「結局、王の話をしてないじゃん」
ある日、藤丸立香はマーリンにそう尋ねた。疑問をぶつけたと言ってもいいだろう。
「いや、マーリンの宝具の口上って、あくまでアヴァロンの説明で、アーサー王の話じゃないよね。どちらかというと王の住所の話でしょ」
テーブルの上のお菓子をつまみ、多少の不満を覚えながら話す藤丸に、マーリンは「一応、王の話とも言えるんじゃないかな?」と話を濁す。
「いや、具体性がないって」
マーリンはまだ文句をつけている藤丸に、いつもどおりの胡散臭い笑みで眺めてこう言った。
「本当に?本当に知りたいのかい?──しょうがないなぁ。まあ、一度マスターのいないところで王の話をしたんだけどね。マスターが成人するまではその話をするなと言われたんだよ。けど、マスターが知りたいと言ったのだから、サーヴァントである私は語らざるを得ないなー」
あからさまにやれやれと呟くと、一呼吸おいてからマーリンはこう言った。
「王の話をするとしよう」
「王の話をするとしよう。これはキャメロットでのある日、アルトリアが私に相談してきたんだけどね。
彼女は夫としてギネヴィアを本当に満足させられているかが心配になったらしいんだ。あ、もちろん夜の生活のことだよ。性活と言ってもいい。当然だけど、アルトリアは僕と違って娼館通いなんてできなかったからね。自分の性別が女なのに加えて、比較対象がいないというのも彼女の不安の一因でもあったんだろう。
でも、だからといって他の女性をあてがうわけにもいかないだろう?一番手っ取り早いのはアルトリア自身に女の悦びを経験させることだけど、彼女は王だ。いくら女癖の悪い私だって、アルトリアを犯すなんてしたくないからね。アルトリアがキャメロットで王として在ったときには絶対にできなかったよ。ほら、ウーサーに悪いだろ?まあ、私には罪悪感とかないけどさ。
余談になるけど、どうやら、アルトリアがサーヴァントになってから、女の子としての快感を教えたマスターがどこかの聖杯戦争にいたみたいだね。おや、そこの立ち去るタイミングを見失った筋力Dのアーチャーくん。どうして顔を背けたんだい?まるで自分が強大な敵と戦って時間を稼いでいる間に並行世界の自分がアルトリアと別のマスターと3Pしていた事実を知ったような顔をして。
あ、逃げた。まあいいか。話を続けよう。
それでいっそのこと、私が千里眼で適当に目についた、ランスロット卿の完全に勃起したペニスよりも二回りほど大きくて長い一物をアルトリアに生やしてみたんだ。円卓最強とも謳われるかのランスロット卿であれば雄としての本能も実は強かったりするんだろうなと思ってね。その時は全く含むところなくそう思ったんだよ。いや、ホントに。私としても、ランスロットを四六時中見たいわけじゃなかったからね。それほど暇じゃなかったし。妖精に手を出した?女性遍歴?まあ、それは栄養補給みたいなものだし……
ガウェイン卿の逸物を参考に?いやいや、ゴリラの竿も睾丸も、チンパンジーより小さいんだよ?それに、アルトリアが真っ昼間から盛るのならともかく、大抵は夜にコトをスるからね。太陽で三倍になってようやく射精量や長さが人間レベルになれるゴリラサイズの短小が、三倍増加の恩恵を受けられないんだよ。だから論外さ。ガウェインは短小。また一つ賢くなったね。
で、アルトリアがギネヴィアに腰を打ち付けている、腰を使っていると、ギネヴィアは行為中に「あの人のよりも大きいのー」なんて口走ってしまったようでね。ピロートークでのあの人って誰だみたいな空気から、ギネヴィアとランスロットの不倫がバレてしまったようなんだ。それで、見事に円卓崩壊。最強の騎士ランスロットは逆ギレして逃走した挙句、色々とやらかしたわけだ。
いやー、私は善意でやったんだけどねえ。善意だったのは本当さ。信じてくれないかな、マイロード。
おおっと、アルトリアがこっちに向かってきているね。それじゃあ退散退散。
今日はここまで。ガーデンオブアヴァロン」
マーリンは、この後アルトリアにメチャクチャ追い回されていた。