勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
70羽
アスノミヤコを出たスバルたちはるしあの故郷へ向かいます。
「キアラ、スバル先輩。あともう少しで私の故郷、オバケ村に到着しますよ。ほらあれ、看板が見えてきました」
るしあの言うとおり、数日フェニックスを道なりに走らせる彼女たちの前に看板らしきものが見えてきました。
『この先オバケ村。立ち入るべからず』
ちなみに文字はすべて赤字で書きなぐられています。
「シュバシュバア」
(おいるしあ)
「はい」
「シュバルバシュバル、シュバルシュバルバシュバシュバルバ」
(おまえの故郷、ヤバいところじゃないだろうな)
「失礼ですね。ヤバいってどういう意味ですか。いくらスバル先輩でも許しませんよ」
ぷいと顔を逸らするしあに「シュバ、シュバ、シュババ」(あ、いや、ごめん)とスバルは謝りました。
スバルたちは看板を横目に通り過ぎてしばらく進みます。
すると今度はおどろおどろしい雰囲気の森の手前に行きつきました。
その森区域はフェンスで区切られています。
「ちょっと待っててください」
るしあはフェニックスから降りて、フェンスをよじ登りだします。
そしてフェンスの向こう側に飛び降りてから、てくてくと一人で先に行ってしまいます。
そうかと思えばすぐに戻ってきました。
「お待たせしました」
るしあの手には小さな鍵が握られています。
そしてスバルからすれば何もないように見えるところに鍵を差し込んで、がちゃがちゃさせはじめます。
しばらくするとカチンと何かが嵌ったような音がして、フェンスの一部分がドア状に区切られ開きます。
「さあどうぞ」
それは人一人がやっと通れるほどの大きさです。
何度かフェニックスをくぐらせようと頑張りましたが無理でしたので、るしあたちは仕方なくフェニックスを置いていくことにしました。
フェンスを潜り抜けた後、るしあがまたがちゃがちゃカチンと音をさせます。
するとさっきドア状になっていたと思われた部分が、フェンス全体と一体化して見分けが付かなくなっていました。
「シュバルバ」
(すげえな)
「全然すごくなんてないです」
るしあは鍵をポケットに仕舞いながら答えます。
「これが石塀であればまだ防犯上実用性があるかもしれませんが所詮フェンス、破ろうと思えばソーセージの一振りで事足ります。くだらない魔法の一つですよ」
「シュバ、シュバルバシュバルルシュババ」
(まあ、そうかもしれないけどさ)
スバルは相槌を打ってから「シュバシュバア、シュババシュバルババシュバルシュバルシュバルルシュババシュバルババ」(なあるしあ、実はさっきからずっと確認したいことがあるんだが)と口にします。
「なんですか?」
「シュバルバシュバルバシュバルルバシュバルバシュババシュババシュバ?」
(今から行くのは本当におまえの故郷なんだよな?)
尋ねるスバルにるしあは首を傾げながら「そうですけど」と答えました。
「シュバ、シュバシュバルバ。シュバシュバルルバシュバシュバシュバルバシュバ、シュババシュバルルシュバシュバルバシュバルルバ」
(いや、ならいいんだ。あの看板と言いこのフェンスと言い、なんか人里って感じじゃないからさ)
「ああ」
るしあは納得したように頷きました。
「まあ、いろいろとあるんです。」
◇ ◇ ◇
スバルたちは鬱蒼とした森の中を進みます。
そうしてしばらくすると開けた空間にたどり着きます。
「着きました」
るしあの言葉にスバルは思わず「シュバ?」(え?)と口にします。
というのも、そこは灰色の町並みが広がる寂れた建物群なのです。
もっと直接的に言ってしまえば廃墟、オバケ村というよりゴーストタウン。
キアラなどはまさかそこが目的地などとは思いもしていなかったのでしょう、横目でちらりと見るなり通り過ぎようとしていました。
それも無理ないことで、ところどころ家らしきものはあるもののドアが中途半端に開いていたり窓が割られていたりで、とても人が生活しているような場所には見えないのです。
「ひどい、盗賊かなにかに襲われた後なのデショウか」
キアラは気の毒そうな顔をして呟きました。
「あ、違います違います」
るしあは苦笑しながらそんな彼女に首を振りました。
「廃墟に見せかけるカムフラージュなんですよ、さっきのフェンスと似たような魔法を用いたもので。それこそ盗賊などの標的にされないように。実際建物のなかに入ってみればわかりますが、外観こそこんな感じですが内側はしっかりしているんです」
「そうなんデスか」
キアラは興味を持ったように見渡しだします。
「でも、いくらなんでもやりすぎじゃないデショウか。盗賊に見つからないためとはいえ、自分の家の外観がボロボロでは日頃あまりいい気持ちで過ごせないと思うのデスが」
「念には念を入れてですね。とは言え、実はるしあが生まれた時からずっとこうなのであまり深く考えたことはないです」
「シュバルバ、シュバルルシュババシュバルシュバルババ」
(ところで、日中なのにいやに静かだな)
尋ねるスバルに「日中だからですよ」とるしあが答えました。
「この村のみんなは陽が昇る時間帯に寝て、沈んでから活動しはじめる種族ですので。かくいうるしあも陽が沈んだ後から調子が良くなる夜型だったりします」
スバルたちは静まり返った村をしばらく歩きます。
すると古びた洋館が見えてきます。
るしあはその館のドアを開けて「さあ、どうぞどうぞ」とスバルたちを手招きしました。
「か、勝手に入って大丈夫デショウか?」
「大丈夫ですよ。ここはるしあの家なんです。るしあには親兄弟がいませんので無人ですし、遠慮なさらないでください」
るしあは屋敷のなかへ踏み込むと、ぶわっと埃が舞い上がりました。
「こほ! けほ! さ、さすがに長い間放置しているとすごい埃ですね」
彼女は口元を押さえながら家中の窓という窓を開け始めます。
スバルたちもそれを手伝います。
「うう、夜までるしあの家で寝ながら待とうと思っていたのですが、これではさすがに無理ですね」
仕方ありません、と言ってからるしあは家から出ます。
そして彼女の家の向かい隣にある建物のなかへ入っていきました。
石壁でできた立方体の建物です。
二階建てらしく、上に続く階段が奥の方に見えます。
床には真っ赤な畳石が敷き詰められていました。
「こ、ここは牢獄かなにかデスか?」
キアラが率直な感想を述べます。
「正確には違います。しかしまあ似たようなものです」
スバルたちがなかに入ってから、るしあは玄関ドアを閉めました。
「少し待っててください」
るしあは一階にスバルたちを置いて二階へ上がっていきます。
そして戻ってきた彼女は寝袋を三つ抱えていました。
「さあ、とりあえず寝ましょう。でないと日が暮れないので」
るしあはそれらを部屋に敷きならべます。
「シュバ。シュバルルシュバアシュバルルバシュバルバシュババ」
(おい。ドット絵RPGっぽいこと言うな)
スバルたちは寝袋にもぐって目を閉じました。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。