勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 キアラを突き飛ばしたカリオペの胸元を、はあちゃまのクリスタルサビロイが貫きます。

 

「カリ!」

 

 キアラが叫びました。

 

「騒ぐなくそどり!」

 

 カリオペは身体をソーセージで貫通された状態のまま、キアラに振り返ります。

 

「忘れたか、おまえガ何度死のうガ蘇る不死鳥ノ化身であるようニ、私ガ偉大なるグリム・リーパーの第一弟子であることヲ。我ら師弟ハ生死ノ次元ヲ超越した非死ノ存在、ゆえニたとえ死にたくとモ死ねぬのガ我らノ身体。私ハ未熟ゆえニ痛覚こソ遮断できないガ、だからト言って喚きたてるような大事でハない」

 

 そう言ってから、カリオペは刺されたままはあちゃまに向き直ります。

 

「貴様、一体何者だ? 現れるヤ否ヤ、いきなり心臓めがけてソーセージヲ突き刺す容赦ノなさ、私デなければ即死していた」

 

「ふふふ、さすが森カリオペ。噂通りの不死の剣士」

 

 はあちゃまはカリオペから剣を引き抜き、後ろへ跳ねて距離を取ります。

 

「私ははあちゃま。詳しくはそこのアヒル一行がよく知ってるから省略するわ。森カリオペ、私のアメイジングな挨拶がお気に召したようで嬉しくてよ」

 

「頭ハ大丈夫か? 一言モ気ニ入ったなどト言っていない」

 

「それは残念。じゃあ単刀直入に本題といこうかしら」

 

 はあちゃまは剣先をカリオペに向けました。

 

「森カリオペ、あなたがレジェンドソーセージ・ゴーストベーコンの所有者であるという情報はすでに掴んでいるわ。さあ! ソーセージを出して私と戦いなさい!」

 

 はあちゃまの言葉に周囲がざわめきます。

 

「ゴーストベーコン、『不死の魂』のスキルを持つレジェンドソーセージ!」

 

「カリ、あなたレジェンド所有者になっていたの!」

 

「カリが持ってたあのソーセージ、そんなすごいのだったんだ!」

 

 るしあたちの視線がカリオペに集まる中、彼女は「ふっ」と含み笑いをもらします。

 

「はあちゃまト言ったか? 貴様ノ掴んだ情報トやらハ古すぎるようだな」

 

「なに?」

 

「確かニ、私ハかつてゴーストベーコンヲ所有していた。しかシそれハ過去ノ話。すでニそのレジェンドソーセージハ私よりモ相応しい持ち主ノ手ニ渡っている!」

 

 言って、カリオペはレッグバッグからフォークを引き抜きブン! と振るいます。

 フォークの先に現れたのは上級剣のベーコンです。

 

「ふん。さては金に目がくらんでレジェンドソーセージのフォークを手放したか。愚かなことをしたわね」

 

「貴様ノような下衆ト一緒ニするな!」

 

 カリオペははあちゃまにベーコンを構えて一喝しました。

 

「ちょっと待ってよ。鼻息が荒いわね」

 

 対するはあちゃまは急に興ざめしたように髪をかきだします。

 

「なんていうかさ、何度潰しても動き出すゴキブリみたいなやつを相手にして、倒したところで何の意味もない戦いをするなんて私嫌なのよ。面倒くさすぎ。熱くなってるところ悪いけど逃げさせてもらうわ」

 

「逃がすはずガないだろう! 人ノ身体ヲ突き刺しておいて!」

 

 怒鳴りながらカリオペははあちゃまに斬りかかります。

 しかし剣がはあちゃまに当たる直前、彼女はふっと消えてしまいました。

 

「き、消えただト!」

 

 カリオペは周囲を見回しますがどこにもいません。

 

「無駄よカリ、彼女は瞬間移動のようなものを使えるらしいの」

 

 説明するキアラにカリオペは「なんなんだあいつハ!」と言ってベーコンで床を叩きます。

 

「いきなり斬りかかっておいて、私ガレジェンド所有者デないトわかった途端ニ逃げ出すとハ訳ガわからない!」

 

「彼女の狙いはレジェンド所有者を倒してスキルを奪い取ることなんだ」

 

 それからキアラはカリオペにはあちゃまの目的について詳しく話しました。

 

「なるほどな」

 

 カリオペは頷きます。

 

「しかシ、そうであるならば尚更許せん! クソ!」

 

 カリオペはまたガシガシとベーコンで床を叩き始めます。

 

「スバルせんぱい、まだはあちゃまが近くで隠れているかもしれませんし、私たちもあまりこの場に長居しない方がいいのかもしれマセンね」

 

 キアラは悔しがるカリオペを横目にスバルに話しかけます。

 しかし返事がありません。

 

「スバルせんぱい?」

 

「あ、あの……」

 

 もう一度呼びかけると、スバルではなく傍で屈み込んでいるメルが答えました。

 

「さっきからずっとぴりぴりした空気で言いだせなかったんだけど、このアヒルさん、すごい熱出して倒れてるよ?」

 

 彼女の言うとおり、スバルは顎が地面につくほどぺったりと床に張り付き俯せになって、はあはあと息を荒らげています。

 

「い、いつから!」

 

 すぐ近くにいたるしあも気が付いていなかったようで、慌ててスバルを抱きかかえます。

 

「あのはあちゃまって人が降ってくる直前くらいかな。大切な仲間の記憶が戻った安心感で気が緩んで、今までの疲労とかが一気に襲いかかってきたんだろうね。すぐにもちょこ先生のところに連れて行きたかったんだけど、あの人が現れたせいで動けなくてさ」

 

「スバルせんぱい! 心配しないでください! わたしが今すぐそのなにがし先生とかいう方のところへ連れて行きマスので!」

 

 るしあからスバルを受け取ったキアラは、メルに「案内してください!」と頼みます。

 しかしそんな彼女を「待て」とカリオペが呼び止めました。

 

「くそどり、気持ちハわかるガ今ハまずあやめ嬢ト合流することガ先決だ。ちょこ先生にハお嬢ノところヘ訪問診療してもらえばいい。あのはあちゃまトいう剣士、只者でハなかった。そんな危険人物ガまだ近くデ息ヲ顰めているかもしれないのだ」

 

「ならカリだけ先に行っててよ! わたしはスバルせんぱいを診てもらってから行くから!」

 

「それだトおまえたちガ襲われたらどうするのだト言う話だ! やつノ狙いガレジェンド所有者トいうことハ、大空スバルモ標的だトいうことだろう!」

 

 カリオペが怒鳴ります。

 しかしキアラは少しも怯みません。

 二人は睨み合いをはじめます。

 しかししばらくしてから、カリオペが「ああもう! かせ!」と言ってスバルを背負いだしました。

 

「ちょこ先生ノ診療所ハこっちだ! さっさトついて来いくそどり!」

 

 怒鳴って駆けだすカリオペに「ありがとうカリ!」と礼を言ってキアラが続きます。

 

「ま、待ってください!」

 

 そんな二人にるしあが呼びかけますが、彼女たちは全く足を止める様子がありません。

 

「ねえるしあ。メルたちは先にあやめのところへ行く?」

 

 共に置いてけぼりを食らったメルがるしあに提案します。

 るしあはそれに首を振ってから全速力でカリオペたちを追いかけました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「ちょこ先生!」

 

 カリオペがドアを蹴破って診療所へ入って行きます。

 受付している鬼の娘が思わず直立して「はい!」と答えました。

 

「あなたじゃない、ちょこ先生だ! 急患だト言って呼んでくれ!」

 

 大声を張り上げるカリオペに「なになにー?」とちょこが奥からやってきました。

 

「あなたがちょこ先生デスか!」

 

 縋りつく勢いのキアラに「え? ああ、うん。そうだけどっていうか、ついさっき自己紹介したよね?」と、ちょこはたじろぎ気味に答えます。

 

「お願いしマス先生! スバルせんぱいを助けてください!」

 

 そんな彼女に一切構わず、キアラは必死に頭を下げて訴えかけました。

 

「えっと、どうしたの?」

 

 ちょこはちらりとカリオペの方を見て説明を求めます。

 

「ちょこ先生! 早く治してやってくれ!」

 

 しかしそのカリオペもキアラと同じことしか言いません。

 ちょこは仕方なく事情を聞くことを断念しました。

 彼女はカリオペの差し出してくるスバルを見下ろして、「はあ」とため息をつきます。

 

「だから言ったんですよ。休ませてあげてって」

 

 それからちょこはカリオペとキアラに向き直りました。

 

「心配ありませんわ。すぐよくなりますよ。とにかく奥の診察室へ」

 

 そう言ってちょこはキアラたちを「診療室1」というプレートのかかった個室へ案内しようとしました。

 

「や、やっと追いついた……」

 

 ちょうどそのタイミングで、るしあが表口のドアを開けて入ってきます。

 るしあは「ぜえぜえ」と肩で息をしながら滝のような汗を流していました。

 

「ど、どうしたの? そんな息を切らして」

 

 受付の女性が気を利かせてるしあに飲み水が入ったコップを差し出します。

 るしあはそれを受け取り一気に飲み干しました。

 そして診療室に向かおうとしているちょこの元へ速足でやってきます。

 

「ちょこ先生、スバルせんぱいは?」

 

「大丈夫ですよるしあ様。皆様そろいもそろって本当に大袈裟ですね」

 

 ちょこはぐったりしているスバルを抱きかかえながら診察室へ入ります。

 るしあたちも彼女に続きました。

 

「はあ。るしあ様がスバル様を思う気持ちの何十分の一でもいいから、もっとわたくしたちのことを気にかけてくれないものかしら」

 

 ちょこが診察室のドアを閉めながらぼそりと呟きます。

 

「なにか言った?」

 

 耳聡く聞き取ったるしあが彼女に問いかけます。

 

「別に何でもありませんわ」

 

 ちょこは診察用のベッドにスバルを仰向けで寝かせました。

 

「ちょっと待っててください」

 

 そう言い置いてから、ちょこは仕切りのカーテンの奥へ入っていきます。

 しかしすぐに戻ってきました。

 

「これを飲んでしばらく安静にしていればもう大丈夫ですわ」

 

 その手にはビーカーのカップに入った黒ずんだ液体を持っています。

 

「ほ、本当デスか? ヤバいくらい毒々しい色をしているのデスが」

 

「良薬色がマズし。効き目のあるものほど毒々しい色をしているものですわ」

 

「キアラ、大丈夫です。ちょこ先生の腕は確かですから」

 

 言ってからるしあは「お願い」とちょこに頼みます。

 

「はいはい。じゃあるしあ様、スバル様が暴れ出さないように押さえといてもらえますか?」

 

「こうですか?」

 

 るしあはスバルの両翼をベッドに押さえつけます。

 

「それからもう一人協力していただけると助かるのですが」

 

「わたしが!」

 

 挙手するキアラに、ちょこは「スバル様の足を持っていてください」と指示します。

 

「わかりマシタ!」

 

 キアラはスバルの両足を掴んで固定します。

 

「二人とも、決して放さないでくださいね」

 

 そう言ってから、ちょこは漏斗を取り出してスバルの口のなかへ突っ込みます。

 そしてそこへ例の液体を流し込みました。

 すると、さっきまでぐったりしていたスバルがいきなり目を見開いて暴れ出しますが、るしあとキアラががっちり押さえているので身動きできません。

 ならばと漏斗を吹き飛ばそうとするものの、それもちょこがしっかり押し込んで固定しています。

 スバルはぽろぽろと泣き始めました。

 

「ジュ、ジュバ、ジュバア……」

(じ、じぬ、じぬぅ……)

 

 口に液体を流し込まれながらであったため、るしあでも聞き取りにくいシュバル語を発し、それを最後にして、彼女は息絶えたようにカクンと首を垂らして動かなくなりました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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