復刻ダムロックイベと質問箱に殺された者の末路です。
会議なんてタイトルしときながら二人しか出てきません。タイトル詐欺です。
月だけが闇夜を照らす。
寝静まる夜中に、酒飲みと猫だけが騒ぐ。
ー…ったく、何で俺が世話係なんだよ…
オイ、起きろよパイモン。じゃねえと身ぐるみかっさぱらうぞ
ー…ん。ああ…他の皆は?
ー呆れて先に行っちまったよ。
三バカだけは強制送還だけどな。
ーハハ、相変わらずだな…
ーあいつらはともかく、オマエはどうしたんだよ。いつもこうなる前に止めてるだろうが。
ー今日だけはいいんだよ。
ーへえ?そりゃまたなんで。
ぐむと、口を紡ぐ。言いたくない、というよりは、もっと様々な思い。
ー……なあ、もう一軒だけ寄ってかないか?
ーハァ!?お前さっきの話聞いてたか!?脳液まで酒でバカになったんじゃねえの!?
ーオイオイ、いいだろ?同じ不死者のよしみじゃないか。もし何かあっても、『調停者』のオマエが何とかしてくれるだろうし、な。
ーこんな時だけその名前使うんじゃねえっての!……テコでも動かなそうだな。わーったよ、マジで一杯だけだからな。
ーハハ、サンキュー。
夜が、更けていく。
…
……
ーほら、乾杯だ。
ーハイハイ…うわ、またキツいの呑むねえ。
今度ぶっ倒れたらマジで置いてくぜ?
ー薄情だな、おい。
まあ、今日くらいはいいんだよ。
ーそれさっきも言ってたぜ?やだやだ、酔っ払いは同じ事ばっか繰り返すね。
…んで、何で『今日くらい』なんだ。
ーアイツの命日らしいんだ。
ーあー……
あの、馬鹿丸出しだった、アイツのか。
ーククッ、そうそう。
ーあれ、ここはキレるとこじゃねえの?人のダチをこき下ろしてくれるなんざ〜ってよ。
ー…まあ実際馬鹿だったし、馬鹿丸出しでもあったからな。それに今更キレてもアイツが戻ってくるわけでも無い。
ーへぇ…つまんねえの。
もっと色々なると思ったのによ。
カラン。
しばしの沈黙にグラスが音をたてる。
ーアイツの…
ダムロックの死に様はどんなんだった。
ー…どうした、急に。
ーただの好奇心だよ。答えたかねえならイイぜ。
ー語りたくないって事は無いな。
…というか、語れないんだよ。俺も知らないからな。
ー知らねえ?いやいや、そんな訳ないだろ。
ー…いや、な。どうもあいつにも色々思う所があったみたいでな。ほら、ソロモンも俺の事知らなかったろ?話す事もしてなかったのさ。
ー…へえ。だからさっきも、命日『らしい』なんて言ってたのか。
ーそうだな。だから何で死んだのかもわからないし、本当に今日が命日なのかもわからないんだ。だけど、俺は今日だって事にしてるんだ。
ー…それくらいじゃないと、やるせないだろ。
ーオマエ、ずいぶん入れ込んでたもんなあ。
…つーか、いつか聞こうと思ってたけどさ、オマエってダムロックの孫だから召喚者を守ろうとしてんの?
ーまさか!
…いいや、たしかに最初はそうだったかもしれない。けど今は彼自身を俺が助けてやりたいと思ってる。ソロモン自身を、ちゃんとな。
ーならお前は隙あらばナンパを教え込もうとすんのやめろ。守るどころか命の危険に晒してんじゃねえよ。
ーオイオイ失礼だな!それに命の危機なんて大袈裟……
…じゃないか。ティアマトとかな。
ーそうそう。それ以外にもちょくちょく怖い目で見てる奴とか居るぜ?
ーマジかよ。…例えば?
ーははっ、秘密だ。調停者として札はとっとかないとな。
ーくそっ、この役立たずが!
ーんだと!?…くく。
ー…ははは!
再びの沈黙。
酩酊の中に、ただ杯を傾ける音が響く。
ー死、か。アイツは…
ーうん?
ー…召喚者は、どう死ぬだろうな。
ーさあな。……普通のヴィータとしての死は、もう無いかもしれないな。
ーま、そうだろうな。普通に死ぬにゃあ、色々背負いすぎだ。
ー無念の死か、何かを果たして死んでいくか…
いずれにせよ、また置いてかれるんだろうな。
ーその前に俺たちが死んでるかもしれねえがな。…あー、やだやだヴィータは。貧弱すぎるし寿命も短すぎんだろ、マジで。
ー『不死者』か…あの時は唯一残った誇りとすら思ってたものが、疎ましくなるとはね。
ー俺はなっちゃいねえよ。
ークク、なるさ。多分、な。
ー……
追加のオーダーが入る。
酒瓶が一つ空けられる音。
夜が、更けていく。
ー愛なんて呪いだよな。
それも、とびきりタチの悪い。
ーオイオイ、俺相手にナンパかよ?
目も見えないくらい酔ってんのか。
ー考えてもみろよ。俺たちが生中に痛めつけられようと酷い目に遭おうと、捨てようとだなんて思わない不死の力。それを、要らなく思わせるなんて、凄いじゃないか。
ー……
ー下手な作り話の呪いよりも、よっぽど強い。
最初から、そんなもん育まなきゃよかったのかもしれねえな。特に、ヴィータとは。
ー……だけど、少なくともお前はその愛で変わってるじゃねえか。少なくとも、いい方向に。
ーああ。
ー愛が呪いってのもまあそうなのかもな。けど、その分ソイツを強くしたりもするんじゃねえか。……クソっ、我ながら柄でも無さすぎて気味悪ぃ。
ー……ククク。露骨にキレるんじゃねえよ。
俺だってそう思ってるさ。
ー……てめえ…
やっぱわざと言ってやがったな。
ーそりゃそうさ。正直上手くいかないと思ってたけど、思ったより上手くいったな。
ーこのクソ酔っ払いが。
ー…なあ。それがお前の本音さ。
だから明日にでも、言っちまいな。
明日じゃなくてもいいが、早いうちにな。
ー……チッ、おせっかいすぎるんじゃねえか。やっぱ飲み過ぎなんじゃねえの。
ーそうだな…ああ、多分そうだ。
酔ってなきゃこんなこっぱずかしい事言えないさ。
だがな、俺たちはいつか皆前に進むんだ。
変わった後に言っても、遅いんだ…
ーはっ、説教のつもりかよ。
ー事実を言ってるだけさ。
説教に聞こえたかもしれないがな。
ー…うっぜえ。
乱暴にグラスが傾けられる音。
ドン、とテーブルが揺れ、氷がコップから浮く。小さな土砂崩れが杯に起こった。
ーそれも事実だろうよ。伝えなきゃなんにもなんねえし、どうせ俺たちは残される事になる。どうせアイツ長生きしねえだろうしな。
ーだからこそ今のままでいたいんだよ。
あくまで軍団の一人で、たまに色々オレ流を教えてやる、今のくらいでな。
再び、コップがかちわれん程の勢いで机に叩き置かれる。追加の酒のオーダーが出された。
ー成る程な。いい答えじゃないか。
バルバトス辺りが聞いたら詩にしてくれそうだ
ーるせえな!ここぞとばかりにニヤニヤしやがってこの野郎!
ーハハ、そりゃあニヤニヤもするさ。あんなにヴィータ嫌いだったお前がこうまで言うようになるとはな!
ーケッ、『いつか前に進む』んだろ。
進まされて、変わっちまったんだよ、俺も。
ーへえ。今日は随分素直じゃないか。捻くれ者のお前らしくねえ。
ーチッ。
飲み過ぎたんだよ、おめえと一緒でな。オラ、今日は徹底的に呑むから付き合え。
ー…お、オイオイ。流石にそんな量は…
ー今日くらいは呑んでもいいんだろ?
ほら、遠慮すんなよ。
ー…か、勘弁してくれ…
二人の不死者が杯を傾けていく。
夜が、明けていく。
おわり