勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 はあちゃまがあやめの利き腕を斬り落としてからしばらくして、あやめの持つゴーストベーコンのフォークが黒ずみます。

 それと同時に、クリスタルサビロイが新たに獲得したスキル『不死の魂』が発動します。

 はあちゃまの腹部に受けた傷がみるみる回復していきました。

 

「これが『不死の魂』! 素晴らしいわ!」

 

 はあちゃまは声を上げて喜びます。

 

「余の、腕が……」

 

 一方、意識を取り戻したあやめがボソリと呟きます。

 

「あら、気が付いたのね」

 

 じっと自分の斬り落とされた腕を見つめる彼女に、はあちゃまが話しかけました。

 

「言っておくけど私は確かに忠告したわよ、取り返しが付かなくなる前に負けを認めなさいって。それでもあなたが意地を張るからこんなことになった。逆恨みはしないでちょうだいね」

 

「……」

 

「なによ、面白くない」

 

 なにも言い返してこないあやめに、はあちゃまはつまらなそうにため息をつきます。

 

「でも、いくら『不死の魂』でも全回復とまではいかないのね。あなたに散々斬られた箇所がまだ痛むわ」

 

「……」

 

「ところでこのスキル、相手がもし剣士でなくても勝利さえすれば発動してくれるのかしらね。逃げ遅れた村人でもいたら検証させてもらおうかしら」

 

 そう口にした直後、ただただじっと項垂れていたあやめの耳がぴくりと動きます。

 その反応を見たはあちゃまは「ふん」と満足そうに鼻を鳴らし、踵を返しました。

 

「行くわよハートン。もうここに用はないわ」

 

 そしてハートンたちを連れて屋敷から出て行こうとします。

 

「待つ余!」

 

 そんな彼女を後ろから呼び止める声がしました。

 

 はあちゃまは足を止めて振り返ります。

 声の主はあやめでした。

 あやめは斬られた腕の切断面をもう片方の手で押さえながら、どうにか立ち上がるところでした。

 

「何かしら?」

 

 はあちゃまが尋ねます。

 あやめは腕の痛みをこらえながら、小さな口を開きます。

 

「昨日の味方が今日の敵など日常茶飯事、不意打ち裏切りあたりまえ。それが一昔前の大陸のあり様であった余」

 

「?」

 

「しかし今の世の中は平穏。かつての混乱期はとうに過ぎて、人間様が平和に暮らせる時代になった余」

 

「唐突に何を語りだすの?」

 

 問いかけるはあちゃまを無視して、あやめはなおも喋ります。

 

「人間様はいい余。今の世の中、たとえ弱くとも当然のように皆から守られて生活できるのだから。我ら鬼は人間でないというだけでその庇護にあずかることができないというのに。他方で獣人も恵まれた種族余。優れた身体能力ゆえに人間様以上のソーセージ適性を持っているのだから。彼らにはそもそも庇護など必要ないのだろう余」

 

「……」

 

「ならば鬼はどうやって生きていけばいい? 人間様からは忌み嫌われ、ソーセージからは見放された鬼の居場所はどこにある余?」

 

「知らないわよそんなの」

 

「どこにもなかったのだそんなものは。人間様は同族の弱者には優しくても本当の弱者には厳しかった。だから余が、鬼でありながらソーセージに愛された余が造らなければならぬと思ったの余、彼らが平和に暮らせる楽園を! 余は誓ったのだ! 鬼であろうとなかろうと関係ない、力なきにもかかわらず旧時代の因縁から人々に嫌われ居場所がない弱き者たちをすべて受け入れて守ってやると! そのために造ったチームが百鬼組、そのために造った楽園がこのオバケ村余! 世の中の人間様に我らを受け入れろなんて無茶は言わない、しかしだからこそこの地では好き勝手させん! この安息の地をこれ以上踏み躙るというならば、余は鬼神となって貴様ら人間を屠り殺す!」

 

「屠り殺す?」

 

 バカにするようにオウム返しに言って、はあちゃまは「ふん」と鼻で笑います。

 

「頼みのゴーストベーコンを失って、どこからそんな自信が湧いてくるのか不思議だわ。できるものならしてみたらどうかしら? あなたにちゅぱちゅぱしゃぶりつかれる前に、残りの手足も全部斬り落としてダルマみたいにしてあげるから」

 

「やってみろ余!」

 

 怒鳴ってから、あやめはその目を三白眼に見開きました。

 

「……ッ」

 

 すると彼女と向き合っていたはあちゃまが、まるで立ったまま金縛りにあったかのようにぴくりとも動けなくなります。

 

「剣士として強き力を持ちながら弱者を慈しむ心を捨てた愚かな人の子余、余はおまえのような者を一番許しておけぬ!」

 

 あやめははあちゃまに走り出し、左手で黒柄の刀・妖刀羅刹を引き抜きます。

 そして彼女の身体を袈裟斬りにしました。

 はあちゃまの左肩から右腰にかけて鋭い赤い線が引かれ、血が噴き出します。

 

「きゅ、旧刀なんかで、私の身体に傷を……ッ」

 

「ただの旧刀ではない! 大太刀・妖刀刹那! 旧時代には太刀・鬼神刀阿修羅と並び人々から恐れられた名刀の一振り余!」

 

 そう声を張り上げてから、あやめは返し刀でもう一太刀はあちゃまにあびせようとします。

 しかし、

 

「要は時代遅れの玩具ってことでしょ?」

 

 身体を斬られて金縛りが解けたのでしょうはあちゃまが、その一刀をクリスタルサビロイで受け止めました。

 

「くッ!」

 

 ソーセージで受け止められても折れないのはさすが名刀でありますが、体力が落ちているに加え利き手とは別の手で刀を握っていたあやめは、そのぶつかった衝撃に思わず妖刀羅刹を手放してしまいます。

 

 妖刀は弧を描きながら飛んでいき、正面入り口前の畳にぐさりと突き刺さりました。

 

「往生際が悪い」

 

 はあちゃまがクリスタルサビロイを振りかざしながら口にします。

 

「ソーセージを失ったら旧刀で斬りかかる、そんな野蛮な種族だからソーセージから見放されたんでしょうよ」

 

 それから二度三度と、容赦なくあやめにソーセージを振り下ろしました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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