったクリスタルサビロイを見下ろします。

 クリスタルサビロイの剣先からは血が伝い滴り落ちています。

 

「急所に入ったわけでもないのに、あっけないほど脆いわね」

 

 はあちゃまはブン! とクリスタルサビロイを振るって血を払い、急ぎころねが走っていった方へ駆けていきました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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