勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「確かに、強いて言えば布団を敷いている場合ではないようだ余」

 

 屋敷に侵入してきたはあちゃまとハートンたちを認め、あやめが呟きます。

 

「……。は?」

 

 カリオペが怪訝な顔をしてあやめに振り返りました。

 

「あやめ、強いて言わなくても最早そんなことヲしている場合でハありません」

 

「いちいちツッコむでない! わかっている余それくらい! これは『強いて』と『敷いて』を掛けた知的な言葉遊び余! それに余だってな、もうちょっと高度な掛け合わせを狙いたかったのだけれど、今の一瞬で捻りだすにはこれが精一杯だったん余!」

 

「そうか。それならバよかった」

 

「よかったって何? え? どこに安心した余! カリオペ!」

 

「ああもう! いい加減にしろやマジでこんな時に!」

 

 顔を赤くさせて今にもカリオペに飛びかかろうとするあやめを、るしあがドスを利かせた声を出しながら押さえます。

 一方カリオペは、まるでそんなあやめとのやり取りなどなかったかのような真剣な顔ではあちゃまに向き直ってから、一歩前へ進み出しました。

 

「はあちゃまだったか」

 

 そして不敵に笑います。

 

「レジェンド所有者でハないからト言っていきなり逃げたかト思えば、また私ノ前ニ現れる。何ガしたいんだ貴様ハ。それとも実ハ一人デ私ニ戦いヲ挑むのガ余りニ怖く、先程ハつい逃げ出してしまったものの今度ハ頭数ヲそろえ群集心理デいきりだしたか。恥ずかしいくらいニ小物だな」

 

「バカなことを言わないで。レジェンドソーセージを持たないあなたなんて眼中にないわ。私がここに来たのはあなたと戦うためじゃない」

 

 はあちゃまはクリスタルサビロイを出してから、その剣先をあやめに向けます。

 

「あなたもレジェンドソーセージを抜きなさい、百鬼あやめ。そして私と勝負しましょ」

 

「ふん。何ヲ言うかト思えば、あやめガレジェンド所有者?」

 

 言いながらカリオペがはあちゃまとあやめの間に入ります。

 

「貴様ハまた何ヲ言いだすのだ」

 

「隠しても無駄よ。今度は最新情報だからね」

 

「この短い時間ニまた性懲りもなくガセネタを掴まされたか」

 

「そうでもないわ。なんと言っても今度ばかりは、元所有者の森カリオペ本人から出てきたものだからね。信憑性は確かよ」

 

「なに? どういうことだ?」

 

 カリオペが顔を顰めます。

 はあちゃまはそんな彼女を「おバカさん」と嘲笑しました。

 

「ついさっき、バカみたいな大声でしゃべってたじゃない。『あやめ嬢こそ私がレジェンドソーセージ・ゴーストベーコンを譲った現レジェンド所有者うんたらかんたら』って。あなた、口元を一生縫い付けておいた方がいいんじゃないの?」

 

 口調を真似してからかうはあちゃまに、カリオペは思わず顔を赤面させます。

 彼女は無言でフォークを取り出してベーコンを取り付けてから、はあちゃまに斬りかかりました。

 

「おっと」

 

 はあちゃまはそれを空中に跳んでかわしてから華麗に着地します。

 

「まあ、これだけ言っても白を切り通すつもりならそうすればいいわ。だけどね、こっちも当然『はいそうですかさようなら』って大人しく引き下がったりなんかしないわよ? 小鬼のお姫様が戦う気を起こしてくれるように、片っ端からこの村の連中を狩っていくことにするわ」

 

「おい」

 

 カリオペがはあちゃまを睨みつけます。

 

「それヲ私ガ許すト思っているのか?」

 

「知らないわよそんなこと、あなたが許そうが許すまいがどうでもいいと思っているもの。何度も言わせないでちょうだい、レジェンドソーセージを手放したあなたなんかアウト・オブ・眼中なのよ」

 

「上等だイカレ女。私ガ貴様ヲ無間地獄まで送り届けてやろう」

 

 カリオペは長く息を吐いてから口元を結び、はあちゃまめがけて駆けだします。

 そうして一瞬の間に距離を詰め、彼女の頭上にベーコンを振り下ろそうとしました。

 

「もういい余、カリオペ」

 

 しかし、そんなカリオペをあやめが制止します。

 

「あやめ……?」

 

 戸惑いの声をもらしながらも、カリオペは寸前のところで剣を止めます。

 はあちゃまも振り上げようとしていたクリスタルサビロイを静かに下げました。

 

「おまえ、はあちゃまと言ったか?」

 

 あやめがはあちゃまに問いかけます。

 はあちゃまは「ええ」と頷きました。

 

「おまえの言うとおり、余がゴーストベーコンの所有者余。戦ってやるから下らないことを言うのはやめるの余」

 

「あやめ!」

 

「すまん余カリオペ。でも、腐ってもレジェンドソーセージを所有するほどの剣士が、平然と弱者にソーセージを向けると言いだす非常識、余はもはや黙って聞いていられん余」

 

 あやめはレッグバッグから虹色フォークを引き抜き、それをブン! と振るいます。

 するとそのフォークの先に、異様なソーセージが現れました。

 

 そのソーセージは一切色を持っていませんでした。

 水飴のような透明色で、室内の灯りによってキラキラ輝く輪郭から察するに、その形状はベーコンのようです。

 一見では本当に出現しているかどうかもわからないようなその透明色ソーセージを、あやめははあちゃまに構えてから口を開きます。

 

「これがカリオペから譲り受けた余のレジェンドソーセージ、『不死の魂』ゴーストベーコン余」

 

「これは、また」

 

 あまりに珍しい透明色のソーセージに、さすがのはあちゃまもしばらく不思議そうに見つめます。

 そんな彼女に、あやめは「珍しいのはソーセージの姿だけではない余」と続けました。

 

「多くのレジェンドソーセージのスキルがバフ効果であるのに対し、余のゴーストベーコンのスキル『不死の魂』はおまえクリスタルサビロイのスキル『生命』と同様、戦闘終了後に発動するタイプの盤外スキル。『不死の魂』は戦闘で勝利することを条件に発動し、己の治癒力を数秒間だけ爆発的に高めて大幅の体力回復ができる回復スキル余」

 

「回復スキル!」

 

 はあちゃまが食いつきます。

 

「そうよ! バーニング・サラミの『再来』かゴーストベーコンの『不死の魂』! そのどちらかは一刻も早く手に入れておきたかったの!」

 

「ふん。もう勝ったつもりとは。捕らぬ狸の皮算用、呆れすぎて笑ってしまう余」

 

 言いながらあやめは苦笑しました。

 

「しかしなればこそ、余がおまえと戦う代わりに提示する条件をたった一つだけ、快く飲んでもらえるか余?」

 

「なにかしら?」

 

「実はこの村の剣士はたった二人、余とそこのカリオペだけなの余。他の村人たちは余の剣士チームにこそ所属しているものの、ソーセージを扱うことすら難しい種族や血統の縛りを持つものばかり。ゆえにさきにおまえが言っていたような脅しがもしも現実となってしまっては目も当てられない虐殺地獄ができあがってしまうの余」

 

「だから何? さっさと言いなさいよ」

 

「余がおまえと戦う代わりに、他の者には決して手を出さないとそのソーセージに誓え」

 

「なんだ、そんなこと」

 

 はあちゃまは鼻で笑って答えます。

 

「誓うわ、ええ誓いますともこのクリスタルサビロイに。私だってレジェンド所有者でもなんでもないザコを相手にするのなんか倒臭くていやだもの。こんなことが条件だなんて喜ばしい限りよ」

 

 そう答えてから、しかし「でもね」と彼女は続けます。

 

「あくまで邪魔してこなければの話よ。もしも私がレジェンド所有者のスキルを奪うことを妨害してきたら容赦なく斬り殺すし、あなたや大空スバルをサポートするような輩にも安全の保証なんてしないわ。そこのネクロマンサーのお嬢ちゃんとかね」

 

「ふむ。致し方なしであろう余」

 

 そう頷いてから、あやめは「メル。ちょこ先生」と二人に呼びかけます。

 

「なに?」

 

「なんでしょう?」

 

 そしてそばに寄ってきた彼女たちに小声で話しかけます。

 

「メル、ちょこ先生、聞いてほしい余。ああ言ってあっさり約束するもあの女、これまでの言動やソーセージへの誓いを軽々しく行う姿勢からして、正直いつ気まぐれを起こして約束を反故にするかわからない余。だから余は二人にお願いしたい。今すぐこの屋敷を出て、村のみんなを連れて少しでも遠くへ避難してくれ。安全が確かになってから余とカリオペが探しに行くから余」

 

 あやめの頼みにメルが「わかった」と首肯します。

 

「お断りしますわ」

 

 しかしちょこはきっぱりと拒否しました。

 

「ど、どうして余?」

 

 困惑しながらあやめが尋ねます。

 

「どうしても何も、今わたくしの胸元で気絶しているスバル様はわたくしが担当した患者ですわ。彼女の完治を確認するまでが医師としてのわたくしの責任であればこそ、スバル様をサポートせざるを得ないわたくしは彼女を置いてここを離れるわけにはいきませんわ」

 

「そんな、こんな時に強情を張られては困る余」

 

 弱ったように言うあやめに、「強情にもなりますわ」とちょこが返します。

 

「スバル様はるしあ様が必死になるほど慕うお方。それほどのお方であるならば、たとえこの命をかけてでも中途半端なことはできませんわ」

 

「ちょこ先生……」

 

 るしあが感激したように呟きます。

 あやめはため息をついてから「わかった余」と頷きました。

 

「カリオペ、申し訳ないのだけれど」

 

「わかっていますあやめ」

 

 カリオペが答えます。

 

「彼女たちノことハ私トくそどりニ任せてください」

 

「キアラさんもごめん余」

 

「いえいえ、とんでもないデス! どちらかと言えば、わたしたちがあやめさんたちを巻き込んでしまっているようなものデスから!」

 

 あやめはメルへ向き直りました。

 

「ということになったメル。すまないがさっきのこと、頼む余」

 

「うん」

 

 メルは頷いてから走りだします。

 一方はあちゃまとハートンたちは手出ししないという約束通り、部屋を出ていく彼女を一瞥もせずに見逃します。

 

「さあ、これでいいかしら」

 

「待たせた余」

 

 声をかけあうや否や、ゴーストベーコンを持ったあやめがはあちゃまに飛びかかりました。

 ベーコンと同形であるゴーストベーコンのリーチは近距離です。

 剣の持ち手を握り込みながら、あやめははあちゃまの懐めがけて肉薄します。

 対するはあちゃまはクリスタルサビロイを横なぎに振るって牽制します。

 しかしあやめは屈んで避けながらもその足を止めません。

 さらに、しなりを使ったクリスタルサビロイの追撃さえも、あやめはひょいと跳んで難なくかわします。

 やはり足は止めません。

 そしてあっという間に、あやめは自分の攻撃範囲内にたどり着きます。

 

「ちっ」

 

 踏み込み剣を振るうあやめに、はあちゃまは舌打ちしてから後ろへ大きく跳躍しました。

 そうやってあやめの斬撃を避けてから、改めてクリスタルサビロイを構えようとします。

 しかし、

 

「……ッ!」

 

 明らかに避けたと思われたはあちゃまの腹部に横一文字の線が走り、そこからじんわりと血が滲み広がり始め、彼女の腹部周辺衣装が赤く染まりだしました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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