機動戦士ガンダムSS -アフターストーリー オブ センチネルー   作:豊福茂樹

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 残り4話、物語はラストスパートへ向けてのタメとなります第9話。
 今回もお読み下さりサンキュウベリーマッチ。初めてお読みくださる方もサンキューベリーマッチ(古い)。
 感謝感激の豊福茂樹でございます。
 最初からお読みになってもここからお読みになっても面白い作品を目指し、日々精進しております。どうかお読みになってね。
 面白いですよ!
 多分(おい)。

 ルーツには母がいた。
 AIの研究ばかりでロクに彼の事を構いもしなかった母が。
 だが今、彼の隣にはシェリー・ブラウンがいる。
 しかし、彼女は―――
 そして、ルーツは―――
 何より、今ガンダムに必要なのは、その亡き母の研究だったのだ。
 
 それではどうぞ本編をお召し上がりください。
 m(--)m
 
 追伸:捩じれ骨子様、若者共への応援ありがとうございます。
 


シェリー・ブラウン

 機動戦士ガンダムSS

 

 第9話:――シェリー・ブラウン――

 

 -1-

 

 月・ラグランジュ4宙域間航路。

 ウェストのビグロ改輸送船は、またベースジャバーを従え、アルビオンを目指していた。

 とは言え、地球の陸路空路と違い、ウラノス艦隊と鉢遭う事は無い。

 何故なら、宇宙で単純に目的地に向かって推進剤を吹かすと、月公転軌道速度よりも加速して、公転軌道から外宇宙へと飛び出してしまうか、逆に減速して地球に向かって落ちてしまうのだ。だから、外か内へ回り道をしなければならない。故に行きと帰りの航路は必ず別の宙域で、交わる事は無い。

「速く行かなきゃ、ルーツ達が待ってる」

 焦るウェストだが、彼にしても天体物理法則に敵わない事は知っている。それでも、彼等の気持ちを知ったからには、いくらのんびりした彼でものんびりなんてできない。

「今は休憩中だろう。もっと安らぎたまえ。結局はそれがミスを減らし、早く目的地に着く事になるよ」

「教授―――」

「私が言っても仕方なかったかな?」

 ジェファーソン教授は優しく笑む。

「いえ、そんなこと無いです! ……その通りです」

「それは良かった。そもそもガズィのパーツを受け取るだけなら、彼等も我々を待たずに、月で予備を受け取れば良かった。私も行く事にしなければ、彼等も待たずに済んだのだ。せめてもの罪滅ぼしだよ」

「違いますよ! だって、ブラウンさんには、ルーツのガンダムには、教授と、ルーツのお母さんのそのディスクが必要なんでしょう? 命が懸ってるんだ!沢山の! 切り札のガンダムSSが不完全なままだなんていい訳が無い!!」

 温厚なウェストが、もし聞いていたならルーツ達ですら記憶を探るのに困るほど声を荒げる。

 だが、それを不思議には、決して思わないだろう。ウェストらしいと、そう思ったはずだ。

「そうかも知れないし、そうでないかも知れない。これはパンドラの箱なんだ」

 光沢を放つ2枚のディスクに詰まっているのは、災厄? 混乱? 希望?

 

 -2-

 

 アルビオンMSシミュレータールーム。

 若者たちは懸命に訓練する。

 かつてこれほどまでに真剣に訓練した事が有ったろうか?

 自分の腕に自惚れていた。

 その癖、自分でどうにもならぬ事は、他の見知らぬお偉い大人が、それこそアムロ・レイとかが、いつかどうにかするさと高を括っていた。

 だが、今は自分達でどうにかしたい。自分達で無ければ駄目で、自分達でどうにかしなければならない。アムロ・レイでは駄目なのだ。

 それが高望みなら、何度山壁から滑り転がり落ちようと、高みに登るしかない。

 何故なら、それにもう近い位置に、ルーツが、クリプトが、バックスがいると信じているから。

 ならば目指す。無理だなどとは言わない。理が無いなら、飛ぶ矢の様な理の道を作ってみせる。切り拓いて見せる。

 ルーツも、クリプトも、バックスも、死に物狂いで相手する。

 そして自分達も、彼等に教えるその行為で気付いた事で、自信を貪欲に鍛え練り上げ、磨き直して行く。

 あの日の誓いの為に。

 

『……駄目よ~。アムロ・レイなんか待っちゃ駄目よ~』

『――そうだろ、だって、出鱈目に、それこそルーツ大尉よりも強いんだぜ? ウラノスの奴らなんて、簡単に皆殺しにしちまうよ!』

『駄目だ! それじゃあ、何のためにバックス中尉は僕達の所に帰って来たんだよ? それじゃあ……中尉の願いは叶わないじゃないか!』

『もう、中尉だけの願いじゃねえし、俺達の願いだよ。で無きゃ何のための最強のガンダム部隊だ!』

『ああ、大尉だけのロックンロールじゃない、俺達のロックンロールなんだよ!』

『やろうよ、ルーツ! だってアンタが言い出しっぺどころか、アンタがいの一番に、言葉で無く、やらかしちまったんだよ! もう転がるっきゃないじゃん!』

『…………後悔すんなよ』

 その時、ルーツは部下の前で泣き出さないために、仏頂面でそれだけ応えるのが精一杯だった。

 

 -3-

 

 ラグランジュ4宙域・月間航路。

 こちらはウェストたちとは逆、即ち月を目指すウラノスが取った航路である。

 ウラケノスに追いつき、乗船した脚で連れられた医務室でラドックが目にしたのは、呼吸器を付け、白いベッドに横たわるゴーゴンだった。

「…………何故こうなった?」

「俺の所為です!」「いや、俺の!」「あっしの!」

 口々に謝るグェンとゴーゴンの部下達。

「いや、何より私が戦力を出し惜しみしたせいだ。私の隊かセヴ、どちらか出していればこんな事にはならなかった」

「違う。一緒に出てたのに、持ち場が離れてるからってお姉さんに気を回さなかった僕のせい」

 アヴァンとノイも謝る。後ろで見守るセヴは黙って唇を噛む。

 連邦軍はパトロール艦隊を配置していた。そしてMSの機数の不利を悟って、機雷散布でウラノスの進路を塞ぐ事を選択した。

 機雷解除はゴーゴンたちが志願した。それを邪魔する為にパトロール艦隊のMSからゲリラじみた戦いを挑まれる事は承知の上だが、ゴーゴンの力が有れば事足りると思っていた。下手に機数を出せば、MSも機雷に引っかかり、被害が出ると思ったのも有る。

 誤算は、専用の機体で無い所為で、予想よりも早くゴーゴンのサイコウェーブ維持が切れてしまった事だったのだ。

「………アタシの所為だよ。誰も悪くない。……自惚れちまってたよ」

 ゴーゴンが呼吸器越しに、か細い声を出す。

「余り喋らないでください」

 医者が抑える。

「アナンダは………、助かるのか?」

「勿論助かります」

「―――っ、良かった」

「ですが、もう高GのかかるMSパイロットをされる事は、一生無理でしょう」

「ゴメンね…………」

 ゴーゴンが涙を流す。

「謝るな! こんな事ならジェイスもお前に付ければよかったんだ! そうすればジェイスだって死なずに済んだ! 俺の所為なのだ! 全て俺の!」

「……責めないで。それがたとえアンタ自身でも、アンタの心を、苛めないで………」

 ラドックは雷に撃たれた。

 何故だ? 何故、あの、憎きガンダムと同じ事を言う? 言葉は違うのに、なぜ同じに聴こえる?

 ラドックはフラフラとその場を離れる。

 誰も、追いかけて慰められる者はいなかった。

 

 ラドックは、気付くとラマカーニのデスクの前のソファーに座っていた。

「今回の事は、お詫びのしようもない。君にとって掛け替えの無い人達だと言うのに」

「…………」

「我々の本来の目的は、現在停止中の月軌道エレベーター『オリオン』と、月中間軌道を周回して建造中の、アステロイドベルト設置用マスドライバー『サイクロプス』の奪取である事は、既に説明した」

「………」

「だが、せめてもの謝罪に、少なくない戦力を以って、君達の仲間を、勿論アナンダ・ゴルゴン君も含めて、サイド3に移送する事を再優先する」

「っ! かたじけない!」

 ラドックの目に精気が戻る。

「我々の本隊は暫らくラグランジュ1宙域と月の中間にある暗礁宙域に潜む。そこで、すまんがラドック君には本隊の警護を頼めんだろうか?」

「そ、それは」

 ラドックは逡巡する。

「済まん。君をサイド3に向かわせれば、そのまま君が戻ってこないと言う保証は無い。それは全ての未だ戦えるジオン義勇兵団にも言える。我々は、もう、これ以上戦力を減らすわけにはいかんのだ」

「………いや、そもそも貴方がたの恩が無ければここまでは来れなかった。承知しよう。その代わり、アナンダを、仲間を、くれぐれも頼む」

「勿論だ。それについては、責任を感じたノイが志願してくれている。何も心配はない。それに―――」

 ラマカーニは昏く笑う。

 この老人も疲れているのだな。そう思った事をラドックは後に、ノイエ・ジールⅡのコクピットで後悔する。

「遂に完成したのだよ。究極の三体の内の一体、サイコSガンダムが! 三体揃えば、もう、連邦の通常戦力を恐れずに済む―――。ノイがそれに乗り、アナンダ君を守るのだ、何も心配はいらない」

 その言葉に、ラドックはやっと深い安堵を感じた。急に眠くなる。

「いい。そのままそこで眠りたまえ」

 ラマカーニは立ち上がり、クローゼットから毛布を出して彼にかける。

「済まん………甘えさせて、もら……」

 ラドックは久しぶりに一時の休息を得た。

 

 -4-

 

 ラグランジュ4宙域、補給待機中アルビオン。

 士官用休憩室で、ドリンクベンダーでコーヒーとアイスティーを淹れ、ルーツとブラウンはくつろぐ。

「テックス達がまた来るのも明日になったなあ」

「そうねえ。楽しみね」

「やっと、これで月に出発できる。と言っても、奴さんたちがどこに居るか、誰も知らねーんだけどな」

「月軌道パトロールに任せるしかないわよね。そこは」

「まったくだ。それよりそっちの調子はどうだ?」

「あら、誰かさんのお蔭で、スミスやチェレンコフが嬉しい悲鳴を上げてるわよ。連中、みるみる上達するもんだから、思い切り存分に設定を過激にできるって。これなら新型機をいつアムロ・レイに渡しても、満足させられるってね」

「はっ、そいつぁ褒め過ぎだろ! だがまあ、良かったよ」

「そっちはどう?」

「お前、自分で充分わかってる風に言った癖に聞くの?」

「あら、プログラム担当としては、より詳細なデータが欲しいのよ」

「へえへえ、仕事熱心なこって。だがまあ、そうだな………怖いよ」

「え?」

「順調すぎて怖い。あいつらは正真正銘、今までで一番本気になってる。なんなら地球の命運をアイツらに任せるって言われても、さあどうぞって言いてえくらいだ」

「よかったじゃない」

「でもな、それでいいのかって、怖いんだよ。もしそこまでしても、アイツらの望みがかなわなかったら、どうしたらいいんだって。アイツらがもし、そこまでしても…………」

「大丈夫よ。そこは私とアーサーと、ガンダムを信じなさい。きっと、誰も死なないわ」

「――――――っ」

 ルーツは見透かされ派手に赤面する。

「大丈夫よ」

 ルーツの心に温かな気持ちが満ちてゆく。

 嗚呼、そろそろ認めないといけないかも知れない――――

「アンタには、いつも世話になってるな」

「そ、そうよ、感謝なさい」

「アンタはいい女だ」

「も、勿論よ」

 ブラウンの胸が高鳴る。この流れは、遂にその時が来るのか―――?

「俺の御袋とは比べ物にならねえ、いい女だ」

「―――っ!」

 ブラウンの動悸がおかしくなる。これはさっきまでの甘酸っぱく心地好いそれとは違う。――苦しい。ただ苦しい。

「同じ研究者なのに、研究ばかりで、俺を省みなかったアイツとは違う。まるで反対だ」

「で、でも、貴方のお母さんでしょ? 掛け替えの無い親じゃない?」

「あんなの親なもんか! 俺にとって本当の親は御袋でも、顔も覚えてねえ内に離婚した挙句、軍の機密警察勤務とやらで、部外者隔絶で面会も連絡もできねえ上、俺が13の時に、1年戦争でとっととくたばった名前だけの父親でもねえ! 本当の親父ってのはマニングスなんだ! 俺にとってただ一人親って呼べる奴は、マニングスだけだ!」

「何で、マニングスだけなのよっ?」

「あいつは、俺達がどんな奴でも、嫌われ者だって居たのに、ロクでもない奴だって居たのに、みんなを受け止めてた。みんな愛してた! どんな糞餓鬼だろうと、それが自分の子供なら、命の限り愛したんだよっ! たとえ、それが、自分の掛け替えの無い親友に刃を向ける事になろうともだっ! その板挟みの代償を、自分の命で払うくらい、本当に人を愛する、本物の、『親』だったんだよ……。誰も愛さない、御袋とは違う………」

 

 2年前、雨の降りしきる共同墓地で、かつての乗艦ペガサスⅢに残されていた、軍服と遺品の一部を遺体代わりに埋める葬式で、マニングスの細君がその事実を語った。

『あの人の脚の怪我も、前の戦争でその人を庇って出来たものなの。可笑しいでしょ、前からそんな人だったのよ。何で軍人になったか不思議な位のお人好しよね。大好きだったわ。でも、貴方達は負い目に思わないでね。だからこそ胸を張って生きて。貴方達は、確かにストールに愛されたのだから。胸を張って誇り高く、そして、どうか貴方達自身も、誰かを愛する為に生きて。彼の息子なら』

 

「っ」

 ブラウンは息を呑む。

 ルーツの痛みが、苦しみが、切なさが伝わってきて、苦しさと同じ位、愛おしさが込み上げてくる。

 それでも、こう言わずにいられなかった。

「じゃあ、貴方は自分の親を、お母さんを愛さない訳? 見放すの? 見捨てるの? 自分にとってロクでも無いから? 貴方は、貴方が愛するストール・マニングスはそんな人? マニングスなら、貴方のお母さんをどうするのよっ!?」

「………………」

 ルーツは、ドリンクチューブを落とす。船自体の加速運動によって生まれる低Gに引かれ、床を叩く。

 コップの様に割れはしないが、黒い中身がこぼれ、乾いた音を立て転がる。

 ルーツは、何も答えられなかった。

「ルーツの、バカァアっっ!!!!」

 ブラウンは紅茶のチューブを握り潰し、彼の頬をグーで殴り、走り去って行った。

「――――――」

 ルーツは呆然と突っ立ち、ただ見送る。

「あ~あ~」

「最低!」

 ブラウンが走り去った出入り口の陰から、カーリーとランファンが現れる。

「たっ、立ち聞きしてたのか?」

 声が裏返るルーツ。威厳もへったくれもない。

「それは謝るよ。でも大事な事だから二度言うよ。ルーツ、最低!」

「な、なんで?」

「言いたくないんですけど~、あの人、普段、超がつくドヲタクで~、他人に興味なんて、丸っきり無いの~。大尉の言う大尉のお母さんそのままよね~」

「え?」

「あの人がまともに話す人なんてな、同じヲタク仲間のスミスやチェレンコフを除けば、アンタぐらいしかいねえんだよぉっ! それがどう言う意味か、わかんなきゃ殺すぞコラア!」

「それも~、傍から見ても分かり易い位、大尉にだけ表情豊かですし~、デレデレしてますし~」

「あ、あ~~~~~~~~」

 ルーツは赤くなって青くなって、また赤くなって青くなって片手で顔を覆う。

「………どうすりゃいいんだ」

 まさか、丸っきりオフクロそっくりの女を好きになっていたとは。

 

 -5-

 

 月近傍。サイド3航路。

 ジオン共和国へのジオン兵の移送は、ペズン駐留艦隊のサラミス改級3隻で行われた。

 いざと言う時に、足手纏いになる輸送船を混ぜない、英断と言える。

 ラマカーニの情の深さ自体は嘘では無い。

「ゴルゴンさん、サイド3に着くまで具合が悪くならないで欲しいよなぁ」

 ジオン義勇兵団から、ただ一人付き添いを許されたグェンが、緑のゼク・ドライのコクピットで呟く。

 ジオン兵を守る役に、ジオン兵が一人もいないのは彼等が不安になるからだが、それが彼となったのは無論、ゴーゴンを護れなかった負い目から、特に強く志願して折れなかったからだ。

『うん。絶対に守ろう』

 黒いSガンダムのノイからの返信。

 Sガンダム。それはカミーユ・ビダン駆るZガンダム、ジュドー・アーシタ駆るZZガンダムほど有名ではないが、間違いなくそれらに並ぶ、グリプス戦役、ニューディサイズ事変、ネオジオン戦役の2年間において、連邦最高のスペックを誇る、最強機体だった。

 言わずもがな、かつてのルーツの愛機、その複製。

 この黒いSガンダム、正式名称サイコSガンダムは、Sガンダムの最強形態であったExSから、変形分離機能を取り除き、空いた空間にサイコミュ補助ユニットを詰め、背部の4門のビームカノンの代わりに、大型ファンネル3機搭載のユニットを4つ、計12基搭載。両膝のリフレクターインコムは、そのままリフレクターファンネルへと変更。

 総計14基、全て充電に戻らずとも連続使用できる、高性能ファンネルだ。

 額のインコムは、ファンネルを統括する為のバイオセンサー直結コンピューターユニットへと変更。

 減ったビームカノンは変形の必要が無くなった両腕に、ビームサーベル兼用ユニットして1門ずつ計2門固定装着。

 他の装備はExSと同じである。

 2年が経ちアップデートも施されたその機体は、無論ルーツが操った物以上。

 ただし、ALICEが搭載されていない事を除いてだが。

 グェンは落ち着かない気持ちになる。

 この機体から感じるプレッシャーは、間違いなくラドック駆るサイコゼク・ドライ以上。正真正銘の化け物。

 ラマカーニが言う、連邦の通常戦力など問題にならないと言う台詞は、紛れもない真実だ。

『グェンさん。来る』

「え?」

 目を凝らすと、僅かにセンサーが捉える噴射炎の光。

 ベースジャバーに乗ってパトロールしていたMSが、次々に散開してこちらに来る。

 数は2個中隊、18機か?

『僕一人で大丈夫。グェンさんは、くれぐれもゴルゴンさんから離れないで』

 速い。まさしく眼にも止まらぬ矢の様に、サイコSが飛ぶ。

 それから追いつく間もなく、敵の反撃のビームはその速度に掠る事も無く、2個中隊のジムⅡは、全機無力化された。

「……ころしたのか?」

『そんな事しなくても簡単だった』

 他の艦載MSはまだ発艦したばかり。

 サイコゼク・ドライでは、無敵と思えたラドックとゴーゴンのペアで、ようやく上げれる戦果を、しかも殺さずに。

 本当に、彼一人で充分だ。

 グェンの背筋が寒くなる。味方で良かったと。

 

 -6-

 

 ラグランジュ1宙域、暗礁域近傍。ウラノス旗艦ウラケノス。

 ラマカーニは書類とパネルを処理し、時に音声で報告を聞く。

 報告はすべて順調だ。

 軍事的アクションは仕上げに過ぎない。そもそも、それを指揮するセンスは自分にはない。

 協力者や部下は順調に、かつて宇宙開拓時代初期の、月資源を各サイドに送った軌道エレベーター『オリオン』の再起動準備を進める。

 『オリオン』は、コロニー資材提供の役割を、月のこれ以上の質量低下を規制するために、アステロイドベルトから引っ張ってきた小惑星に明け渡し、また、経済流通としての物資運搬を、各月面都市に設置された、マスドライバーや民間宇宙船に明け渡し、その機能を停止した。

 だが、そのエレベーター基部には、標準コロニーの半分以上に値する質量の、切り出されたままの金属比率の高い土塊が、5ダース半、計66個、未だに放置されている。

 アステロイドベルトの資源小惑星を、ベルトから地球圏に向けて発射(正しくは内軌道へ落下するよう減速)する為の巨大マスドライバー、『サイクロプス』は、連邦によって秘匿建造されているが、その情報を建設開始から、事務兵站職であるラマカーニは把握しており、現場には手の者も内通者もごっそりだ。

 この二つを組み合わせるとどうなるか?

 以前ニューディサイズが地球爆撃の為に奪おうとした、月面都市経済流通用のマスドライバーなど、玩具に見える。

 まさしく、神話のオリンポス山から降るゼウスの雷霆、もしくはメギドの光として、地球を支配できる。

 偶然ではあるが、そもそもこの旗艦『ウラケノス』は、一つ目巨人サイクロプスが鍛冶した、ゼウスの雷霆の名だ。

 まずは3発をダカールを始めとする主要地に落とし、残り63発の弾丸は、いつでも撃てると世界に宣すれば良い。

 守りは、セヴとノイのサイコガンダムMkⅢとサイコSガンダムが有れば完璧だ。

 唯一の懸念は、アムロ・レイだが、その為に捨て駒のノイエ・ジールⅡがいる。

 3機掛かりなら勝てようし、それでも手に余るならば、ラドックと相打ちさせればいいのだ。

 その為に恩を売った。

 彼を真の戦士として迎え入れたのは嘘では無いが、それでも秤にかければ、ティターンズの同志の方が可愛い。

 自分は嫌な老人だな、と、ラマカーニは自嘲する。

 ふと、リョウ・ルーツを思い出す。

 気持ちのいい青年だった。彼は何故来てくれないのか?

 彼が真の戦士として、世界をセヴやノイやアヴァンと共に統治してくれるなら、自分はいつでもこの嫌な役割から身を引く事が出来るのに、と。

 年老いた、薄汚れた自分やゴーダ達では、駄目なのだ。

 

 -7-

 

 ラグランジュ4宙域、アルビオン。

 接舷した輸送船から、ウェストたち軍人と、ジェファーソン教授が乗り込んで来る。

「久しぶりだね、ルーツ君」

「あ、ああ」

 ジェファーソンと握手をしながらルーツは曖昧な笑みを浮かべる。

 母の同僚で友人である彼は、子供の頃の彼が、同じく同僚のキャロル博士などの様に、本来憎み嫌うべき存在の一人だったのだが、余りにも物腰柔らかくて、気が付けば丸め込まれている、どうにも憎み切れないやり辛い相手だ。

「ブラウン君も。元気で何よりだよ」

「はい、先生のお蔭です」

 おまけにブラウンの恩師でもあると言う。居心地の悪い気持ちで一杯になる。

「これが、そのディスクだよ」

 ジェファーソンが懐から2枚のディスクを取り出す。

「1枚はブラウン君に、そしてもう一枚は、ルーツ君にだ」

「俺に?」

「多分、遺言だね」

「ケッ、ならいらねー」

「そうか、ならばこれは私達が勝手に見るよ。この中にはコンピューターシステムに関する重要なメッセージも入っていて、それを息子に託すと、そう彼女は言い残したんだ」

「何だと?」

「彼女の意志には反する事になるが、こうなっては仕方ない」

「やめろっ! 寄越せっ!」

「じゃあ見るのかい?」

「―――――っ!!」

「ならば、私が一時預かろう」

 ヒースロウが横からディスクを奪う。

 ルーツが怒りの目を彼に向ける。

 以前ならヒースロウは嫌な気持ちになったろう。そもそもこんな厄介事はマニングスに丸投げして、まるで他人事だった。直接面倒を見る様になってからは何度胃を痛めたか。だが、今彼の胸に湧き上がるのは、ただ愛おしさ。

 嗚呼。私はこの子らの親になったのだな。――――マニングスの様に。

「隠していたが、そもそもルーツ博士の研究は重大な軍事機密だ。ルーツ大尉、例え息子の君であろうとも、私の立会いや許可なしにこのディスクを見る事は許さん。どうだ? 目を背けたい事から逃げる、いい言い訳が出来たか?」

「ッッッ!!?」

 ルーツの顔が怒りと羞恥に真っ赤になる。

「っんな訳有るかっ! 今すぐ寄越せ! すぐにでも見てやるっ!!」

「言ったろう、私の許可なしには見せんと。それにはまずブラウン君と話し合ってから出直して来い」

「………」

「その気が無いのならさっさと持ち場に戻れ。一刻も早く月に向け出発しなければ困るのは君達だ」

「糞野郎ッ!!」

 ルーツは大股で歩み去って行く。

 きっと、泣いているな。涙を見せずに。

「……司令、本当ですか? 重大な軍事機密って?」

 ブラウンが訊ねてくる。この娘も涙を見せぬよう必死だな。

「ああ、墓場まで持っていくつもりだった秘密だ。死んだマニングスと私しか知らぬ、な」

 

 一方、MSデッキ。

「「うわあ」」

 届いたばかりの新ユニットがプロトガズィに装着されていく様を、ケンザキとオコーナーは訓練で疲れ切っているのに輝く目で見つめる。

「どうだね、新しい姿は。プロトガズィ改めリファインガズィ。そう、略してリ・ガズィとでも名付けるかな」

 チェレンコフが得意げに語る。

「近接用のビームサブマシンガンは思い切って排除した。変形システムもだ。フライトユニット分離式だ。

 その代りにフライトユニットには近接用の速射短砲身ビームカノンを2基装備した。連射速度自体は無論マシンガンに及ばないが、2門あるから火力は変わらない。何より旋廻砲塔式だから、WRモードでの使い心地はずっと上の筈だ。

 メガビームランチャーもMS時には取り回しが悪いからフライトユニット固定とした。MS時にはやはり一番バランスのとれたビームライフル一丁を使用する。中間距離から白兵戦まで、ぐっと使いやすくなったはずだ。2門を同時に両手に持つなど、やはり支援専用機で無ければ褒められたものでは無いからね。機敏に動けないしサーベルも使い辛い。

 それと、火器の減った分の火力を補う為、グレネードランチャーも装備した。全装備自体は増えたが、武装やウィングを支えていたムーバブルアームを無くしたから、実は重量は軽減している。

 勿論、MS時は特にだ。乗れば軽さに驚くぞ」

「「有難うございます!!」」

「いや、その前に謝らせてくれたまえ。欲張る余り、肥満児になった機体に乗せて悪かった。そんなのは、そもそも身軽にすべき、遊撃用WRMSでは無かったのにな」

 チェレンコフは、さばさばした顔で笑った。

 

 -8-

 

 ラグランジュ2宙域、サイド3。

 サラミス改級に乗るジオン兵達が、もうすぐ肉眼で見えるはずのコロニーをいち早く見つけようと、窓に貼り付く。

「もうすぐだ」「帰れるんだ! 俺達」「長かったなあ」「母ちゃん」

『グェンさんも、懐かしい?』

 サイコSからノイが語りかける。

『そりゃあ、勿論さ』

『―――!』

『ど、どうした?』

『来る』

 その言葉の通り、MSの編隊が姿を現す。

 沢山の、緑色に塗り直し盾と武装だけ変えた、連邦払い下げの旧式のジム。

 5機のシュツルム・ディアス。

 そして、それを率いる赤いカスタムバウ。

『あの人、強い』

 その言葉にグェンが息を呑む。今のノイがそこまで言う相手だと?

『ま、待て、戦う気はない! 俺達はジオンの帰還兵で、こいつらはただ送ってくれただけなんだ!』

『フッ、残念だな。随分と買い被ってくれる―――』

 オープン回線で繋がった、カスタムバウの男の言葉にグェンは固まる。

『生憎この機体はニュータイプ専用機ではない。そこの坊やのと違ってな。だから私はそこまで強くはないさ』

『あ、ああ、そういう意味か。―――と言うか、聴こえてたのか?』

『あの人もニュータイプ』

 ノイの言葉。

『そうか、道理で。?じゃあ、アンタまさか赤い彗星??』

『そう呼ぶ者もいる。ようこそ、ウラノスの諸君。連邦との関係上、おおっぴらには出来んが、帰還兵を届けてくれたのだ。共和国との最低限中立の商取引と言う名目で、補給と、もてなしくらいはさせてもらう。ジオン共和国は少なくとも君達の敵では無い』

『『感謝する』』

 グェンとペズン艦隊ゴーダ司令は、その通信と礼儀に同時に応える。

『こちらこそ、な。かつての同僚を送り届けてくれ、感謝する』

 

 -9-

 

 L1、暗礁宙域、ウラノス旗艦ウラケノス。

「ノイ達は無事に着いたそうです」

「そうか、よかった」

 アヴァンの報告に、ラマカーニは心底ほっとする。約束を果たせたのもそうだが、何よりもノイを失うわけにはいかない。掛け替えの無い手駒であり切り札で、愛する息子だ。

「では、いよいよ『サイクロプス』奪取ですね」

「ああ、最後にして、最も激しい戦いになるだろう。敵の守備部隊は一個連隊、81機。対してこちらは63機。ジオン兵と合流した時は、そのほぼ倍の120機の大所帯だったのに、ずいぶん減ったものだ」

「ですが、心配はされていないのでしょう?」

「無論だ。ジオンやネオジオンのニュータイプ専用機、そして他ならぬ我等がサイコガンダムシリーズが証明している。報告書と統計に残された明確な事実。それはただ一騎でも戦場を支配する。ましてやあの3体は超弩級だ。

 だが実際に戦っていない者は、実際に戦った兵士や指揮官の無能を糊塗する為の誇大報告と取る。

 通常戦力としか戦った事の無い軍官僚は特にだ。彼等のプライドは自信過剰の自惚れで出来ているからな。なまじ成功して出世したが故にだ。全く度し難い」

「スタンリーはその愚かさを、死で償いました」

「ああ。生き残ったウォンには精々スピーカーになって欲しいものだが、今度は彼の言葉が、責任逃れの嘘と取られるのだろうな」

「失敗しない者が勝者であり成功者、その官僚のシステムが変わらない限り、何も変わらないのでしょう」

「だから君に変えて欲しい。生き残ってくれよ」

「それは殺し文句ですよ。そう言われたら逆に命を張りたくなる」

 ラテンらしい洒落で返す。

「君が冗談の分かる男で良かった。これからもその洒落で生き延びたまえ」

「それだけが取り柄です。お蔭でグリプスでも生き残り、それこそ部下諸共呆れるくらい調子よく投降しましたとも」

 これにはラマカーニも、久しぶりに明るい顔でくつくつと笑う。

「さて、ここからは君に頼るべき戦術の話だが、アルビオンは来ると思うかね?」

「おそらく間違いなく」

「では、彼等に背後を衝かれたら困るのではないかね?」

「ええ。なので戦場が混乱するよりは、予め戦力を二分する方がいいと思います」

「それは二正面作戦、戦力分散で、愚策では無いのかね?」

「教科書ではそうですが、実際には挟み撃ちや奇襲を受けて兵がパニックになる方が、被害が計算できません。相手戦力が分かっているなら、それぞれに対処する方法や戦力も準備できます。合流された方が、相手がどういう連携を取るかの予測も難しくなります。私の経験ではそちらの方が愚策ですね」

「君がいて良かった。私が実は戦術指揮の授業が赤点スレスレだったのがバレるところっだたよ」

「いえ、生憎皆存じております」

「ふっ………そうだったな」

「ですが、それ以外は最高の司令官です。オヤっさん」

「今更おだてるな」

「それで、誰をアルビオンに当てるかですが」

「ナパタイかね? エッケンベルガーか?」

「私が行こうかと思います」

「君がかね?」

「ええ。リョウ・ルーツを気に入っておられるのでしょう? 私もです」

「生け捕りにするつもりか?」

「ゼク・ドライ10機ならば出来ます。以前の演習ではジェガン・Oで互角でしたが、幸い彼等の機体は前のままです。ならばこちらが圧倒的に有利ですからね」

「それは――、頼めるなら無論だとも。彼は我が同胞を殺さないでいてくれた。報告では、今も他の部隊に倣わず、それを続けてくれているらしい。彼が真の戦士として我々に加わってくれないのは、連邦兵士としての下らない義務感の鎖に囚われているに過ぎんのだ!」

「他の者は?」

「見込みのある者もいたが、正直虫唾の走る、私の嫌いなタイプの軍官僚や政治家そのままの偽善者もいた。君達の命の方が大事だ、無理にとは言わん」

「見込みのある者もいるのならば、心苦しいですが、ジェガン・O一個中隊9機もお貸し下さい。数でも2倍強の戦力です。充分でしょう」

「――――っ。すまん、私はやはり年老いている。真の戦士を説くに相応しくない行為をする処だった。それではルーツ君の身体を捕えても、心は、魂はついて来てはくれなかっただろう。愚かな事だ」

「いえ、バスク殿やジャミトフ閣下の立場になられたのです。あの方達の様に非情にならねば務まらない。彼等に貴方がいた様に、今度は私がいます」

「そうだとも! 組織は有機的なものなのだ! 誰かが嫌な立場に立たされれば、嫌な人間になるしかないのだ! それを理解せずに、家族と言うものを理解せずに! 何故奴らはトカゲの尻尾切りを繰り返す!?」

 ラマカーニは激しく嗚咽する。

 だが、彼等は、彼等の粛正による官僚の排除もまた、蜥蜴の尻尾切りである事に気付いてはいなかった。

 

 ウラノス所属、コロンブス改級工作艦。

「できたのだな、サイコガンダムMkⅢが」

 ラドックがセヴの傍らで、横たわる鋼の巨人の威容を見下ろす。

「おじさんのは?」

「ああ、ノイエ・ジールⅡも組み上がった。『サイクロプス』へ、ノイ君を迎えに行こう」

 もうこれで、例えルーツのガンダムが相手でも、二度と後れを取ったりはしない。文字通り桁が違う。

「グェンさんもね。二人のお蔭でゴルゴンさんが無事ジオンに還れてよかった」

 それはラドックが初めて見る、セヴの花の様な笑み。

 冷たい子だと思っていたが、こんな顔も出来るのだ。優しい子なのだ。それは救いだった。

「ああ。あいつとノイ君には、いくら感謝してもし足りない―――」

「―――おじさん、泣いてるの?」

 セヴはまだ、その涙がゴーゴンだけでは無く、グェンとノイにも、そしてセヴ自身にも向けられている事には、気付かなかった。ニュータイプでも、まだ子供だったのだ。

 

 -10-

 

 L4、月間航路。アルビオン居住区。

 上半身はシャツ一枚、背を壁に傾け預け、片膝を立て、ベッドの上に半ばだらしなく寝る様に座って動かぬルーツ。

 片手にはノンアルコールビールの、握って潰れかけたパック。

 もう一方の手は、頭を掻きむしり続ける。

 訓練は変わらずこなしている。だが、眠れない。良くない兆候だ。月に着くまでの猶予もあまり無い。

 だが、彼は何も決められなかった。

 ブラウンの事も、ALSS、アーサーの事も、ガンダムの事も、遺言のディスク、つまり母親の事も。

 ヒースロウの言った通りだ。自分は逃げ回っている。もっと大人ならば、この矛盾した気持ちごと飲み込めたろうに。母は母、ブラウンはブラウンと。達観した優しいマニングスには、どうしてもなれない、不器用な糞餓鬼。

 いっそクリプトやウェストが叱ってくれればとも思うのに、あいつらはいつもと変わらない。

 ただ、『仕方ないよ。それがルーツだから』と、語らずに語る瞳が、眼差しが辛い。

 ふと、ベッドサイドの写真立てを見る。

 マニングスの細君がくれた、ペガサスⅢに乗り込む直前の、夫婦の写真だった。そのマニングスの顔が、彼等を鍛える時に余り見せぬ、余りにも優しい、幼い頃の彼が欲しかった父親象そのままの顔だったので、コピーしてもらったのだ。

 

『仲がいいんですね。特にどんな処を好きになられたんですか?』

 ウェストの問い掛け。

『あら、そんな処は貴方達もよく御存知じゃなくて?』

『じゃあ、隊長の方はどう言ったんです? 教えてくださいよ~』

 調子の良いクリプト。

 だがこれにはルーツも意地悪く笑む。恥ずかしい理由を思いっきり笑ってやろう。それ位の意趣返しはしてやる。

『あの人誰にでも面倒見がいいでしょう。結局人の面倒を見るのが好きなのよ、性分ね。だから、その中でも私が一番、面倒を見て守ってあげないといけないお姫様だからって言ったのよ』

『『『『うわあ、御馳走様』』』』

 ルーツ達は勿論、黙って聞いていたシェイドまで胸焼けする。聞かなきゃよかった、と思ったが――――

『だから、腹を立ててやったわ。そんなに私は頼りなくて危なっかしく見えるの!?って。それはもう見ものだったわよ、あの時のあの人の、青くなって慌てふためく顔と言ったら』

 一同は腹を抱え爆笑した。もちろんクリプトは床で転げ回った。

 

 そうだ。

 ルーツは立ち上がる。

 今、ジェファーソンがいるのならば、聞けばいい。聴かなければならないのだ。

 何故、死んだ父親が母を好きになったのかを。

 きっと、ブラウンとの、母との答は、そこにある。

 

 ジェファーソンにあてがわれた士官部屋の一つのドアを鳴らす。

『入りたまえ』

 ドアが開く。ジェファーソンは読んでいた本から顔を上げ、椅子の向きをこちらに変えた。

「あ、あのよ」

「君の父親、ケイ・タカハシの事かね?」

「っ!?」

「そんな気がしたのさ。それで聞きたいのは、ケイがどんな男だったかかね? それとも、何故、彼がエレノア・ルーツを好きになったのかかね?」

「…………両方だ」

「君は写真の彼を見てどう思った?」

「嫌な面だ。認めたかねえが、俺に似て、人でも殺しそうなヤクザ面してやがる。軍の機密警察に入るだけあって、血も涙もねえ悪党だったんだろうな」

「逆だよ。私が人生で見た中でも、他に思い出すのが難しい位、心根が温かく、優しい男だった」

「!!??っ」

「そして、もう一つの問いだが、そうだな。君は君が最初に購入した車を覚えているかね?」

「覚えてるさ。ポン付けターボのじゃじゃ馬の、所謂ダメ改造がされてて、その所為で事故歴が付いてて、実際には大した傷じゃ無かったんだが、誰も買い手がつかねえ、お蔭で安く手に入った、青いポルシェだ。今でも地球のアメリカ区の、俺の家のガレージに在らあ」

「そんなに駄目な車かね?」

「他人から見りゃあそうだろうさ。でも、自惚れでも、セッティング注文も含めてあいつは俺にしか乗りこなせねえと思ってる。俺じゃなきゃ駄目な、可愛い、掛け替えの無い相棒さ」

「そうか。なら、それがそのままケイがエレノアを愛した理由だよ」

「――――――っ!」

 

 -11-

 

「ルーツ……、ルーツ……、リョウ――――」

 夜ごと、自室でブラウンはその名を繰り返し呼んで泣く。以前に引き籠った時よりも辛い。比べようも無い位。

 しかし、彼女は昼間の勤務を欠かすどころか、以前よりも鬼気迫る仕事ぶりを見せるている。

 エレノアの残したディスクを元に、ALSSの改良に試行錯誤を繰り返し、残りの、どうしても解けないプログラムのパスワードを必死に解析する。

 それしかできる事が無かったからだ。愛しい男の為にできる事が。

 

 -12-

 

 それは同じアルビオン内の反省房や空いていた一般兵房に、一時的に収容されていたウラノスの捕虜達に。

 同じくサイド2、5艦隊に収容された捕虜達に。

 それを預かる、ウォンの行動に嫌気が差した連邦兵達の間に。更に人づてに別の連邦兵に。

「なあ、あいつの言った事って、俺達自身が言わなきゃならなかった事なんじゃないか?」

「アイツの言った言葉って、俺達が一番言って欲しかった言葉じゃないのか?」

 転がる石たちが、時に水面を跳ね、起こした波紋は、確実に広がっていたのだった。

 

 ―第10話へ続く―

 

 

 おまけ。

 

※メカ解説。

 

●ルーツのポルシェ

 なんでMSでも無いこの中古車が、ここに出るかと言うと、ルーツが何故ガンダムSSを乗りこなせるかを説明する、本編中最重要メカの一つだからである(わー、主人公の乗る主役メカだ。ぱちぱち(笑))。

 彼が乗りこなしてしまう、その理由とは何であろうか?

 惜しみない愛情、根性、努力。

 それももちろんその通りなのだが、機械ヲタクのメカ屋(筆者は大学時機械工学科に在籍していた)としての解説を行う。以下の説明は、余程の自動車好きでないと退屈かも知れない事は、前もって忠告しておく。つまり、また読者置いてきぼりのガチヲタである(おい)。

 逆に湾岸MNや首都SPや頭DやMFG好きのお兄さんお姉さん、お待たせ(予告してないだろ)致しました。

 ポルシェと言う車は、エンジンと言う重量物が後ろに付いたRRと言う構造の機械である。

 自分と同じ頭文字の機構の車だから気に入った、それがルーツが買うきっかけの一つでもあっただろう。

 では、RRとはどんな車なのかを説明する前に、まず、一般的な車であるFRやFFについて説明しよう。

 Fとはフロントにエンジンが付いていると言う意味であり、首都高SPLと言う、湾岸の楠先生が描く漫画で語られているように、FFでも、FRでも、重りが前についている矢の様に、安定性に優れた車の事である。

 今時の車は余りそうでも無いが、このタイプの車は、前が重すぎるので、ブレーキを強く踏んだままステアリングを切ると、タイヤのグリップが重量に負けて引きずられて曲がらない、所謂アンダーステアを発生させる。

 だがその代わり、今度はコーナーの出口でアクセルを踏んで、後輪に荷重が移って(シーソーとお考えください)も、前が重いので、ある程度ちゃんと舵が効く、操縦性の良さも持っている。

 早めにブレーキを踏んで早めに戻し、スローイン・ファーストアウトと言う、いわゆる安全に速く走る基本の操縦をすると滑らかに走る、まさしく良く調教された良馬と言った特性を持ち、とくにFRは、アクセルを踏んだ時に荷重する後輪で駆動するのでグリップよく加速し、日本の一般的なスポーツカーはこのタイプが多いのである。

 だがRRは違う。ファーストイン・ファーストアウトを半ば以上に乗り手に強要する、良く言えば爽快な、悪く言えばクレイジーマシン、荒馬、ロケットである。

 後ろが重すぎるので、ガツンとブレーキを踏んで、幾分残したまま(残し過ぎるとやはりFR、FFと同じ様に外に逃げる。その時どうなるかは後述)前荷重しないと曲がらないコーナー侵入。そしてそのままフルステアだと、今度は遠心力でリアが横に振り回されるので、細心のステアリングワーク(リリース)が要求される(そんな特性なので、コーナーリングスピード自体は、FRより低くなりがち。加速減速が得意と言う長所と引き換えである)。

 そしてコーナー脱出。後輪にアクセルオンで恐ろしく荷重が乗り、後輪の向いた方向に、強烈なグリップでバーナーを吹かした様に吹っ飛んでいく。後輪の向きが正しくなければ、荷重の抜けた前輪の舵の効きは甘く、そのままコースアウト。これが一体荒馬、ロケット以外の何であろうか? しかしそれ故にファーストイン・ファーストアウト、リズミカルなストップ&ゴーが何より楽しい、ポルシェ信者、ポルシェ乗りにとっては麻薬のような爽快感を生むのである。

 特にNAのポルシェは、峠やショートサーキットを流して楽しい、名車と言える。

 だが、ここにFRや4WDの様に、ポン付けターボなど付けたらどうなるか?

 スピードアベレージが上がりオーバースピードでコーナーに侵入すれば、フロントがスリップの上、リアのトラクションが抜け、正しく氷の上を滑る操縦不能のソリ。後輪の向きが正しくないとコースアウトの悪癖は、ターボパワーによってフロントリフトがより悪化。修正しようとアクセルを抜く時ミスればリアからトラクションが抜け、ここでもまた氷の上の操縦不能のソリ状態に。高速コーナーでスピードが出過ぎれば、遠心力に負けてリアのトラクションがすっぽ抜けて、やっぱりまた氷の上のソリ。限りなく走る凶器である。

 メーカーから出ているポルシェターボは当然ある程度の対策をしているし、ターボモデルの多く(GTシリーズを除く)は安全性の為に大抵ハイグリップ化の4WDか、加えてセンサースロットル制御している。当然、地球に無害な水素系燃料(ここに来て古典SF時代のエーテル燃料みたいw)とかになっているだろう宇宙世紀でも、市販車はそのはずである。

 そうでなければ、まさしくRRの特性を知り尽くしたポルシェ乗りにしか乗れない、じゃじゃ馬なのだ。

 興味本位で同じ改造をしようとする人、やめなさい。死ぬから(マジで)。

 そもそもポルシェの高すぎる圧縮比をまず変えないと、一発でエンジンが死にます。そして君も死にます。もっと悪ければ、罪も無い人を巻き込んで死にます。紛れもない極悪人です。心からの忠告です。それでも乗りたいと言うのなら、1ミリの妥協も許さず、機械と会話して下さい。

 惜しみない愛情、根性、努力。それからなる機械との謙虚で真摯な会話。

 結局はそれに尽きるのである。

 さておまけに、MR。中央にエンジンを積む構造は、FRとRRの長所を併せ持つ理想のマシンだが、悪く言えば中央に重量が集まり過ぎている独楽回しのコマであり、僅かなアクセルミスで、踏み過ぎても抜き過ぎてもスピンする。

 だからエンジン自体が軽いフロントミッドシップロータリーのRX-7は、操縦性にも優れたちゃんとした名車なのだ。更に言えば、操縦し易さはサスが進化したFDよりも、軽量化が甘く、中央に重量が集まり過ぎていないFCの方が上。高橋兄(ツッコミたい人、キャラクター紹介まで待って(苦笑))が古くても愛機とするのも、ちゃんと理由が有る。求む復活、マツダさん。

 逆にフェラーリやランボルギーニのフラッグシップモデルは、エンジンが重過ぎるので、無理やり曲がらないセッティングにしてスピンを抑える、直線番長にせざるを得ないのでした(うわあ、バラしちゃった)。

 まあ、今時の車は、FRもMRもRRも、メーカーセッティングで互いの長所を取り入れ合ってますけどね。

 FRでも随分ブレーキを残したまま曲がれるようになりましたし。ってこれは重量配分改善だけでなくタイヤのお蔭も有るか。

 ここら辺解説し過ぎると、トラクションだの走りの組み立てだの公道最速理論だの、他人の作品の未公開ネタに抵触しかねないので自粛。

 と言う訳で、このままいつものMS解説へと続く。

 

●ZZ系列モビルスーツ(ZZ、S、ExS、SS)

 さて、前項で延々とRR自動車の解説をしたのは、これらの機体を解説する為である。

 これらの機体に共通する要素は何であろうか?

 それは、絶対的推力を重要視するあまり、巨大化し過ぎたバックパックである。

 それの何がいけないのか? それは、それこそまさにRR車、ポルシェと同じ特性を発生させるからである。

 普通のモビルスーツはバックパックが小さい。故に、荷重中心(バーニア推力と慣性で移動した見かけ上の重心)点が、大体常に胴体中央にあるのだ。

 だが、ZZ系列はバックパックが巨大過ぎ、荷重中心点が後ろにある。強すぎる推力のバーニアを吹かせば吹かす程後ろに行く。

 RR車、ポルシェと同じである。

 繰り返すが、それの何がいけないのか?

 RR車、それも2輪駆動のポルシェターボと同じ操縦特性を持つからだ。

 問題は姿勢制御、AMBACである。

 同じ重さの重りでも、短い棒の先に付いた物と、長い棒の先に付いた物、どちらが楽に持ち上げ、振り回せるだろうか? 勿論、通常短い方だ。所謂テコの原理である。

 荷重中心点が後ろにあると言う事は、それをアンバックで振り回す手足にとって、長い棒に付いた重りを振り回すのと同じ困難を伴うのだ。

 つまり、RR車と同じである。

 逆に小型バックパックの通常MSは、短い棒やFR車と同じ様に扱い易い。

 それ故、ZZ系列をを乗りこなすには、RR車を操るのと同種のセンスと技術がいる。

 普通のMSなら滑らかにスラスター制御してアンバック(舵を利かす)する所を、ZZ系はRR車のブレーキの様に、極端なスラスターオフ(+ブレーキスラスターオン)で前に不安定につんのめらせないとアンバックが効かない。

 回転し始めると、今度は重いバックパックに振り回されるので細心のアンバック制御。そして一旦再加速し始めると、アンバックの回転が収まっていないととっ散らかり、加速でまた荷重中心点が後ろに移ると、再度ブレーキするまでまたアンバックがろくに効かない。

 丸っきりRR車、それもターボポルシェの悪癖そのままである。

 これでは、普通のFR車である通常MSのパイロットが、まともに命を預けてドッグファイトで扱える訳が無い。

 だから、数値上のスペックが如何に強力でも、制式化、量産化されなかったのであろう。

 一般のMS兵が乗りこなせないのは勿論、サイコフレームなどと言うチート装備を積んだニュータイプ専用機体に至っては、そもそも不格好な巨大バックパックを付けずとも、それ以上の機動力を発揮するのだから。

 ちなみに光の翼は、そもそもロケット推進ですら無く、力場、ミノフスキーフィールド推進であり、機体の荷重中心点が常に重心と同一で変化する事が無いと言う、やはりチート装備である。所謂、戦闘機で無くUFO機動(笑)。

 ルーツがSガンダムのパイロットに選ばれたのは、何も不器用な性格がALICEの教育相手として適していだだけではない。

 もちろん、MSパイロットとしての腕前は未熟だったが、ZZ系を、Sガンダムをいずれ乗りこなせるであろうセンスを、訓練やシミュレーションで、教官たちやマニングス達に、他ならぬALICE自身が訓練データから比較して下した判断に、見い出されていたからに他ならないと、筆者は愚考する。

 ジュドー・アーシタが、背中に法律違反のジャンクパーツ過積載をした所為でリアヘビーになり、アンバックが難しいプチMSの操縦で磨いたセンスで。

 リョウ・ルーツが、アメリカのワインディングやサーキットやジムカーナで走り回り、ターボポルシェの操縦で磨いたセンスで。

 彼等は、気難しいZZ系を、愛機として誰よりもうまく乗りこなしたのである。

 余談だが、同じZZ系でもFAZZ系列(ファット・バレットやグスタフ・ガンも)は、ハイメガランチャーも含めた本体重量が、大型バックパックと釣り合うくらいクソ重いので、重量配分や荷重中心点、操縦特性は通常のMSとほとんど同じ、普通(FR)である。

 だから追加装甲をジュドーが嫌がったのね(苦笑)。俺にはターボ(強化バックパック)だけでいいんだーっ!て。

 RR乗りのプライドってもんです。会話し辛くなる、余分な覆いが被さる方が、文字通り『怖い』んですよ。

 『怖い』って、心に布を被せるって描くでしょう? 逆に心にダイレクト(直)って描くのが『聴く』です。

 

●サイコSガンダム

 遂に本編でもお出ましました、ラスボス3人衆、隠し砦の三MS(ネタ古っ)の内の一体。

 ガンダムガレージキットの某有名ディーラーさんでは無いですよ(ネタがガノタでもディープ過ぎる(^^;))。

 前作の主役機が超パワーアップして敵ラスボスになると言う、実にお約束の展開。だが、「駄目だ、敵わない。アイツの強さは、他ならぬ以前乗っていた俺が、一番よく知っているんだ!」のセリフまでは吐かないだろう(おい)。

 黒い塗装と装備その他は本編中で語った。あえて言えば、手にはやはりスマートガン装備。多分一番改造が楽。ファンネルなんか、単にバンダイの公式汎用別売りファンネルユニット買って、そのままバックパックのビームカノン取付け基部に、4つ付ければそれでいいwww 手間がかかるのは額のユニットを、それらしくするくらい?

 そろそろ一般読者も、このMSどんなMSなんだろうと知りたくなるくらい物語も進んだと判断し、本編中でもやたらスペックを語ると言う、よく有るヲタク、ガノタの悪い癖、出し放題である(爆笑)。

 それはさておき、前項でも語ったように、普通は非常に乗りこなしにくいこの機体を、ノイはあっさりと乗りこなしている。それは何故か?

 勿論彼がニュータイプだからだが、その理由には微妙なニュアンスが有る。

 彼は、この機体をどう操ればいいかを、他ならぬルーツのガンダムSSの操縦から感じ取っていたからだ。

 たった2回見ただけで、ほぼ完全にコピーできる、恐るべきニュータイプの感性。

 だが、その感性を開かせたのは、ノイの、ルーツへの憧れと、兄を慕う弟の様な愛情からであった。

 それは、ありふれたごく普通の子供が、スポーツなどで憧れの兄や先輩の背中を追いかけるのと、何ら変わらない。

 

●リ・ガズィ

 俺の身近にも一人いる、全国の熱狂的なリ・ガズィファンの皆様、大変長らくお待たせいたしました。

 この物語の後に続く、『逆襲のシャア』の前半主役モビルスーツ、遂に登場でーす!(拍手)

 そんなこんなでニュータイプ専用機やガンダムSSを除けば、高級機デルタS等とほぼ同性能かそれ以上且つ、比較的量産性にも優れる、現時点での連邦最強機体となりました(拍手×2)。

 何とこの後に開発された最新機ギラ・ドーガより強いぞ!(でも流石にサイコフレーム積んだ機体には敵いません)

 しかし問題は、「いつアムロ・レイに渡してもいい」と、調子に乗ってエース専用のピーキーなセッティングにし過ぎたせいで、折角設立したロンド・ベルにおいて、支給されてもアムロとケーラしか乗りこなせなかった事実(TT)。

 アホか――――――――っ!!(核爆)

 じゃあ、せめてジェガンだけでも強化型のジェガン・Oにすればいいじゃん、て話も、予算と、何よりロンド・ベルが強力な部隊になり過ぎる事を恐れた、連邦上層部の意向によって断念。

 後の物語で、ネオジオン相手に彼等が苦戦しまくる御膳立てが、見事整ってしまったのでした(合掌)。

 

●カスタムバウ

 シャアファンの黄色い悲鳴が聴こえてきそうな機体。

 改造自体は、単にバックパック装甲内に収まっていたサイズのスラスターを、ほとんどノズルが丸出しな位大型化し、足りなくなった推進剤のプロペラントタンクが付く程度。後にリバウへと改修された時に比べれば、可愛い物である。

 カラーリングは、所謂ジョニーカラーの赤黒では無く、全身微妙に違う二つのの色調の赤に塗装。ザクと同じ。

 だが、可哀想な事に、この後すぐ例のシャア専用ディジェだの、赤いヤクト・ドーガ(きっと後で角が外されてクェスが乗ったのだろう)だの、サザビーだのに乗り換えられる羽目に。でもレズンに乗って貰えたからいいか?

 リバウとして生まれ変わった後も、すぐシナンジュに乗り換えられると言う、まるでナナイの様な都合のいい女扱い。本当にヒドい(TT)。都合の良い者は本当に『有り難い』と言う日本語を、是非彼に教えてやって欲しい物である。

 とは言え、軍隊の兵器だと、流石にしょうが無い事はあるんですけどねー。でも、シャアの性格の悪い所を加速させた面も事実ですよねー(溜め息)。なんでも使い捨て。結局ガルマも友達だった事を認めれなかったんですよ。他人を見下す優越感と、復讐心ばっかり満足させる事を選んだから。あれ?某種ガンダムのシン君もそうだね(苦笑)。

 優越感持ってもいいけど、それは自分の長所で、「しょうがねえ、ここは俺がいなけりゃな」と、仲間や友達を大切にする為に使いなさいよ。蔑み見下すとロクな事にならんよ。哀しいよ。と、言うお話でした。

 みんなもそこの所は気を付けて、物も人も大切にしよう。

 結局彼に、自分を殴ってでも語り合ってくれる友達は、アムロしか残らず、それすら拒んだのは、悲しく、哀しい事ですよねえ。もう一度会えて友達に戻れたのが、ユニコーンの死後の世界だなんて、切な過ぎです。

 でも、実際のシャアファンの多くは、自分の愛車などをシャア戦用機だ!と言って大事に扱う人が多いけどね。

 憧れの先輩やタレントの悪い所ばかり真似てしまう人も多い中で、冨野監督の人徳か、面白い事実でした。

 まあ、ホント、冨野監督は「あいつロクでも無いから悪い所真似すんな!」みたいな事、いつも口にしてますしね。

 

●シュツルム・ディアス

 ジオン共和国軍制式採用機。

 無論、そうアナハイムに取り計らったのは、ディアスの設計プロジェクトを立ち上げたシャアであり、ドーガシリーズが完成するまでは、共和国軍の下請けである『シャアの軍隊』と揶揄される、民間軍事サービス会社の主力機だった。

 ハイザックカスタムとともに、ユニコーンの後の時代までも、共和国の主力機として配備され続けたのである。

 

●ジム

 本当に何の変哲もない只の旧式の初代ジム。

 共和国が自前のMSを没収されたために、止む無く(涙)連邦払い下げを中古で購入し、使用。

 この問題はこの後すぐ、シャアとその手の者が利権法律問題を処理したお蔭で、ハイザックカスタムの生産ラインを、丸ごとペズン他連邦施設から安価購入、移設した事により解決する。

 さて、このジム、せめてもの連邦との区別として、緑の塗装の他、盾や実弾系武装は共和国オリジナルである。

 この盾や武装は、後にシャア専用ディジェを始め、『逆襲のシャア』でドーガ系も使い続ける。

 

 

※キャラクター解説

 

●ソラン・ラマカーニ

 今話のほとんど主役。

 裏方として活躍していた人が、いきなり君の好きにしていいとトップに任命されると、時折スゴイ能力を発揮する。

 が、悪い意味でも、トップになって舞い上がり、とんでもない事をやらかす人のパターンにも嵌ってしまった。

 手段を間違えた。自分が本来やろうとしている事の本質から外れた。それを省みられなくなった。

 実際、現実でもこう言う事、往々にあるものなので、是非皆様気を付けて欲しいものである。

 こんな奴いるいると馬鹿にするのはいいけど、俺は違うと高を括っていると、まったく同じ事をして気付かず、どツボに嵌るのも、有るあるですよ。

 

●カルロス・アヴァン

 気持ちのいい男です。

 まあでも、嫌な奴ばっかりに見えたティターンズにも、TR隊の様にこんな人達は沢山いたでしょうし、モンシア達の様に、仲間同士に見せる顔は善良だったでしょう。選民主義って怖いね。大抵は自惚れと傲慢の毒に染まる。

 珍しく彼は染まりませんでしたね。軽く見えますが、本当の意味で誇り高かったのでしょう。安っぽいプライドより、部下の命を選べるくらい、グリプスで勇敢な決断をするくらいには。

 彼は、特別扱いのヒーローでないと怖かった臆病者などでなく、ただ、命を守りたかっただけなのかもしれません。

 そんな常に目的意識がはっきりして、飄々とブレない所は、ヴァースキにも似ています(笑)。

 見せ場は勿論、アルビオン隊との対決で。

 

●アダム・チェレンコフ

 さっぱりすっきりした人。

 過ちを素直に認め、そこから再び立ち上がる人の姿は、いつでも誰でも、最高に美しい。

 有名な歌にもある、誰の人生にも『世界に一つだけの花』が咲く瞬間とは、きっとその時だろう。

 ブロウ・アップ。

 『立ち上がる』と、『咲く』と言う言葉は、英語で同じ言葉である。

 どうか、決してそれを忘れないでほしい。

 貴方の人生にも失敗や過ちと言う冬の後に、春が訪れる度に、必ず何度もまた繰り返し花が咲く事を願うのである。

 

●ジョナサン・ジェファーソン(49)

 博士号、教授。スーパーなシステムエンジニア。

 前作に登場したキャロル博士と同じく、エレノア・ルーツの同僚であった。

 だがエレノアの才能にのみ心酔というか、崇拝(エレノアを息子まで含めて、人間や家族として愛する行為はしなかった。彼女に取りエレノアは、悪い意味で人格を無視された、無謬のアイドルや神だったのだ)していたキャロルと違い、個人的にも、ルーツ夫妻の良き友人であり、いい兄貴分だったようである。

 気付けば人を丸めこむ、いわば合気の達人(笑)。別に武術とかやってなくても、たまにこんな人います。

 

●ミスティア・マニングス(37)

 ルーツ達の恩師、ストール・マニングスの奥様。

 穏やかでいい人なのだが、往々にして危なっかしく、そう言う時だけ素直に認めず気が強くなる。なのでいつもマニングスはそれを口に出して指摘せず、普段さりげな~くフォローしていたのだが、うっかり口に出してひどい目に。まあ、仕方ないよね。バレる時はバレる、お互いに(笑)。

 

●アルファ任務愚連隊

 斯くて、ルーツ達はミスティアに諭され、現在の姿になったのだ。

 中でもクリプトは『俺は全人類の女性を愛する』って、どこぞの鰯◎君かよ(爆笑)みたいな無残、じゃなかった愉快な有様に。センチネルと見比べて下さい、愛って人をここまで変えるのね(おい)。

 だがクリプトのさらなるオチは、次回でこそ本当につくのである。

 

●エレノア・ルーツ、ケイ・タカハシ(ともに故人)

 ついに出てきたルーツの両親。

 やはり彼等の事は次話で語るべきなのだが、あるネタについてだけは今語らねばなるまい。

 うん。頭文字Dをリスペクトして、ネーミングしました(爆)。

 しげの秀一先生ごめんなさい。勝手ながら大変有難うございます。m(--)m

 ちなみに性格は逆で、皆様ご存知の通り、熱血直情径行特攻野郎、息子リョウの方が高橋弟似で、父ケイの方が一見は冷静ながらも、とっても家族や仲間思いの高橋兄似です。

 あれ?センチネル作者の人って? 偶然ですw 本作はフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません。

 

●シェリー・ブラウン

 タイトルそのものである事からも分かるように、やっぱりラマカーニよりも、この人が今話の真の主役、ヒロイン。

 なんちゅう健気なひとやぁ! と、アユやトコブシ喰う京●さんの様に、思わず涙ちょちょ切れます。

 ルーツ、大事にしないと、またランファンから「殺すぞコラア!」と叱られますよwww

 こんな健気な彼女彼氏欲しいと言う人は、自分の好きな仕事や仲間や人の、半端に嫌で目を背けている所から逃げず、真っ直ぐ向き合って愛する事をお勧めします。

 まず自分が健気に何かを愛する人間であれば、パートナーも健気になってくれる。人ってそんなものですよ。

 海◎夫妻だってそんなもん。まあ、あのマンガの前半の●原さんは、奥さんを喪って不安なせいで、人をけなさないと落ち着かない、可哀想な人でしたが。でも、自分の分身である息子にいい嫁が付いたのを見て、満たされましたね。

 結果、後半の海◎さんは、奥さんに似て行ったのでしょう。人を、根気よく、穏やかに叱り、教え、諭し、導く。

 自分の一部になったんですね。

 あれ?ヒースロウもそんな感じですね(笑)。まあ、野球のバッテリーぐらいにはマニングス女房役だったしwww

 オチまでついた所でまた次回次話! 次話の主役は何とALSSことアーサーだっ!!

 歴史から抹殺されていた、ALICEの呪縛と封印が、今、解き放たれる。

 それじゃあ、まったね~。

 




 親無し家無し根無し草。
 奴らにゃ幸せと呼べる宝など、仲間の他にはありはせず、子守唄の温もりなど、エンジンの音と熱しかありはせぬ。
 優しいパパママのいるヤンキーもどき、おイタの過ぎるピーターパンよ、ここから先は、家に帰ってねんねの時間。
 二つ輪四つ輪の幽霊船、亡者の群れ(レギオン)がやってくる。
 第10話 ―スタンド・バイ・アス―
 
 え? アーサーが主役の話じゃ無かったの? 何このヤンキー漫画みたいな次回予告?
 などと読者を混乱させつつも次話もまた半月後、11月中旬UPの予定です。
 是非また次回もルーツに会いに来てね!
 おっ楽しみに~!
 (^^)/
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