とある幻想の夢想天生 作:大嶽丸
あとレールガンがブルアカとコラボしたけど御坂食蜂ときてまさかの金属バットさん参戦で普通にビックリした。古代怪獣ツインテールさん……
「何よ……これ……?」
御坂美琴は愕然とする。目の前には、地獄としか形容出来ない光景が広がっていた。
幾度も何かが爆発し、轟音が鳴り響いた。戦いの範囲はどんどん広がっていき、その度に被害が及ばないであろう位置まで逃れたのだが……。
「一体、何が起こってるのよ……!」
隕石でも落下したような巨大なクレーター。そこがつい先程まで操車場だったと言われても誰も信じないだろう。たった二人の能力者同士の戦闘で起きたものだとは思えない有り様だった。
あまりにも次元が違い過ぎる。一方通行も、博麗霊夢も自分相手には微塵も本気など出していなかったのだと思い知らされてしまう。
(さっきまでと違ってやけに静かね……戦闘が終わった? 博麗さん、大丈夫なんでしょうね……?)
しかし、己が実力不足を嘆いている余裕は無く、ただただ霊夢の安否を心配する。
「うっ……」
その時、隣で寝かせていた上条がピクリと動く。
「! 目が覚めたの?」
「み、御坂……」
「良かった……じゃなくてっ、無理に動かないで! 傷が開くわよ!」
ゆっくりと身体を起こす上条。霊夢の手によって傷自体は塞がっていたとはいえかなり血を失っていたはず。その状態で意識を取り戻す頑丈さに驚きつつも、御坂は無事なその姿に安堵する。
「確か俺は……そうだ、博麗! あいつは……!」
「あの人は今、一方通行と闘っているわ。あっちの方で──」
状況を説明しようとした次の瞬間。大穴から何かが凄まじい速度で飛び出して言葉を遮った。
「ッ! 今度は何っ!?」
視線を凝らせば、ロケットのように天高く打ち出されていたのは人影。
そして、その姿は──。
「──博麗さんっ!?」
悲鳴に近い声で御坂は叫ぶ。
やはりと言うべきか、戦いはまだ終わってなどいなかった。
「ッ──やってくれたわね」
途中でどうにか押し留まる。あの勢いのままであれば、危うく宇宙の彼方まで吹っ飛ばされるところだった。
全身の骨が軋む。問題は無いにせよ内臓にもダメージが入っている。寸前で結界を張ったが、その程度では衝撃を殺し切ることは出来なかったようだ。
ちらりと根本から折れ、単なる木の棒と化した大幣を一瞥する。
(修復は無理ね。この前、補充したばかりだってのに……)
長年連れ添ったソレを何の感慨も無く放り捨て、霊夢は穴の底に居る一方通行を見下ろす。
背中から噴出するように生えている、一対の禍々しい“黒い翼”。それ自体が一方通行の出力する力そのもの。学園都市風に言えば、“AIM拡散力場”という奴なのだろう。
(成程。ベクトル操作ってのは……片鱗に過ぎなかった訳だ。あれが、あれこそがあいつの能力の本質なのね)
その力は、もはや科学よりも
(けれど、制御し切れていない)
一方通行の顔を見る。そこに理性は無く、ただ本能のままに暴れ狂っていた。
暴走状態。宛ら上条当麻の右手が損傷した際に現れるドラゴンやその中身のように。その強大な力を一方通行は制御することが出来ておらず、それが噴射の黒翼の不安定さにも現れている。
それは果たして幸か不幸か。どちらにせよ、一方通行は敵と認識した存在を屠らんとする為に、その神が如き力の片鱗を存分に振るう──。
(──来る)
一方通行が一歩、足を踏み出す。それとほぼ同時に第六感が全力で警告する。
踏みしめるだけで一帯の地面が陥没し、黒翼を起点に不可視の力が空間を歪ませながら遥か上空を漂う霊夢に一瞬にして接近する。
「ッ───」
寸前で霊夢は転移した。そして、降り注ぐ無数の光弾が荒れ狂う力とぶつかり合う。
(やっぱり、追ってくるわよね)
どうやって認識しているのか、瞬間移動する霊夢を即座に感知して黒翼が超音速で追尾する。夢想封印に関しても波状に発生する力場によって相殺されているようだ。
否、むしろ押されている。ならば弾数を増やすまで。
「──ihbf殺wq──」
ノイズ混じりの、言葉かすら怪しい言語。獰猛な笑みを浮かべたその顔には、純粋なる殺意と闘争本能のみが存在していた。
「ったく……自分の力に振り回されてんじゃないわよ、最強」
夜空を埋め尽くし、まるで奔流する荒波のようにうねり幾千幾万の光弾が巨大な塊となって一方通行を飲み込む。
その魔力は無尽蔵だと言わんばかりの、拡散させればこの学園都市全域を飲み込まんとするであろう圧倒的な物量。当然一つ一つがパターンを変えており、反射対策が為されている。
「sq無h──」
──が、そんな制圧攻撃の中を一方通行は構わず突き進む。
「!」
黒翼が生き物のようにうねり、届く範囲の全てを無に帰す。上空で行われたそれの余波は地上にも影響を与え、台風の如き突風が巻き起こって街路樹は倒れ、ビルの窓ガラスが次々と割れ、人々は戸惑う。
そんな恐ろしき一連の行動は迎撃というよりは予備動作であり、黒翼が裂けるようにして無数の黒い羽のような断片が出現し、機銃の如く放たれる。
「チィッ──」
貫通力が高いのか。羽の散弾は光弾を容易く貫き、尚も勢いは弱まらない。
もはや周りの被害を気にする余裕は無い。霊夢は瞬間移動を交えつつ最大速度で飛行し、回避に徹する。満遍なく放たれたそれら一つ一つに膨大なエネルギーが秘められており、まともに受ければ炸裂して全身が断裂してズタズタになるだろう。
「はっ……さっきよりも芸が無いんじゃない?」
隙を見て、霊夢は次なる一手を打つ。先程と同様に巨大な陰陽玉を形成し、押し潰さんとする。
「──gh壊a9y殺f…………ッ!!」
これに対して一方通行は一歩も退くことなく、喉が潰れんばかりの絶叫をあげながら腕を振り上げる。その動作だけで自由落下していた陰陽玉に黒翼と不可視の力が衝突し、せき止められた。
損傷した傍から魔力が供給されて再生する陰陽玉。しかし、拮抗しているように見えてこれ以上進むこと無く、逆に増幅していく力によって徐々に押し上げられていく。
「へぇ──」
その罅は、どんどん広がっていく──。
「こりゃ、ちょいとまずいかも……ね!」
そして、陰陽玉が砕け散った。
出鱈目な出力。この時点で少なくとも攻撃力に関しては霊夢の有するあらゆる攻撃を超えているのが確定する。先程まで使っていたプラズマや竜巻といった派手な攻撃を使わなくなったのは、暴走しているからというのもあるが、単純に破壊力と殺傷能力に関してはそれらと比べ物にもならないから。
恐らくあの黒翼そのものが幻想殺しでも打ち消せないレベルのエネルギーに満ちているのだろう。
「なら、二個目はどうすんの?」
「ッ!?」
この結果を先読みして予め形成していたのか。直ぐ様、もう一つの陰陽玉が上空から落下する。これに一方通行は同様に打ち砕かんと──。
「んでもって、三個目……!」
──黒翼を振るった矢先に背中に衝撃が走る。もう一つの陰陽玉が下方から迫り、挟み撃つように押し潰す。
二つの陰陽玉は互いに反発し、ぶつかり合いながらも膨れ上がるように肥大化していく。それに伴い修復速度も段違いだった。
「さて、これでやられてくれると助かるんだけど──」
次の瞬間、陰陽玉が爆発する。
「ま、そんなことはないか」
「殺yps──」
爆煙から姿を現した一方通行。あれだけの猛攻に対して目立った外傷は無く、あの黒翼が発生する前に受けた怪我も意に介していない様子である。
全く効いていないのか。それとも暴走状態であるが故に、ダメージを無視して動いているのか。
どちらにせよ、こちらからの 有効打はゼロ。現状いくら攻撃しても黒翼の力によって破られるばかりであり、スタミナ切れした瞬間に終わる。
端的に言えば、霊夢は追い詰められていた。
「ふぅ……やるじゃない」
そんな危機的状況にも拘わらず、霊夢は心底感心した様子で呟く。
「ここまでの力を隠してたなんてね。それとも、実験とやらの成果かしら?」
その問い掛けに対する返答は当然無く、黒翼がまるで手足のようにうねり、付近のものを粉砕しながら迫る。
「──良いわ。気が済むまで、存分にやるとしましょう」
絶大なる力から逃れつつ、霊夢は
思い返すと、初めて一方通行と対峙した際にも同じ感情を抱いていた。己が敗北するかもしれないという危機感。いつもなら面倒極まりなくうんざりするであろうこの状況に、今の霊夢は高揚し、心地好さすら感じてしまっている。
一方通行は自分とは違う。何もかもを諦め、しかし不満を抱き、渇望して止まず、ただただこの夢無き世界を呪い、悲観しているだけの哀れな少女とは違い、現状を打開しようと必死で抗っている。
その過程で二万人を虐殺しようと、霊夢は決して責めはしない。むしろそうまでして“無敵”とやらを、“絶対”とやらを得ようとしている彼に対して敬意すら払うだろう。
アウレオルス=イザードもそうだった。あの男もまた己が目的の為に必死で見苦しいまでに足掻いたからこそあそこまで厄介だったのだ。
そのどれもが、霊夢には無いもの。
故にこそ。
「──4yjrp滅qw──」
「──ええ。来なさい。アクセラレータ」
ただ己を打倒する為だけに、この土壇場で新たなる段階へと至った彼に対し、霊夢もまた全身全霊を以て応じる。
二つの力が衝突し、学園都市全体が揺れた。
「──まずいな」
窓のないビルにて。統括理事長アレイスターは現在起きている状況について溜め息交じりに呟く。
恐れていた博麗霊夢と一方通行の衝突。その過程で現出したあの“黒い翼”──それはプランの要でもある“ベクトル制御装置”が完成したことを意味しており、思わぬ幸運であったが、それを加味したとしてもこれ程のイレギュラーは到底許容出来ないものであった。
今頃実験を主導している研究者達は予想外の事態に混乱していることだろう。そもそもこの有り様を観測出来ているかすら怪しいが。
「儘ならないものだ。彼女が来る前に幻想殺しが一方通行に勝利する……というのが、最も望ましい結末だったのだが」
当然と言えば当然であるが、一方通行は過去の戦闘経験から反射を突破する者への対策を用意していた。それだけではなく、上条当麻が記憶喪失で戦闘経験がリセットされていたのも要因だろう。万全であればもっと上手く対応していただろうし、最悪右手の
加えて、博麗霊夢がこちらの足止めを物ともせずに想定よりも早く駆け付けた。これに関しては岡崎夢美や宇佐見菫子か……十中八九、他の介入があったからであろう。
「ふむ。それは
同じ空間に居る、葉巻を咥えたゴールデンレトリバー……木原脳幹が問う。
「それに関しては問題無い。博麗霊夢が介入した以上、実験が中止されるのは必然。が、それ以前にこのままではこの街そのものが存続の危機に陥るかもしれないな」
それはつまり二人の戦闘の余波だけでこの学園都市が消失する可能性があるという意味。確かに彼らにはそれだけの力があった。
「ほう? では、“A.A.A.”を投入するかね? 尤も、我々の直接介入は最後の手段だと思うが……」
「その通りだ。こちらの
「……一方通行が敗北するのは確定事項かね?」
脳幹が訝しむ。一見すると、霊夢と一方通行の力関係は拮抗している。むしろ単純なパワー勝負ならば一方通行が優っているようにすら感じるし、彼の力は暴走状態とはいえその解析力は健在であり、戦闘が長引くにつれ強まり、成長していく。
対する霊夢もまた、底を見せていない。脳幹から見れば勝敗は未だに読めないように思えた。
「当然だ。むしろそれ以外には有り得ない。結局のところあの力は、“オシリスの
かの巫女の能力の真髄。
イレギュラー。
存在するべきではない力。あってはならない不確定要素にしてスイッチの無い核弾頭。それこそが世界最高の魔術師がたった一人の少女を警戒する最たる所以。
本来であれば今すぐにでも排除すべきであるが、彼にとって彼女は触れることすら憚れる“パンドラの匣”でもあった。
その蓋を開くのは、少なくとも己ではない。
「さて、君はどうする? 彼女は再び
「…………?」
ぽつりと溢した、その呟きが誰に対するものなのか、長年連れ添った友犬は理解出来なかった。
けれど、これだけは理解する。この時折その場の思い付きで行動する自堕落なボンクラはきっと、この由々しき事態を楽しんでいるのだと。
(ハァ……博麗霊夢に個人的に興味を抱いている私が言えたことではないがね。君が私の知らぬところで
心の中で溜め息を溢し、今後の展開からどういった対処をすべきかを予測して思案する。
どう結果が転ぼうと、脳幹は変わりはしない。ただ己が与えられた役割を遂行するのみだ。
「………………」
場面は変わり、宙の上。“彼女”はつまらなそうに幻想を生きる巫女と神の使いに匹敵する存在へと至った者との戦いを眺めていた。
存外、
そして、“彼女”は後者であった。
「………………」
──ここで消すべきか否か。
顔に手を当て、思案する。その在り方は歪であり、まだ充分に修正が利く。リスクを考慮すれば手を出すのはまだ早計に思える。
然りとて、もはやアレへの直接的な干渉は不可能。自動書記の時のような御膳立ては出来ない。
あの“銀の星”を名乗る魔術師は傍観に徹し、きっと己が動くことを望んでいる。そうすれば不確定要素が消えるし、自身の戦力を隠すことが出来るのだから。
そして、その目論みは期待半分。実のところ放置しても構わないとすら思っているのだろう。
それは“彼女”とて同じだった。どちらでもいい。だからこそ、決めあぐね、どうしたものかと悠長に思案に耽る。
「……さて、どうする?」
最後に、誰かの名を口にした。
虚空に向けた問いかけに答える者など当然居るはずもなく、“彼女”の発した貴重な言葉はそのまま消えて行く。
☆「もうどうとでもなれ」
天使語、それっぽく書くの難しい。