勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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『みんなー! 飲んでるかー!』

 

 しばらくして、店内にすいせいの声が響き渡ります。

 びっくりしたるしあが振り返ってみると、すいせいはマイク片手に一段高いステージのようなスペースへ上がっていました。

 

「「おおー!」」

 

 客たちがすいせいの呼びかけに答えます。

 

『すいちゃんはー?』

 

「「今日もかわいいー!」」

 

『ありがとー!』

 

 マイク越しに感謝を口にしながら、すいせいはアイドル並みに飛び跳ねます。

 

『じゃあ今日もどんどん歌うよ! リクエスト拾っていこうか!』

 

 すいせいがそう言うと男たちは「はい!」「はいはいはい!」と勢いよく挙手しはじめます。

 すいせいがそのなかの一人を指さすと、彼は立ち上がり曲名を答えて着席します。

 彼女はそのリクエストに応えて歌いはじめます。

 そんなことが何度も繰り返されていきます。

 

「なんだか盛り上がってますね」

 

 るしあはその光景を眺めながら言いました。

 

「シュバルバ」

(そうだな)

 

「あ。スバル先輩」

 

 るしあとしてはキアラに言ったつもりだったのですが、答えたのがスバルだったので驚き視線を正面に戻します。

 スバルは先程すいせいが座っていた椅子に腰かけていました。

 

「もう具合は大丈夫なのですか?」

 

「シュバシュバシュババシュバルシュババ。シュバシュババシュバルバシュバルルバシュババシュバ」

(心配かけてすまなかった。でも別に具合が悪かったわけじゃない)

 

「そうなんですか?」

 

「シュバ」

(ああ)

 

 スバルは頷きます。

 それからステージで歌うすいせいの方をちらりと見て、

 

「シュババ、シュバルシュバシュバルルバシュバルルバシュバルバ」

(実は、スバルにはちょっとした能力があるんだ)

 

 独りごとのように言いました。

 

「はあ」

 

「シュバルシュバ――」

(スバルには――)

 

「お客さん、ごめんなさーい待たせちゃって」

 

 スバルが話しだそうとするタイミングで、料理を持った女性がやってきます。

 スバルとしては出鼻をくじかれてしまったわけですが、そもそもこの場でスバルの言葉がわかるのはるしあだけ、やってきた女性に悪意がないのは明らかです。

 

「ありがとうございます」

 

「私もお皿並べるの手伝いマス」

 

 テーブルに所狭しと並べられる皿の品々、終いには隣のテーブルと連結させて二つの卓上を埋め尽くしてしまいます。

 

「手伝ってくれてありがとうございます。それと、すいちゃんがごめんなさいね。なんか失礼なことを言ったみたいで」

 

 すべてを並べ終えたあと、女性はるしあとキアラに礼を言ってから頭を下げます。

 

 女性はすいせいによく似た見た目で、桃色の髪を左側でポニーテイルに結んでおり、桃色の目をしています。すいせいと同じく癖毛で、結んだ髪や耳元の毛先がカールしています。着ている服もすいせい似ですが、すいせいの柄がグレイに黒のチェックなのに対し彼女のものは濃紺の単色、またすいせいがワンピースなのに対して彼女はツーピースで、白いブラウスの上から羽織るように来ています。はいているミニスカートもすいせいと同じく左右で柄が異なって、左半分が上着と同様の濃紺色、右半分は桜色をしています。

 ちなみに指ぬきグローブは嵌めていません。

 

「あなたは?」

 

「あの子の姉の姉街です。どうか妹を大目に見てやってください」

 

 言ってまたぺこりと一礼してから、姉街は調理場へ下がっていきました。

 

「シュババ、シュバルバシュバルルシュバルバ」

(それで、スバルの能力なんだが)

 

 スバルは改めて話しだします。

 

「シュバルバシュバルバシュバシュバルバシュバルルバシュバシュバルシュバシュバルシュバルルバシュバルバ。シュバルバシュバルバシュバルバシュバルバシュバルバシュバシュバシュバルバシュバルルシュババ」

(スバルは己の身の危険を誰よりもいち早く察知する能力があるんだ。なぜならスバルに危険が迫ると奥歯に痛みが走って知らせるからだ)

 

「はあ」

 

「シュバルシュババシュバルバシュバルシュバルシュバルバシュバル。シュバシュババシュバルバシュバルシュバ」

(そして今のスバルはとてつもなく奥歯が痛い。この意味がわかるかおまえたち)

 

「さっきからスバルせんぱいは何をおっしゃっているのデスか?」

 

「えっとですね」

 

 るしあがキアラにスバルの言葉を伝えます。

 二人は顔を見合わせてからスバルに向き直りました。

 

「虫歯でしょうか」

 

「奥歯だから親不知かもしれませんね。ていうか今のスバル先輩は嘴じゃないですか、奥歯とかあるんですか?」

 

「シュババシュバルルシュバシュバルルシュバルルシュバシュバルバシュバルシュバシュババ! シュバルバシュバシュバルルシュバルシュバルバ!」

(歯とか嘴とかそういう具体的な話をしてるんじゃねえよ! 危険が迫っているという話だ!)

 

 スバルは怒鳴ってから手前の料理をがつがつ食べだします。

 スバルがようやく手を付けたので二人も食事をはじめました。

 

「あ。すごくおいしいデスね」

 

「本当に」

 

「シュバルルシュバシュバシュバルシュババ、シュバアバシュバルルシュバアバシュバシュババシュバルバ?」

(星街すいせいという名前、るしあはともかくキアラは聞き覚えないのか?)

 

「キアラ。スバル先輩が星街すいせいの名前に聞き覚えはないかと尋ねています」

 

 伝えるるしあに「いやあ」とキアラは苦笑しました。

 

「実はさっきから喉のところまでは来ているのデスが、思い出せなくて」

 

「だそうです」

 

「シュバルル。シュババシュババ」

(まったく。仕方ねえな)

 

 スバルはため息をついて食べる嘴を止めました。

 

「シュバルルシュバシュバ、シュバルシュバシュバルバシュバルルバ『シュバルルシュバル』シュバルバ『シュバシュバルシュバシュバ』」

(星街すいせい、剣士界隈での通り名は「最凶剣士」もしくは「サイコパスすいせい」)

 

「最凶剣士? サイコパスすいせい?」

 

 るしあがオウム返しに呟きます。

 

「彼女、剣士なんですか?」

 

 ちらりとステージのすいせいを一瞥してから聞きます。

 

「シュバ」

(ああ)

 

 スバルは頷きました。

 

「シュバルバシュバアバシュバルバシュバルバシュババシュバルシュバ、シュバルババシュバルシュバルシュバシュバルバシュバシュバルシュバシュバルシュバルルシュバシュバルシュバシュババ。シュババシュバルバシュバルバシュバルルバシュバルバシュバルルバシュバルルシュバルバ、シュバルシュバルバシュバルルシュババシュバルルバシュバシュバルバシュバルルバシュババシュバルルバシュバルシュババシュババシュバルシュババシュババ」

(スバルがるしあと出会ってアヒルにされた五年前、その頃の剣士チームランキングは順位が激変し続ける激動期だったんだ。上位チームは多くの情報を晒され弱点を研究されたし、上位チームを蹴落とすために複数の下位チームが同盟を組んで決戦に挑むなんてこともザラにあったからな)

 

「今は違うんですか?」

 

「シュバルバ。シュババシュバルバシュバシュババシュバルシュバシュバシュババシュバルババ。シュバシュバシュバルルバシュバルルシュババシュバルル、シュバルシュババシュババシュバルバシュバルシュバルルバ、シュバルバシュババシュバルバシュバルシュバシュバルバシュバルバシュバルシュバルル、シュバルシュババシュバルバシュバシュバルバシュバルシュバルルバシュバルシュババシュバルルバシュババシュバルルシュバルバシュババシュバルルシュバルバシュバルバシュババ。シュバルババシュババシュバルルシュババシュババ」

(みたいだ。以前ノエルが団員と喋ってたのを聞いた限りはな。情報公開は制限されたらしいし、同盟して上位チームを倒す戦略も、倒した後に今度は自分たち同士が戦わなくちゃいけない、仮にそれで上位の座についても分不相応な順位だから一日天下で転落するってことがようやくわかってきたんだろうな。そういったことは少なくなったそうだ)

 

「へええ」

 

「シュバルバシュバルバシュバルバ、シュバシュバルルバシュバルバシュババシュバシュバルバシュバルバシュバシュババシュバルバシュバシュバルバ」

(話はここからなんだが、その激動の時代にあってランキングの一位と二位だけは不動であり続けた)

 

「すごいですね。一番狙われそうなものなのに」

 

「シュバ」

(ああ)

 

 スバルは頷きます。

 

「シュバルバシュバルルシュバルシュバルバ。シュバルシュバルルシュバルシュババシュバ」

(というか実際狙われていた。にもかかわらず不動だったんだ)

 

「うわあ」

 

「シュバルバシュバルバシュバシュバルシュババシュバルルシュバル『シュバルバ』、シュバルシュババシュバルバ」

(一位は言わずもがな赤井はあと率いるチーム「ハートン」、そして二位がやつだよ)

 

「え?」

 

「シュバルバシュバシュバルシュバ、シュバルバシュバシュバシュバルルシュバル『シュバルル』シュバ」

(当時のランキング二位、星街すいせい率いるチーム「星詠み」だ)

 

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