勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 はあちゃまが何度も剣を打ち込んで、ようやくあやめは動かなくなりました。

 

「さあ、終わったわ。行くわよハートン」

 

 ソーセージを消して呼びかけるはあちゃまに、ハートンたちが頷きます。

 しかし、

 

「……」

 

 そんなはあちゃまの足首を、あやめの左手が掴んできます。

 

「いくらなんでもしつこ過ぎて気持ち悪いわ。鬼というよりゾンビじゃないの、あなた」

 

 はあちゃまは足を振るって解こうとしますが、あやめは手を放しません。

 

「村人を試しに斬るって言ったのは嘘よ。あなたが悔しがるのを見てみたかっただけ。だからもう放しなさい」

 

 うんざりしながらそう口にしても、彼女は上目ではあちゃまを睨んだまま放そうとしません。

 

「そう。わかったわ。どうやらこっちの腕も斬り落としてほしいようね」

 

 はあちゃまはフォークを振るって再びクリスタルサビロイを出します。

 そして無言であやめの腕にそれを振り下ろそうとします。

 

「待って!」

 

 その時、奥から女性の声が聞こえました。

 はあちゃまは寸前のところで剣を止めます。

 それから声がした正面出入り口の方を振り向きました。

 

 すると、そこから何十という鬼や吸血鬼、魔女たちが一斉に部屋の中へ入ってきて、はあちゃまとハートンたちを取り囲みます。

 

「これ以上あやめを傷つけるのは、メルたちが許さない!」

 

 最後に部屋に踏み込んだメルがはあちゃまに向かって声を張り上げます。

 

「メ、メル……? それに皆まで」

 

 あやめは唐突の展開に一瞬呆けたように周囲を見回しました。

 しかしすぐに唇を噛み締めて「バカ者!」と怒鳴ります。

 

「何をしている余メル! 余はおまえに皆を連れて逃げるようにと言ったんだ! おまえ余の指示を無視して何てことしてくれる余!」

 

「ごめんねあやめ、メルも最初はちゃんと言われた通りにしようと思ってたよ」

 

 メルは「でも」と言って、立ち上がる力も残ってないあやめを見ます。

 それからその目を斬り落とされた彼女の右腕の方へ、最後に面倒くさそうな顔で腕組みしているはあちゃまへ向けて、睨みつけます。

 

「メルたちは百鬼組のチームメンバーなのに、弱いからいつもあやめやカリに守られてばかりでさ。こういう時くらいにしか役に立てないから!」

 

 叫んでから、メルは自分の足元の畳に突き刺さっている大太刀・妖刀羅刹を引き抜き、その剣先をはあちゃまに向けて構えます。

 

「よくもあやめの腕を斬り落としてくれたな人間! その罪、貴様の両腕を捧げたとて許されるものではない! 万死でもって償ってもらう!」

 

 メルが声を張り上げると、それに呼応するようにはあちゃま達を取り囲む人々が各々武器を持ち始めます。

 旧刀や魔杖であれば良い方で、酷いものでは棒や鍬などを構えています。

 

「やめる余メル! みんな!」

 

 あまりに貧弱な武器の面々に、あやめは必死に叫びます。

 

「余のことはいい! これも全て強き者として生を受けた者の宿命、ゆえに余はとうの昔にあらゆることを覚悟して」

 

「よくないよ!」

 

 メルが大声であやめの言葉を遮りました。

 

「いつもいつもそう言って守ってもらっているからこそ、メルたちもいざという時には命を懸けてあやめを守ると誓ったんだ! ねえ! そうでしょみんな!」

 

 呼びかけるメルに百鬼組の皆が「おお!」と応えます。

 

「みんな! 今こそ百鬼組の意地をみせてやりましょう!」

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「なんだかあちらさん随分盛り上がってるようだけど、正直私としては付き合ってられないわ」

 

 百鬼組に気を取られているあやめの隙をついて、はあちゃまは彼女の手を振り払い、後ろへ跳ねてハートンたちと背中合わせになります。

 

「ハートン。相手は下級剣ソーセージすら持たないアリの群れよ。殺すなりなんなり適当に片づけて、さっさと終わらせてちょうだい」

 

 彼女の命令に、しかしハートンたちは動きません。

 

「ハートン?」

 

「ブブー」

 

 それどころか、彼らは次々にソーセージを消してフォークを仕舞ってしまいます。

 

「ああ、そう。剣士でない者を相手にソーセージを振るえないって? あの鬼たちよりも笑わせてくれるじゃない、あなたたち」

 

 はあちゃまは含み笑いをしてから「後で覚えていなさいよ」と横目でハートンたちを睨みつけます。

 それからメルの方へ向き直りました。

 

 一方メルたち百鬼組は、はあちゃまがあやめから離れた隙にあやめと彼女の斬られた右腕を回収し、包囲していた鬼の一人に担がせて戦場から避難させます。

 はあちゃまはそれを興味なさそうに見送りながら「別に相手してあげても構わないけど」とメルに話しかけます。

 

「私は相手が剣士であろうとなかろうと一切容赦しないわ。さっきあなたが大口叩いた『命をかけて』という言葉を本気で実行できる死にたがりのバカ共だけ、さっさとかかってきなさい」

 

「言われなくても!」

 

 声を張り上げたメルが先陣を切り駆け出します。

 

「殺したければ殺すがいい! たとえ無力であろうとも、一矢でも二矢でも報いてから死んでいってやる!」

 

「「おおおおおお!」」

 

 メルに続き、はあちゃまを包囲している百鬼組全員が一斉に彼女へ飛びかかりました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 ――おおおおおお!

 

「……これは、まさか」

 

 一方、ルシアたちはちょうど村を出て林の中へ入ろうとしているところでした。

 あやめの屋敷の方から聞こえてくる村人たちのかけ声に、るしあが目を閉じ耳を塞ぎ、カリオペはピタリと足を止めます。

 

「カリ、どうしたの?」

 

 立ち止まるカリオペに気づいたキアラが振り返り尋ねます。

 

「すまんくそどり、私ハここまでだ」

 

「え?」

 

「悪いガ、ここデ引き返らせてもらう」

 

 はっきり答えるカリオペに、キアラは少し間を開けてから「そうだね」と返します。

 

「ここまでついてきてくれてありがとうカリ。わたしたちのことは心配せず、あなたの主の元へ早く戻ってあげて」

 

「ああ」

 

 カリオペは頷いてから踵を返し、また来た道へ帰ろうとします。

 

「カリオペさん!」

 

 そんな彼女を今まで黙っていたるしあが呼び止めました。

 

「あやめと村のみんなのこと、お願いします」

 

「承知しました」

 

「カリ! あなたも気を付けて!」

 

「私ハ不死ノ剣士だぞくそどり、何モ心配することなどない」

 

「でも」

 

「また会おう。その時こそ酒ヲ飲み交わし、思い出ヲ語り合おう」

 

 キアラにそう言って笑みを返してから、カリオペは駆けて行きます。

 

「わたくしたちも急ぎましょう」

 

 ちょこが呼びかけます。

 るしあとキアラはそれに頷きました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 るしあたちは林を抜けて区切りのフェンスのところまでやってきます。

 るしあが急いで魔法のカギを取ってきてフェンスのドアを開けました。

 フェンスの向こう側に出ると、すぐにフェニックスが駆け寄ってきました。

 

「るしあ様」

 

 ちょこ先生がるしあにスバルを渡します。

 

「スバル様はもうだいぶ良くなりました。多少揺れても問題ないので、その鳥に乗って急いでここから離れてください」

 

「ありがとうちょこ先生」

 

 るしあが礼を言います。

 ちょこ先生は彼女の頭を優しく撫でました。

 

「本当に立派になられましたね。でもたまにはお手紙も返してください」

 

「わかったわ」

 

「るしあさん!」

 

 すでにフェニックスに乗っているキアラがるしあに呼びかけます。

 

「じゃあ行ってくるわ。元気でね」

 

「るしあ様も」

 

 るしあはフェニックスに向かって駆けだします。

 そして差し出されたキアラの手を取ってフェニックスに乗りました。

 

「走れ! フェニックス!」

 

 キアラの声に応えて、フェニックスが走りだしました。

 

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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