勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「ここまで来れば大丈夫デス」

 

 突然現れたキアラに窮地を助けられたスバルたち。

 

 キアラは彼女のダチョウ、フェニックスから飛び降ります。

 スバルとるしあも地面に降りました。

 

「スバルせんぱい! 会いたかったあ!」

 

 キアラは突然、アヒルのスバルに抱きつきます。

 

「シュバア! シュバルバシュババシュバルルバ!」

(キアラ! スバルのことがわかるのか!)

 

 スバルはシュバル語でキアラに話しかけました。

 しかしキアラは悲しそうな顔をしてから「スバルせんぱい!」と再び叫びます。

 

「スバルせんぱい、忘れたのデスか! キアラだよ! スバルせんぱいにめっちゃ可愛がってもらった、スバ友のキアラだよ!」

 

「シュバ? シュ、シュバ、シュバルバシュバルルシュババ! シュバアア!」

(ん? お、おう、スバルはちゃんとわかってるぞ! キアラあ!)

 

「そうだよね、もう五年も経ちマスし、わたしも随分大きくなったから、スバルせんぱいに忘れられるのも仕方ないことデスよね」

 

「あ、あの、キアラ?」

 

 スバルとキアラのすれ違いを見ていられなくなったるしあが二人の会話に割り込みます。

 

「スバル先輩もキアラのことを覚えていて、キアラがアヒル姿のスバル先輩を本人だとわかってくれていることに感激しているようです」

 

 るしあが教えてやると、キアラは「ああ、そうだったんデスか!」と一転して笑顔になります。

 

「スバルせんぱい! キアラは嬉しいよお!」

 

 それからぎゅううっとスバルを抱きしめました。

 

「シュバ! シュバ! シュバアアア!」

(死ぬ! 死ぬ! 死ぬううう!)

 

「キアラ! スバル先輩を殺すつもりですか!」

 

 るしあは慌ててスバルをキアラから引き離しました。

 

「ああ、ごめんなさい! つい嬉しくて」

 

 キアラはるしあとスバルに謝ります。

 それから「でもスバルせんぱいが本物かどうかなんて、スバ友ならわかって当然だよ」と独り言のように話しはじめます。

 

「だって、わたしたちスバ友は家族同然にずっと一緒に生活してきたんだよ? それなのにスバルせんぱいが本物かどうか見抜けないなんて、そっちの方がずっとおかしいよ。わたしたちを許してくださいスバルせんぱい、みんな五年の月日のせいで目が濁ってしまっているんデス」

 

「シュバ、シュバルルバシュババシュバルルシュバ。シュバルバシュババシュバア」

(いや、おまえたちは何も悪くないシュバ。だから謝るなキアラ)

 

「スバル先輩が、キアラたちは悪くないのだから謝らないでほしいって言ってます」

 

「ありがとうございマス」

 

 キアラはスバルに礼を言いました。

 

「スバル先輩、今スバ友は大変なことになっていマス。そのことについて詳しい説明をさせていただいてよろしいデショウか?」

 

「シュバ」

(ああ)

 

 頷くスバルを認めてから「お二人ともついてきてください」と、キアラは歩き始めます。

 

「この近くにわたしたち、スバ友アヒージョのアジトがあるんデス」

 

「シュバルバ? シュバルシュバルバ?」

(アヒージョ? なんだそれは?)

 

「キアラ、アヒージョとは何ですか?」

 

「それについても、スバ友の現状を説明する際に」

 

 歩くこと十数分、スバルたちはキアラの言うアヒージョのアジトに到着します。

 そこは小さな丸太小屋でした。

 

「さあ皆さん、どうぞ中へ。適当に椅子にかけてください」

 

 キアラに促され、スバルとるしあは小屋のなかへ入ります。

 小屋のなかには大きなテーブルと数脚の椅子、それから奥の隅に寝袋がいくつか重ね置かれているだけです。

 スバルとるしあは各々椅子に腰かけました。

 

「何もお出しできなくて恥ずかしいデス」

 

 言いながら、キアラは水の入ったグラスを二人の前に置きます。

 

「シュババシュバシュバルバ」

(変に気を使うな)

 

「キアラ、そんなこと気にしないでください」

 

「はい。ありがとうございマス」

 

 キアラはスバルたちの向かいに座りました。

 

「スバル先輩のいなくなった五年前から、話をさせていただいてよろしいデスか?」

 

 キアラの問いかけに二人は頷きます。

 

「スバルせんぱいの失踪当時、わたしは敵チーム偵察のため遠地に出ていマシタ。そのためアヒール村に帰ったのは事が起きてから一週間後なのデスが、その時でもすごい騒ぎデシタ。一週間経った後なのに、みんなついさっき事件が起きたみたいにあたふたしてて、これからどうしようとか、人生が終わったとか、情けないことばかり言ってた!」

 

 はじめは敬語でしゃべっていたキアラの口調が、当時を思い出していろいろな感情が沸き上がってきたのでしょう、だんだんと砕けたものになっていきます。

 

「チーム・スバ友はスバルせんぱいのワンマンチームみたいなところがあったし、スバルせんぱいがレジェンド所有者だったから他のチームに幅を利かせてるところもあったからさ、もうみんな疑心暗鬼になってほとんどチームとしての体もなさないくらいガタガタになっちゃったんだ。それがここ最近までずっと続いてた」

 

「シュバルシュババ」

(申し訳ねえ)

 

「申し訳ない、だそうです」

 

 うなだれるスバルの言葉を、彼女以上に肩身を狭そうにしながらるしあが伝えます。

 

「スバルせんぱいが謝ることなんてない!」

 

 キアラは声を張り上げました。

 

「みんながいけないんだよ! スバルせんぱいが強くてレジェンド所有者だからって、あぐら掻いて! 当時だって、ランキング5チームのメンバーとしての自覚が全然足りてなかったんだ! だからいざという時に何もできず、こんなことになる!」

 

 キアラはバン! とテーブルを叩きます。

 それからハッと自分が興奮していることに気付いたようで、いそいそと座りなおしました。

 

「そんな状況が変わったのは一ヶ月前、スバルせんぱいがアヒール村の酒場に来て、皆の前でアヒルから人間の姿に戻ってみせた時からデス。その時から、スバ友は二つの大きな派閥『トリ派』と『メスバル派』に分裂しマシタ。まあ、それによってこれまでのスバ友・カオス状態をかろうじて収拾できていることは僥倖といえば僥倖なのデスが、問題はそれらの派閥が掲げる方針デス」

 

 そこまで言ってから、キアラは一息ついて水を口に含ませます。

 

「シュババ? シュシュバルバ? シュバシュババシュバ?」

(トリ派? メスバル派? なんなんだシュバ?)

 

「なんなのですか、それらは?」

 

 問いかけるるしあに「おのおの自分たちの推しが一致する者同士が集まり結成したスバ友内派閥デス」とキアラは答えました。

 

「まずトリ派デスが、彼らはスバルせんぱいがアヒルであることを受け入れたスバ友たちデス。ただし、彼らはあくまでアヒルであるスバルせんぱいを推すのであって、スバルせんぱいが人間に戻ることを快く思っていマセン。そのためスバルせんぱいが人間に戻るためレジェンド情報を得ようとしていると知った彼らは、団結してスバルせんぱいの冒険を妨害しようと企んでいマス」

 

「シュバルバ」

(悪夢だ)

 

「次にメスバル派デスが、彼らはトリ派とまさに真逆の立場デス。というのも、彼らはアヒルであるスバルせんぱいを拒み、女の子としてのスバルせんぱいを一途に崇拝しているのデス。いずれ語尾に『っす』を付ける『本物の大空スバル』が戻ってくることを信じるスバ友たちによって結成されマシタ。ちなみに先ほど襲ってきたのもメスバル派のスバ友デス」

 

「田中ですね」

 

「はい。彼らは彼らでスバルせんぱいが呪いによってアヒルとなった事実を認めマセン。むしろ自分たちのスバルせんぱいを侮辱されたと思い込んで、スバルせんぱいと、えっと、その、おまえの名前は……」

 

「るしあです」

 

「失礼しました。スバルせんぱいとるしあさんに復讐する機会をうかがっているようなのデス」

 

 言ってから、キアラは「そういえば自己紹介がまだデシタね」と言って立ち上がります。

 

「スバ友の小鳥遊キアラと言います。どうかよろしくお願いしマス」

 

「潤羽ルシアです。こちらこそよろしくお願いします」

 

 二人はお互いに自己紹介しました。

 

「シュバア……。シュバルババ、シュババシュババ……」

(そんな……。スバ友が、こんなことに……)

 

 一方、スバルは愕然と呟きます。

 

「シュバルババ、シュバシュバルバシュババ……」

(スバ友は、もう終わりなのか……)

 

「なんて?」

 

 キアラがるしあに尋ねます。

 

「スバ友はもう絶望的だと嘆いています」

 

 るしあは率直に伝えました。

 

「スバルせんぱい、そんなことないよ! 希望の光はまだありマス! それがわたしたち、第三の派閥にしてスバ友正統派『アヒージョ』デス!」

 

 キアラは明後日の方を向いているスバルに顔を近づけるように、テーブルに身を乗り出しました。

 

「トリ派にもメスバル派にも属さないわたしたちはまだほんの数名規模だけど、ありのままのスバルせんぱいを愛することを誓った少数精鋭のスバ友なんデス! 今もアヒージョの同志たちは、他のスバ友たちが目を覚ますようにいろいろ働きかけていマス!」

 

「シュバアア!」

(キアラあ!)

 

「そしてアヒージョとしてのわたしの役目こそ、スバルせんぱいを元の姿に戻す手助けをすること! スバルせんぱい、今のスバ友たちは頭が混乱しててトリ派だとかメスバル派だとか言ってるけど、スバルせんぱいが元の姿に戻ったらすぐ目を覚ますに決まっているのデス!」

 

 言ってから、キアラはレッグバッグに手を伸ばし金色フォークを取り出します。

 

「見てください! わたしはスバルせんぱいがいなくなってからも、きっと戻って来るこの日が訪れることを信じ、いっぱいいっぱいいーっぱい鍛錬を積んで中級剣士から上級剣士に昇級したんデス! だから戦力として期待してもろて!」

 

「シュバアア、シュバシュババア!」

(キアラあ、心強えよ!)

 

「なんて?」

 

 キアラがるしあに尋ねます。

 

「キアラのことを、るしあの次に期待しているのだそうです」

 

「まかせてくださいスバルせんぱい!」

 

 嬉しそうに言ってから、彼女はフォークをレッグバッグに仕舞いました。

 キアラはそれから「あ、それと」と思い出したように呟きます。

 

「アヒール村で人から聞いたのですが、スバルせんぱい、レジェンド所有者の情報を探しているのデスか?」

 

 スバルというよりもるしあに問いかけるキアラに、るしあは「はい」と頷きます。

 

「キアラ、なにか知っているのですか?」

 

 聞き返するしあに「ごめんなさい」と彼女は首を振りました。

 

「正直、わたしやスバ友のみんなは、レジェンド所有者とかの外部情報を仕入れてる余裕なんかないくらいガタガタだったので全然把握できていないんデス。そんな状況はアヒール村の人たちも一緒なので、たぶんアヒール村で情報収集したとしても何も得られないと思いマス」

 

「そうですか」

 

 相槌を打ってから、るしあはちらりとスバルの方を見ます。

 

 スバルも「シュババ」(そっか)と頷いているところでした。

 

「そこで、わたしはもっと人の多いところに行くべきだと思いマス。人が多ければ有力な情報も集まりやすい。どうデショウ?」

 

 提案するキアラに、るしあは「どうしましょうスバル先輩」とスバルの意見を聞きます。

 

「シュバルバ」

(そうだな)

 

 スバルはまたゆっくりと頷きました。

 

「シュバルバシュバルルシュババ」

(別の場所に行こうか)

 

「なんて?」

 

「キアラの言う通り別の場所へ行こう、とおっしゃっています」

 

「よおし! じゃあ早速出発だ!」

 

 キアラは立ち上がり丸太小屋の外に出ました。

 

「フェニックス!」

 

 そして大声で呼びかけました。

 すると遠くのところで砂埃が立ち始めます。

 その砂埃を背景に、ダチョウがこちらに向かって走ってきます。

 

「スバルせんぱい、るしあさん、フェニックスに乗ってもろて!」

 

 キアラは先にスバルとるしあをフェニックスに乗せてから自分も飛び乗ります。

 

「走れ! フェニックス!」

 

 叫んでから、彼女はフェニックスの横腹を叩きました。

 するとフェニックスはくいっと顎を上げ、颯爽と走りだしました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。

 キアラの「です」「ます」がカタカナになっているのは誤字ではありません。
 片言の喋り方を表現するための仕様です。

 物語上、勇スバでは登場人物「小鳥遊キアラ」をスバ友と設定していますが、実際ホロライブENに所属しているVtuber小鳥遊キアラはスバ友ではありません。
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