勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「おかゆさん!」

 

 キアラが叫びます。

 スバルたちはおかゆとはあちゃまの戦いを水晶玉越しにずっと見ていました。

 彼女たちはおかゆ、ころねと別れた後も、結局その場を離れずに立ち止まっていたのでした。

 

 キアラが声を上げてから少しして、遠くの方でバタンバタンと木々が倒れる音や「待てやコラ!」「回り込みなさいハートン!」とはあちゃまの大声が聞こえてきます。

 

「スバルせんぱい、るしあさん、やはりわたしたちもゲーマーズの方々をお助けするために戻った方がいいのではないデショウか?」

 

 キアラがスバルとキアラに聞きます。

 先程までは「るしあたちが戻っても仕方がないです」と首を振っていたるしあも、ミオとフブキ、おかゆの三人が次々に負傷した光景を見た後では拒否する様子がありません。

 スバルはキアラに「シュバルバ」(そうだな)と答えようとしました。

 

「その必要はないよー」

 

 しかしスバルが言葉を発する前に、側の茂みから返事がします。

 スバルたちは警戒して距離を取りました。

 

「あはは、ぼくだよぼくー」

 

 しかし姿を現したのがおかゆとわかるやいなや、ほっと胸を撫で下ろします。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「うん、なんとかね」

 

 おかゆははあちゃまに斬られた箇所を手を押さえながら、けろりとした様子で答えます。

 

「でもその必要はないって、向こうはすごい騒ぎになっていますし、ころねさんたちが捕まってしまう窮地じゃないんですか?」

 

 るしあがちょうどそう尋ねるタイミングで、先程まで聞こえていた木々の倒れる音やはあちゃまの大声がピタリと止みます。

 彼女はそれも不吉な静寂のように思えてますます不安そうな顔をしました。

 しかし一方、おかゆはなんともないような調子で、

 

「ああ、あれはね」

 

 と言って笑いました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「随分と逃げ回ってくれたじゃない、獣人」

 

 ころねはついに、はあちゃまに追いつかれてしまいました。

 彼女の周りはハートンによって取り囲まれています。

 

「さあ、白上フブキを降ろしなさい」

 

「おうよ」

 

 はあちゃまに呼びかけられ、ころねは両肩に担いでいたものをドスンドスンと地面に落とします。

 

「……ん?」

 

 それからフブキとミオそっくりに着飾った等身大の人形でした。

 

「なによ、これ」

 

 眉を顰めて思わず呟くはあちゃまに「なんだなんだその反応はあ」ところねが笑います。

 

「このころねお気に入りのミオしゃとフブキちゃんの抱き枕が欲しくて追いかけてきたんじゃないのかあ? せっかくだしちょっと触り心地を確かめるくらいはさせてあげてもいいんだけど」

 

「クソ犬が」

 

「クソ犬う?」

 

 吐き捨てるはあちゃまにころねの獣耳がピクンと反応します。

 

「おうおうイキってくれるなクソ豚姫が。おまえ一体どこのチームのリーダーをボコしてくれたのか、ころねが今からたっぷり思い知らせてやるから覚悟しな」

 

「ふん。あなたこそ一体どこの誰にそんな大口を叩いているか、一生忘れなくさせてあげるわ」

 

 はあちゃまはそう返してから「ハートン!」と叫びます。

 すると取り囲むハートンたちのうち、ころねの背後にいた一人がソーセージを振りかざして彼女に飛びかかってきました。

 

 ころねは素早くレッグバッグに手を伸ばして金色の串を引き抜きます。

 そして振り返りざまにアメリカンドッグを出現させ、その大型ソーセージを振りかざしたかと思えばドシン! という轟音と共に襲い掛かってきたハートンを叩き落とし、地面に押し潰しめり込ませました。

 しかし彼女に飛びかかってくるのはその一人に終わりません。

 今度は左右から数人同時に斬りかかってきます。

 

 ころねは押し潰したハートンからアメリカンドッグを引き抜き、その勢いのままブン! と振るって一人を叩き、さらに振るい続け三人四人と巻き込んでいきます。

 そして飛びかかってきたハートンたちを残さず巻き込み振り回しながら、今度はその場で事を見守っていたハートンたちめがけて彼らを打ち放りました。

 

「ブー!」

 

「ブブー!」

 

 ころねを取り囲んでいたハートンたちの方位はあっという間に崩壊し、立っているのはころねとはあちゃまの二人だけになります。

 

「なるほど。大口を叩くだけはあるってわけね」

 

 そう言ってから「だけど」とはあちゃまは続けました。

 

「前言撤回はしないわ。やはり選ぶ相手を間違えてる、今からたっぷりそのことを教えてあげるわ」

 

 彼女はレッグバッグからフォークを取り出しブン! と振るいます。

 フォークの先にクリスタルサビロイが取り付けられます。

 

「やれるもんならやってみろやあ!」

 

 そんな彼女にころねは叫びました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「ころさんが今担いで走ってるのはフブキちゃんとミオちゃんに似せた人形だよ。本当の二人はすでに安全な場所へ避難させてるんだ」

 

「さ、さすがですね」

 

「というわけで、ぼくたちのことは心配してくれなくてもいいし、ころさんがあともう少しくらい足止めしてくれると思うから、きみたちも今のうちに早くここから離れなよ。どこかへ向かう途中だったんでしょ?」

 

「はい」

 

 るしあが頷きます。

 しかしそれから少しして「あの」とおかゆに話しかけました。

 

「ん?」

 

「フブキさんは大丈夫なのでしょうか? 身体の方もそうですが、その、精神的なダメージも相当のもののように思えましたので」

 

「ああ、大丈夫大丈夫。まあ確かにすぐには無理だろうから、しばらくゲーマーズはチーム対抗のランキング抗争を休止するつもりだし、強いて言えばその間にいくつかランキングは落ちるだろうけど大した問題じゃないよ」

 

 言って「あははは」と笑うおかゆがるしあには気丈に振舞っているように見えたのでしょう、彼女はしゅんと項垂れてから「ごめんなさい」と頭を下げました。

 

「るしあは剣士ではありませんが、チームに所属する剣士にとってランキングがどれだけ大切なのかはわかっているつもりです。るしあたちがアスノミヤコへ入る際にもっと警戒していれば、あなたたちのチームがこんなにも大打撃を受けることもなかったかもしれないのに、本当に申し訳ないです」

 

「あはは、ありがとうー。ぼくたちのことを気にかけてくれて」

 

 おかゆは笑顔でるしあに礼を言います。

 しかし「でもね」と続けました。

 

「ぼくたちのリーダー白上フブキと、ぼくたちのゲーマーズをあまり見くびらないでほしいな」

 

「え?」

 

「確かに今までにない屈辱的な敗北をしたからね、フブキちゃんが再び立ち上がるには時間がかかるかもしれない。だけどね、フブキちゃんは卓越した才能があるからこそ、剣士ならば誰もが一度は経験するはずの悔しくてたまらい敗北感を知らないままランキングを駆け上がってきてしまった。そのせいで剣士として当たり前に得られるはずの恩恵を大分取り逃してきた。そしてそのことに自分でも薄々気が付きながらどうすればいいかわからず、ずっともがき苦しんできたんだ」

 

「はあ」

 

「でも今回、赤井はあとによってこれ以上ないくらい打ちのめされたことによって、ようやく本当の意味でソーセージと向き合うことができる。つまり、大打撃どころかこれからがゲーマーズの時代というわけさ。ランキング抗争から抜けるのはほんの束の間にすぎない。赤井はあとはのちに後悔することになるよ、一体誰の逆鱗に触れてしまったのかを知ってね」

 

 そう言い終えてから、おかゆは踵を返します。

 

「じゃあぼくはそろそろ行くよ」

 

「どこへ行くんですか?」

 

「いくらころさんでもレジェンド所有者相手にいつまでも戦い続けるのは難しいからね。ちょっと手助けしに」

 

「そんなお怪我で」

 

「心配してくれてありがとう。でも別に正面から行こうというわけじゃないよ。不意打ちでちょっかい出して、ころさんと一緒に撤退する隙を作るだけだから」

 

 そしておかゆは茂みの奥へ入っていこうとしますが、ふとしたようにその足を止めました。

 

「大空スバル」

 

 そしてスバル方へ振り向きます。

 

「シュバ?」

(ん?)

 

「噂を耳にするにスバ友も今は大変なことになっているらしいけど、きみもその呪いを解いた後、チームを復興させてランキングの頂点を狙うつもりなんだろ?」

 

「シュバルババ」

(当然だ)

 

「その通りだと言っています」

 

 るしあが通訳すると、おかゆは笑みを返します。

 

「なら次にぼくたちが会うのは、もしかしたらトップランカーの座をかけたステージの上かもしれないね」

 

 そう言い置いてから、彼女は茂みの奥へ消えていきました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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