機動戦士ガンダムSS -アフターストーリー オブ センチネルー 作:豊福茂樹
皆さんここまでよく付いて来てくださいました。真心こめて感謝しまつ。初めましての方も良くお目にしてくださいました。真心こめて感謝しまつ。
面白いよう、頑張って真心こめて書いてます。今回も読んでやって下さい。
是非とも、どうか最後までお付き合いくださいませ。
ロジャー・マクスウェル率いる連邦最精鋭警護艦隊。
ソラン・ラマカーニ率いる満身創痍のウラノス艦隊。
そして一方では、
カルロス・アヴァン率いる19機のウラノス分隊。
リョウ・ルーツ率いる9機のアルビオンMS戦隊。
それぞれの誇りと信念をかけて、今、漢たちが漆黒煌星の宇宙でぶつかり合う。
君よ、ガンダムの雄叫びを見よ。
それでは本編をどうぞお召し上がりください。
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追伸:捩じれ骨子様、毎回欠かさず感想を書いて下さるお蔭で、拙筆もここまで挫けずUPできました。大変有難うございます。どうか最後までヨロシク。皆様もヨロシク。
機動戦士ガンダムSS
第11話:――ストーム――
-1-
月面中高度軌道、マスドライバー『サイクロプス』建設宙域。
ウラノス、連邦、互いの艦隊から、MS部隊が前進し、接触、交戦を開始する。
サイクロプス護衛艦隊、旗艦テスタロッサ。
「悪い事は言わん、ラマカーニ。速やかに降伏せよ」
そのブリッジからマクスウェルは勧告の通信を送る。
『降伏せねばならん理由がどこにある?』
ウラノス旗艦ウラケノスからラマカーニが返答する。
「貴様らの機体は、ガブスレイやパラスアテネやハンブラビと言った強力機と言えども、所詮はガンダムタイプの前に敗れ去った凡機失敗作に過ぎんのだ。数も不足している。その不利を覆すべくニュータイプ専用機を用意したようだが、それにしろ、こちらにはかのネオジオン闘争に於いてニュータイプ機と互角以上に戦ったドーベンウルフ、いや、ガンダムMk.Ⅴのさらに改良発展型、レッド・バレト9機と言う切り札が有る。お前等に勝ち目など無いのだよ」
『貴様らの机上の戦力比など、どうでもいい。敢えて言おう。貴様等風情とは覚悟が違う、と』
「不遜な!」
マクスウェルはアームレストに拳を振り下ろす。鈍い音が艦橋に響く。
「ティターンズ時代からの、貴様らのさも己が主人公であるかのようなその傲慢な態度。前から気に喰わん! 主人公を気取るピエロであった時代が、赤顔物だが若い私にもかつては有った。だが、1年戦争で思い知ったのだよ! そんなものは周りに犠牲を強いて当然とし、その犠牲と負担にも気付かぬ、最悪に愚かな行為だと! この世に主人公などいらぬ! 大事なのは常に大局であり、皆の総意だ!」
『ふっ』
「何が可笑しい!?」
『お前こそ愚かしい。マクスウェル。高々ドンパチごっこのテストの点数が優れていた程度で、この世の主人公は自分一人だなどと自惚れていたなど、笑止千万』
「何を言う! 私はそれを自覚した! 貴様らもそれを自覚し大人になれと言っているのだ! 無駄に歳だけは重ねた癖に成長せぬ老害がっ!!」
『自覚などとうにしている。私の可愛い兵士達はな、一兵卒に至るまで、それぞれ皆、掛け替えの無い人生を生きる、すべからくその人生の主人公なのだ、とな。お前は人を見下し、自分の天狗の鼻がへし折られるや、今度は己も周りもすべて見下す事を選んだ。誰も思う通りになど生きるな、負け犬の人生を皆で歩めとな。それこそが今の連邦の腐った体質だ』
「思う通りに生きるなどっ! 永劫の苦しみを繰り返すばかりなのだと何故気付かぬっ!? それが傲慢で独善だと言っているのだっ!」
『苦しみか。確かにツケは払わねばなるまい。いずれ』
「ならば今ここで払え! 降伏せよ!」
『だが、あえて言おう。理想を持たぬ者よりも、今この時自ら選んだ理想に、己の意志に殉じて生きる我々は、苦しみなどでは無く、輝ける幸福な時を今生きていると。我々は、ただその幸福の時を永劫とする為ならば、何度でも戦うとも』
「――――――っ!!??」
『言葉に詰まったか、若僧。だから言っただろう、覚悟が違うのだと』
-2-
月近傍、ラグランジュ1、サイクロプス間航路。
ここにも自らの理想を選び、己の意志に殉じて生きる者達がいた。
奇しくも、相対する二つの部隊の隊長、ルーツとアヴァンは、全く同じセリフを吐いて見せる。
「『いいかっ!? 誰も殺すなっ! 下らない殺し合いなんかもうしなくてもいい! 必ず生け捕りにするんだ!!』」
『『『サー! イエッサー!!』』』
-3-
月。サイクロプス建設宙域。
「『微速後退!受け流せ!!』」
ウラノスMS戦隊の二人の大隊長、ナパタイ少佐とエッケンベルガー少佐は神経をすり減らしながら、ひたすらに部下に緩やかな後退を命じる。
まともにぶつかり合えば、一瞬でこちらがすり潰される。
もう少し、もう少し敵を呼び込む。不自然で無い様に。
味方のMSが一機、また一機沈んで逝く。
泣きたくなるが、それを言うなら、人一倍情の深いラマカーニは、まさしく心で血の涙を流しているだろう。
泣き言は言わぬ。
ただ、3人のニュータイプが戦局を打開してくれると信じ、耐え抜くのみ。
-4-
地球。アフリカ地区、エル・アラメイン宇宙港。
遂に準備の整ったロンド・ベル艦隊、ラー・カイラムはじめ3隻が打ち上げられる。
「月到着まではどれくらいになる? ブライト」
「二日半。どれだけ急いでも二日と言ったとこだろう。―――焦っているのか、アムロ?」
「うん。間に合わない、そんな気がするんだ」
「………だが、我々にはどうしようもない。こんな事ならば、無理にでもZプラスで間に合わすべきだったかな」
「いや、違う」
「?」
「ひょっとしたら、間に合わなくてもいいのかも知れない」
「何を言うんだ? 地球が独裁者の手に渡ってもいいのか!?」
「そうじゃない。もどかしいな、僕にもよく分からないんだ。上手く言葉にできない」
「ニュータイプの君にもか?」
「案外不便なものだよ。ニュータイプなんて」
「………そろそろ黙ろう。打ち上げ時刻だ。舌を噛むぞ」
「うん」
そして鳴り響く爆音。轟炎と白煙。
重力の軛を千切り、宇宙へと猛禽は解き放たれる。
-5-
月。アルビオン隊、アヴァン隊、戦闘宙域。
ルーツのガンダムSS新形態、ストームシルエットただ一騎に、ジェガン・Oの9機が集中する。
『ルーツッ!』
『戦隊長っ!』
『今行きますっ!』
「馬鹿言ってんじゃねえっ! お前等の相手こそ報告にある限り、ウラノス連中の中でも最強機体だっ! 俺が弱っちい奴らの相手をまとめてせずに、どうするってんだよぉおっ!!?」
『馬鹿か? ジェガン・Oだって充分チューンしまくった最強クラスなんだぞ!?』
『演習でその事は良く知ってます~』
『一人で無理すんなっ!』
「独りじゃねえっ! アーサーがいる。そいつは、他ならぬブラウンだって、いつも俺の側に居てくれるのと同じ事だっ! 今このガンダムSSに3人も乗ってりゃあ、Sガンにシンとテックスも乗ってた時と同じ、無敵なんだよぉおっ!!」
『っ!―――ああ、そうか、好きにしやがれっ!!』
『おい! シンっ?』
『中尉、いいいんですか』
『くそっ。この期に及んで泣かせる気か。俺達が側に居て守ってるのと同じぐらい心強いって、言い切りやがった!』
『『『……………』』』
『テメエら! あの馬鹿野郎を救けたけりゃ、とっとと目の前の相手をのしちまえ! 片付けた奴から駆け付け放題、美味しい所頂き放題だぞ! 気合い入れまくりやがれっ!!』
『『『サー、イエッサー!!!』』』
『アヴァン大佐、敵は大佐の策にまんまと嵌ってくれましたね』
「ああ、悪いが警戒すべきは、ルーツのガンダムSSただ一騎だからな。残りは順当に下させてもらう」
10機のゼク・ドライのモノアイが獰猛に光る。
-6-
月。サイクロプス建設宙域。
3機のニュータイプ専用機は、それまで後方からの火力支援に徹していた。
もどかしさに歯噛みする時をじりじりと過ごす。
だが、遂に待ち望んだその時は来る。
「待たせたな。我が愛しき子達よ。敵をナパタイ達が設定した想定ラインまでこちらに呼び込めた。後は思う存分やれ」
ラマカーニの優しく諭すような命令。
『分かった』
『行く』
『待っていたぞ』
「ラドック君。君の怒りをぶつけてくるがいい。そしてそれは、あの艦隊でふんぞり返る、愚かな司令や艦長、参謀と言った連邦軍官僚への、我々オリンポス全て兵の怒りでもあるからだ」
『ああ、復讐するは我に在りだ。任せるがいい。ジェイスの仇、同胞の仇、そして何よりアナンダを傷付けた罪、奴らにこそ償わせてやる!』
「ああ。思う存分やりたまえ。忘れるな、私は君達の味方だ」
『泣かせてくれる』
サイコSガンダム、サイコガンダムMkⅢ、そしてノイエ・ジールⅡが、戦列を飛び出し羽ばたく。
-7-
月。アルビオン隊、アヴァン隊、戦闘宙域。
ここにきて老艦ユリシーズは、やっとアルビオンに追い付く。
オリンポス兵、いや、元ティターンズパイロット達は、その声をオープン回路に乗せ、力の限り叫び始める。
「もうやめろ!」
「もう戦わなくていいんだ!」
「俺達は、もっと別の『闘い』をすればよかったんだ!」
「あいつらの言う通りだ。もっと仲良くなるための、あったかい喧嘩をすればよかったんだよ!」
オリンポス兵達は少なからず動揺する。
『なにぃっ?』
『アヴァン隊長?』
『奴ら、裏切ったのか?』
『……、いや、しかし、これは』
「狼狽えるな」
アヴァンはあえて普段の陽気さ軽妙さを捨て、冷淡に、そして豪胆に見えるように振る舞う。
「奴らの言う事は、我々が連邦官僚にぶつけるべき怒りだ。ある意味まだ志は同じだと思えばいい。奴らは戦いに負けて挫けたが、その分もまだ、我々が銃を持って戦わねばならんのだ!」
『そ、そうか』
『有難うございます、大佐』
「この、大馬鹿野郎がああああああぁぁっ!」
ルーツは吠える。オープン回線に乗せて。
「てめえらのやってるこたあ、ちょっと気に入らねえ事が有るからって、弱い者いじめの拳骨を振るう、そこらのチンピラと一緒なんだよっ! 俺はそんな奴等をブッ飛ばして生きてきたっ! これからだってそうするっ!
何度だって言ってやらあっ!
誰も、誰にも、やらせるもんかあああっぁぁあああっ!!!」
ウラノス兵達は動揺する。だが―――
『落ち着け。奴の言っている事など、幼稚な子供の理屈に過ぎんのだ!』
アヴァンがそれを打ち消しにかかる。
だが、その大きいだけの声音に、先程の覇気は無かった。
彼もまた、呑まれかけている。
ある一人の、元ティターンズ兵、ベルナルド・モンシアの脳裏に、かつての恩師バニングの声が響く。
『戦いに憎しみを持ちこむな』
「隊長、ウラキ………、俺は…………」
『生きる事を、生き残る事を、生き抜く事だけを考えろ』
そして、かつて他ならぬモンシア達不死身の第4小隊の生き残り自身が、冗談半分にラマカーニに言ったセリフを、思い出す。
『オヤッさん、有難う』
『オヤッさんのお蔭で物資に苦労せず戦えたよ』
『一年戦争の時とは大違いだぜ。あの時は晩飯が缶詰一つだけなんて時も有ったもんな』
『弾薬の心配もせずに済むし、飯の苦労どころか本物の肉だって好きなだけ食える』
『これでゲリラになんか負ける訳無いって』
『バスクの親父なんか、人使い荒いだけで、オヤッさんみたいな気づかいしてくれないもんな』
『ジャミトフの爺さんだって、ラマカーニのオヤッさんには頭が上がらないよ』
『オヤッさんの恩に報いるためにも、早くゲリラを根絶やしにしないとな』
『そしたらみんな平和に暮らせる』
『待てよ、そうなったらティターンズも解散か?』
『連邦軍だって大半はリストラだぜ』
『モビルスーツだって、昔のカートゥーン(子供向けアニメ)みたいに、小型の警察用しか要らなくなるって』
『いいな、それ。子供のヒーローだぜ。じゃあ、俺達みんな警官に鞍替えだ』
ルーツのそれは、それは、かつて子どもの頃見た、カートゥーンのヒーロー達そのままの様な台詞。
ルーツこそが、その、彼の憧れた子供のヒーローそのままに生きているのだと、彼は気付いてしまった。
ルーツ達こそが、バニングの言葉そのままに。その言葉の目指した向こう側に。
転がる石のように生きているのだと。
そして気付いてしまった。かつてウラキは、誰からも理解されずとも、ただ皆を生き残らせる為に闘っていたのだと。
気付いてしまった。今の自分達は、それこそ自分が罵った醜い行為をしていたのだと。元ジオン兵の人殺しのテロリストと結託し、より巨大なテロを実行しようとしていたのだと。
デラーズフリートの様に。
ただ憎しみに囚われて。
「ごめんよおお、大尉……」
モンシアは大粒の涙を落とし、呻く。
「ごめん、俺が悪かったんだよ、許してくれ。バニング隊長、コォォォウ!」
そして、モンシアは、力の限り謳い始める。
かつて拒んだその歌を。
ジミーの作った歌を、仲間たちが唄う、その輪に加わって。
時に人は 憎しみに逃げて 夢を追う事を 忘れてしまうけど
貴方がいつか 思い描いた 同じ夢を持つ 人はいるから。
勇気を出して その言葉を 伸ばす指を どうか掴んで。
手を繋げ合い 寄り沿う事が たった一つの人の形。
温もりを預け 寄り添う事が たった一つの人の営み。
ただ寄りそいて 生きる事が たった一つの愛だから。
「俺達は、きっとお巡りさんになればよかったんだよ。だから、もうやめようぜ、殺し合いは止めてくれよおおおぉ!」
モンシアは、叫ぶ。
彼もまた、転がる石となって。
戦いは膠着していた。
いや、明らかに数の差からルーツ達が押されている。
特にガンダムSSの装甲には、いくつものビームが掠めた痕。
むしろルーツの腕とアーサーの補助が驚異的と言ってもいい。
だが、ルーツは欠片も諦めてなどいなかった。
「アーサー、どうだ? みんなの武器は、行けそうかっ?」
『オールグリーンです。何の問題も有りません。フルパワーモード、行けます』
「よっしゃあ、こっからは俺達の時間、オンステージだ! 全員オールウェポンズフリー! 思う存分やりやがれ!!」
『『『イエッサー、ボス! イッツ、オンリィ、ロックンロール!!!』』』
「行くぜぇっ! ロックンローォォルッ!」
「っ、何だ!?」
明らかに変わったその空気に、アヴァン達が息をのむ。
-8-
月。サイクロプス建設宙域。
『うわあああぁああっ!?』
『は、速い!』
『何だ、あの火力はっ?』
『ファ、ファンネルがあぁっ!』
『Iフィールドか? こちらの武器が効かんっ!!』
パニックに陥るサイクロプス守備隊。
ウラノスの戦列から飛び出したサイコガンダムMkⅢと、サイコSガンダムは、たった2機で守備隊の戦列を紙の様に切り裂いて行く。
大と小、剛と柔の、姉弟の恐るべき連携。
ニュータイプの感応能力で結びつき合ったそれは、正しく有機的と言って良い、一部の隙も無く補い合う、完璧な物。
サイコSガンダムの14基のファンネルも破格の物だが、サイコガンダムMkⅢの火力は、両肩のバインダーから放たれる、ビット型と呼ばれる核融合炉内臓大型ファンネル18機と、4基の大型メガ粒子砲、そして通常MS規格のビーム砲に至っては10本の指を始め、全身に無数と言っていいほど装備される、まさしく要塞。
そして反撃は、敵兵が叫んだように、そのロケットのような圧倒的なスピードと、強固なIフィールドの前には無力だった。
「やっぱり、殺さないでも簡単」
『そうね、ノイ。貴方はとても優しい、いい子』
「姉さんこそ」
笑みを交わし合う2機。
彼等は敵戦列の後端まで達すると、今度はウラノス本隊と、敵部隊を挟み撃ちにして蹂躙して行く。
だが一方で、血に飢える者もいる。
ラドックのノイエ・ジールⅡは、暴力的なスピードを持つ、高機動モビルアーマーとして最も相応しい後方の敵艦船への突撃を指示されていた。
「うおおおおぉぉお!!」
しかし、艦船直衛に残されていた、連邦最強機体、9機のレッド・バレトが立ち塞がる。
『退がり続けたのはその為かっ? だが、生憎罠にかかったのはそっちだっ!』
マクスウェル提督は不敵な態度を崩さない。
その自信の根拠となる、合計54基ものインコムが、レッド・バレトのバックパックから一斉に解き放たれる。
「がああぁぁあああっ!」
ノイエ・ジールⅡが、その巨体からは信じられぬ超高機動マニューバで、インコムとビームライフルとミサイルのシャワーを振り切り、また避け切れぬそれをIフィールドで弾く。
『か、怪物かあっ!?』
『信じられん、一個連隊すら相手にできる火力なんだぞっ!??』
『うわあああああっ!』
『か、母さんっ!』
逆にレッド・バレト達が、次々と16基のビット型大型ファンネル、2門の内臓大型メガ粒子砲の餌食となる。
『さ、散開いいぃっ!』
「逃がすモノかあっ!」
ラドックは有線式アームを解き放つ。
その先端から延びるビームサーベル。
『ぎゃああぁぁああ!!』
大きな弧を描いて振り回されたそれは、赤い機体を次々と斬り裂いて行った。
『ば、馬鹿な?』
ロジャーの目の前で、絶対無敵の戦力と信じて疑わなかったレッド・バレトが次々と爆散して行く。
『や、やめろ』
艦橋モニターの中で刻一刻と大きくなって行く、ノイエ・ジールⅡの緋色の姿はまさに死神。
『何の冗談なんだ、これはああああああっああぁぁ!!?』
「生憎だが、貴様らの方が冗談が過ぎたのだっ。奢り高ぶるモノよっ!」
ラドックは死を告げ、サイクロプス守備隊旗艦テスタロッサのブリッジは、メガ粒子砲によって蒸発する。
「勝ったな」
ウラノス旗艦ウラケノスのブリッジで、ラマカーニはまた、昏く笑んだのであった。
-9-
月、アルビオン隊、アヴァン隊、戦闘宙域
「うおおおぉりゃああぁ!!」
先陣を切ったのはクリプトであった。
『な、何だあのビームは?』
『垂れ流しだとぉお?』
『うわあぁあっ!』
デルタSのスマートガンから流れ続ける光条が一機のゼク・ドライを薙ぎ払う。
「へへっ、ランファン達のロングビームサーベル、羨ましかったからな、爽快だぜ!」
「テリーっ!!」
『大丈夫です、アヴァン隊長。生きてます。多分カメラ潰しの低出力ビームだった?』
「そうか、ならカメラを切り替えてやれるなっ?」
『なにぃっ? 駄目です隊長、関節も焼かれて動かないっ!?』
それは非殺傷と言う効果を極限まで追い求めたチューニング。
バイタルパート(融合炉やコクピット)の装甲を貫く事は決して無いが、それ以外の装備を確実に無力化する、絶妙な威力調整。
手加減をするどころではなく、ハナから殺さない事を追い求めた闘う姿勢の差。
威力を抑えられたそれらの火器は、その代わりに、長大な照射時間、もしくは広範囲への照射能力を持つ事になり、デルタSではサーベルじみたスマートガンの運用が可能となったのである。
「バックス、とどめっ!」
『了解です、副戦隊長』
バックスのファット・バレトから極太のメガランチャービームが発射され、テリー機を呑み込んだ。
『うわああぁっ熱いっ!』
「テリーッ!」
『い、いや、生きてます。でも全身の関節とアポジモーターがレッドアラーム、動きませんんッ!?、畜生、火器も全部駄目だっ!』
「よおおっし、アタシらも続くよぉぉ!」
『ロングビームサーベルはこっちが本家なんですからね~』
ランファンとカーリーも続く。
プラスFのロングビームライフルからも垂れ流しのビーム。
『僕達だって』
『やってやるっ!』
ケンザキとオコーナーもMS形態になって続く。
『止めは任せろっ!』
『美味しいい所頂いてやるぜっ!』
バードマンとウォードもバックスに続く。
そして圧巻だったのはルーツのガンダムストームシルエットだ。
6基のインコムから6条の太いビーム。
それは二本ずつ三機のジェガン・Oに命中した。
「いい照準だ、アーサーっ!」
『当然です。ママのプログラムですから』
「違い無ぇっ!」
動きの鈍ったジェガン・Oにルーツはスマートガンの太い光条でとどめを刺す。無論殺しはしない。
「残り6機っ!」
『ア、アヴァン隊長、このままではっ』
『やられてしまいますっ!』
「止むを得ん、奴らよりはお前等の方が大事だ。非殺傷に拘るなっ! 思い切りやれっ!」
アヴァンが叫ぶ。
一方でルーツはこう叫んだ。
「よーしテメエらっ! このまま調子ぶっこいてそのままやれぇ!」
『『『オッケーボス! ロックンロール!!』』』
それは、互いの殺しはしないと言う信念が、慢心と打算、高潔と透徹に分かたれた、その瞬間だった。
ルーツは敵の変化に気付く。
狙い澄ました緻密な射撃が、当たればいいと言う雑なものに変わったのを。
これなら可動式Iフィールドが無くとも、胸のIフィールドだけで捌ける。
人間は機械ではない。
さっきまで殺さないつもりで闘っていた人間がいきなり殺していいと言われても、そこには躊躇いが生まれ、躊躇いを振り切るためにまた雑が生まれるのだ。
ルーツにはその敵の逡巡が手に取るようにわかった。
ニュータイプに目覚めた訳では無い。
それはどちらかと言えば、古来からの剣の達人が至る境地だった。
彼等は言う。己の心を飾らず嘘をつかぬ事を積み重ねたその先に、見えるものがあると。
嘘が嫌いで、ツッパっていても素直な青年であるルーツが辿り着いた、嘘の無い境地。
己の心を飾らず、偽らず生きているから、人の本当が分かる。
僅かなアンバック、僅かなスラスターの吹かし方。そこから只読み取れる。
ただ人の心が分かる。
それだけの事。
6基のインコムと、2基のリフレクターインコムは、まさしく嵐となって残り6機のジェガン・Oを呑み込んで行く。
「ヒャッホウ、ルーツやるうぅ!!」
クリプトの快哉。
『畜生、負けるかああ!』
ランファンが、皆が、その背中を追いかけて行く。
転がる石の背中を。
「何故だっ!?」
アヴァンは叫ぶ。
もう手加減などしていない。なのに相変わらず押されているのは自分たちの方だった。
1機、また1機とゼク・ドライが無力化されて行く。
ジェガン・Oに至っては、もう残り1機しか動いていない。
そしてユリシーズから歌声が響く。
人は誰も 暗闇の中 手探る様に 歩み続ける
凍えそうな 孤独の中 あの温もりへ 還り着くため
どうか気付いて 全ての命 貴方と同じ 宝物なの
たった一つの たった一つの かけがえない愛の証
たった一つの たった一つの 掛け替えも無く愛す命
たった一つの 寄り沿い合える たった一つの命だと
たった一つの 誰もが大切な たった一つの愛だから
たった一つの 愛だから
『もうやめよう!』
『俺達はもう死ななくていいし殺さなくていいんだ!』
『投降してくれ!!』
やがてアヴァンは動く機体がゼク・ドライ3機のみになった時点で決断した。
「分かった…………」
手に持ったビームマシンガンを投げ捨てる。
「ここまでだ。投降する」
「―――感謝する、アヴァン」
ルーツから思わず、そんな言葉が口に出た。
-10-
月中高度軌道。
巨大マスドライバー、サイクロプスは月軌道エレベーター、オリオンへと曳航される。
「残り可動MS数は何機だ?」
ウラノス旗艦ウラケノスのブリッジで、ラマカーニはナパタイに問いかける。
「――――っ、24機です」
「申し訳ありません、我々が不甲斐無いばかりに」
エッケンベルガーも項垂れる。
「いい。パイロットはかなりの数無事に救助できたのだ。オリオンに到着し、サイクロプスの弾薬さえ得られれば、機体など幾らでも脅し取れる」
「やっとですね」
「我々の悲願が、理想が、成就する時が」
「そうだとも」
ラマカーニは目頭を押さえる。
滂沱と溢れる涙。
ナパタイとエッケンベルガーも思わず涙ぐみそうになり、あえて向きを返して正面の宇宙空間を見据える。
「ぐ、ぐううぅふ」
ラマカーニは涙を流しながら、また昏く笑む。
復讐とは何と甘美なのだと。
-11-
月、ラグランジュ1近傍宙域。
アルビオン、ブリーフィングルーム。
「情報部より連絡が有った。敵はサイクロプスを、月軌道エレベーター、オリオンに曳航中だ」
ヒースロウが厳かに告げる。
「月面の石ころを地球に落とすつもりなんだな?」
「間違いあるまい。そこでルーツ、我々はオリオンに先回りする。身軽なアドバンテージを活用する」
「待ち伏せか」
「ま、数の少ない俺らだと、それくらいしないとだよなー」
クリプトが不敵に笑む。
「オリオンを背にすれば、敵も手出しし辛い。逆にこちらは始末書を覚悟すれば、オリオンでもサイクロプスでも破壊してしまえば、勝利と言える。だが、奴らを逃がす気が無いのならば、ここでカタを付けろ」
「へっ、言われるまでもねえ」
「もちろんだって」
ルーツとクリプトが犬歯をむき出しにして笑む。
「やってやろうぜ、みんな!」
ランファンが拳を突き上げる。
「「「YEAHHHHH!!」」」
皆も続いて拳を勢いよく突き上げた。
アルビオンMSハンガー。
バリーやブラウン達は、MSの最終整備に追われる。
「嬢ちゃん、そっちは時間内に終わりそうか?」
「ギリギリね。アーサーに手伝ってもらってるけど、みんな好き放題注文付けてくれるから大変」
「間に合うならいい。お蔭でこっちはスーパーシルエットに集中できるってもんだ」
「アーサーのとびっきりの身体なんだから、気合い入れてやってよね!」
「へっ、誰にモノ言ってやがんでえ!」
ガンダムSSに、次々と取り付けられていくパーツ。
究極のガンダム。
人の命を救うガンダムを目指して。
-12-
ラグランジュ1宙域、軌道エレベーターオリオンステーション部。
待ち受けるアルビオン隊。
サイクロプスを曳航し、進軍するオリンポス。
そして、もう一つ、デウス・エクス・マキナ、最強のニュータイプ、アムロ・レイもまた、ラー・カイラムに乗って、遠くより近付きつつあった。
アルビオン、MSデッキ。
「カタを付けるぜ、アムロ・レイが来る前に」
ガンダムSS最終形態、スーパーシルエットのコクピットでルーツが己の頬を張る。
『『『アムロ・レイが来る前に!』』』
続くクリプト達仲間もまた、思いは一つ。
ウラノス旗艦、ウラケノス艦橋。
「我が軍も少なくなったものだが、敵は僅か9機とはな」
憐みの笑みを浮かべるラマカーニ。
「ルーツ君が強いのは知っているが、我等は数で勝っている上に、究極の3機を擁している。負ける筈はあるまい」
『まったくです』
『ええ』
首肯するナパタイとエッケンベルガー。
『ルーツの相手は任せてくれ』
ラドックのノイエ・ジールⅡのモノアイが獰猛に輝く。
「頼んだよ。出来れば生け捕りと言いたいが、無理は言うまい」
『それが望みならば遠慮はするな』
「君の命には代えるなよ、アヴァンに続き君まで失えば、老いた私には耐えられそうも無い」
『僕も手伝う』
『私も』
「おいおい、セヴとノイまで抜けては、他の者が困る」
『………分かった』
『でも気を付けて、お兄さんは強い』
『確かに、歯ごたえのありそうな空気を漂わせている』
舌なめずりをするラドック。
老艦ユリシーズ。
「いいか。これが最後だ。俺達も力の限り歌おう!」
「「「おう!」」」
モンシアの音頭に皆が続く。
そして、最後の闘いが始まった。
-最終話に続く-
おまけ。
※キャラクター解説
●ベルナルド・モンシア
機動戦士ガンダム0083に於いては、何かと主人公ウラキに突っかかる、所謂嫌なキャラとして出演。
まあ、機体も口説こうとした女も、全部ウラキに持ってかれたのだから、無理も無い面もある(苦笑)。
でも所謂小人物。目指せバニングの様な大器。まあ、彼の個性なりに於いてだが。
そんな彼だが、本作の今話に於いては、紛れもない主役であった。
こんな人の改心する姿に、陽の光を当ててみても良いのではなかろうかと思った次第である。
ティターンズ兵達は、本来皆、こう言うドラマを背負っていたのだろう。
いかがでしたでしょうか?
この後、自分がお調子者である事をちゃんと自覚し、後日譚において、ものすごく愛嬌ある人になる予定である。
●ナパタイ(33)、エッケンベルガー(32)
ウラノスMS部隊大隊長。少佐。
名前の通り、東南アジア系とゲルマン系。指揮官としては優秀だが、人をまとめるリーダーとしては、アヴァンが最も優れた人格者と認め、自ら一歩引いた地位にある。これは上昇志向競争主義の旧ティターンズには無かった構図だ。
皮肉な事に、一度地に落ち泥に塗れた事により、ティターンズはウラノスとして組織として浄化されたのだろう。だからこそ、余計に連邦の官僚や政治家達を憎む事となったのは、皮肉な話である。
罪を憎んで人を憎まずと、古来からよく言う。
結局はそう言う生き方が、その行いをする人物当人を、より生き易い道へ導き、その人生を守るのだ。
人を憎しみで傷付ける者に待つのは、結局の処、悲劇である。
警察官や軍人は、ただ自分の仕事に誠実であろうとしているに過ぎないのだ。それは傍から見ればわからないだろうが、とてもとても大きな違いである。大切な命を守ると言う、その誇りに於いて。
●ヒースロウ
出たとこ任せで戦っている様に見えるアルビオン隊であるが、基本戦術はちゃんと彼が監督しており、ブリーフィングで練り込んだ作戦に基づいて闘っている。彼の入念な下準備が無ければ、彼等のうち幾名かは命を落としていただろう事も、覚えていてほしい。彼もまた、大事にAKG6とルーツ達を育てたのである。
※メカ解説
●ガンダムSSストームシルエット
ガンダムSS第5形態。
強化大型バックパックに、3連インコムユニット×2(6基)、両膝にリフレクターインコム(2基)をそれぞれ装備。
対集団用、火力強化型である。
だが、その代わり、ストレートシルエットにあった、可動式ピンポイントIフィールドユニットを搭載できなくなってしまい、今回の闘いの序盤において、大変苦しむ事になった。
しかし、オールウェポンズフリーモードにて、全火力を解放した姿は、まさに圧巻。
何故同じインコム装備のレッド・バレトとこれほどの差が出来たかといえば、やはり優秀なAIであるALSSが制御しているかどうかと、『野球バット』効果による。
アホか(核爆)。
余談になるが、この『野球バット』装備、正式には後の装甲機動警察保安隊の『非殺傷制圧装備』が有効にも拘らず、後の地球連邦軍の一般科制式装備には、一切採用されなかった理由について語っておく。
それは現場指揮官や兵士の、この発言である。
「殺し殺されるかの戦場に、敵を破壊し殺し得ぬ装備など、とても兵士が持ちたがらぬし、持たせる気にもなれない」
ただ、その一点に尽きるのだ。
日本の海外派遣されている自衛隊員がどれだけ凄い人達か、内部でさえ殺し合う昭和の学生運動家、革命闘士と呼ばれた今の基準で言えばれっきとしたテロリスト達を相手に、如何に非殺傷制圧を貫いた、日本の機動隊がどれだけ凄い人達か、どうかわかって欲しい。
海外の、例えば香港のデモ群衆が、どれほどの死傷者を持って鎮圧されたかを思えば、ホントにすごいのだ。
噂では、昭和天皇の『命令』では無く、たっての『御願い』が有ったと言う。
もう、二度と、政治革命闘争で人が殺し合う日本など、見たくは無かったのだろう。
なので、もし、自衛隊が海外派兵されるのならば、それこそ、『防衛部隊』では無く、どうか当初の『警察予備隊』として、兵器で無く、非殺傷武器を持って戦場に赴いて欲しいのだ。誇りある戦争放棄の平和国家として。
きっと、昭和天皇ならば、天国からそれを望まれるはずであると、筆者は愚考する。
もちろん、カバール相手に非殺傷制圧を繰り広げた自衛隊員と合衆国軍の勇敢さにも、最上の敬意をここに払わせて頂くものである。
戦争とは悲惨に描かれねばならない―――それがガンダムセンチネルにおけるメインメッセージであった。
故に本作に於いては、戦争と言う悲惨な人殺し行為自体を、ルーツ達が否定し飛び越えて行く事がメインメッセージなのだ。
●ファット・バレト、グスタフガン
145ミリマシンガンとマイクロミサイルポッドの弾丸を、特殊散弾に変更。バイタルパートは貫けないが、センサーや関節、火器等への絶大な破壊力を持つに至った。
●レッド・バレト
一般モビルスーツにおける、連邦最強機体として設定されたにもかかわらず、物語上、ただのガチの引き立て役。
哀しすぎる(滝涙)。
ここでは他のバレトタイプとの差について。シルヴァよりは、やはり若干装甲が厚い。ジムⅢクラスのビームライフルの一撃に、バイタルパートの正面装甲がちゃんと耐えられるくらいの厚さ。だが、横や後からオールレンジファンネル火力だの、大型メガ粒子砲だの、大型ビームサーベルだのには無意味。うん。相手悪過ぎ。
御自慢のインコムも、ライフルやカノン、ミサイルも合わせれば、瞬間火力は9機以上に匹敵しても、ノイエ・ジールⅡの機動力に対応するには、肝心の制御コンピューターが付いて行かなかった。
可哀想すぎる(爆涙)。
はっきり言おう。雑魚には強いが、強い敵にはそれほどでも無かったのだ。
コストも高過ぎ、後に生産コストの安いシルヴァに生産ラインは全て取って代わられた。無理もない。
他にはビームカノン2門が、インコムユニットが大き過ぎるせいで背中に装備できないので、両胸下へ固定装備になったり、ミサイルポッドが、ジェガンやフルアーマーユニコーンと同タイプな事くらいが特徴である。
●サイコガンダムMkⅢ
ウラノス最強機体の2機目。
フレーム素体はほぼクインマンサ。これは旧ネオジオン、アクシズにおいて、量産型プルに搭乗させるため、パーツだけ作ったが、組み立てが間に合わなかった機体の物である。
装甲や細かいパーツは、連邦メイドなので、外見は連邦機体らしい角ばった形状。
だが、両肩バインダーだけは、フレーム自体をクインマンサの物から変える事ができず、装甲やファンネル搭載数以外は余り変わらぬ、曲面形状の物となっている。なので大まかには、マッシブ太目になったサイコガンダムMk.Ⅱの本体に、後のクシャトリヤの肩が付いたみたいな感じである。しかしバインダーはやはり4基でなく2基。
おそらく、当機の建造データも、かなりの部分を後にシャアが法律闘争で自分の物にしただろう。
機動力はやや低いが、その圧倒的な火力、及びIフィールドを含めた防御力は3機中最強である。
●ノイエ・ジールⅡ
ウラノス最強機体の3機目。
ほぼ皆が知る?ゲームのノイエ・ジールⅡの姿だが、細かい所は、連邦所有物になった事で変わっている。
もともとシャアがアクシズに帰還した時の専用機として建造されたが、シャアが帰って来なかった為、他の誰かが使う事も遠慮されて、未完成のモスボール状態でほったらかされていた物だ。
なので、未装着だった装甲、武装がゲーム中と微妙に形状、数が変わってしまったのである。
という理屈をつけ、劇中に於いてより『死神』っぽい姿にしたかっただけなのだが(苦笑)。
やはりビグロ以上の機動力に、この火力は反則である。とは言え、火力防御力自体はサイコガンダムMkⅢには負ける。
小回りの利く機動力に於いて、サイコSガンダムに敵わないのも同様である。
当機もやはり建造改修データがシャアの手に渡り、アルファ・アジールへと続くのである。
●サイクロプス
大体の説明は本文でしたが、補足説明。
建設場所は月の中高度軌道であり、一点にとどまらず、常に周回している。
月面の高高度(静止)軌道とは所謂ラグランジュポイントとなる(地球の静止衛星軌道とは意味合いが違うが)。だがそれより低い軌道でも、月重力と軌道速度の遠心力が釣り合う(計算式上。物理的により正確には月面に沿って落ちるである)ならば、勿論月の人工衛星として成立する。極論、月には大気が無いので、月面スレスレでもスピードさえあれば人工衛星となる(苦笑)。まあ危険なのでやはりある程度の高度を取るのが通常であり、サイクロプスもある程度の高さの軌道上で建設されている。
この巨大マス・ドライバーだが、処々の事情で、結局アステロイドベルトには設置されなかった。
とは言え、テロに利用されても困るので、月からは遠い秘匿ポイントに隠された。
その連邦軍秘密守備部隊は、そのままサイクロプスと命名された。
彼等はその気になれば、万一地球の重要拠点がテロリストに占拠された場合、その地点を巨大質量弾爆撃できる、最重要機密部隊、連邦内超エリート組織として、運用される事になったのである。
●オリオン
月の女神の恋人だが、その兄の太陽神の姦計に嵌り、結ばれる事無く命を落とした半神。
だが宇宙世紀に於いては、悲劇役で無く、巨大月軌道エレベーターとして、無事女神と結ばれたようである。
宇宙開拓時代の栄えある主役の役割を終え、引退していたのだが、本作では、アルビオン隊と、オリンポスの最終決戦場となる事になった。
『月は無慈悲な夜の女王』
有名なハインラインのAI物の傑作SF小説だが、当然本作ガンダムSSもまた、そのオマージュである。
同じハインラインのオマージュであるが、非正史扱いの、『ムーンクライシス』と言う松浦先生のガンダムコミック作品も、れっきとした名作であった事を、小ネタとしてここに記す。
ついでに同じハインライン作品であり、本作どころか1stガンダムを始めとするロボットSFモノ全ての祖に当たる『宇宙の戦士』についても言及しておく。
簡単に言えば、平凡な若者がパワードスーツに乗り、立派な軍人になって行く物語である。映画化もされている。
ハインラインは軍人と言う誇り高く美しい生き物が大好きだったのだろう。だがその反面、人間同士の戦争を肯定もしたくなかった。故に宇宙怪獣と言う純粋な敵役を用意して、ひたすらに軍人を描いたのである。
そして本作は、本編で描いた通りである。どうか結末まで見届けて欲しい。
それでは、いよいよ次回最終話。このオリオンを舞台に、また皆様とお会い致しましょう。
まったね~。
そしてガンダムは最後の戦いに挑む―――
「見てろ、アムロ・レイを時代遅れにしてやるぜ!」
ルーツがMSパイロット養成所時代によく口にしていた雄叫びを上げ、ガンダムSSスーパーシルエットを弾丸の様に敵陣に飛び込ませる。
「俺一人じゃ無理だけど、アーサー、お前とならできるっ!」
『はい、父さん!』
その衝撃の結末は如何に―――
最終話 ―ソウル・シルエット―
ついに、いよいよ、次回最終回。
皆様を感動させるのに手段は選びませんとも(おいおい)。
次回もまた半月後、12月中旬のアップを予定しております。
ルーツ達のとても短く、とても長かった旅路の果てを、皆様是非どうか御見届け下さい。
最後も、おっ楽しみに~!
(^^)/