とある幻想の夢想天生   作:大嶽丸

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戦闘シーン書くと筆が乗って長くなってしまう…


混沌

 

 

 ──面倒極まりない。

 

 入り乱れる雷霆と斬撃の猛威を潜り抜けながら、霊夢は腹立たしげに舌打ちする。

 

 場は、混沌を極めていた。熾烈なる乱入者はより高出力の雷撃をお構いなしに解き放ち、辻斬りの方はそれに対処しながらも隙あらばこちらへ攻撃を仕掛けてくる。

 

 加えて、両者共に単独でも手こずるような相手。ほんの少しの油断が命取りになりかねない。

 

「六道剣──」

 

──ー念無量劫──

 

 次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 妖夢を中心に、八芒星を描いた剣閃から楔のように斬撃が繰り出され、広範囲を切り刻んでいく。

 

 その中で妖夢は高速で動いており、こちらへと突っ込んでくる。

 

「ッ──!」

 

 どういう絡繰なのか。遅くなっているどころか実際には速くなっている。上半身を仰け反らせてギリギリ回避するも、前髪が数本舞い落ちた。

 

 即座に体勢を整えること無く一瞬で背後へと移動して大幣を振るうが、その時には既に妖夢の姿は無く、空振ってしまう。

 

(あいつ……“亜空穴”にも徐々にだけど対応していってる。つくづく厄介な奴ね)

 

 恐るべき適応力。戦いの中で成長しているのかと思う程に、妖夢の動きはつい先程よりもずっと洗練されている。

 

 霊夢の攻撃を完全に見切るのも、時間の問題だろう。

 

──◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️──

 

 そんな霊夢の危惧など知るはずもなく、知ったところでどうでもいい電撃使いは、無数の()()()を不規則な軌道で降り注がせる。

 

「鬱陶しい……わねッ!」

 

 これを札と針で相殺しつつ、避ける。同時に、耳元でビリッと電流が走る音が聴こえた。

 

「!」

 

「にぃ──ッオラァ!」

 

 認識するよりも早く拳が振り抜かれた。これを霊夢は避けるも、続け様に繰り出された回し蹴りは躱し切れずに二の腕で防ぐという選択を取る。

 

 そして、雷を纏った爆発的な威力を秘めるその一撃で彼女は吹っ飛ぶ。

 

「ッ、くっ──!」

 

 壁を一枚ぶち抜く。電撃使いはそれでは止まらず、稲妻のような動きで吹っ飛んでいる霊夢へと追い付き、追い打ちを仕掛ける。

 

「──痛いわね。少し、痺れたじゃない」

 

 が、ミンチにしてやろうと落とした雷撃は地面にクレーターを作るのみ。

 

 気が付けば、吹っ飛ばされていたはずの霊夢は彼女の背後へと回り込んでいた。

 

「ッ!?」

 

 電撃使いは目を見開きながら振り返る。これに霊夢は大幣を頭部へ容赦無く振り下ろす。

 

「がぁっ……!?」

 

 鈍い音が響く。殺さぬよう加減しているとはいえ後遺症が残るかもしれないくらいの力を込めた。

 

 くらり、と電撃使いの足がふらつく。そのまま霊夢は動きを止めずに、がら空きとなった腹部に掌底を叩き込む。

 

「かはっ──」

 

 脳が激しくシェイクされた状態で体内の空気と胃液を一気に吐き出される。

 

 常人ならば即座に意識を失い、最悪死にかねないが、電撃使いはその顔を苦痛に歪めながらも踏み留まっていた。

 

 そして、その身が青白く発光する。

 

「ッ! チィ──」

 

 即座に飛び退く霊夢。程無くして大規模な放電が周囲を焼き焦がす。

 

 爆炎の中で電撃使いは片膝を突きながらも、健在と言わんばかりに血走った眼でこちらを睨み、笑う。ダメージは確かに蓄積しているはずだが、一向に倒れる気配は無かった。

 

(まだ動けるの? 流石にあれ以上やったら死ぬわよ? 骨を折るくらいだったら再生されちゃうし……あー、ほんと面倒臭い!)

 

 そのしぶとさに霊夢はうんざりする。聖人である神裂やそれと同格な妖夢のような頑強な肉体ならいざ知らず、先程の大幣による一撃より強く殴ると常人ならば頭蓋骨が陥没してしまう。

 

 こちらに殺意が無いことを理解しているのか電撃使いの獰猛な笑みの中に嘲りがあるように思え、余計に苛立ちを覚える。

 

「……存外、甘い。舐められたものだ」

 

 一方、妖夢の方も自分を相手にしている時と比べて手心を加えていることには気付いており、電撃使いを殺せない理由があるのだと察する。

 

 三つ巴の闘いの中でそのような愚行は普通はしない。つまり己を相手にしておきながら、まだもう一方を相手に手加減出来る程度には余裕があるということ。

 

 無性に腹が立った。

 

「──人智剣」

 

 最高速で頸をはねる。電撃使いごと霊夢を葬り去らんと刀を構え──。

 

「ッ……!?」

 

 そこで異変が起きた。平らなはずの地面で踏み外す。力が急速に抜けていくのを肌で感じ、動揺する。

 

 遂に限界(リミット)が来たのだ。

 

「こんな時に──ッ」

 

「──そりゃ幸運ね」

 

 そして、その致命的な隙を霊夢が見逃すはずもなく、次の瞬間には眼前にまで迫っていた。

 

「ッ!! しまっ──」

 

 ──昇天蹴。

 

 くるりと繰り出されたサマーソルトキックが顎を蹴り上げる。

 

「がっ!?」

 

 伝わる衝撃はあっという間に脳まで到達し、妖夢の意識を飛ばさんとする。

 

(──ここで決める!)

 

 そこで終わらせるつもりなど更々無く、霊夢は続け様に大幣を槍のようにがら空きとなった胸部目掛けて突き出す──。

 

 ガキィン!! 

 

 しかし、寸前で防がれる。

 

「ッ──舐め、るなぁッ……!」

 

 クロスさせた二刀の面が大幣を受け止める。魔力を込めた昇天蹴程度では妖夢の意識を奪うには至らず、そしてその膂力はダメージを受けた直後でも霊夢が繰り出した渾身の一撃を防ぎ、更に押し返す程であった。

 

 力負けした霊夢は数m程吹っ飛ばされる。

 

「チッ──」

 

 絶好のチャンスだったのに、と歯噛みする霊夢。ダメージは着実に与えられているが、やはり化け物染みた強靭な肉体と体幹を崩すには、まだまだ時間が掛かりそうだ。

 

 しかし、この戦闘にも漸く終わりが見えてきた──。

 

「おの、れ……」

 

 対する妖夢は息を切らし、口元を拭う。既に彼女は限界に到達しているはずだが、ここまで来て時間切れで終わってたまるかと意地で身体機能を維持していた。

 

 このザマではもはや逃走は不可能。ならば最後まで暴れ、そして必ずや眼前の巫女を斬ってみせると覚悟を決める。

 

「──愚か者めが!」

 

 すると次の瞬間、頭上が光り輝いたかと思えば、雷轟が鳴り響く。

 

「が、がぁっ…………!?」

 

 こちらを無視するなと言わんばかりに放たれた広範囲の落雷。先程よりも明らかに動きが鈍っていた妖夢は反応が遅れ、直撃してしまう。

 

「くっ──」

 

 10億ボルトの落雷。堪らず妖夢は片膝を突き、然れど感電しながらも下手人である電撃使いを睨み付ける。

 

()()風情が──」

 

「…………ッ!?」

 

 これに嘲笑していた電撃使いはたじろいた。己の雷撃を受けたにも拘わらず消し炭にならず、元の肉の形のまま意識を保っていられるとは思わなかったが故に。

 

「もはや一刻の猶予も無し。纏めて切り捨てる……!」

 

 そして、彼女は更に驚愕させられる。何と妖夢は感電を物ともせずに動き出したのだ。

 

 その貌は、正しく人鬼が如く。

 

──未来永劫斬──

 

「ッ──」

 

 地面を蹴り、駆け出すと共に無数の斬撃が範囲内にある何もかもを細切れにしていく。

 

 死に体とは思えぬ業に電撃使いは舌打ちし、迎え撃たんと電気を溜める。

 

「──ええ。速攻で終わらせましょう」

 

 同時に、霊夢もまた勝負を決める為に動く。

 

──夢想封印 瞬──

 

 霊夢の姿が掻き消える。同時に、四方八方から展開される無数の御札、針、光弾──それらが一瞬にして室内を埋め尽くす。

 

「「ッ!!」」

 

 圧倒的な質量と面による絨毯爆撃。それが暴風雨の如く二人を飲み込まんとする。

 

「──上等」

 

 そして、相対した妖夢はこれに迷うこと無く突っ込んで行く。

 

 初めて奴と対峙した時に見たものと同じ。高速で移動しながら大量の光弾を展開していく技。その速度はあの時と違い、瞬間移動しているかの如き──否、実際に瞬間移動しているのだろうが、言ってしまえばそれだけ。

 

 それに翻弄される己ではない。妖夢は既にその反則的な速さに適応しており、弾幕を切り払いながら霊夢の姿を追う。

 

(恐らく動けるのは残りほんの数瞬。ならば、そこに全身全霊をかける──!)

 

 闘気が、妖力が、練り上げられる。停止した僅かな間に弾幕が彼女を覆い尽くすが──。

 

──◼️◼️春風斬──

 

 次の瞬間には、弾幕は一つ残らず切り刻まれて消滅。大海を割るが如く空に巨大な道が作られ、妖夢はそこを一直線に突き進む。

 

「!!」

 

 瞠目する霊夢。気付き、対応しようとした時には既に刃が首筋に触れていた──。

 

 血飛沫と共に、素っ首が宙を舞う。

 

 ──獲った。

 

「なっ──」

 

 妖夢は確信し、然れどすぐに手応えの無さに気付いて愕然とする。

 

 首無し状態の霊夢の姿が、霞のように消えた。

 

(幻だとッ!? 馬鹿な、一体いつから──)

 

──博麗幻影──

 

「最後まで隠しておいて正解だったわね──」

 

 背後から声がする。

 

「ッ──」

 

 妖夢が反応するよりも先に霊夢は彼女の背にソッと触れ──。

 

「これで、本当にお仕舞いよ……!」

 

 同時に、途方もない衝撃が妖夢を圧し潰さんとする。

 

「がぁ……っ……!?」

 

 押し当てられた太極を形取る球体が一気に肥大化する。

 

 それは凝縮された“正”の魔力。人ならざる魔性全てが嫌悪する猛毒に等しき聖なる力は、混種たる故に効力こそ薄いが、それでも効かぬ道理など無く、焼かれるような激痛が全身へ襲う。

 

 陰陽宝玉と同じであり、しかし遥かに巨大なエネルギーの塊が激突する──。

 

「ぐ、ぐぅっ……これしき、で……!」

 

 然れど、妖夢は踏み止まる。無防備な背中で受けながらもどうにかして抗わんとしていた。

 

 一度ならず二度までも。そのようなこと、決して認められるはずがない。

 

──陰陽飛鳥井──

 

 そして、その諦めの悪さにトドメを刺すかの如く霊夢はこれをサッカーボールのように思い切り蹴り上げた。

 

「ぐ、あ──」

 

 致命的な後押しに、拮抗が崩れる。蹴り飛ばされた陰陽玉は妖夢を天高く押し上げ、軌道上にある何もかもを粉砕していく。

 

「……流石にやった、よね?」

 

 フゥと一息吐く。天井を何枚もぶち抜いて吹っ飛んでいったため妖夢の姿は視認出来ないが、あの一撃を無防備に受けて尚、戦闘を継続可能とは思いたくはなかった。

 

 相手が元々不調な様子だったからこそ活路を見出だせたが、もしもそれが無かった場合戦闘はもっと長引いただろう。

 

 となると、消耗していたのは己の方だったかもしれない。霊夢は顔をしかめる。

 

「どっちにしろ、取っ捕まえて色々と吐かせないといけないから確認しに行きたいんだけど──」

 

 背後の瓦礫の山が弾け飛ぶ。

 

「まだあんたが残ってるのよねぇ……」

 

「──ハッ」

 

 弾幕をくらい、瓦礫に埋もれていた電撃使いはボロボロになりながらも未だに健在で笑みを浮かべている。

 

 しかし、これで一対一。見たところ妖夢と比べれば実力は数段劣るであろう彼女単独ならば生け捕りも難しくはないはずだ。

 

「それにしても……顔も能力もそっくり同じだなんて、クローンってのは随分と凄い代物なのね。あんたらを二万人も殺すってなれば、一方通行(アイツ)がその気になる気持ちも分からんでもないわ」

 

「………………?」

 

 少しばかり余裕を感じ、ふと呟く。いくら御坂本人と同等かそれ以上の力を有していようと、所詮は“雷を操る程度の能力”であり、それでは一方通行の“反射”を破ることは不可能だろう。

 

 だが、殺される度に学習し、成長すると仮定すれば、もしかすると、もしかするかもしれない。

 

 霊夢からすれば馬鹿げた実験であることには変わりないが、これだけの力を見せ付ければ、一方通行に期待を抱かせるには充分に過ぎる。

 

 一方、これに電撃使いは笑みを止め、怪訝そうに小首を傾げたかと思えば、露骨に顔をしかめた。

 

「チッ……何だ、()()()()()()()のかよ」

 

「……あ?」

 

「充分に力を取り戻していると思っていたのだが……あの“半人半霊”は勘付いていたというのに、鈍いにも程があるだろ」

 

 額に手をやる。そこには僅かな呆れと明らかな苛立ちが混じっていた。

 

「◼️◼️◼️、◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️。◼️◼️、◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️?」

 

 そして、続けて発せられた言葉は酷くノイズ雑じりで聞き取れず、霊夢は眉をひそめる。

 

 急にペラペラと喋り出したかと思えば、意味が分からない。

 

「……やはり、理解出来ねぇか。アテが外れたか? あの御方の考えに間違いは無いとはいえ、奴に乗せられてカチ込んだのは、失敗だったな」

 

「はぁ? ……さっきからブツブツと、何言ってんのよ?」

 

 何故だろうか。妙な胸騒ぎがする。

 

「知らぬなら、知らぬままでいいとも。()()()()でないのであれば──死ねい、愚か者めが」

 

 次の瞬間、青白い火花が迸り、雷撃の槍が地面を抉り取った。

 

「!」

 

 咄嗟に横へ飛び退いて回避するも、既に大量の雷矢が上空に展開されており、それらが一斉に豪雨の如く降り注ぐ。

 

「馬鹿ね、愚か者はそっちよ──」

 

──夢想封印──

 

 しかし、それらは霊夢に当たる寸前に解き放たれた光弾によって掻き消される。

 

「ッ!?」

 

 同時に、どこからともなく無数の御札が周囲を漂い、鎖のように彼女の四肢に纏わり付いて縛り上げた。

 

「あんた一人なら、どうとでもなる。再生を過信してるか知らないけど、色々とおざなりね」

 

「! こんなもの──」

 

 すぐに放電し、拘束を無理矢理解こうとするが──。

 

「無駄よ」

 

「がぁっ……!?」

 

 霊夢が片手で印を結べば札が発光し、痺れるような痛みが全身を襲う。

 

 元より聖人すらも押さえ込める程の拘束。逃れようと暴れれば暴れる程、その縛りは強まり、動きを封じ込める。

 

「グウゥッ……おの、れ……!」

 

「さて、と……大人しくしてもらうわよ? あんたからも色々と聞かないといけないし」

 

 何やら知った風な口振り。そもそも御坂のクローンだとして、何故強襲を仕掛けてきたのか……疑問は尽きない。

 

 霊夢はソッと撫でるように彼女の額に手を翳す。

 

「ッ──」

 

「ま、しばらく眠ってもらうから」

 

 かつて禁書目録に施した他者を眠らせる(まじな)い。脳震盪や酸欠による気絶が厳しいのであれば、拘束した状態でこういった類いの術をゆっくりと行使すればいいと考えた。

 

 その予想は的中しており、あれだけ殺気立っていた電撃使いは徐々にではあるが、脱力していき、その瞼も落ちていく──。

 

「──えっ?」

 

 その時だった。

 

 背後から声がする。何奴かと霊夢は振り返ると──そこに居たのは現在目の前で拘束している人物と瓜二つの顔をしていた。

 

「……美琴?」

 

 いつもの常盤台の制服ではなく、ラフな格好をしているが、その目付きで霊夢はクローンではなくオリジナル本人であると判断する。

 

 宇佐見も一緒に居るはずだが、姿は見当たらない。一体どこへ行ったのだろうか。

 

「………………」

 

「ん? 何よ? さっきから黙って……あ」

 

 彼女は顔を青くさせており、どうしたのかと霊夢は首を傾げるも己の状況を客観視し、すぐにその理由を察した。

 

「あー、そういうこと。前にもこんなことあったわね。ったく、何でこうも間が悪いのかしら……」

 

 アウレオルス=ダミーを殺した場面を目撃した上条の事を思い出し、頭を掻く。拘束している電撃使いへ注意を向けつつ、誤解される前に弁明しようとするが──。

 

「──何ですって?」

 

 そこで気付く。電撃使いの首がだらんと垂れ下がっていることに。

 

 嫌な予感がした霊夢は咄嗟に顔に触れて首を持ち上げてみれば、それは虚ろな目をしており、冷たかった。

 

(死んでいる……!? 一体どういうこと。さっきまでピンピンしてたじゃないの──)

 

 呼吸はしておらず、脈拍も無い。既に事切れているその姿に、霊夢は目を見開く。それは電撃使いの死に対してでもあったが、何よりも死んだ理由が全く分からなかったからだ。

 

 少なくとも霊夢は相手を死に至らしめる程の攻撃は加えていない。そもそも再生能力を有し、あれだけしぶとかった存在がそう簡単に死ぬとは思えなかった。

 

(能力による負荷? それとも自殺? いや、この感じ──こいつ、まさか最初から……?)

 

 つい先程死亡した訳ではない。死体の様子からそれに気付き、霊夢は余計に困惑する。

 

 ある種のゾンビ。否、激戦を繰り広げた電撃使いは確かに生命力に満ち溢れていた。少なくとも肉体そのものは生命活動を維持していたはず。だが、それは既に死体だったのだから有り得ぬ話だ。

 

 一見すると矛盾だらけだが、霊夢はこれを解決する手段があることを知っており、思考の末に一つの答えを導き出す。

 

 単純なことだ、つまり何かが彼女の()の役割を代行していたということ──。

 

(ああ、気付いてないって、そういうこと……! そりゃ滑稽ね、餅屋が餅相手に見当違いなこと宣ってたんだから)

 

 ここで漸く電撃使いの正体を理解した霊夢は納得すると共に、荒々しく悪態を吐く。彼女らしくない姿であるが、それだけ全く見抜けなかった己の節穴っぷりが許せず、腹立たしかった。

 

 霊的身体(エーテル体)精神的身体(アストラル体)などと呼ばれるそれらへの対処は、他ならぬ霊夢の専売特許であるというのに。肉体無き、或いは肉体に縛られぬ存在。この世界にも事例は少ないが、存在自体はしていることは知っていたが──。

 

(これならそっち方面の結界も張っとくんだった。まだそう遠くへは行ってないはず。今から探せば──)

 

 直ぐ様周囲を見回して見つけ出さんとする。この死体に()()()()()()()()の目的は不明だが、少なくとも野放しにしておいて良い存在ではない。

 

「────」

 

 一方、御坂は茫然と立ち尽くしていた。

 

 違う、嘘だ、何かの間違いだ、そんなことは有り得ない──と、思考でぐちゃぐちゃになる脳内で必死に否定しながらも、目の前に広がるその光景は“あの夜”の事を彼女に連想させてしまう。

 

 地面に突き刺さる機関車、千切れた足、そしてその前に立つ──。

 

「………………あ」

 

 白髪の少年と、霊夢の姿が重なる。

 

「あァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 視界が真っ赤に染まる。頭の中が真っ白になり、あっという間に沸点に達し、考えるよりも先に雷撃を全力で放っていた。

 

「あ──?」

 

 射線上のすべてを焼き尽くす。自分でも驚く程に明確な殺意の籠った攻撃。にも拘わらず霊夢はほんの少し動くだけで容易く避けており、その姿すらも一方通行と同じだった。

 

 だが、これで彼女の前で囚われていた妹達とは距離が離れた。御坂は即座に駆け寄る。

 

「ッッ…………!!」

 

 そして、息絶えたその有り様を確認し、言葉を失う。

 

 冷たくなった頬に触れ、悲痛な表情を浮かべると共に、怒りがこみ上げる。

 

 絶対能力(レベル6)進化(シフト)計画。二人目の候補者──信じたくなかった疑念が、御坂の中で確信へと変わった。

 

「……そう……なのね……アンタも、関わっていたって訳か……ッ!」

 

「はぁ? 待ちなさい、誤解よ。落ち着いて──」

 

 人体など容易く消し炭にしてしまうような、鉄橋での電撃の比ではない明らかに異常な威力を問答無用で放ってきた。

 

 あまりの激昂ぶりに若干困惑しながらも弁明しようとすれば、二発目の雷撃が有無を言わさず真横を通り過ぎる。

 

「……そう。会話する気は無いってこと」

 

 肌を撫でる電熱に、霊夢は顔をしかめる。その鬼気迫る表情を見て、今の彼女には何を言おうとも聞く耳を持たぬのだろうと判断した。

 

「ハァ……儘ならないものねぇ」

 

 溢れる溜め息。上条の不幸が伝染ってしまったか、或いはこうなることすらも何者かによって仕組まれていた事なのか──。

 

 どうであれ、思い付く限りで最悪な展開と言えよう。脳裏に過るのは白井の顔。助けてくれと頼まれ、引き受けながらその助けようとした相手と敵対する羽目になってしまうなど笑い話にもなりやしない。

 

「少し頭を冷やしなさい。正直、今はあなたに関わっている場合じゃあないのよ」

 

 その反面、霊夢としてはそれどころではなく、冷たく言い放つ。電撃使いはもう逃げているだろうが、倒した辻斬りの方も放置したまま。早くしないと戦線復帰するか、逃走する恐れがあった。

 

 漸く見つけた手掛かり。苦労して倒したというのに、逃がしてしまってはすべてが無駄になる。かといって目の前で激昂する御坂を無視する訳にも行かないだろう。

 

「──上等よッ! これ以上、あの子達を殺させはしない……ッ!」

 

 そして、御坂はその言動を挑発と受け取り、より熾烈な雷撃を繰り出さんとする。

 

 霊夢もまた物理的に説得して鎮圧する為にこれと対峙し、迎え撃つ。

 

 二人は致命的に、すれ違っていた。

 






ちゃんと話せば解決するのにすれ違いまくって揉める……仮面ライダー555かな?
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