アルターワールドフロンティア 偽りのメサイア 作:Blood Knight FUP
リトルウィングで平和を謳歌しているメサイアは、また何時ものようにカフェへと赴く。
最近は任務も特に無く羽を伸ばして安らいでいるのか、これが日課になりつつあった。
「すみませーん!コーヒー一つ下さい!」
「畏まりました。」
私が店員にそう言って、鼻歌を歌いながら待っていると、そこへ一人の少女が此方を見てやって来た。
「誰かと思えばメサイアではないか。今日もここに来ていたのだな?」
「あ、おはようナギサ!いやぁ、これが日課になりつつあるもので……それでナギサはどうしてここに?」
「あぁ、丁度貴女を探していてな?」
私がそう聞くと、ナギサは思い出したかのようにそう言い、向かいの席へと座って私を見る。
「え……私を?」
「あぁ、以前から貴女の事で聞きたいと思っていた事があってな。以前は中々聞く機会が無かったが今なら聞けると思って探していたんだ。」
「そ、そうなんだ……それで、聞きたいことって?」
私は自分について聞きたいことがあることに内心驚きつつ、質問の内容をナギサに聞いた。
すると、ナギサは少し深刻そうにして口を開く。
「貴女とここで会った当初に口にしていた、
「っ……!」
私はそれを聞いた途端に賑やかな笑みが消え失せ、手が止まった。
「貴女の名前にあるアルターとはなんだ?」
ナギサは直球でそう聞いてくる。
そう、私の本来の名前はメサイアではなく
「
「それは……」
「共に戦ってきた誰もが貴女について
ナギサの言う通り、私は誰かに私の事を深く語った事は無い……と言うより、どちらかと言うと
「そうね。私の事だけ何も知らないままってのもあれだし、折角だから少しだけ話すんだけど、なんと言ったら良いか……」
「なんだ?」
私は正直余りにも語れることが無さすぎて、話してもそこまで過去話に花が咲くわけでもない。
「本当に、知りたいの?」
「あぁ、知りたいからこうして今貴女に聞いているんだ。だから勿体振らないで教えて欲しい」
「あぁ、うん……そうね。分かったわ」
私はナギサに再度そう問い掛け、何の迷いもなくそう返されてしまう。
ここまで来ては流石に語るしか無いが、せめてしんみりした空気にならないことを祈ってゆっくりと深呼吸し、口を開く。
「……私ね、フリーの傭兵をやる以前からの記憶がごっそり抜けててさ、自分の名前とその意味以外何も思い出せないんだよね。」
「なっ!?」
ナギサは私の発言に目を見開き、固まってしまう。
まぁそりゃそうだよ。なんせ今までそこそこの期間戦ってきた仲間が実は記憶喪失でしたーなんてなれば基本的に誰でも驚く。
仮に私が逆の立場であっても多分ナギサみたくビックリしてたと思う。
「それでね。フリーの傭兵やってた頃の私って、割と暗くてただ流れ作業のように仕事をしてたんだ。」
「……魔物討伐とかか?」
「それもあったけど、昔って結構酷い依頼も多かったんだ。それこそ、一度だけ暗殺の仕事とかもあったくらいにはね?」
「あ、暗殺!?」
ナギサは私の口から暗殺と言う物騒なワードが出てきたことに驚愕し、開いた口が塞がらずにいた。
「うん……まぁ、結局失敗した挙げ句囚われの身になっちゃったんだけど。」
「そ、そうだったのか。」
「うん。でもね、そこの偉い感じの人が私をどうしてだかベッドまで運んで治療してくれてさ、その後に私を引き取るって言うからもう私まで驚いちゃってさ、そしたら本当に引き取って貰っちゃったの。」
そう言い、私はあの頃の事を思い出すように天井を眺めた。
────それは暗い夜の某所での出来事。
私がまだフリーの傭兵だった頃、ただひたすらに何も考えずに仕事をこなして生きていのだけど、そんな私にも御得意様みたいな人達がいた。
基本的にその人達から仕事を受け、魔物退治や物探しをやっている。
そんなある日、私は何時ものように仕事を受けるのだが、今回の仕事は所謂暗殺と言うモノで、とある偉い龍人を始末しろだと言う。
正直暗殺……と言うか仮にも人殺しをしたことの無い私からすれば中々に馬鹿げた任務だったんだけど、その頃の私はまぁ馬鹿で少し考えはしたが、これからの事を考えて後々こう言う任務が増える可能性も考慮し、直ぐに仕事だからと割り切って受けてしまったのだ。
そして、その夜……遂に作戦は決行された。
「此方アルターメサイア、位置に着いたわ。」
『了解した! 目標は恐らくその屋敷の最上階に居るだろう……何としてでも始末するんだ。良いか? 余計なことは考えずに目標を始末することだけに専念しろ。』
「……分かった。」
そう言って私は御得意様御用達の無線を切り、フードを深く被ってから動き始める。
正直気は乗らない……これからどういう人物であれ、見ず知らずの人間を殺さなければならないのだ。
「……しかしなんだろう? 誰かに見られてるような気がする。」
私はそう言い、言い知れぬような視線らしきものを感じて辺りを警戒するも、それらしき物は一切見当たらない。
「何もなさそうだけど、考えても仕方無い……かな?」
そう言って切り替えた私はそのまま、屋敷へと近付く。
「今の段階で視認出来る見張りは……一人? こんな明らかに大物が住んでそうな屋敷の外の見張りが一人ってどう言うことなの?」
私は戸惑いつつその見張りの動きを見る。
見張りはどうやら屋敷を入口付近を主に左右に移動して見張っている。
そのままスルーして入ろうと思えば入れなくも無さそうではあるが、その場合入口の鍵を見つけるか扉を破壊するかしなければならない。
……キーピックも考えはしたけど良く考えたら私暗殺とか盗人の技術とかないからそう言うのは出来ない。
つまり、見張りから鍵を奪うのが得策……な筈。
「……っ!」
「ぐはっ!?」
先ず手始めに目先に映る見張りの一人を視認し、違う方へ視線を向けて歩き始めたと同時に音を立てずに接近し、うなじに軽く衝撃を与えて意識を奪う。
「……よし。先ずは一人」
そう言い、辺りを警戒しながら見張りの荷物を漁り、鍵を探す。
警備を殺さなかった事に関しては恐らく私の殺したくないと言う本能……つまり殺すことへの恐怖が出た結果と言うことなのだろう。
だが、彼等から言われた通りにしてるから間違いでもないと言い聞かせて気持ちを切り替えた。
「次は彼処ね。」
そう言い、私は次の見張りを遠くから視認し、その辺……と言うか至るところに飾られた骨董品らしき物を一つ掴んで近くの床へと投げ入れた。
幸い相手は此方を見ておらず飛んできた方向までは分かってないのか、その骨董品の割れる音に導かれて駆け出してくる。
「これは……一体誰が? ガハッ!?」
見張りの男がそう言い、割れた骨董品を眺めている間に背後にそっと回って同様にうなじに衝撃を与えて気絶させた。
この二人は恐らくだが起きても直ぐには駆け付けられない筈。
そう考えながら私は奥へと進んだ。
しかし、奥へと進むにつれて違和感を覚え始めた。
「……どう言うこと? ここ割と広いのに、どうして警備が殆んど居ないの?」
そう、私が抱いた疑問とは警備が余りにも少なすぎる……否、ここまで来るとほぼ居ないのと変わり無いくらいであった。
何かで監視されてる感じでもなく、どちらかと言うと警備が居ないと簡単に侵入される様な状態と言っても良い。
「可笑しい、場所の割に余りにも警備やセキュリティーが緩すぎる……まさか、もう気付かれてる?」
私はふと、そう考えた。
最悪な結論ではあるが、ここまで来るとそう考えてしまう程にセキュリティーの緩さが出ていた事に困惑せざるを得なかった。
そしてそのまま、目標の居る最上階に辿り着いた。
「……」
最上階の奥の一室をひっそり眺めると、一人の男性が正座して外を眺めていた。
こんな警備が少ない中で何の警戒もせずに外を眺めている男に、私は思わず呑気だなと思ってしまった。
「良い月夜だ。」
「……?」
すると、突然男が口を開いてそう言い始めた。
「暗い世界を照す一筋の光……或いは希望とも言うべきか。」
「……(奴は何を?)」
私が男の急な発言に戸惑っていることなどお構い無しに、男は言葉を紡ぎ続けた。
「その光がどれだけちっぽけで弱いものであったとしても、何時かは世界を照らす希望へと昇華し、あらゆる命を優しく包んで癒す。そして、新たな未来を……新たな時代へと導くのだ!」
男は私の方になど見向きもせずに空に向けてそう熱く語る。
私は戸惑ってただただ様子を伺っていた。
「……さて、そんな光差すこの場にも奇妙な魔の手が忍び寄ってるようだが?」
「っ……!?」
「もう隠れる必要は無いぞ?
男はなんと最初から私が居ることを分かっていた上で先程の言葉を発していたと言う。
私は思わず声に出てしまうが、最初からバレてるなら関係無い。
私はそっと部屋に入って行く。
「ほう? その手の輩で普通に入ってくるのは初めてだな。以前の奴等ならばバレたとわかった段階で殺しに掛かるのだが……」
「生憎簡単に突っ込むと痛い目を見るなんてのは今までやって来た魔物退治で充分理解させられてるから。」
「ほぉ? 魔物退治か。成る程、暗殺が主な家業かと思えば、何でも屋……つまり傭兵だな?」
男は意外そうな表情をしながらそう言い、私がフリーの傭兵であることを言い当てる。
「……」
私は何も答えず、ただじっと相手を観察する。
目を離せば何が起こるか分かったもんじゃないと、本能的にそう感じさせる程に目の前に居る男の存在感と発せられた力、そしてその眼光から身体の芯まで伝わってきた。
私は思わず息を飲み、震えそうになった身体を限界まで抑え込み、目先の男に集中させる。
「……沈黙か。まぁ良い、どの道これから貴様を捕らえてその隠れた面を拝んでから色々聞けば自ずと分かることだ。」
そう言い、男は手に持っていた大剣を握り締めて私を睨む。
「勝つこと前提? 言っとくけど、簡単に殺られるつもりは無いわよ。」
「あぁ、私も簡単に殺されてやるつもりはない。」
「なら……」
どちらも互いに命を譲るつもりはないと言い、構えを取った。
ならば、互いにやることは一つだ……
「「一秒でも早く……
そう言い、互いに一歩を踏み込んで剣を振るい、互いの刃が鉄と鉄の音がぶつかり合って火花が散り、鍔競り合いが始まった。
私は、相手の恐ろしい程の腕力に圧されそうになるも、引くこと無く全力で押し込み、前へと一歩踏み込む。
「ほう? 少しはやるじゃないか。 ただの傭兵としては勿体無いな。」
男は楽しげにそう言い、私の押し込みに対し余裕の態度で押し返そうと更に力を込めた。
「ぐっ……! まだ本気じゃないって思ってたけど、キツいわね!」
「当たり前だ、殺しもしない暗殺者相手に本気など出すわけないだろう? 出して欲しければ、私に本気を出させて見せろ。」
「っ……上等よ、その余裕崩してやるわ!」
そう言い、私は剣で相手の押し込みを受け流すように反らして男は隙を晒してよろめいてる内に袈裟斬りをしようとする。
「先ずは一手ッ!」
「甘いな?」
「……え?」
私が袈裟斬りを決めようとすると、よろめいて隙を晒していた筈の男が片腕から武器を手放して私の腕を打ち上げるようにして私の攻撃を防いでそのまま、もう片方の手で床へと落ち行く武器をキャッチし、そのまま振り上げる様に私の身体を切り裂いた。
「ッ!? がふっ……!」
私は余りの痛みに声すら上げられず、そのまま吐血し痙攣した後、そのまま仰向けに倒れてしまう。
その攻撃は己の身体に深々と入ったせいか、意識が朦朧として感覚も消えてきた。
あぁ、私はここで死ぬのか……長生きしちゃった割には、呆気ない最期だなぁ。
「……」
男は私を見て驚いてる様子で何か言っているみたいだけどもう何を言ってらのかすら聞こえないせいで分からず、そのまま意識が途切れた。
そして暫くして私が目を覚ますと、見知らぬ天井が見えた。
「……」
私は、ボーッとした頭で何故自分が生きてるのかを考え始める。
あの時、確かに私は胴体を深く切り裂かれて絶命した筈だ。
勝ちを確信し、切り裂こうと剣を振るった筈が、気付けば私が隙を晒して切り裂かれて死ぬ筈だった。
なのに、何故私はベッドの上で眠っているのだろうと考えていると、部屋の扉が開かれた。
「おお、目が覚めたか。」
「……アンタは。」
部屋に入ってきたのは、あの時に斬り合いをしていた男だった。
「具合はどうだ?」
「……特には。」
私は念のため警戒しながらそう答える。
しかし、あの時の様な圧や殺気は感じ取れず、少し戸惑ってしまう。
「そうかそうか! どうやら秘薬が良く効いたようだな?」
男は嬉しそうにそう言い、満面の笑みを浮かべて料理の乗ったトレーを横にあるデスクに置いた。
私は男の意図が掴めずに困惑してしまう。何故暗殺しに来た相手にこんなことをするのか理解できなかったのだ。
「腹が減ってるだろう? これを食べておくと良い。」
「……どうして。」
「どうして、とな?」
私はその行動が理解出来ず、ついそう言ってしまう。
男は私の発言の意図に気付いてないのか首を傾げる。
「私はアンタを殺しに来たんだよ? なのに、治療して料理まで出して……何でなの?」
「…………」
私がそう問い掛けると、男は黙って真顔になる。
暫くして、男が口を開いた。
「少し、
「子供……?」
「あぁ、その子はな? ある事件が原因で行方不明になったんだ。」
そう言い、男から語られた内容によると、どうやら戦友である男の子供が二人居て二人と母親が行方不明になり、その戦友は死亡したと言うものであった。
その事件もどうやら
「その子とは何度か会ってるんだが、どうにも今の君と似ているんだ。」
「つまり、その子供かどうか判断するために生かすってこと?」
「それもあるが、単純に君に興味が湧いているんだ。暗殺しに来たのに警備を一人も殺さず来た事とかね?」
「それは……」
私はそう返されて言葉を濁してしまう。
当然だが、普通に考えたら暗殺しに来た人間が警備を一人も殺さずに気絶させ主犯だけ始末しようだなんて正直かなり異常ではある。 まぁ、私的に言えば出来るだけ殺しはしたくなかった……ただそれだけだから深い意味なんて特に無い……筈。
「……それより、何を聞こうって言うの?」
「そうだな……
「バル……ガス?」
「そうだ。」
私はバルガスと言う名前を頼りになけなしの記憶を振り絞って遡る。
しかし、当然出てくる記憶はほぼ魔物狩りをしてるところだけでそう言った名前は覚えていなかった。
ただ、どうしてだかその名前に懐かしさを覚えている自分もいた。
「分から……ない。」
「……じゃあ、
「ディード……? いや、無い……わね。」
私はディードと言う名前を聞いた途端に、何故か悪寒が走って震えてしまった。
先程のバルガスと言う名を聞いた時と違い、背筋が凍ったような恐怖心を覚えてしまうのだ。
男は恐らくある程度私の反応を見て何かあるとは思ってるものの、確証は無さそうであった。
「そうか、ならそうだな……とりあえず君の名前を聞いておきたい。」
「名前? 私は、アルター……メサイア。」
男はそう言い、私の名前を聞いてきたので、まぁ名前くらいならと私は普通に答えた。
すると、先程まで賑やかな表情だった男は電撃が走ったかの様なモノへと変わり、目を見開いていた。
「あ、ぁぁ……」
「ど、どうしたの? そんな顔して……」
「そうか、やはりそうだったか。」
男はそう言うと震え出し、良く見ると涙を流していた。
「な、なんで泣いて……」
「いや、何……嬉しくてな?」
「う、嬉しい?」
「あぁ、会いたいと思っていた者に会えた喜びとでも言うのだろうな?」
「わ、訳が分からない。」
男は泣きながら私の問いにそう返し、私は男の泣く理由が理解出来ずそう口にした。
実際私からすれば殺しに向かった相手に会えて嬉しさの余り泣いてると言ってるようなものだ。
ここだけ見れば恐らく余りにも訳の分からない事を言ってるなんて言われて当然な程異様な状況だと言えよう。
しかしこれは序の口であり、この後に男は更なる爆弾発言をしたのだ。
「なぁ、これから行く宛はあるか?」
突然男は私にそんなことを聞いてきた。
「え? あぁ、多分組織には切り捨てられてると思うよ?」
そう言い無線を繋ごうとするも、向こうと繋がらなくなっており、組織に見捨てられたことが分かる。
「これからどうするんだ?」
「任務も失敗したし……手間を掛けないよう大人しく自害するわ。」
「……それはならぬな?」
そう言い、私の腕を掴む。
その手にはかなり力が入ってるのか、正直掴まれた腕から激痛が走る程であった。
「っ……楽に自害されるより処刑して惨たらしく殺す方がお好み? 余り痛い死に方は御免と言いたいけれど、捕まった私に拒否権は無いわ。」
そう言い、目を瞑る。
せめて。何も見ずに終わろうと本能的な死への恐怖を少しでも和らげる為に。
せめてこれぐらいは許して欲しい。 死への恐怖なんて割と誰にでもあるものなんだから……
「安心しろ、殺しはせん。」
「……奴隷にでもするのかしら?」
「そんなことせん。 と言うか発想がひねくれすぎだろう?」
「そう?」
「自覚が無いのか……うーむ、ならこうしようか!」
そう言い、男は席を立って私に手を差し出す。
「な、何……その手?」
「君、宛が無いならここで住み込みで働いてくれぬか?」
「…………は?」
私は最早男の言うことが理解出来ず、開いた口が塞がらなかった。
一体彼は何を言ってるのか、私には理解が出来なかった。
そして私がそう言うより先に、男は口を開いてこう言う。
「なんでと言いたげだが、君はもう私や周りを殺さない。 そう確信した上で今こうして君にそう言ってるんだ。」
「そんな確信なんて何処に……」
「あるさ。 君は、
男はそう言い、懐かしんでるような感じにも見えた。
「……どう言うこと?」
「いや、此方の話さ。 兎に角、君は私が引き取る!」
「だから私は……」
「諦めるな……己自身を、己の人生を!」
「っ……もう、好きにして。」
私は真剣な眼差しでそう言い男に呆れ返りつつ、最早考えることを放棄して男の提案に乗ったのだった。
「あぁ、懐かしいなぁ……余り良い思い出と言うべきかは置いとくとして。」
「なんと言うか、今の貴女からは想像出来ないな……」
私は思い出に浸る様にそう言い、ナギサはそんな私を見て今の私では想像出来ない様な過去だと言われた。
まぁ、人生何が起こるか分からないってことだよね。
「まぁ、その後は色々あってエミリアとレリクスで会った感じかな?」
「な、成る程。 まさか貴女にもこう言う話があるとは……続きを是非とも聞きたいとこではあるが……」
「き、聞いても楽しくないよ? ほら、楽しい話で盛り上がりたいし、ずっとしんみりしてばっかりじゃああれだし……ね?」
そう言い、私は
ナギサも渋々ながら別の話題に乗り、そこに仕事終わりで来たエミリアも混ざって夜になるまでこのリトルウィングでのこれまでの思い出話に花を咲かせていた。
そして、夜中の一室にて……
「……」
エミリア達と解散した私はベッドでうつ伏せになりながらあの続きを少しだけ思い出し、シーツを掴む手に自然と力が入り震えていた。
「……どうして、私だったんだろう。」
ふと、震える声でそう言葉を溢す。
先程まで明るかった彼女の面影は無く、ただただ消え入りそうなまでに弱々しく震えていた。
幸い他の人には聞かれておらず、防音もそれなりに利いてるのでこんな姿を聞かれたり見られる心配もない。
「……本当に、私は生きていて良いのかな。」
そうして絞り出したその問いは、誰にも届かず消えて静寂が暗い自室を支配する。
彼女が思い出した記憶の最後……それは、あの頃の自身を変えてくれた人達が、
「もう、分かんないよ……」
そう言ってそっと涙を流し、気が付けば眠ってしまっていたのだった……
……
ファンタシースターポータブル2の主人公の過去って無いよねってことで何となくそれらしいのを書いてみました。