とある幻想の夢想天生   作:大嶽丸

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一方通行

 

 

 とあるファミレスにて。

 

 一方通行はげんなりした様子でテーブルに頬杖を突いていた。

 

「いやー、只飯にありつけるなんてツイてるわね」

 

 目の前では華の女子高生とも言うべき一見すると清楚な印象を受ける美少女がその幻想をぶち壊すかのようにテーブルに並べられた料理をがっついている。

 

 カツカレー、ビーフハンバーグ、ローストビーフ丼、オムライス……他人の金で全く遠慮せず普段ならば絶対注文しないような高めのメニューを片っ端から頼んでは喰らい、既に六皿目に到達していた。

 

「まだ喰うのかよ」

 

「何よ、金持ちだから平気でしょあんた」

 

「さっさと帰りたいンだけどなァ……」

 

 唯一頼んだブラック珈琲に口を付け、今のうちに食えるだけ食っておこうという意地汚さに呆れる。

 

 確かに金銭的には全く困らないが、時間は有限で貴重なのだ。一方通行としては一秒でも早く解放されたかった。

 

(一体何を考えてるのやら……いや、どうせなンにも考えてねェなコイツは)

 

 空気のように掴み所が無く、浮世離れしている。全く行動が読めないが、実のところその思考は恐ろしく単純であり、裏表が無い。

 

 それが一方通行が彼女の性格を分析した結果だ。少なくとも学園都市超能力者第一位を捕まえて飯を奢らせようとする時点でおおよそ常識的な思考回路ではないだろう。

 

 博麗霊夢。年齢は15歳。希少な原石の一人。またの名を、変態腋巫女コスプレイヤー。

 

 あれはいつだったか。いつものようにスキルアウト共に喧嘩を売られ、いつものように潰していたら当時風紀委員だった彼女が駆け付け、一方通行のことを巷で流行っていた無能力者狩りと勘違いして“戦闘”となったのが全ての始まりだった。

 

(未だに信じられねェ……こンなイカれ女に俺の反射が破られたなンてなァ……)

 

 とっくの昔に完治した傷が未だに疼く。あの時の衝撃は今でも忘れられない。

 

 ベクトル操作。それが一方通行の能力だ。

 

 ベクトルとはこの世界に存在するありとあらゆる物質やエネルギーに存在する向きと大きさを持つ量のこと。それを彼は高度な演算により自由自在に操ることが可能なのだ。

 

 その特徴の一つが攻撃の反射。向きを操るため如何なる攻撃も彼には通らず、跳ね返る。しかもこれを一方通行は自動(オート)で常時発動させており、核攻撃すら彼を殺すことは出来やしない。

 

 そんな無敵と言う他無い力を持つが故に、久しく感じていなかった肉体的な“痛み”というものを、あの日一方通行は嫌というほど思い出させられた。

 

 何よりも気に食わないのが、その相手が腋が露出した明らかに奇抜な巫女服を着た変質者であったことだ。

 

(今すぐにでも前の“続き”をやりてェが……それで実験に支障が出ても困るしクローン共全員ぶっ殺すまで我慢しておくかァ……)

 

 あれから一方通行も成長した。あの正体不明の“エネルギー弾”も既に解析済みで今なら問題無く反射出来るだろう。

 

 しかし、霊夢の手札があれだけとは限らない。何せ彼女は多重能力(デュアルスキル)擬き。全く性質の違う能力を二つ同時に使用するという学園都市の常識を崩壊させているのだから。

 

 だが、それでも、だからこそ一方通行は彼女との再戦を望んでいるが、そうも言ってられない理由もまたある。

 

 絶対能力進化計画。

 

 二万体のクローンを一人ずつ殺して絶対能力者(レベル6)へと至るという狂気の実験を一方通行は行っていた。

 

 現在漸く九千体近くまで殺したのだ。霊夢との戦闘で計算が狂って振り出しに戻るなんてことは勘弁したかった。

 

 無論、あちらから喧嘩を売ってくるなら喜んで殺り合うつもりであるが。

 

「……そういえばさ」

 

「あン?」

 

 すると料理を貪るだけだった霊夢が手を止め、思い出したように口を開く。

 

「学園都市第一位ってどんな気分?」

 

「はァ? ンだよ急に?」

 

「ほら、ここの連中ってどいつもこいつも能力だのレベルだのなんだのに拘るじゃない? あれの気持ちがいまいち理解出来なくてね。一位のあんたの立場からすればどうなんだろうなー、って」

 

 コーラをストローで吸いながら、霊夢は問う。その雰囲気から心底真面目に質問していることが察せられるが、学園都市に住まう高校生が抱く疑問にしてはあまりにも今更が過ぎた。

 

 恐らく今までは本当に微塵も興味が無く、無関心だったのだろう。それが何かの切っ掛けで考え出し、やっと疑問を抱くようになった。

 

「……さあなァ。頭お花畑なガキ共の思考なンざ知らねェよ。大方自分も超能力が使いたいとか他人より強い力が欲しいとかそンなンだろ。ンで手に入れたら今度は上の連中に評価されたくてもっと力を求める」

 

「あんたもそうだったの?」

 

「……ンなこと覚えてねェよ」

 

 多くの者が超能力に憧れて学園都市へ来る。しかし、霊夢の場合はそもそも前提が違う。何せ彼女は最初から空を自由に飛べていたのだから。

 

 一方通行の場合は──忘れた。自分の本名すら苗字が二文字とか名前が三文字とかくらいしか思い出せないのだ。学園都市へ来ることになった理由や動機など覚えているはずがなかった。

 

「ふーん……苦労してるのね。まあ、じゃなきゃそんな終わった性格してないか」

 

「あ? 馬鹿にしてンのか?」

 

 他人事のように語る霊夢に、世間から見ればお前の性格も充分終わっていると睨み付ける一方通行。

 

 しかし、彼女は全く動じず、涼しい顔のまま。如何なる威圧も彼女には通用しない。そんなことは分かり切っていたが、やはりムカつくと舌打ちする。

 

「別に。納得しただけよ。つくづく私にはこの街を理解することが出来ないってことを」

 

「はァ?」

 

 そんな言葉に怪訝な表情を浮かべる一方通行を他所に、気が付けばコーラを飲み干していた霊夢はどこか遠い目で天井を見上げる。

 

「……お互い不自由ね」

 

「! ……はン。テメェに何が分かる」

 

「あんたが現状を憂い、望んでいないということくらいは」

 

「……チッ」

 

「やっぱり。図星みたいね」

 

「うるせェ。知った風に言うンじゃねェよ」

 

 同情でもされたかと思ったが、どうやら共感の方だったようだ。一緒にするなという苛立ちと共に意外だったと一方通行は僅かに驚く。

 

 好き勝手に振る舞い、自分のルールを振りかざし、常に余裕に満ちていた目の前の少女は一方通行には誰よりも自由に生きているように見えていた。

 

 きっと、羨望すら抱いていただろう。

 

「……なァ」

 

 故に、今の彼女の表情は酷く新鮮に感じ、一方通行は無性に気になった。

 

「オマエは欲しくねェのか? 絶対的な力ってヤツ」

 

「あん?」

 

 突然の問いに霊夢が訝しげな視線を向ける。

 

「何よ、厨二病?」

 

「茶化すな。例えば、だ。俺は学園都市で最強だ。だが、さっきみてェに身の程知らずのゴミ共が毎日のように襲って来やがる。軍隊を差し向けられたこともあった」

 

「………………」

 

「いい加減ウンザリしてンだが、どうも“最強”だけじゃあゴミ共を黙らすには足りねェらしい……なら、もっと“上”に行くしかねェだろ。誰もが認め、誰にも文句を言わせねェ程の、戦おうとする意志さえ奪う程の絶対的な力。それこそ神のような“無敵”の力がありゃきっと──」

 

 熱が入り出した一方通行の語り。対する霊夢の反応は乏しいものだった。

 

 しかし、それは確かに彼女の関心を引いた。

 

「……そんなもの、本当にあると思ってんの?」

 

「無いとも限らねェだろ。誰もそこに行き着いてないンだからなァ……なら、目指してみる価値はあると思わねェか?」

 

「あら、意外とロマンチストなのね」

 

 現実的ではない、と。一方通行の語る内容には一定の理解こそ示すも決して同意はしなかった。

 

「で、どうなンだ? もしもそういう力があったとしたら」

 

「そうね……力があるに越したことはないし、もし本当にそんな何でも出来てしまうような力があるのなら……」

 

 霊夢が想像する。夢見る少女かのように、一方通行の語る絶対的な力とやらがどんなものかを。

 

 もしも、それこそ彼女が憂い、嘆く現状を打破出来るだけのものだとしたら。

 

 そうすればきっとあの場所にも──。

 

「────」

 

 一方通行が目を見開く。この時、霊夢は目を輝かせ、無意識に口角を吊り上げていた。

 

 初めて見る、純粋な笑顔だった。

 

「──いや、やっぱり面倒臭いわ」

 

 しかし、すぐに顔をしかめ、そう切り捨てる。

 

「は? オイオイ。何だよそりゃ」

 

「ちょっと考えたけどそこへ行くまでの過程を想像したらやる気が失せちゃうわ。私ってば根本的に努力とか修行とか大嫌いなのよね」

 

「……くだらねェ」

 

 怠惰の化身が如き物言い。これには一方通行も呆れるしかなく、真面目に語って損した、と溜め息を吐く。

 

 しかし、逆に努力等を必要としないのであれば欲しいということ。一方通行とは違い、彼女の場合はあるかも分からない不透明なモノに時間を割くだけの余裕も気概も無いだけなのだろう。

 

「けどまあ理解は示すわよ。努力は嫌いだけど努力家は嫌いじゃないから」

 

 どこか感心した様子の霊夢。もしもその為にやっていることがクローンの虐殺だと知ったら、一体どんな顔をするのだろうか。

 

 驚くかもしれないし、怒るかもしれないし、怯え……ることは絶対に無いなと一方通行はその思考を一蹴する。どうせ大した反応はしないだろう。

 

「ただ無茶はしないことね。無いとも限らないということはあるとも限らないってことだから。そんな曖昧なモノを追い求めて身を削る羽目になったら、本末転倒でしょ?」

 

「そりゃどうもォ……腋巫女が真面目にエール送ってくるとかなンか死ぬほど気持ち悪りィな……」

 

「何よ、失礼ね」

 

 応援とも忠告とも取れる言葉。らしくもない発言を一方通行は馬鹿にするように一笑しながらも内心複雑な心境だった。それは彼に掛ける言葉としてはあまりにも遅過ぎたのだから。

 

 もう後戻りなど、決して出来やしない。

 

「まあ、参考にはなったわ。ありがと」

 

「……おう」

 

 素直に礼を言い、再び食事へと戻る霊夢。これに感謝され慣れていない一方通行はむず痒い思いをしながらそっぽを向く。

 

「さて、デザートも頼もうかしら」

 

「いい加減にしろよテメェ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 孤高の存在。

 

 誰も尊ぶことなく、誰とも並び立つことなく、誰からも理解されない。

 

 博麗霊夢とはそういう人間だ。天衣無縫の極み。この世界から爪弾きにされ、どこにも馴染めず、馴染もうともせず、得ることも求めることもなく、ただ己があるがままを往く。

 

 単純に優れているからだけではない。純粋に見え方が違うのだ。彼女とそれ以外との視点はどこまでもずれていた。

 

 それはもはや孤高ではなく孤独と呼んでも差し控えないだろうが、彼女にその自覚は無かった。最初から存在しないものに、どう気付けと言うのだろうか。

 

 しかし、霊夢は聡明だった。自分が他人と違うということは理解しており、その理由もまた分かっていた。

 

 にも関わらずそれを解決しようと何か行動をすることはなかった。別に諦観していたからではなく、その必要性を感じなかったからだ。

 

 そんな彼女であったが、そういう意味では一方通行に対してはシンパシーのようなものを感じていた。

 

 第一位。学園都市最強。全ての能力者の頂点。その名に恥じぬ絶大な力を持つ。

 

 一目見た瞬間から今まで出会った能力者とは明らかに格が違うと分かった。他の超能力者(レベル5)の面子……特に第二位と比べても飛び抜けているように思える。

 

 霊夢は生まれて初めて敗北の可能性を予感し、結果としては途中で中断されたが、あのまま続いていれば一体どうなっていたか。

 

 ──久方ぶりに楽しかった。

 

 人も、妖も、神すらも有象無象。だが、それでも張り合いの無さ過ぎるこの狭い世界で過ごす彼女に危機感を思い出させた一方通行という存在は酷く特別なもののように見えたのだろう。

 

 故に、無意識に彼も自分と同じなのだろうと思ってしまい、そして即座に否定する。

 

「あいつ、意外と向上心の塊だったのねぇ……」

 

 まるで違う。何もかもを諦観してしまっている霊夢とは違い、一方通行は現状を打破しようと必死に足掻いていた。

 

 その手を血で汚すことすら厭わずに。

 

「まあ……応援くらいは、してあげましょうか。何だかんだ腐れ縁だし」

 

 ただそれだけ。別に霊夢は何もしない。一方通行がやっていることにも、この学園都市の裏で行われていることにも、大して興味が無かった。

 

 尤も、当事者となれば、己が平穏を害するのであれば、彼女はそれらを全身全霊で潰す。

 

 何せ彼女は巫女は巫女でも──。

 

「……で? 気は済んだ?」

 

「ひっ……す、すみません……」

 

 そう問い掛けた彼女の視線の先には梅干のように顔が腫れ上がった男が土下座していた。その後ろには同じような格好をした男たちが十人も倒れている。

 

 もう二度と奢らねェという捨て台詞と共に帰っていった一方通行を見届けた後、帰宅中にいきなり囲まれたかと思えば路地裏へ連れ込まれかけた。

 

 男たちは金属バットやナイフで武装していた。しかし、烏合の衆が何人束になったところで霊夢の敵ではなく呆気なく返り討ちに遭い、今に至る。

 

「私を狙うにしてはお粗末な襲い方だったし、あいつ目当ての馬鹿かしら?」

 

 一方通行は日常的に命を狙われていると言っていた。ならば目の前の連中もその類いであり、恐らくは霊夢を彼の関係者だと思い、人質にでもするつもりで襲ったのだろう。

 

「どいつもこいつも馬鹿ばかりで大変ね。他の奴ならともかく攻撃を反射する奴にバットで挑んでどうやって勝つってのよ」

 

 一方通行の能力がベクトル操作であることくらい書庫(バンク)等で少し調べれば簡単に分かると思うが。

 

 そんなこともせずに無計画で学園都市最強を襲う馬鹿さ加減に霊夢は呆れ返ってしまう。

 

(くそがああああああ! 何なんだよこの女はっ!? こんな奴が居るなんて聞いてねぇぞ!?)

 

 対する男は土下座しながら滝のような冷や汗をかいていた。

 

 一方通行と仲良く食事をしていた女。彼の友人か恋人か。少なくとも関係者であることは間違いなく、男たちは彼女を人質に利用するべく捕縛しようと画策した。

 

 路地裏へ繋がる道の近くまで来た瞬間に取り囲み、連れ込んで拘束する手筈だった。しかし、女はあっさりと男たちの隙間を通り抜けてしまう。

 

 逃げた先は人混みではなく路地裏。連れ込む手間が無くなったと男たちはその愚かな行動を嘲笑い、追い掛けた。

 

 この時点で気付くべきだった。自分たちが逆に誘い込まれ、狩られる立場であったことに。

 

 始まったのは一方的な蹂躙。攻撃を仕掛けてきた女に対し、男たちは取り囲んで各々が金属バットやナイフ等の武器を振るった。

 

 だが、女には掠りもしない。まるで横や後ろにも目でも付いているかのように四方八方から来る応酬を最小限の動きで避けられ、徒手空拳で一人一人、確実に屠っていく。

 

 その光景は恐怖でしかなかった。次々と倒れていく仲間。気が付けば、残されたのは自分だけであり、それもたまたま当たりどころが良くて気絶を免れただけだった。

 

「ハァ……めんどくさ。見逃してあげるから、さっさと失せなさい」

 

 そんな男の思考など考える気すらなく、霊夢はつまらなそうに見下ろし、そう言う。

 

「ッ……ほ、本当ですか? へへっ、ありがとうございま──」

 

「嘘よ」

 

 慈悲の言葉に顔を上げた男の顔面に足がめり込む。逃げた先で仲間を呼ばれた経験がある霊夢からすれば見逃すつもりなど毛頭も無かった。

 

 彼らに不幸があるとすればこの日の霊夢が学生服であったことだろう。いつもの紅白だったのであれば襲うようなことは決してしなかったのだから。

 

「……さて、そろそろ出てきたら?」

 

 ボールのように吹っ飛んでいく男に一瞥もくれてやることなく、霊夢は背後へ視線を送る。

 

 途中から誰かに見られていた。

 

「! あ、いや、えっと、その……こ、こんばんは」

 

 すると物陰から出てきたのは、とてもじゃないがスキルアウトには見えない、人畜無害といった風貌をした黒髪でセミロングの少女。

 

 気付かれていたのが予想外だったのかかなり動揺した様子で挨拶してくる。

 

「……誰?」

 

 見覚えはない……はずだ。制服はあのツインテールの風紀委員の相方の花畑のものに似ているような気もする。

 

「えっと……この前、銀行強盗を倒した人……ですよね?」

 

 対する少女はジト目でこちらを見る霊夢にびくりと身体を震わしながらもそう尋ねる。

 

「……誰って訊いたはずだけど?」

 

「あっ! すみません! さ、佐天涙子と申しますっ!」

 

「サテン、ねぇ……やっぱり知らないや。一応訊くけど初対面よね?」

 

「は、はい!」

 

 何を緊張しているのだろうか。体を固め、大きめの声を発する少女の態度に内心首を傾げながら霊夢は彼女の言う銀行強盗について思い返す。

 

 最近の話だとすると十中八九あの発火能力者が居た三人組だろう。少女……佐天はその目撃者らしい。

 

「ふーん……で、何か用?」

 

「えっと、さっき怖い男の人たちに追い掛けられているのを見てそれを追ったら……」

 

「あー、そういうこと」

 

 納得する霊夢。野次馬根性か、正義感かは知らないが、たまたま現場を見られてしまったらしい。

 

 となれば色々と厄介だ。

 

「もしかしてもう通報とかしちゃった?」

 

「え? いえ、まだですけど……」

 

「じゃあ、秘密にしといてくれる? 通報されると色々と面倒臭いからさ」

 

 他の風紀委員なら別に構わないが、またあのツインテールが来て説教が始まるのを危惧した霊夢はそう頼むが、佐天は困惑の色を隠せない。

 

「そうね。通報しなかったら出来る範囲でお礼してあげるわ。丁度晩飯代が浮いてるし」

 

「へ? ほ、本当ですか?」

 

「本当よ」

 

 あっさりとした様子で霊夢は取引を持ち掛ける。

 

 いつもの気紛れなようであるが、霊夢としては意図せずとはいえ見るからに無害そうな幼気な少女にスキルアウト共を一人一人ボコボコにするというなかなかにショッキングな暴行現場を見せてしまったことに対する申し訳無さもあった。

 

 そして、しばらく考え込んでいた佐天の口から出たのは思わぬ言葉であった。

 

「それじゃあ……友達になってください!」

 

「え、やだ」

 

「えぇっ!?」

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