勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「『天音かなたには勝てないくせに』」

 

 ボソリとアキロゼが呟きます。

 

「なんだ? どういう意味だそれ」

 

 スバルは眉を顰めました。

 

「言葉通りの意味だ」

 

 アキロゼは答えます。

 

「天音学校を退学してからしばらく後の頃だ、私は度々剣士に戦いを挑まれた。地元であるからもちろん大半は学校の卒業生、むしろ彼らは退学生である私ならば腕試しにちょうどいいという腹積もりだったのだろう。だが私にとっても都合がよかった。学生であった時分、いくら私が口でソーセージ不要の論を説いても皆は真剣に聞いてくれなかった。実際に戦ってみせることで私はその論を証明できると思っていたのだ」

 

「できたんだろ? それとも負けちまったのか?」

 

「勝負には勝った。しかし彼らは私を認めてはくれなかった。その時の彼らの言い分だ、『天音かなたには勝てないくせに』は。彼らは私を、卑怯なイカサマを用いて自分たちのようなひ弱な剣士ばかりを虐め、学校退学の鬱憤を晴らす性根の腐った女だと罵った。当初の私は彼らの言い分を真摯に受け取ったよ。卑怯と呼ばれないような戦い方を学んでいったさ。攻撃すべては拳で受ける、ソーセージでない武器であろうと決して用いない、疲弊している相手には呼吸を整える程度に時間を取ってやる等、私はできる限り配慮して戦うようにしたのだ。それでも彼らは認めない。結局は『天音かなたには勝てないくせに』と口々に言いはじめる。一人二人の言い分であれば無視しようとも思ったが、どいつもこいつも示し合わせたように天音かなた天音かなた、やつの名前が決まって現れて私の前に立ち塞がる!」

 

「それで、どうしたんだ」

 

「決まっているだろう! ならばその天音かなたを叩きのめしてやればいいのだろうと思い、私は彼女を探し求め方々を訪れた。その末にかの西の孤島にたどり着いた! そして彼女に出会い、訳を話して私が皆に認めてもらうため、私と戦ってほしいと頼み込んだ! そしたら!」

 

 ぎりり、とアキロゼは歯がゆそうに歯を軋み鳴らしました。

 

「嫌だと一蹴されたのだ! 当時の私はすでにメタルホットドッグを所有していたから、私に勝つことができればそのフォークをくれてやるとまで言ったのに! あの女は興味なさげな猫のように一瞥してから『くだらないよ』とか『キミは贅沢だ』とかケチをつけて、挙句の果てに『わかっているだろう、ボクたちには戦う理由なんてないよ』と煙に巻くようなことまで言いはじめる! 何もわからんわ!」

 

 当時の怒りがぶり返してきたのか、アキロゼの語気が荒くなります。

 

「あの戦闘狂いが! ああだこうだと理由らしきものを口にするが、どうせ私が剣士でないから相手にもしたくないと言うだけだろう忌々しい! しかしそのまま諦めてしまっては何もはじまらない、だから私はおまえを探していたのだ大空スバル! 天音かなたに唯一の黒星をつけたおまえを倒したならば、さすがのあの女も私の実力を認めざるを得ない、私と勝負せざるを得なくなる!」

 

「なるほど。ようやく点が線で結ばれたシュバ」

 

 スバルは合点が入ったように頷いてから「色々と空回ってるな」と苦笑しました。

 

「なんだと?」

 

「確かにおまえの言っていることは一理ある。天音かなたは妙なところで偏屈だからな、もしおまえがメタルホットドッグの使い手として現れていたとしたら、また違った結果になっていたとは思う」

 

「そうだろう!」

 

「だがな、あいつは嘘をついちゃいねえし、おまえを煙に巻こうなんてしてねえよ。言葉足らずではあったかもしれないが」

 

 スバルはちらりとアキロゼの腰元、そこに付けられたレッグバッグに目を向けました。

 

「おまえはレジェンド所有者のくせに、自分の所有するレジェンドソーセージがどういうものか全然わかってねえんだな。だから教育というのは大事だ。スバルはおまえが天音学校を退学したことについてはそれでよかったんじゃないかと話を聞く限り思ってるんだが、そこで学ぶはずだった剣士として最低限の知識くらいは独学でもいいから頭に入れておけよ」

 

「……うるさい」

 

 痛いところをつかれたような顔でアキロゼは返しました。

 

「まあいい。そんなことをしている暇があったら、というおまえの気持ちもわからないでもないからな」

 

 スバルは続けます。

 

「おまえの所有する『鉄の意思』メタルホットドッグは防御タイプのスキルを持つレジェンドソーセージだが、他のレジェンドソーセージと決定的に異なる点がある。レジェンドソーセージのなかで唯一、そのソーセージは自ら己の所有者を選定するんだ。スキル名の通り意思があるんだよ。そいつは自分と近い志の剣士を探し出して所有者と認め、その主にのみ仕える剣となる。おまえ自身が否定しようが、おまえはメタルホットドッグに選ばれた限りなく名誉な剣士なんだよアキロゼ」

 

 呆れるようにスバルは言います。

 

「おまえさっき天音かなたに、もし勝つことができればメタルホットドッグを譲るみたいなこと言ったとか喋ったが、スバルだってそんなもんいらねえよ。そのフォークが認めた所有者でなくちゃスキルどころかソーセージを出すことさえ出来ねえんだからな」

 

「……」

 

「それにな、天音かなたの気持ちも、というよりもスバルたち剣士の気持ちも察してくれアキロゼ。スバルたち剣士はソーセージ道を準じソーセージに忠誠を誓うソーセージのしもべだ。そのソーセージであるメタルホットドッグに選定されたおまえは、全剣士の遥か上に立つ高位存在によってすでにその信念が認められているんだよ。おまえにとっては皮肉な話なのかもしれないが、ぶっちゃけスバルたちにとってはただただ羨ましい。そんな剣士が突然現れたかと思えば、メタルホットドッグのメの字もわかってねえようなクソ剣士どもの戯言に踊らされて『自分の信念を証明するために戦ってくれ』なんて言ってくるんだから、天音かなたじゃなくてもうんざりするよ。くだらないし、贅沢な話だ。すでに認められていることを証明するためにわざわざ戦う必要もないんじゃないかって、天音かなたは言いたいんだよ」

 

 スバルは言い終えて一息つきます。

 

「なるほどな」

 

 アキロゼは頷きました。

 

「確かに私が勉強不足だったせいで、いろいろと空回ってしまったようだ」

 

 だがな、と彼女は続けます。

 

「そうやっておまえや天音かなたは私を認めたとしても、それ以外の剣士たちは私を認めてくれはしない。事実私の信念がメタルホットドッグに認められていたとしても、彼らにとってそんなことは関係ないんだ。どちらにしても私はおまえと天音かなたを倒さなくてはならない。そうしなければ、なにも始めることはできないだ」

 

「自分で言ってまだわからねえのかよ」

 

 スバルはため息をつきました。

 

「仮におまえが天音かなたを倒したとしても、何も始まりなんてしない。どこまでおめでたいんだよおまえは」

 

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