アルターワールドフロンティア 偽りのメサイア 作:Blood Knight FUP
駒王町に存在する私立駒王学園……その、旧校舎にあるオカルト研究部の部室にて、赤髪の女性……リアス・グレモリーが焦燥した様子でソファーに腰掛けていた。
「一誠……本当に、何処に行ってしまったの?」
リアスの口から溢れたのは、不安に駆り立てられた者の様な……そんな不安気な声だった。
「彼が行方を眩ませてからもう1ヶ月経ったけど、未だ手がかりの一つすら掴めていないわ。」
リアスのその問いに答えた隣にいるポニーテールの女性……姫島朱乃は紅茶を淹れてテーブルに置く。
しかしながら、朱乃のその表現も何処か暗く悲しげなのが分かる。
あの堕天使達との一件以来、一誠は行方を眩ませてしまい、それからもう1ヶ月は経過しているのだ。
アーシアも転生悪魔ではあるけどしっかりと生きていて祐斗や子猫も学校や悪魔としての活動の合間を縫って捜索していたが、朱乃の言う通り未だ手がかりの一つすら掴めなかった。
例の廃教会も見に行ったりもしたがやはりその時には気配なんて微塵もなく見つかることは無かった。
天野夕麻の生前での行動も思い返して調べたが、デートスポットを回っても結果はご覧の有り様……更に言えばその間にライザー・フェニックスとのある一件も絡み始め、それも相まって流石のリアスも焦りを覚えていた。
「朱乃、今日の夜にもう一度だけあの教会へ向かうわ。 小猫達にも伝えておいて頂戴。」
「えぇ、三人が戻り次第その様に伝えておくわ。」
リアスは朱乃にそう伝えると、立ち上がって足早に部室を後にする。
朱乃は敢えて何も聞かずにそっと目を伏せ、リアスの心情を察して、ティーカップを手に取り窓から空を眺めた。
今のリアスは明らかに精神にかなりの負担を掛けてしまっていた。
一誠が行方不明になって1ヶ月経過した今でも見付からず、その間にもライザー・フェニックスとの婚約の話が自分の意思を半ば無視する形で進められてるのだから当然と言えば当然なのだが、リアスとしても精神的に限界が近かったのだ。
「何事もなければ良いのだけど……」
朱乃のその不安に満ちた言葉は、誰にも届かずに消えたのだった。
ところ変わって、教会で一人一誠の帰りを待っているメサイアは、彼の指示通りに教会で待機していた。
「堕天使に襲われて正直此処から抜け出したいけど、彼の言ってたことも間違ってない以上下手に動けないし……はてさて、どうしたものかな。」
私はあのドーナシークと名乗った堕天使に何故か襲われ、なんとか撃退……で良いのか分からないけど追い返すことが出来てそのまま長椅子にまた座っていた。
本音を言うなら今すぐ抜け出して帰りたいところだけど、元の場所への帰り道とか分からない上に此処を出たら未知の世界……知識も無しに下手に出れば何が起こるか分かったもんじゃないからそう言うわけにも行かないが、何もしなければ変わることもない。
……ホントにどうしてこうなったのか、これが分からない。
「……最悪、此処を出るべきかな。」
そうぼやいてると、教会の扉が開かれて兵藤さんが帰ってきた。
「戻ったぞ……って、おいなんでこんなに荒れてる?」
「え? あー……実は、ちょっと堕天使って人に襲われまして……」
「堕天使だと!? どんな奴だ? 名前は?」
私がそう返すと、兵藤さんは表情を険しくしてそう問い掛けてくる。
「えっと、確かドーナシークって名前だった筈ですが……知り合いですか?」
「知り合いもなにも、協力者だ。 ったく、ふざけた真似を!」
そう言うと、苛立ちを隠さぬまま地下へと向かおうとするが足を止めて再び私を見る。
「そうだ……一応釘を刺すようで悪いが、俺達のことは他の奴等には他言無用で頼む。 一応、この町の管理者とは過去に関わりがあって顔を知られてるんだが、居場所がバレると少しばかり不都合なんだ。」
「え? それって、どういう……」
「……元眷属さ、今の俺は恐らくは
「ッ!? もしや、貴方は?」
兵藤さんはそう言うと、私が言葉を紡ぐ前に兵藤さんはそのまま地下へと去っていく。
そうか、彼もまた悪魔だったのか……全く気付かなかった。 いや、この場合分からなかったと言うべきだろうか?
「それにしても、はぐれ悪魔か。 なんだか……凄く悲しそうだった気がする。」
私は一瞬だけ見せた兵藤さんの悲し気な瞳の方が脳裏に過り、どうにかしてあげられないかと思ってしまうが、同時に現状でどうにも出来ないと理解させられてしまう。
それもそうだろう……確かに彼が何かを抱えて苦しんでることは理解出来たんだろうが、逆に言えばまだそれしか分かっていないのだ。
下手なことをして傷口を広げてしまう可能性だってあるかもしれない。
「とは言え、このまま何もせずに世話になり続けるのも忍びないなぁ……」
私はそう言い、天井へと視線を移す。
正直、彼には此処に来てから世話になってばかりだった。
落下からの救出やこの世界の事を教えてくれたり、こうして寝床……で良いのか分からないけど居させて貰ったりと、私も出来る限りの恩返しぐらいしておきたいのだが、私に何が出来るのだろうかと、ふと考えた。
「……直接言ってみる?」
私はそう言い、善は急げと言わんばかりに兵藤さんの向かった地下へと足を運び、彼の元へと歩いていった。
そう言えば、ここの地下に降りるのって初めてだっけ……
そして地下へと降りると、何やら話し声が聞こえてきた。
そこにいるのかと声を辿り、その場所まで足を進めると誰かが話をしていた。
一人は声的に兵藤さんだがもう一人が誰か分からなかった。
「……何か話してる?」
私は兵藤さんが誰かと何かを話してるのを聞き、一旦向かうのを止めて聞き耳を立てた。
『一誠様、準備はほぼ完了致しました!』
『そうか、この調子なら明日には始められそうだな。』
『はい! これで遂に我々の楽園が実現出来ますね。』
『我々の……か。 そうだな?』
兵藤さんと誰かは知らないが青年のような若々しい声が聞こえてくる。
途中楽園とか準備とか聞こえたが、私には何のことかまるで意味が分からなかった。
「楽園か……どう言う意味なんだろう?」
私はもう少し、話を聞こうと聞き耳を立てようとしたのだが、その瞬間誰かに頭を掴まれてしまう。
「あぐっ!?」
そしてそのまま引っ張り出され、視線の先には私の頭を掴む兵藤さんと、
「誰かと思えば、お前か……」
「……お前は!?」
兵藤さんは呆れ気味に、隣の人は目を見開いて何やら驚いた様子でそう言い、私の頭を掴んでた手を離してくれた。
「えっと、兵藤さんに話があって来たんですが……なんか話してたみたいで気になって……その、聞き耳立ててました……」
とりあえず先ずは正直に話そうと考えた私は、そう言い正座の体勢になる。
「あーえっと、正座しなくても良いから、何処まで聞いてたかだけ答えてくれ。」
「えーっと確か、楽園がどうとかって……」
「他には?」
私が質問に答えると、兵藤さんは声色を低くして更にそう聞いてくるが、物凄い圧力に思わず息を飲んでしまう。
「あ、後は準備がどうとか……位ですね。」
「そうか。 とりあえずその話はお前には何の関係も無い事だから黙って忘れろ……良いな?」
「は、はい……」
私はそう言い、首を縦に振る。
「ところで、俺に用があるとか言ってたが……どうしたんだ?」
「あ、えっと……何か出来ることは無いかな~なんて……あ、いやまぁたった今盗み聞きしといて言うのも可笑しいかもしれないんですが。」
「なんだそんなことか。 気持ちは有り難いが、精々俺達の事を口外せず黙ってくれりゃそれで良いよ。」
兵藤さんはバッサリとそう切り捨て、そのままその場を後にした。
もう一人の男も、そのまま兵藤さんに付いていって居なくなり、一人取り残されてしまう。
「黙っているだけ……か。」
結局特にこれと言ったことも聞けず、暫くしてそのまま地下室を後にして教会へと戻ったのだった。
ところ変わって、地下室を後にした一誠にふと、隣にいる部下であるオルガがあることを聞いた。
「何故あの女を始末しなかったんです?」
「ん? なんだ急に?」
俺はオルガの問いに首を傾げた。
流石に助けた奴を大したことも聞かれてないのに殺さないのかって言われりゃ誰だってそうなるもんだろ。
「あの女を生かした理由はなんですか? 私には到底信用ならぬ輩でしかないと思いますが……しかもそれで盗み聞きまでするなど最早間者である可能性も捨て切れませんし消すべきでは?」
「構わないよ。 大したこと聞かれてないし……彼奴に楽園創造の計画は理解出来ない。」
「本当に、それだけですか?」
「……疑ってるのか?」
オルガの疑念に満ちた目を見て、俺はそう問い掛ける。
別に対して思い入れがあるわけでも無いんだがな……。
「はい、生かす理由がそれだけとは思えません。 何かある筈です!」
「大した理由じゃないさ。 ただ、彼奴を俺達の都合に巻き込みたくなかった……それだけの事だ。」
俺はそう言い、フードを目深く被って外へ通ずる扉を開く。
「お前は最後の準備を進めろ、明日には計画を実行に移す!」
「……承知致しました。」
俺はオルガにそう伝えて、俺はそのまま天野夕麻と初めて出会ったあの場所へと向かった。
オルガのその不満に満ちた様子に気付かずに……