とある幻想の夢想天生 作:大嶽丸
カルト宗教によるテロ事件。
アウレオルス=イザードが三沢塾においてもたらした被害は、表向きにはそういう事になった。
通常なら誰に知られることもなく、秘密裏に処理されるはずだったが、霊夢が結界を破壊したことで死体を目撃した生徒達がパニックになり、その内の何人かが警備員に通報。加えて、高層ビルの一部が破壊されるなどもはや隠蔽し切れる被害ではなく、それでも必要悪の教会側と学園都市上層部で事後処理と隠蔽工作に駆け回り、些か無理があるもののそのようなカバーストーリーでどうにか収拾が付く。
事件を解決したのは事前に情報を得ていた学園都市の対テロの特殊部隊ということになり、現場に駆け付けた警備員の中には疑問に思う者も居たが、いくら異議を唱えようと学園都市上層部の意向には逆らえない。
そして、これに一役買ったのが……。
「サボっているのかと思ったら、テロリストを鎮圧してるって……どういうことなのよ」
「そんなの私が知りたいわ」
支部にて。呆れ果てる固法に対し、うんざりした様子で霊夢はソファーに座って頬杖を突いている。
こうなった理由は辻褄合わせ。霊夢としては自分の名前など出してほしくなかったのだが、生徒達の中に彼女の姿を目撃している者が居るのと、結果的にこうも騒ぎが大きくなったのは霊夢が後の事を考えずに結界を破壊したからであり、それくらいは我慢しろとステイルに半ば無理矢理押し付けられてしまった。
サボり扱いで叱られることはなかったが、これはこれで面倒臭い。たった一日で人知れずテロリストと戦っていたという少々無理がある設定を誰も疑わないのはひとえにあの博麗霊夢なら不思議ではない、という認識があるからである。
「まったく……せめて連絡くらいはしなさい。丸一日音信不通でみんな心配していたのよ? 初めは怒ってた白井さんもだんだんオロオロし始めて気が気じゃないって様子だったし」
「ふうん……で、他の面子はどこに居るの?」
初春はともかく白井もかと意外に思いつつ、霊夢は問う。自分が来た時には既に二人の姿は無かった。
「外回りよ。それから初春さんの学校に転校した子の引っ越しの手伝いをやってるってさ。暫くしたら戻ってくると思うけど」
「引っ越し? ……ああ、そういや転校生がどうのって涙子が言ってたわね」
確か春上衿衣……という名前だったか。ファミレスでの会話を思い出す霊夢。まだ会ったことはないが、どうやら錬金術師と戦っている間に白井らとも交流を深めているらしい。
「あら、博麗さんも知っていたのね」
「ええ。名前だけだけど。今晩、そいつを交えてお祭りに行くって約束しているからそこで初顔合わせね」
「お祭り? 花火大会のこと? そういえば今夜だったわね……でも」
固法が難しい顔をする。
「博麗さん……実は急遽警備員から捜査への協力要請があって、それに参加してほしいのだけど……」
「え? どういうことよ?」
「どうやら第十二学区の方でスキルアウト達による“複数の学校への襲撃予告”があったらしくて念のため周辺を警備することになったの。本来なら警備員の管轄なんだけど今色んな事件が立て続けに起きて人手不足だから風紀委員からも人員が欲しいってこっちにも話が回ってきたのよ」
「襲撃予告、ねぇ……」
スキルアウトとやらはそんなテロリストめいた連中だっただろうかと疑問に思う霊夢だが、駒場や黒妻、能力者狩りをしていた連中と、よくよく考えればひとえにスキルアウトといっても多種多様なのでそういう連中が居るのも不思議ではないだろう。
それにしても、なかなかのタイミングでしでかしてくれたものだ。
「初春さんと白井さんにはもう午後からは非番でいいって言っちゃってるし、私達も他の仕事があって人手が足りなくて……お願い出来ないかしら」
仮に初春と白井を代わりに、と言っても佐天は彼女らも誘っているので意味はない。
「それって、お祭りには間に合わないの?」
「うーん……時刻は予告されなかったみたいで不明だし、交代人員は手が空いた人が補充されるまで来ないらしいから終わるのはかなり遅くなるかも」
「えぇ……こちとら学生でボランティアよ? 夜遅くまでコキ使わないでほしいっての」
「本当にごめんなさい!」
「……ま、そういうことなら仕方ないでしょうね。涙子には悪いけど」
平謝りしながら頼み込む固法に、彼女が悪い訳ではないと霊夢も理解しているので渋々了承する。
「ありがとう。……にしても、一緒に花火大会に行くだなんて、随分と仲良くなってるみたいね?」
「……それが何よ?」
「いえ、ただ意外だったわ。あなたが佐天さんと友達になるのもだけど、こうして上手く付き合っていられているのも」
改めてそう思う固法。どういう経緯でそのような関係性になったのかは以前聞いたが、それでもあの霊夢が誰かと、それも佐天のような人物と友人関係に至るなど全くイメージがつかなかった。
加えて、その性格から噛み合わないだろうなと思っていただけに、こうも真っ当に友人をやれているのが心底意外であった。
「そう? よく分かんないけど」
これに霊夢は首を傾げる。彼女はそもそも友人が居たという記憶が存在しないため、佐天との関係が上手く行っているのかも、それが一般的な友人関係として正しいのかも知る由が無かった。
「ふふ。じゃあ、何で佐天さんと友達になろうって思ったの?」
「……前にも言ったでしょ。ただ、あの子が友達になりたいって言ったから、友達になってやっただけよ」
二度も同じ質問をするなと霊夢は眉をひそめる。
「ふーん……本当にそうかしら」
「はぁ? ……私自身が言っているんだから、それ以上でもそれ以下でもないでしょうが」
訝しげな視線を向けながら困惑する霊夢を見て、固法はくすりと微笑む。
彼女は安心していた。単なる気紛れだとしても、あの孤高の道を進んでいた霊夢に、友人が出来たということに。態度も以前よりも若干軟化しているように見え、特に幻想御手事件後は顕著だ。
自分達では彼女に何もすることが出来なかったが、もしかすると佐天ならば……と、期待してしまうのは当然の帰結であろう。
(友達になりたいって言ったから、か……もしかすると、その通りなのかもね。私はあなたと友達になろうだなんて言えなかった。だから単なる元同僚としか認識されていない。そう考えると佐天さんって凄い人だと思うわ)
少しだけ羨ましかった。思えば、固法や当時の同僚らは博麗霊夢に歩み寄ろうとしなかった。彼女自身が他者を寄せ付けなかったのもあるが、心のどこかで無意識に彼女には孤高の道こそが相応しいと、自分達とは違う世界に住む人間だと、切り離してしまっていたのだろう。
彼女は誰よりも人間離れしながら、誰よりも人間らしいことを知っていたというのに。
「んじゃ、早速行って来ましょうかね。場所は?」
「ええ。集合場所は──」
「えぇ? 本当ですか? はい……はい。分かりました。いやいや、それならしょうがないですよ、また今度どこか遊びに行きましょうね! はい、それでは……霊夢さん、来れなくなっちゃったみたいです」
ファミレスにて。電話でやり取りしていた佐天は同じテーブル席に付く初春、白井、御坂、そして春上に霊夢が花火大会に来れなくなったことを伝える。
「ドタキャンですの?」
白井が眉をひそめる。
「えっと、なんか襲撃予告で警備がどうのとか……」
「襲撃予告? ……ああ、そういえば固法先輩が言ってましたの。スキルアウト共が学校への襲撃予告をしており、風紀委員にも協力を仰いでいる、と。うちの支部にも要請が掛かりましたのね」
佐天にそう言われ、なら仕方無いなと思いつつ、いくら怠惰とはいえ適当な理由で約束をすっぽかすような人間ではなかった事に内心ホッとする。
しかし、タイミングが悪い。昨日の三沢塾のテロといい、現在警備員と共同で捜査しているRSPK症候群の同時多発といい、こうも立て続けに事件が起こるとは……物騒な世の中になったものだ。
「まあ、常日頃サボっているからその皺寄せが来たのでしょう。あのサボり魔はそうやって働かせておけば良いのですの」
「そんなこと言ってますけど白井さん、なんか残念そうに見えますよ?」
初春がそう言えば、白井は露骨に顔をしかめる。
「は、はぁ? どこがですの。何故私があのワキ巫女が来なくて残念がるので? 頭がお花畑なだけでなく、目まで節穴になってしまわれたのですの? もし冗談のつもりでしたら全く笑えませんので、もう二度と言わないでくださいまし」
「ちょっと辛辣過ぎません? 流石に泣いちゃいますよ?」
日頃のぞんざいな扱いに対する些細な仕返しのつもりで揶揄したが、想定以上の口撃をされて涙目になる初春。それを見て御坂と佐天は苦笑いし、春上は知らない名前が出て困惑する。
「れいむさん……なの?」
「あ、私の友達。初春達と同じ風紀委員ですっごくクールで美人で超強い人なんだ!」
「その紹介だけ聞くとまるで完璧超人ですね……いや、実際その通りではあるんですけども」
「協調性皆無でいい加減で面倒臭がりで極端で常識知らず、が抜けてますわよ佐天。そのような偏った紹介では春上さんが勘違いしてしまいますの」
「あんたはよくそんな悪口をすらすら言えるわね……」
そんな四人の会話を聞き、春上はその霊夢なる人物が癖が強いのだなということは理解する。
「本当は花火大会で紹介するつもりだったんだけどなー」
「そういえば……佐天、あなたは神裂火織さん、という方をご存知で?」
「かんざき……かおり? いえ、知りませんけど」
急に知らない名前を出され、困惑する佐天。何か自分と関係のある人物なのだろうか。
「そうですの……この前に博麗霊夢とこのファミレスでご一緒していましたの。あの方はご友人だとおっしゃっていたのでもしかしたら佐天ともお知り合いではないかと思ったのですが」
「へぇ……霊夢さんのお友達ですか? なら、私と知り合った後に友達になったんですかね? 霊夢さん、私が初めての友達だって言ってましたから」
「……でしょうね。私もあの方に友人が出来るなんてとてもではありませんが、信じられませんの」
厳密には、彼女の事を友人だと認識している者は多いのだろう。しかし、肝心の彼女自身はきっと、彼らの事を友人だとは認識していない。
だからこそ、佐天が霊夢の友人になったというのを聞いた白井は当初信じられなかった。かといってその場凌ぎで誤魔化す為ならば彼女は精々知り合いや顔見知りと表現する程度でそのような嘘が咄嗟に出るとも思えず、後に確認すれば事実で非常に驚いた。
それが佐天が直接友達になりたいという意志を伝えたからということを知り、納得が行く。そうでもしなければ、彼女と友人にはなり得ない、ということである。
「あれ……? ってことはですよ、もしかして私達って博麗さんに友達としてカウントされていない……?」
白井がそんな自身の考察を皆に伝えると、初春が震え声でそう呟く。
「勿論ですの。恐らくあの方に対するあなたの認識は元同僚から友人の友人、そしてまた同僚に戻っただけに過ぎませんの」
「そ、そんな……」
結構仲良くしていたと思っていた初春はそのあんまりにもあんまりな事実にショックを受ける。
「ちょっと流石に言い過ぎでしょ……って、言いたいところだけど。あの人らしいっちゃらしいわね」
一方、あの鉄橋で有象無象を見るかのような冷たい視線を向けられたことを思い出しながら、然して驚きもせず御坂はそう言って頷く。
「む、じゃあ御坂さんは良いんですか?」
「じゃあも何も、私は博麗さんのこと友達だと思ってなんかないし」
「へっ?」
躊躇いの無いその言葉に初春は呆然とする。以前、初対面で半日ほど一緒に遊んだだけで自分達を友人認定した御坂の反応とは思えなかった。
「あの人と私はライバルよ、ライバル」
「はい? ライバル……ですか?」
「そ。
自信満々にそう言い放つ御坂。これには白井や佐天も寝耳に水で何故そうなったのかと困惑の色を隠せない。
自分達の知らない所で何かあったのだろうか。
「お姉様……あの方が何か粗相でも?」
「ん? あー、ちょっとね。どちらかと言えば粗相したのは私の方だけど」
ついカッとなって電撃を飛ばしたのは自分の方だったので御坂がばつが悪そうだった。
「はぁ……まあ、よくよく考えればズケズケと遠慮無く物を言うあの方と意外と喧嘩っ早いお姉様が揉め事を起こすのは不思議なことではありませんが」
「ちょっと、喧嘩っ早いってあんたね……」
それにしても、
後にこのライバルというのに別の意味合いも含まれるようになることをまだこの時の白井は知る由も無かった。
(……でも、確かにきっかけはそうなのかもしれないけど、今の私達は形ばかりの友達ではないはず)
二人のやり取りに苦笑いしつつ、佐天は考える。当初から霊夢は彼女なりにこちらへ歩み寄ってくれてはいた。今思えば、あれは友達になると言った手前、最低限の義理を果たそうとしていたのだろう。
そんな微妙な関係性が明確に変わったのは、幻想御手事件の後……昏睡状態から目が覚めて病室で対面した時。
あの時、あの瞬間、博麗霊夢と佐天涙子は単なる知り合いでも口先だけの友人でも無い、もっと特別な関係になれたのだと、何となしに思ったのだ。
たとえそれが世間一般で言う友人関係とはかけ離れたものであったのだとしても、単なる思い違いであったのだとしても、佐天にとって今の霊夢との関係はとても好ましく、非常に喜ばしかった。
「ふうん……私も会ってみたいなの。その霊夢さんって人に」
「はい! 今度また紹介しますね!」
そんな皆の反応を見て春上も興味を抱く。それぞれの反応が多種多様であるが、共通して彼女達四人がこうも注目して止まない霊夢とは、一体どのような人物なのだろうかと。
「けどそっかぁ……霊夢さん、来れないのかぁ……」
「はい。本当に残念です。佐天さん一緒に行くの楽しみにしてましたもんね、花火大会」
「それもあるんだけど……」
「え?」
「あ、ううん、何でもない」
和気藹々とする中、一人神妙な面持ちでそう呟く佐天に初春は首を傾げるも、笑って誤魔化される。
(
その憂いに気付く者は、誰も居なかった。
“混じり者”とは、常に異端である。
況してやそれが人と、
そして、彼女はその中においても単なる混種とも違う、ある意味この世の理から逸脱した、一際異端な存在であった。
「た、ただいまー」
佐天涙子は恐る恐るドアを開ける。あの後、ファミレスを出て今話題のクレープ屋へ行ったりゲームセンターで遊んだりと春上と親交を深めた彼女は夜の花火大会まで時間があるので浴衣に着替える為に一時帰宅していた。
「……どうも」
独り暮らしであるが、実家に居た頃の名残ですっかり習慣付いた言葉に、今回はきちんと返事が返ってくる。
ドアを開けてすぐのリビングのソファーには、一人の少女が座っていた。
「えっと……私が居ない間に何かあった?」
「いえ、特には」
荷物を置き、尋ねればそう返すのみ。沈黙に包まれる気まずい雰囲気に佐天はぎこちのない作り笑いを浮かべるばかり。
何故こうなってしまったのか。そう自問し、己の短絡さが招いた結果であると即座に導き出す。
先日の夜、帰り道で見つけた負傷者。血塗れの少女を前にパニックになり、何を血迷ったか病院ではなく、すぐ近くの自宅へと連れ込んでしまった。そのまま救急車なり警備員なりに通報すれば良かったのだが、そうするよりも早く目覚めた少女に刀を向けられる。
思えば、少女が堅気の人間ではないことは明らかだった。
レプリカではない本物の真剣を所持しており、良く見れば怪我した部位以外に付着した血は誰かの返り血……と、気付ける要素は多々あったにも拘わらず何もかも見落としていた佐天は己の迂闊さを呪う。
──匿え。
冷たい刃を首筋に当てられ、そう詰められれば頷くしかあるまい。
敢えなく佐天は自宅で彼女を看病した。こっそり通報しようにも妙に勘が鋭く、そういった素振りを見せただけで殺気を浴びせられる。尤も、それでも先程のように普通に外出を許してくれるのでチャンスは幾らでもあったのだが、それがかえって怖くて結局何も出来なかった。
「……改めて、礼を言います」
「へ?」
長い沈黙を破り、呟かれたのは感謝の言葉。
「あのままでは野垂れ死にするか、追手に始末されていたでしょう。命の恩人にするようなことではないことは分かっているのですが……本当に申し訳ございません」
そう言い、少女は表情を曇らせる。一晩過ごして、落ち着いたのだろうか。感謝どころか謝罪までされるとは思っていなかった佐天は呆気に取られてしまう。
意外と、悪い人間ではない……のか? 期待違反理論、或いはストックホルム症候群という奴か。佐天は目の前の少女を恐れてはいたが、敵意や警戒心といったものは既に削がれていた。
「あ、いやえっと……その、大丈夫。何か事情があったのよね? 警備員に通報されたくない理由が」
「……はい。現在、お尋ね者の身なので」
「お尋ねっ……えっと、因みにどういう罪で?」
今更ながらここまでズバズバ質問してしまって良いのだろうか。言ってしまった後に後悔する。
「………………」
「あっ、言いたくないなら別に大丈夫だからっ」
むしろ逆に知りたくない。あの状況からして少なくとも傷害罪、暴行罪以上の重犯罪だろう。
「……そうですか。ありがとうございます」
それが気遣いだと認識した少女は礼を言い、そして安堵する。
告白するのは憚られた。己が当たり前のようにやった事は、この街においては大罪に値するらしい。それを知ってしまえば、如何に善良な人間といえど、自らを追い出そうとするに違いないのだから。
(それにしても……)
改めて佐天は少女の姿を見る。
年は自分よりも少し下くらいだろうか。色素の抜けた、絹のような
異質だと、その風貌を見て佐天は思った。肌も頭髪と同じく白く透き通っており、しかし外国人かと問われればその顔立ちは日本人のもので凛々しく、整っていた。
加えて、彼女の周囲に感じる僅かな違和感。それが何なのかは分からないが、これらの要素により佐天は目の前の少女が自分らとはかけ離れた存在のように思え、どうしようもなく惹かれる。
「何者なんだろう?」
故に、そう思わずにはいられない。
「何者……ですか」
「あっ、いやそのっ」
やばい。口に出てしまっていたかと慌てる佐天。余計な詮索はしないと誓ったばかりだと言うのに。
「………………」
ふむ、と彼女は考える。己は一体
同時に思う。己が何であるかなど心底どうでもいいと。彼女が知りたいのは、それではない。
然りとて、命の恩人であり、現在進行形で多大な迷惑を掛けてしまっている目の前の少女がそれを知りたがっているのであれば、答えてやるのが道理だろう。
しかし──。
「……残念ながら、私も私自身が何者であるか分かりません。数日前から
「え?」
記憶が無いと、何気無しにそう語る少女に佐天は目を見開く。
「気が付けば、この地に立っていた。何も知らず、何も分からず、ただ
あまりにも衝撃的な内容に絶句する。それが事実ならば彼女は記憶喪失で右も左も分からない状態でこの学園都市に放り出され、今まで生きてきたのだという。
そして、怪我を負い、血塗れで路上に倒れる状況になるような何かに巻き込まれている。本人は自らをお尋ね者と称していたが、そのような壮絶な境遇に身を置く彼女の心境は想像も付かない。
「しかし、幾つか覚えていることもあります。磨き上げた剣術、顔すら思い出せぬ師の教え、それから……」
少女は言葉を紡ぐ。きっと、それこそが、今こうして自己を構築し、己を己足らしめている要素なのだろう。
「──“魂魄妖夢”」
そして、遂にその名を口にした。
「こんぱく、ようむ……?」
「はい。恐らくそれが私の名前……だと思います。己が何者であるかという問いにおいて、私が答えられるのはそれだけです」
「魂魄妖夢……妖夢ちゃん、ね。私は佐天涙子。えっと、改めてその、よろしく」
唐突に名前を告げられ、一瞬困惑するも佐天はすぐに笑みを浮かべ、自身も名乗り返す。
巻き込まれ、脅されている立場であるにも拘わらず佐天は彼女にも相当な事情があるのだと理解し、何と歩み寄ろうとしていた。
それは呆れ返る程のお人好しさが故か、或いは上述したようにストックホルム症候群に陥り、彼女に対して感情移入してしまっているのだろうか。
自分でもよく分からないが、それでも佐天は目の前の異質な少女のことが目を離せず、心を奪われていた。
あの日、博麗霊夢と出会った時のように──。
「……変わった方ですね、あなたは」
対する少女……魂魄妖夢は、そんな佐天の対応に目を剥き、不思議に思う。
しかし、これだけは言える。
──出来得る事ならば、彼女を
※佐天には半霊が見えないだけで普通に居ます。
みょん「えっ、人を斬るのって駄目なん?(倫理観/Zero)」
学園都市「法律とか道徳とかお知りでない!?」
人里「普通に殺人はご法度だから」
幻想郷「うちじゃなくてこいつがやべーだけだから。ってかこいつ冥界暮らしだし風評被害やめてね」
師匠「剣術だけ教えて隠居するわw」
1面ボス「まともな情操教育してねーわw」
うーん普通に可哀想