勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
「着きマシタ」
スバルたちがやってきたのはコミーノの町です。
コミーノはちょうどるしあの屋敷とアヒールの延長上に位置しており、村規模のアヒールとは比べようもないほどの人口を抱えた大都会です。
「シュバ、シュババ」
(よし、行くか)
コミーノに着いたスバルたちは、さっそく情報収集に取り掛かりました。
まずはお決まりの酒場へおもむき店主への聞き取りを開始します。
しかし期待に反してめぼしい情報は手に入らず、「ならば武器屋へ行って聞いてみよう」と足を運んでみるものの、案の定の空振りです。
さてこれからどうしようかと、彼女たちは再び酒場に戻って作戦会議をはじめました。
「よその町に行きましょうか?」
注文したビールをぐびりと飲んでキアラが提案します。
「シュバ」
(いや)
しかしスバルは首を振りました。
「シュババシュバル、シュバルバシュシュバシュバルルバ」
(実はスバル、ずっと思っていたことがあるんだ)
「なんでしょう?」
るしあが尋ねます。
「シュバルバシュバルルシュババ?」
(役所で聞いてみないか?)
「役所ですか?」
首を傾げる彼女に「シュバ」(ああ)とスバルは頷きます。
「シュバルバシュバルルシュシュバシュバシュバルルシュバ、シュバルバシュバルバシュバルルシュバシュバルバシュバルルシュバシュバ。シュバルバシュバルルシュバルルババ。シュババシュバルルシュババ、シュバルバシュバルバシュバルルバシュバシュバルバ」
(役所は剣士協会と連携していてな、剣士の階級やチームのランキングを把握してるんだ。スバルがライトニングウィンナーを手に入れた時も、役所にそれを知らせに行ったんだよ)
「なるほどです」
「なんて?」
シュバル語のわからないキアラがるしあに聞きます。
「役所に行こうとおっしゃっています。剣士のいろいろな情報を把握している役所ならレジェンド所有者についても知っているのではないかと」
「さすがスバルせんぱいデス!」
スバルたちは役所へ向かうことにしました。
役所に着いたスバルたちは玄関口から中にはいり、廊下をずんずん進んで『剣士相談窓口』というプレートが天井からぶら下げられたブースまでやってきます。
そこで順番待ちの番号札を受け取り、二十分ほど待ちました。
「潤羽るしあ様と御一行様」
「はい」
名前を呼ばれたるしあが立ち上がり、用意されている椅子に腰を下ろします。
その向かいには役所の女性職員がすでに座っており「どのようなご相談内容でしょうか?」と尋ねてきました。
「実は訳あってるしあたちはレジェンド所有者を捜しています。役所が把握しているレジェンド所有者についての情報を教えていただけませんでしょうか?」
るしあは率直に聞きます。
「申し訳ございません」
しかし女性職員は淡々と返答しました。
「剣士の所持するフォーク、階級等は個人情報にあたりますので開示することができません」
「じゃ、じゃあ今現在の上位ランキングチームとそのリーダーだけでも教えてくれませんか?」
「それらについても情報開示ができないことになっております」
彼女の受け答えがまるでマニュアル然としていたことも災いしたのでしょう、るしあはイラっとした顔で「はあ?」と声にドスを利かせます。
それからバン! とテーブルに台パンしました。
「そ、そのですね」
るしあのすごみに怯んだのでしょう、女性職員の声が弱々しくなりました。
「四年前から、剣士の方々に関する個人情報の扱いが厳しくなりまして、本当に大変申し訳なく思っているのですが」
「四年前まではできてたのに今はできないって、それおかしいんじゃ、な、い、で、す、か!」
バン! バン! バン! バン! バン!
「ていうか、そういうのって何でもかんでも伏せればいいってもんじゃないでしょ!」
バアン!
「ひいぃ!」
「シュバルシュバシュバア、シュバルルシュババ。シュバシュシュバシュバ」
(やめてやれるしあ、怖がってるだろ。かわいそうシュバ)
「どなるしあ」
「でもスバル先輩、もう目の前に欲しい情報があるってわかってるのに! るしあすごくイライラします!」
「も、申し訳ありません!」
女性職員は恐縮するように何度も頭を下げました。
「正直言うと私個人としては、おっしゃる通りやりすぎだと思っているのですが、実は五年ほど前に上位ランカーチームのレジェンド所有リーダーが失踪するという事件がありまして、剣士界隈で大混乱が起きたんです。後々誘拐であるという線が濃厚になりまして、今後そのようなことが決して起こらぬようにと剣士協会から剣士の住所や階級、所属チーム、所持フォーク等の情報取り扱いについてうるさく言われているのです」
「あっ、そうだったんですかあ」
るしあのドス声が急に猫なで声に変わります。
「ごめんなさい、るしあ何も知らないのにクレーマーみたいに怒鳴りつけちゃって」
「いえいえそんな、こちらこそ申し訳ありません」
「そんなそんな、あはは。でも、勝手なこと言いだす輩とかいろいろいると思うんですけど、お仕事頑張ってくださいねお姉さん」
そう言ってからるしあは立ち上がり、彼女にぺこりと一礼してから歩きだします。
「シュバルバシュバルババシュバルルシュバシュババ、シュバルルシュバルバ」
(情報閲覧ができなくなった原因、スバルたちだったな)
るしあに追いついたスバルがぼそっと話しかけます。
「ごめんなさい」
「シュバルルシュババシュバルバシュバ。シュバシュシュバシュババ」
(落ち込んでても仕方ないシュバ。次いくシュバよ)
◇ ◇ ◇
役所を出た後も、スバルたちは行き交う人々を呼び止めるなどして情報収集に励みますが一向に成果が出ません。
そろそろ次の町へ移ろうかと、そう話し合っていた頃でした。
「ちょっとあなた方、もしやレジェンド所有者についての情報をお探しで?」
その声はスバルたちが大通りを歩いている時にかけられました。
「シュバ?」
(ん?)
三人は後ろを振り向き声の主を探しますが、なかなか見つかりません。
「こっちこっち、おーい、うちはこっちだよー」
声は後ろからではなく横から、大通りを外れた路地裏からでした。
ふと視線をやると、そこにはローブを羽織った女性が一人。
彼女は顔の輪郭を隠すほど目深にフードをかぶりながら椅子に座っており、手前に赤い布が敷かれたテーブルを出しています。
その卓上に手のひらサイズの水晶玉を置いているところから見るに、どうやら占い師のようです。
こいこいと手招きする女性に、スバルたち三人は顔を見合わせます。
そうして数秒間互いに見つめ合い考えてから、結局彼女のもとへ行くことにしました。
「あなた、どうしてるしあたちがレジェンド所有者についての情報を探していると知っているのですか?」
るしあがずいっと前に出て占い師の女性に尋ねます。
「それは、これのおかげかな」
女性はローブのポケットから何かを取り出し卓上に置きました。
それは裏側にマッチョなハトの魔人の絵柄が載ったカードの束です。
「カード? はん!」
るしあは鼻で笑いました。
「魔法使いにも占い師はいますが、そのほとんどがでまかせばかり言う詐欺師です。あなたもそのうちの一人なのでしょう」
「まあまあ、じゃあ物は試しってことでいっちょ占ってみようか」
言って彼女はシュッシュッシュッと華麗な手捌きでカードをシャッフルします。
「占う内容は、まあそうだねー、具体的な方が信じてもらえると思うから、あなた方のこれまでのいきさつってのはどうだろ?」
「面白い。やってみるがいいです」
「シュババシュバルシュババシュバルバシュバルルシュバルバ」
(なんでおまえさっきから上から目線なんだよ)
「はいはーい、ちょっと待ってねー」
占い師はるしあの態度に気を悪くする様子なくシャッフルし続けます。
そうしてしばらく切ってから仕上げとばかりに、同数程度を振り分けたカードの束を交互に重ね合わせるようにしてシャッフルし直します。
「シュバ、シュバルルシュバルシュババシュバルルバシュバルルシュバ」
(おい、ショットガンシャッフルはカードを傷めるシュバよ)
「そのきり方はカードによくないんじゃないですか?」
スバルの代わりにるしあが聞きます。
しかし占い師は「あはは」と笑い返しました。
「ありがとー。でもうちのカードたちにこんなことで痛むようなヘタレはいないから大丈夫だよ。むしろこうやって最後に喝入れてあげないと怠けだす甘えん坊たちだからさ、ほんと困ったもんだよ」
言いながらトントンと、一つにまとめたカードを整えます。
それから彼女はカードを裏向きの状態で卓上に並べていきました。
「さて、それじゃあ一枚目から見ていこうか」
占い師は、彼女から見て右端の一枚をめくります。
「おお」
そこにはメロンソーダを飲むハトの魔人が描かれていました。
「ふむ、これはハトタウロスがメロンソーダを飲んでいるメロンソーダ・ハトタウロスのカードだね。アルコールを飲めないながらも皆で楽しく飲み食いしていた、と」
それから彼女は隣の一枚もめくりました。
そのカードには魔女の衣装を着たハトタウロスが映っています。
「ふむふむ、これは魔女・ハトタウロスのカードだ。そこに魔女が現れてと」
いちいち口に出しながら、一枚また一枚と彼女はカードをめくっていきました。
「ほうほう、アヒル・ハトタウロスのカードだ。ということは魔女にアヒルにされて、おお、これは監禁・ハトタウロスカード。しかも五枚連続で監禁・ハトタウロスカードが出るとは、五年間も監禁されていたということか。そしてこれはビクトリー・ハトタウロスカード、つまり五年を耐えしのぎようやく外に出たと。むむ、これはソーセージ・ハトタウロスカード。しかもそのソーセージの本数が十二本ということは、アヒルから人間に戻るためにレジェンドソーセージ十二本か、それに関するものを集めている。そしてこの時点で並べたカードがすべて表になったということは、その後目覚ましい進展はまだない、と」
そこまで言い終えてから、彼女は卓上に並べたカードをすべて束に戻してシャッフルしなおします。
「シュバルバシュバルルシュババシュバルシュバルルシュバ」
(あまりに具体的すぎて逆に胡散臭え)
スバルがぼそっと呟きます。
「監禁? 五年? ……魔女? え、ということは、つまり……?」
一方キアラは、占い師の言葉を聞いて何かを考えるように口元に手を当て呟きだします。
そんなキアラを見たるしあの顔が、サアッと青ざめました。
「な、なにを適当なこと言ってやがるのですか!」
るしあはバン! と占い師のテーブルに台パンします。
「えーひどいなー。じゃあさ、今度はその魔女が具体的に誰のことなのか占ってあげるよ。それでうちのこと信じてくれないかな?」
言ってから、占い師はまたシュッシュッシュッとカードをシャッフルし始めます。
「わかりましたええわかりましたともるしあが百歩譲ってあなたは正真正銘本物の占い師であるということを認めてあげましょう! それで結局何がしたいんですかあなたは!」
「ふふふふふ、よくぞ聞いてくれたよ」
占い師はカードをローブのポケットに仕舞ってから、今度は水晶玉のうえで両手を動かしはじめます。
「うちがしたいこと、それはあなた方がこれから行くべきところへ導くことさ」
言いながら彼女は水晶玉をじっと見つめ始めます。
水晶玉には一見何の変化もおきません。
しかし彼女には何かが見えているようで、いきなり「おお!」と声を上げました。
「西の孤島」
それからぼそりと、彼女は呟くような小声で口にします。
「シュバ?」
(え?)
「西の孤島さ、西の孤島に向かうといいよ」
彼女はスバルたちが聞き取れる声で言いなおしました。
「あなた方の欲するものの一つは、そこにある」
スバルたちは顔を見合わせました。
「西の孤島という場所に、レジェンド所有者がいるということですか?」
るしあが三人を代表して尋ねます。
しかし占い師は「うちが言えるのはここまでさ」と返します。
「あとは自分たちの目で確かめてみるといいよ」
それだけ口にしてから、彼女は店仕舞いだと言いたげに椅子や机を片付けだします。
スバルたちは仕方なく路地裏を出て大通りに入りました。
「どうしマスか?」
キアラがスバルとるしあに尋ねます。
「確かに胡散臭いといえば胡散臭い占い師デシタが、わたしたちは他に行く当ても手掛かりもありマセンし」
「シュバルバ」
(そうだな)
「だからわたしは西の孤島とやら、行ってみても良いと思うのデス。ああもちろんスバルせんぱいのお考えが違っていれば、これは無視してもろて」
そう意見するキアラに「シュバ」(いや)とスバルは首を振ります。
「シュバルバシュバアバシュバルルシュバ。シュバルバシュバルルバシュバルルシュババシュバルル、シュババシュバルルシュババシュバルシュバルバシュバル」
(スバルもキアラに同感シュバ。ようやくつかんだ手掛かりらしい手掛かり、ここは西の孤島に向かう一択だと思う)
「なんて?」
キアラがるしあに尋ねます。
「スバル先輩もキアラと同じ考えで、西の孤島に向かうべきだとおっしゃっています」
スバルの言葉を通訳してからるしあも「そうですね」と頷きます。
「るしあも二人と同じです。ではまず、その孤島へ行くための船を探しましょう」
三人は西の孤島へ向かうための船探しをはじめることにしました。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。