勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「自分で言ってまだわからねえのかよ。仮におまえが天音かなたを倒したとしても、何も始まりなんてしないってことが。どこまでおめでたいんだよおまえは」

 

 スバルはため息つきました。

 

「なに?」

 

「おまえと直接戦っても、メタルホットドッグの所有者であることがわかっても、天音かなたの名前を出しておまえを認めねえようなくだらねえ連中はよ、たとえおまえが天音かなたを倒したとしても、現役時代の赤井はあとを倒したって認めやしねえ。退学とか落第とかそんなどうでもいいことばかりに拘って、結局またわけのわからねえ難癖をつけるだけだ」

 

 スバルに指摘され、しばしアキロゼは口ごもります。

 それから「しかし」と言葉にします。

 

「それでも私は今の道を歩むしかない。他に進むべき道がないのだから」

 

「道はなくても行くべき方角をさし示してくれる剣があるだろう」

 

 スバルはメタルホットドッグのフォークが入ったアキロゼのレッグバッグを指さします。

 

「そのフォークの鉄の意思はおまえの意思だアキ・ロゼンタール、そいつの示す方向は間違いなくおまえの進むべき方角だ。すべてはソーセージが示してくれる!」

 

 言ってから「少し喋りすぎた」とスバルはライトニングウィンナーを構え直します。

 

「でもおかげで呼吸は整っただろ? アキロゼ」

 

 意趣返しのつもりでしょうアキロゼに言いました。

 アキロゼは「ふん」と鼻で笑ってから立ち上がります。

 

「アキロゼ。スバルはもうおまえに降参を勧めたりしない。でもな、おまえに信念があるようにスバルにも信念がある」

 

 スバルが話しだします。

 

「おまえは武器としてのソーセージは害でしかないと言うが、スバルはそうは思わない。ソーセージは人に夢と希望を与え、仲間と共に頂のステージを目指す喜びを教えてくれる。飢えを満たし人々を救うというのはソーセージの一つの形、人々に夢と希望を与えるのもまたソーセージの一つの形、それらはソーセージの表裏一体としての姿なんだ」

 

「夢と希望、か」

 

 アキロゼはスバルを真っすぐに見ます。

 

「それらは人の欲を飾り立てているだけの言葉ではないのか?」

 

 アキロゼの問いにスバルが答えようと口を開きます。

 

「違いマス!」

 

 しかしそんな彼女よりも早く、やや離れて観戦していたキアラが思わずと言った調子で声を張り上げました。

 

「キ、キアラ……」

 

 と、隣のるしあが彼女の袖を引きますが全く意に介しません。

 

「ソーセージがあればこそ、ホロ・デ・ソーセージ大陸は人としての倫理が芽生え、仲間と協力するチームが形成されるようになったのデス! もしもソーセージがなければ、大陸は依然無秩序のままデシタ! 魔界のように! 見てくださいあの混沌とした大地を! ソーセージには、人と人とを結びつける何かが確かにあったんデス!」

 

「なんだおまえは、唐突に話に割り込んで」

 

 アキロゼが顔を顰めます。

 

「すいません!」

 

 るしあが頭を下げました。

 

「でもキアラは魔界出身なのです。どうか彼女の気持ちもわかってください」

 

「魔界出身? ……そうか」

 

 頷いてから、アキロゼはスバルに向き直ります。

 

「どうやらその夢と希望とやら、少なくとも綺麗ごととして口にしているわけではないのだな」

 

「当たり前だ!」

 

 スバルが答えます。

 

「今からおまえに示してやるよ、スバルの信念をな! お互いに信じているもののために戦う。そうして戦ってこそお互いに理解することができる。意味のある戦いって言うのはそういうもんだシュバ! アキロゼ!」

 

「面白い」

 

「だが、その前に約束しろ」

 

「?」

 

「決して、今後の戦士生命を危険にさらすような無茶はするな。そんな戦い方は真剣に勝負しようとする相手にとっても失礼だシュバ!」

 

「……おまえの言っていることはもっともだ。承知した」

 

 アキロゼが頷きます。

 

「ならばフォークを手に取れ!」

 

 スバルが続けざまに言います。

 

「おまえの所有するレジェンドソーセージ、メタルホットドッグのスキル『鉄の意思』は残り体力が35%以下になった時点で発動可能となり、受けるダメージを35%軽減させる。そうでなくても全身を金属化させる効果により、レジェンドソーセージ接触による属性ダメージを無効化する。おまえがソーセージを使わず拳で戦うというスタンスなのはわかっているが、だからと言ってスキルまで使っていけないわけじゃないだろう!」

 

 スバルの話を聞き、アキロゼが目を瞬かせます。

 彼女は今までフォークを手に取るという選択肢を考えたことがなかったのでした。

 しばし葛藤し、その手をレッグバッグに伸ばします。

 しかしフォークを掴む寸前まできて、彼女はその手を引っ込めました。

 

「どうした?」

 

 スバルが問いかけます。

 

「スキルを使うのはやめておこう」

 

 アキロゼは答えました。

 

「誤解するなよ。おまえが親切心から使うよう忠告してくれていることはわかっている。そのことに感謝もしよう。だがこれは私自身の問題だ。私は今ここでスキルを使うわけにはいかない」

 

 だってそうだろ、と彼女は続けます。

 

「常日頃から武器として使われるソーセージを非難しておきながら、いざ自分が窮地に立たされればスキルというそのソーセージの武器としての強みに頼ると言うのだ。それはつまり、これまで積み上げた言動がすべて綺麗ごとであったということ。普段は綺麗ごとを並び立てておいて結局ソーセージの存在価値を武器としてしか見出していない剣士ども、私はそういった輩こそもっとも許せないのだ。当の私がその道を歩むことは決してない」

 

「なるほど。そういうことならスバルももう言わない」

 

 スバルは一息つきます。

 

「行くぞアキロゼ!」

 

「来い! 大空スバル!」

 

 スバルの姿が消えます。

 しかしアキロゼは前を見たまま視線を動かしません。

 スバルはまっすぐアキロゼに向かって駆けだしていました。

 そして、ライトニングウィンナーを振りかざしたスバルがアキロゼの腕の届く範囲に入ります。

 

「はあ!」

 

 アキロゼが握り込んだ左拳を放ちました。

 これまでの戦いから、アキロゼはスバルがこの一撃を左右どちらかへかわすだろうと読みました。

 だから彼女は利き腕である右拳を温存し、まずは左拳を打ち込みました。

 左右どちらかへ避けるスバルの動きをうかがいながら、右拳を握り込みます。

 しかし、

 

「なに!」

 

 スバルは避けませんでした。

 ソーセージを振りかざしていた腕を素早く折りたたみ、両腕を胸元で十字に固めます。

 そうして真っ向からアキロゼの正拳を受け止めました。

 

「バカな!」

 

 確かにアキロゼの足腰は弱っており本調子ではありませんし、先程述べたように利き腕の攻撃ではありません。

 ですが、かと言って決して軽い拳ではないのです。

 少なくともソーセージと同等の威力があります。

 そしてスバルには、その威力の攻撃をわざわざ受け止めることのメリットはないのです。

 少なくともアキロゼにはその利点が思い付きませんでした。

 避けようと思えば容易に避けられる攻撃を、振りかざした腕をわざわざ折りたたんでまでして生身で受けたのです。

 

「……ッ」

 

 拳を受け止めたスバルは足元の地面をガガガガガッと音をたてて削りながら、衝撃で後ろに押されます。

 しかし始めから受け止めるつもりでいたのでしょう、顔を俯いてぎりりと歯を食いしばり、両脚を精一杯に伸ばして十数センチほど下がるだけに止めます。

 勢いを殺すや否や、スバルは顔を上げてアキロゼを真っすぐに見返しました。

 

「今度は、スバルの番だからな!」

 

 スバルは右足を大きく振り上げ、突き出されているアキロゼの左腕を叩き落とします。

 倒れるものかとアキロゼは足腰を力んで堪えます。

 そんな彼女に、スバルは上段蹴りをした勢いのまま身体を回転させ、振り返りざまライトニングウィンナーを持つ手を振るい逆袈裟にアキロゼを斬り上げます。

 

「ぐっ!」

 

 アキロゼはその一振りをまともに受けました。

 

「ま、まだだ!」

 

 しかし彼女はそのまま仰向けに倒れてしまいそうな身体に喝を入れ、視線を下げてスバルを見返します。

 その目がスバルの目と合わさりました。

 スバルはすでにライトニングウィンナーを上にかざす構えを取りながら、アキロゼを見上げていました。

 

「これならどうだ!」

 

 スバルが勢いよく剣をアキロゼの身体に振り下ろします。

 アキロゼの身体に大蛇が地面を這ったような跡が張り付きます。

 

「ぐ、う……ッ」

 

 アキロゼは唸り声を口の中でもらしてから、いきなりその口を開けて吐血しました。

 そしてゆっくりと後方に倒れていき、大の字で地面に仰向けになりました。

 

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