勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「おー、おー、おー、おー。久しぶりだなア、おまえら」

 

「あなたは!」

 

 るしあが思わず立ち上がります。

 それを見た女性は口角を上げて笑みを作りました。

 

「なんだもう忘れちまったのか? 桐生会会長、桐生ココだ」

 

「覚えています! そうじゃなくて、どうしてここにいるのかと聞いているのです!」

 

「どうしてここに、だと? ふん。それはなア――」

 

「それはラミィが呼んだからだよ」

 

 ココが答えようとするのを別の声が遮ります。

 声がした方へ視線を向けると、いつの間に部屋へ入ってきたのかラミィが腕を組みながら壁にもたれかかっていました。

 

「以前クソザコの書の署名者を見せていただいた時、そこの女の名前が見当たりませんでしたからね。ご存じのとおりラミィと桐生会は水と油の犬猿の仲、しかしレジェンド所有者の署名を集めているスバルさんたちにはお世話になっているし、キアラさんには命を懸けて助けていただいた恩があります。この雪花ラミィ、己の因縁が絡むからと言ってすでに知っているレジェンド所有者を知らぬふりするほど恩知らずではありません。濁りに濁りきった苦汁を飲む思いでそこの女に雪民の使いを出してここへ呼んだのです」

 

「おー、おー、おー、おー。それはあんまりな言いぐさじゃあねえか雪花の。こちとら天敵の雪花会がお得意の土下座でどうかお願いしますと頭下げて頼み込んでくるから、わざわざ孤島からここまで来てやったってのによオ」

 

「くっ! おのれ桐生会! またしても雪民にそんな屈辱を!」

 

「いや自分から勝手にしだしたんだよあんたの組員が」

 

 唇を噛み締め睨みつけてくるラミィにココがため息をつきます。

 

「ちょ、ちょっと待ってください」

 

 るしあが口を入れました。

 

「ラミィあなた、この人がレジェンド所有者だと言いましたか?」

 

「ええ。そこにいる桐生ココはレジェンドソーセージ・『大地』ストーンスンデの所有者でするしあさん」

 

「るしあはそんなこと聞いていませんよ!」

 

「言わなかったからな」

 

 ココは平然と答えます。

 

「あの時はおまえたちがあまりにも怪しすぎて信じられなかったんだ。まあ許してくれ」

 

「でも! るしあと戦った時だって使ってこなかったじゃないですか! あの死闘で!」

 

「死闘……」

 

 ココは額を掻きながら苦笑します。

 

「あのなア魔女のお嬢ちゃん。ワタシら桐生会は極道だ、人一倍筋ってやつに拘るんだよ。堅気で、しかも剣士でもないお嬢ちゃんのような相手にレジェンドソーセージなんか振り回すわけねエだろうが大怪我させちまう。あんな爪楊枝を突き合うようなお遊びじゃなきゃ、ソーセージだって使う気はなかったんだ」

 

「ひ、ひどい」

 

 るしあが急に眼を潤ませます。

 

「るしあは本気だったのに! あなたにとってはお遊びに過ぎなかったなんて!」

 

「おいコラ! 誤解招くような言い方するんじゃねえ! 別の意味に聞こえちまうだろうが!」

 

 ココが怒鳴ると「ひい!」とるしあがびくつきます。

 ココは「ちっ」と舌打ちしてから頭を掻きました。

 

「ああもういい。とにかくほら、あのクソむかつく本を出しなお嬢ちゃん。サインしてやるからよ」

 

「してくれるんですか?」

 

「そのために来たんだ。正直な、抗争がいつ起きるかわからないこんな緊迫した時に雪花会から呼び出しの使者、怪しすぎて応じる気なんてさらさらなかったんだ。しかしその要件がお嬢ちゃんたちの署名ときた。いろいろと迷惑かけたのは事実だし、おまえたちと戦ってからかなたん、天音かなたもどこか吹っ切れたようで以前に増してよく笑うようになった。ワタシはこれを借りだと受け取った。借りは必ず返す、これは極道に属する者の流儀だ」

 

 言ってからココは持って来いと人差し指でるしあに合図します。

 るしあは急いでクソザコの書を取り出してここに手渡しました。

 受け取ったココはパラパラとめくっていきます。

 

「おー、本当に署名してやがる雪花会の。白銀ノエルに、赤井はあとまで。なんつう豪華な面々だよ。ここにワタシの名前を並べるっていうのは、なんだかこそばゆいな」

 

 喋りながらもココはペンを走らせます。

 それを「ん」と言ってるしあに返しました。

 るしあが中を確認します。百鬼あやめの次ページに「桐生ココ」の名前がありました。

 

「ありがとうございます桐生さん」

 

「ココで良い」

 

 返してからココは「んん」と両腕を上にして背筋を伸ばします。

 

「さて。やるべきことはこれで終えた。さっそく島に帰ってもいいんだが、今の桐生会はかなたんが仕切ってくれてるし、こうして雪花会のと直接会ってみて抗争が起きそうという予感もどうやらワタシの思い違いらしいことがわかった。つまり急いで帰る必要はねえってことだ」

 

「さっさと帰りなさいよ」

 

 ラミィが右手でシッシッと払う仕草をします。

 

「おまえから呼び出しといてあんまりな態度だなオイ。まあ別にいいけどよ」

 

 ココは別段気にしたふうでありません。

 

「ここに向かう道中、馬車の御者からエルフの館には珍品財宝がわんさかある噂だと聞いた。興味がないと言えば嘘になる」

 

「やらんぞ。言っておくが、この館内ではレジェンドソーセージは使用できない」

 

「見くびるな。ワタシは極道の女だ。そんなコソ泥のマネしねえよ。興味があるっていうのはそのままの意味だ。ちょいと館のなかを探索させてもらおうじゃねえか」

 

「おいおいおい、冗談じゃない。そんな恐ろしいことを言いだすのはホロファイブだけでたくさんだ。絶対にさせないからな」

 

 腰を上げようとするココの目前にフレアが立ち塞がります。

 

「あんたかい? ラミちゃんの言ってた桐生会ってやつは」

 

 すると、そんな二人の会話に割って入る人物が一人。

 

「あ。ぼたん」

 

 獅白ぼたんです。

 

「うっす。おかえり、るしあさん」

 

「ただいまです」

 

 るしあと挨拶をかわし、ぼたんはココに向き直ります。

 

「まだ答えてもらってないぞ。もう一度聞く。おまえが桐生会の親玉か?」

 

「そうだ。正しくは組長、桐生会組長の桐生ココだ」

 

 ココはソファに座り直して足を組み合わせ、ぼたんを上目に睨みます。

 

「誰だア? おまえは」

 

「ホロファイブのメンバー、獅白ぼたん。雪花会の助っ人さ」

 

「なに?」

 

 ココは顔を顰めてからじろじろとぼたんを見回します。

 

「おー、おー、おー、おー。いつの間にそんなん雇いやがった雪花会」

 

「雇ったとか雇われたとか、そういう関係じゃないわ」

 

 ココの問いかけにラミィが答えます。

 

「ししろんはラミィの仲間よ。ラミィがホロファイブの一員だから、ラミィが困ったときは助けてくれるって言ってくれたの」

 

「チームの掛け持ちか? 良いご身分だな」

 

「なんとでも言うがいいわ。ラミィは決して揺るがない」

 

「それ以上口にしてみな桐生ココ。わたしがその脳天にししろんバズーカ見舞ってやるよ」

 

「どっちだよ。別にどっちでもいいが意見を統一してからワタシに伝えろよおまえら」

 

 不快というよりは愉快そうにココが笑います。

 

「ふん。わたしについてきな桐生ココ、あんたに面白いものを見せてやるよ」

 

「ほう」

 

 顎でくいっと廊下側を示すぼたんに、ココがゆっくりと腰を上げようとします。

 

「け、喧嘩はいけませんよ!」

 

「そうだ! しかしどうしてもと言うなら外でやれ!」

 

 るしあとフレアが二人を止めます。

 

「喧嘩じゃないですよ」

 

 ぼたんが二人に答えました。

 

「こいつを館の蔵に連れて行ってやろうと思ったんです。ほら、珍品財宝に興味があるって言っていたでしょ? しかし案内するのは施錠された蔵の扉の前まで。そこから先はこの獅白ぼたんの子分になると約束してからでないとお見せできないという仕組みさ」

 

「子供ですかあなたは!」

 

 るしあが怒鳴ります。

 

「おーおーおーおー、ふざけんじゃねえぞ雪花会の助っ人さんよ」

 

 ココの声にドスが混じります。

 

「そんなこと言われると思わず子分になっちまいそうになるじゃねえか」

 

「なるかどうかは実際着いた後で考えればいい。さ、行くぞ」

 

「待て待て待て! やめろ! それならこの場で殴り合ってもらった方がまだいい!」

 

 フレアが二人の肩を掴んで止めにかかります。

 

「嫌ですよ。銃器使っていいならともかく、見るからに喧嘩強そうだからこの人」

 

「実際に強いぞワタシは。本気で倒すつもりなら、素手でソーセージを持つ剣士を倒せるようになってからにするんだな」

 

 ぼたんはフレアの手を払いながら「ほらね」と肩をすくめました。

 

「それにフレアさん。わたしはこいつをこの館にしばらく逗留させた方がいいと思うよ。そのために、こいつの興味を引き付けれるものは利用するべきだ」

 

「なに?」

 

「だってそうだろ? こいつはレジェンド所有者、つまりはあちゃまの標的になりうる剣士だ。館内であればレジェンドソーセージは無効化できるから確実に安全だけれど、外に出てはあちゃまに襲われでもしたら、こいつのレジェンドスキルが奪われないとも限らない。フレアさんがラミィに外へ出るなと警告するのと同じ理由で、この桐生ココもできる限り館のなかにとどまらせるべきじゃないかとわたしは思う。どうだろう?」

 

「こ、こいつ、もっともらしいことを……ッ」

 

 こぼすものの、ぼたんの言っていることは一理あると認めているようで、フレアはそれ以上何も言わず黙ってしまいます。

 そんなフレアを一瞥してから「ほら行くぞ」と、ぼたんはココを連れて歩きだしました。

 

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