僕だけのレベルアップ英雄譚   作:音菜/オトナ

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僕だけのレベルアップ英雄譚3

 昨日の今日で心の整理は完了した……訳もなく、未だにだいぶ引き摺っている。まぁ、仕方ないと言えば仕方ないだろう。愛していた家族が死んで、1日2日で整理が完了する程、僕は強くもなく、器用でもない。

 

 多分、これからずっと引き摺っていく気がするのは気の所為ではないだろう。でも、それでもいい気がする。そうすれば、きっと両親を忘れる事は無く、僕の心の中に両親は生き続けるのだから。

 

 さて、過去の話はとりあえずはこれぐらいにして、僕の未来についての話をしよう。これからは僕の身の振り方を考えなくてはいけない。と言っても、コネも人脈も何も無いただの子供である僕に取れる選択肢など無いに等しい。

 

 そこで、アルフィアさんやザルドさんの方から幾つかの選択肢を提示してくれるらしい。何から何まで甘えてばかりで本当に申し訳ないと思う。もし、僕が4歳の子供だったら、それ程難しく考える事は無かったかもしれないけど、中身は20年以上生きている大人だ。こんなにも甘えていい訳がないと思ってしまう。

 

「おはよう、ベル」

 

 甘えてしまう事に罪悪感を抱いていると、アルフィアさんが挨拶をしながら、扉を開けて入ってきた。

 

「おはようございます、アルフィアさん」

 

 挨拶をしっかりと返すと、早速、僕のこれからについての話を聞かされた。聞かされた選択肢は、全部で2つ。

 

 1つは、お父さんやザルドさんの主神であるゼウスに引き取ってもらうというもの。ゼウスは性格に難ありであるが、他の選択肢よりは1番マシらしい。「好々爺」とか「狒々爺」とか「どうしようもない主神」とか言われているらしい。それが1番マシって、ヤバくない? 

 

 2つ目は、お母さんやアルフィアさんの主神であるヘラが引き取るというもの。ヘラはゼウス以上に性格に難アリとの事。アルフィさん曰く、「クレイジーメンヘライカレ女」。

 

 異名の時点で察した。確かにゼウスの方がマシという事を。ヘラは、美少女美女好きらしく、ヘラ・ファミリアの殆どが女性であるとか、嫉妬深いとか、姑と言われているだとか、アルフィアさんの口から出るわ出るわヘラのやべー所。

 

 やべえな。確かにヘラよりも、ゼウスの方がマシに思えてきた。要するに、エロ爺を取るか、ヤンデレ婆を取るかの2択であるという事だ。正直、どっちも嫌というのが僕の答えだ。どちらと一緒に過ごしたとしても、碌な事にならない未来しか見えないよ。

 

 実は、アルフィアさんから話を聞くよりも先に我儘でしかないお願いを考えていた。本当に、それはただの我儘であり、迷惑でしかないお願いだ。それでも、僕はそれが良い。

 

「アルフィアさん、あなたと一緒にいちゃ駄目ですか?」

 

 僕がそう言うと、アルフィアさんは面食らったような表情をしていた。僕のこのお願いが予想外のものだったのだろう。アルフィアさんには、アルフィアさんの人生がある。僕がそこに加わるというのは、迷惑な我儘でしかないだろう。だが、何故だろうか。

 

 アルフィアさんの顔が哀しみと申し訳なさで歪んでいた。てっきり、僕のお願いには鬱陶しそうな表情をするかと思っていたのだが。

 

「すまない、それは出来ないんだ」

 

 それはそうだろう。けど、アルフィアさんがどうしてそんな表情をするのかが気になる。

 

「どうしてですか?」

 

 僕なりに考えようとしてみたが、皆目見当も付かない。僕と一緒に何かしらの不都合が生じるであろう事ぐらいしか分からない。

 

「……実は、私は生まれながら病を患っていてな。昔の無理が祟って、その病も悪化した。正直、あとどれぐらい生きれるか私にも分からない。明日までかもしれないし、あと数年生きれるかもしれない。そんな私と一緒に居てはお前が困るだけだ」

 

 ……は? 病気? いずれ死ぬ? 

 

「悪いな、ベル。お前とは一緒にはいられないんだ」

 

 一緒に居られない? 嘘だと言って欲しいけど、アルフィアさんはそれきり喋らなくなってしまった。アルフィアさんは嘘を言うような性格でない事は、出会って数日だが分かっている。アルフィアさんの病気の話は真実なのだろう。僕は、近い未来にまた家族を失う事になるのか。だから、アルフィアさんは哀しそうに、申し訳なさそうにしていたのか。

 

 それでも僕は……

 

「僕は、アルフィアさんと一緒にいたいです!」

 

 これでは、子供の駄々にしか見えない。というか、今の僕の言葉はまさにそれだろう。この言葉がアルフィアさんを困らせるのは、分かっている。それでも、僕が出会えた血の繋がった家族であり、世界にいる唯一の家族なんだ。アルフィアさんと離れたくないと思ってしまう。

 

「いや、だから、私は病にかかっていて……」

 

「それでもいいです!」

 

「いつ死ぬかも分からない……」

 

「それでもいいです!」

 

 そう言うと、アルフィアさんが困ったような表情をしていた。きっと、どうやって断ろうか、言葉を選んでいるのだろう。こうして、命の恩人であるアルフィアさんを困らせるのは、いけない事だと分かっているけれど、それでもアルフィアさんと一緒にいたいと思ってしまう。

 

「いいじゃないか、アルフィア。ベルと一緒に過ごしても」

 

 扉からザルドさんが、そう言いながら入ってきた。

 

「ベルも覚悟しているんだろ? アルフィアがそう遠くない未来に死んでしまうのを。また家族と分かれる事になるのを。それでも、一緒にいたいんだろ?」

 

 ザルドさんが、真面目な表情で僕の覚悟を問うてきた。そして、それに対する返答として、静かに頷く。

 

「しかしだな……」

 

 それでも、アルフィアさんは折れてくれない。このまま、僕はせっかく出会えたもう1人の家族と別れる事になってしまうのだろうか。それだけは嫌だ。刹那の間だったとしても、僕はアルフィアさんと一緒にいたい。

 

「どうしてそこまで拒絶する。それに、こんなに幼いベルがあの2柱のどちらかに育てられてみろ。何かしらの悪影響が出るのは確実だぞ。ゼウスに影響されて「ハーレムは男の浪漫だ」とか言い出したら、あの2人があの世で泣くぞ。 ……アルフィア、まさかお前、ベルに”叔母さん”と言われたくないかr「福音(ゴスペル)

 

 ザルドさんの言葉を遮って、アルフィアさんが何かしらの呪文? を唱えた。すると、ザルドさんが何故か家の壁を壊しながら、地平線の彼方まで吹き飛んで行った。家の壁が壊れて、外の光景が見える素敵な部屋になってしまった。

 

 突然の出来事に、思わず目が点になる。ザルドさん、大丈夫だろうか。冒険者というのは、人よりもだいぶ頑丈だと聞くが、それでもザルドさん死んでたりしないよな? 

 

「確かにあの2柱に預けるというのは、ベルに悪影響が出かねない……」 

 

 え、そのまま続ける感じ? アルフィアさんとザルドさんの間では、あれが普通なのだろうか? 

 

「ベル、本当に私と一緒にいるというのか? 何度もしつこいようだが、私の先は短い。いずれ死ぬのは確定している。また死別を経験する事になるぞ?」

 

 アルフィアさんから真面目な話が切り出される。とりあえずは、ザルドさんの事は一旦忘れよう。

 

 ザルドさんもアルフィアさんも言っているが、いずれアルフィアさんとは死別する事になる。これからどれだけ一緒にいれるかは分からない。一緒にいればいる程、その別れは悲しいものになるのは容易に分かる。その時の悲しみは、両親との別れ以上に辛いものになるかもしれない。だとしてもだ。

 

「アルフィアさん。僕は、あなたと一緒にいたいです」

 

 アルフィアさんの目をしっかりと見て、お願いをする。正直、それでも断られる可能性の方が大きいいと思っている。アルフィアさんが僕と一緒に過ごすのを頑なに拒否するのは、自分が死んだ時、僕の悲しみが大きなものにならない為という、優しい理由だと分かっている。

 

 それだけ優しい人だからこそ、僕とは過ごさない可能性の方が大きいのだ。

 

「……こんな時、メーテリアならどうしただろうな」

 

 メーテリア。それは、僕の母親の名前だ。それは、アルフィアさんの妹の名前だ。こんな時に、お母さんの名前が出てくるという事は、それだけ真剣に悩み、考えてくれている証拠だろう。

 

 ガタガタと音がした。音がした方を見てみると、壊れた壁からザルドさんが歩いてくる。

 

「それを決めるのは、お前だ、アルフィア。メーテリアだったらどうするのかではなく、お前がどうしたいのかを決めるべきだろう」

 

 ザルドさんのその言葉を聞いて、アルフィアさんは暫く考え込むようにして、目を瞑った。

 

「はぁ、仕方あるまい。そこまで言われて断る程、私は鬼畜ではない。ベル、本当にいいのか?」

 

 アルフィアさんの最終通告に、僕は力強く頷く。自分の決断に、悔いはない。この先、深い悲しみが待っていたとしても。

 

「ふっ、ならこれからは一緒に住むか」

 

 アルフィアさんが優しく微笑んで、僕が一緒に住む事を許してくれた。

 

「これからお願いします! アルフィアさん!」

 

 

 〜 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 僕がお義母さん(アルフィアさん)と一緒に住み始めてから、凡そ2年が経過した。最初に驚いた事は、ザルドさんとお義母さんも一緒に住んでいた事だろうか。

 

 ザルドさんも過去に色々とあって、体が猛毒に侵されてしまい、体内が腐っていき、そしていつかは死んでしまうと言っていた。病と毒に侵された者同士で住んでいた方が遠慮せずに済むとか言っていた。

 

 他に驚いた事と言えば、2人が思っていた何百倍も凄い冒険者だったという事だろうか。3大冒険者依頼(クエスト)というものが、この世には存在する。地上に生きる大災厄とも言うべき3体の強大なモンスター達の討伐依頼の事だ。それこそが、全冒険者の宿願とも言われている。

 

 全部でベヒモス、リヴァイアサン、黒龍、3体がおり、その内の2体はゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアによって討伐が完了された。その2体の討伐時の立役者というのが、お義母さんとザルドさんの2人だという。

 

 お義母さんが言っていた「昔の無理」とは、リヴァイアサン討伐時に限界以上に戦ってしまったというものであり、それが影響して、病気が悪化したと言っていた。

 

 ザルドさんは、何かを喰らう事で自分を強化できるらしく、ベヒーモス戦時にベヒーモスの肉を捕食した事で己を強化し、ベヒーモスに止めを刺した。その喰らったベヒーモスの肉というのは、全てを腐らせる猛毒らしく、それを口にしてしまったザルドさんはその毒に侵されてしまったのだと言っていた。

 

 3大冒険者依頼の内、2体の討伐の立役者というのは、英雄譚になってもおかしくない偉業と言えるだろう。だが、僕的にはそんな偉業よりももっと長生きして欲しかったとさえ思ってしまう。

 

 ただ、討伐後の病気の悪化や毒によって、冒険者業を半ば引退し、黒龍討伐戦も不参加だったからこそ、2人は生きており、そして僕と出会えたと考えると、複雑な気持ちになる。

 

 その2体がまた僕から大切なものを奪う絶望の象徴でありながらも、この2人に会わせてくれた希望の象徴でもあるのだから。

 

 あとは、ザルドさんとお義母さんに鍛錬を付けてもらっている事だろうか。あまり考えたくはないけれど、いずれ2人は死ぬ。再び僕は1人になるという事だ。

 

 だから、自分だけで生きていけるような術がいる。その為には、人脈とか金とか色々とあるが、強さはあっても困るものではないとザルドさんもお義母さんも言っていた。

 

 幸いとでも言うべきか、お義母さんとザルドさんは世界屈指の実力者でもある。ザルドさんは生粋の怪力剣士。お義母さんは才能の権化とか才禍の怪物とか呼ばれ、一目見れば、その人の剣術や戦い方を完全に模倣できると言う。おっかねぇ。しかも、そんなお義母さんよりも強い人がゼウス、ヘラ・ファミリアにいる。オラリオって怪物が跋扈する魔境なのでは? 

 

 要するに、家には最高の2人の師匠がいるという事だ。そんな2人に鍛練を付けてもらう僕は恵まれている……と思いたい。実は、2人は僕を鍛える時、鬼神へと変貌する。怒鳴りはしない。大声も出さない。しかし、静かな声で神さえも殺すのではないかと思うぐらいの威圧感を持っているのだ。しかも、鍛錬の内容も相当ヤバい。

 

 神の恩恵を刻んでいない子供を剣1つでモンスターの巣窟に放り込むってどうよ? 

 

 怪物の中の怪物を討伐した剣士と模擬戦をするってどうよ? 

 

 モンスターが跋扈する森に1週間も放り込むってどうよ? 

 

 ヤバい。思い出しただけで寒気がしてきた。これ以上は、僕の精神状態を加味して、何も考えない事にしよう。うん、そうしよう。

 

 鍛錬とかお義母さんとかザルドさんについてはこれぐらいにしておこう。他に何か言う事があったなな……

 

 そういえば、僕がお義母さんをお義母さん呼びするようになったのは、何時からだっただろうか。最初は命の恩人でもあるし、家に住まわせてもらっている身だから、敬意を込めてアルフィアさんと呼んでいた。

 

 だが、珍しくお酒に酔ったアルフィアさんがお義母さん呼びするように言われた事があった。その時に「お義母さん」と呼んだら、お義母さんが喜んでくれた。それからお義母さん呼びが定着したんだっけか。

 

 そして、僕はお義母さんを2人目の母親と思えるようになった。本当の意味で家族になれたような気がしたんだ。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「お義母さんが全てを奪った……?」

 

 とある日の夜、窓から満月を眺めながらお義母さんと話しているとその口から謎の言葉が放たれた。曰く、「私がメーテリアの全てを奪った」のだとか。正直な所、何を言っているのか僕には全く分からない。

 

 そんな僕の困惑を感じ取ったのか、お義母さんは口を開いた。

 

「私とメーテリアは双子だった。私は才能の権化と言われる程に才能を持っていたが、対してメーテリアは才能も何も持っていなかった。持っていたのは、私以上の難病と虚弱な体ぐらいなものだ。だから、何時からか私が妹の才能も幸せも全てを奪ったと考えるようになった…… いや、お前が聞いても困るだけの話か。すまない、忘れてくれ」

 

 成程、そういう事か。確かにお母さんは寝たきりの事が多かったし、1年の殆どをベッドの上で過ごしていた。けど、お母さんは不幸に苛まれているような顔をしていた事なんてないように思う。

 

 病で苦しそうな顔を見た事はあったが、自分を不幸だなんて思っていなかっただろう。才能なんか無くとも幸せになれると思っていただろう。

 

「僕の2人の母親はどっちも優しいから、誰からか何かを奪うなんてしないよ。お母さんは底抜けに優しいし、お義母さんの事が大好きだから。きっと、自分に才能なんて要らないやと思って、大好きなお義母さんに全部あげたんだよ。あのお母さんならやりかねない。それに、そう思った方が奪ったなんていうより明るいでしょ?」

 

 僕なりの解釈を聞いたお義母さんは、しばらく呆けたような顔をして停止した。僕の言葉が予想外過ぎたのだろうか。言葉を咀嚼するのに時間が掛かっているのだろう。そして、再起動したお義母さんは2年も過ごしてきた中で見た事がないぐらいに声を上げて笑っていた。

 

「ははははは! そうか、メーテリアが私にくれたか! メーテリアのお人好しは凄まじかったが、自分の才能すらも私にくれるとは! 確かにあの子ならやりかねない!」

 

 横に並ぶお義母さんの顔を見てみると、頬に一筋の水滴が見えた。こういうのは、見て見ぬふりをするものだとザルドさんが言っていた。

 

 お義母さんが偶に見せていた自己嫌悪とでも言うべき感情。それは、きっとお義母さんが妹の全てを奪ったという罪悪感から来ていたものだったのだろう。お義母さんには、返しきれない程の恩がある。僕の言葉で少しでも心が軽くなってくれたなら、少しは恩返しが出来たのだろうか。




原作が全然始まりませんね。
あと5話ぐらいで原作が始まります。あと5話でシステムによってメチャ強のベル君による迷宮蹂躙が始まります。

PCで書いてるとスマホで見た時に文の密度がハンパない事になるんですよね。PCで2,3行執筆したら、スマホでは7,8行とかになっちゃいます。そこでアンケート!

  • スマホだと見にくい。改行して欲しい
  • このままでよし!
  • どっちでもいい。作者の好きにしやがれ!
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