真夏のクロスオーバーロード!   作:トミー@サマポケ

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第三話

 

 

 

 

 

「う、うわあぁぁぁーーーー!」

 

 住宅地を歩いていると、すぐ近くの路地から男の叫び声が響き渡った。

 

「な、なんだ!?」

 

 その声を聞いて、瞬時に緊張が走る。まさか島のユーザーが暴走して、人を襲い始めたのか!?

 

「……二人とも、俺の後ろに隠れろ。天は自分のアーティファクトの能力を俺と希亜にも分け与えてくれ」

 

「う、うっす!」

 

 努めて冷静にそう指示を出して、俺は希亜と天を背後に庇いつつ、路地の様子をうかがう。

 

 ……すると、そこには地面にうつ伏せに倒れた少年と、その少年を見下ろすように立つ緑髪のちんまい少女の姿があった。一見すると小学生に見えてしまいそうだが、どこかの高校らしい制服を着ている。

 

 そしてその少女の手には、その背丈には不釣り合いなほどゴツイ銃が握られていた。まさか、あれがアーティファクトなのか?

 

「あー、いててー……」

 

 明らかに飛び道具だし、まずは結界の展開を……なんて考えていたら、倒れていた少年が何事もなかったかのようにむくりと起き上がった。

 

 改めてその姿を見ると、年の頃は俺達と同じくらいで、長めの茶髪を後ろで結んでいる。そして何故か、上半身裸だった。

 

「……まさか、既に住宅地の警備に出ていたとは……」

 

「……甘いな。お前の動きは鉄塔にいる時から全て把握していた。人知れず脱ごうとしていたこともな」

 

 天のアーティファクトの影響か、その二人は俺達に気づくことなく会話を始めた。人知れず脱ぐ? 何を言っているんだろう。

 

「……というわけで、安らかに眠れ」

 

「ぎゃーーーー!」

 

 ……そして次の瞬間、ちんまい少女は引き金を引いた。その銃口から謎の液体が勢いよく噴射され、それを受けた裸の少年が宙を舞った後、今度は仰向けに地面に倒れ込んだ。何かがおかしい。

 

「……あの、もしかしてそれ、水鉄砲?」

 

 やがて周囲が静けさに包まれた時、俺の後ろで一部始終を見ていた希亜がたまらず口を開いた。

 

「ああ……見られていたか。これはハイドログラディエーター改だ」

 

 それと同時に、天も存在感を操作するアーティファクトを止めたのか、少女が俺達の存在に気づいた。よく見れば、少女の持っているのは水鉄砲のそれだった。

 

「え? ハイドロ……何?」

 

「ハイドログラディエーター改。長年の研究の末に完成した、私の愛銃だな」

 

「あ、はい……」

 

 少女は自信満々の表情を見せながら、そのハイドロ何とかを背中にしまった。

 

 どうやら、あれはアーティファクトじゃなく、正真正銘のただの水鉄砲みたいだ。状況が状況だけに、間違って攻撃してしまうところだった。

 

「……見たところ、あなた方は観光客か。刺激の強い光景を見せてしまってすまない。ほら、良一も演技はやめて起きろ。彼らが驚いている」

 

「お、俺は演技じゃねーぞ……のみきのハイドロが強力過ぎるから……敏感肌にミミズ腫れができたらどうしてくれるんだ……あーいてて……」

 

 情けなくも仰向けにひっくり返っていた少年が起き上がり、胸板をさすっていた。かすかに赤くなっているし、痛そうだ。

 

「……あのー、もしかして、裸を追いかけまわすのみきさん?」

 

 その時、それまで沈黙していた天がおずおずと口を開く。そういえば、空門姉妹の口からそんな名前が出ていたような。

 

「少し誤解があるようだが……どうして私のことを知っている?」

 

「えーっと、実は……」

 

 ……せっかくなので、このタイミングで俺達は自己紹介をすることにした。

 

 

 

 

「……なるほど。お前達が藍の言っていた、しろはの親戚か」

 

 自己紹介を済ませると、水鉄砲を背負った少女……のみきが理解した顔で言う。察するに、島内放送をしてくれたのはこの子らしい。

 

「あ、その親戚って話なんだけどさ……」

 

「しろはの親戚なんて珍しいからなー。すっかり島で噂になってるぜ?」

 

「その通りだ。さっそく、歓迎会を開かねばな」

 

 続いて勘違いされた経緯を説明しようとしたけど、のみきは聞いちゃくれなかった。上半身裸だった少年(今は服を着ているが)……良一と一緒に盛り上がっている。

 

「いや、歓迎会とかしてくれなくても……」

 

「そう遠慮するな。噂によると、数日は島で過ごすそうじゃないか。この島に長く滞在する旅人は『渡りの人』と呼ばれていてな。歓待するのが習わしなんだ」

 

「いやほんと、そういうのいいんで……」

 

 歓迎会とか、どんどん話が大きくなっている気がする。あまり大きな騒ぎになるのもアーティファクト探しに支障が出るし、俺は色々と理由をつけて事を穏便に済ませようとする。

 

「だから遠慮するな。今日か明日には歓迎会の日程を伝えるとしよう。それではな」

 

「じゃーなー」

 

「あああああ」

 

 ……しかし、結局俺の声は届かず。のみきたちは笑顔のまま去っていった。

 

「……戻るか」

 

 その背中が見えなくなるまで呆然と見送った後、俺達は駄菓子屋へと戻ることにした。ほんっと、島の噂ってこえぇ。

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 ……三人で駄菓子屋に戻ると、他の皆もすでに集まっていた。

 

「あー、死ぬかと思ったー」

 

 そんな皆の中心には、ぐったりした表情でかき氷を食べる先生の姿があった。周りを見た感じ、一緒に行ったはずのしろはさんの姿はない。

 

「しろはちゃんのお爺ちゃん、怖すぎ。首をへし折られるかと思った」

 

 先生は涙目になりながら、そんなことを言っていた。いくらなんでも、それは大袈裟じゃないか?

 

「それで沙月ちゃん、結局今日のお宿はどうなったの?」

 

「見てわかるでしょー。無理よ無理。門前払い食らった」

 

 天の疑問に、先生はかき氷のスプーンをまるで指揮棒のようにくるくると動かしながら返事をする。予想はしていたけど、やっぱり余所者には厳しい人みたいだ。

 

「妙な噂を流したのはお前達か! って怒られちゃったしさー。親戚じゃないってバレた後も、なんとか泊めてもらえるよう土下座までしたんだけど、無理だった」

 

 淡々とそう続けるけど、先生、土下座までしてくれたのか。そこまで責任を感じてくれていたなんて。

 

「えっとその、残念だったわねー」

 

 俺達が意気消沈していると、空門姉妹がカウンターの向こうから慰めの言葉をかけてくれた。どうやら、これは野宿確定の流れかな。

 

「うあー、野宿やーーだーー!」

 

 それを悟ったのか、天が空に向かって叫んでいた。俺だって嫌だけど、こうなったらどうしようもないし。

 

「新海翔よ。キャンプとなれば、やはり男の腕の見せ所だな。いざ、浜辺へ!」

 

 何が楽しいのか、高峰は自分のリュックを意気揚々と背負った後、俺の肩に手を置いた。そーいや、道具はあるとか言ってたっけ。

 

「テントは数を用意できなかったから、女性陣が優先だ。私と新海翔は外になるが、皆でするキャンプは楽しいぞ!」

 

 待て待て。今さらっと重要なこと言ったよな? 俺ら外なのか? 夏だから風邪はひかないだろうけどさ。

 

「あー、キャンプするなら、島にはテントコレクターがいるのよー。きっと余ってるテントを貸してもらえるんじゃないかしら」

 

「そういえばいましたね。おすすめはピンクのテントですよ」

 

 そんな俺と高峰の会話に空門姉妹も乗っかってきた。テントコレクター? テントって、コレクションするものだっけか?

 

 なんにせよ日も傾いてきたし、野宿をするなら早めの準備に取り掛からないと……。

 

「くーださーいなー」

 

 ……その時、元気な声が聞こえた。思わず振り返ると、駄菓子屋の入口に白い帽子を被った髪の長い女の子と、その子と手をつなぐ少年の姿が見えた。

 

「あれ、羽依里にうみちゃん。いらっしゃーい」

 

「今日も学校のプールで遊んでいたんですか?」

 

「遊びじゃないです! 鷹原さんの特訓なんですよ!」

 

 被っていた帽子をカウンターに置いて、キラキラと輝く笑顔で言う。特訓ってなんだ?

 

「それでも、こんな時間に駄菓子屋に来るなんて珍しーわねー」

 

「実はですね。私が鷹原さんとの勝負に勝ったので、チューベを一本奢ってくれることになったんです!」

 

 チューベ? チューベって言うとあの棒状のアイスのことだよな。そんなもの一本のために、この子はやけに嬉しそうだ。

 

「……というわけで蒼、チューベもらえるか?」

 

「はいはい。20万円よー」

 

 一方の少年は疲れた顔をしながら、代金を支払っていた。特訓って言っていたし、何かスポーツでもやってるのか?

 

「うみちゃん、好きな味選んでいいよ」

 

「はい! それじゃ、遠慮なく!」

 

 がららとアイスクリームストッカーを開けて、中を覗き込む女の子を横目に、鷹原と呼ばれた少年は俺達の方へとやってくる。

 

「……なぁ、二人は兄妹なのか?」

 

 近くにやってきた彼に、俺は何となく声をかける。今日だけで何人もの島民と知り合ったせいか、他人に声をかけることに抵抗が無くなってきている気がする。

 

「え? いや、あの子は親戚の子でさ」

 

「ああ、そうなのか」

 

 ……言われてみれば、兄妹にしては言葉遣いとか、微妙な距離感な気もする。

 

「それにしても、今日はやけにお客さんが多いよな。普段はこの時間帯、誰も居ないんだけどさ」

 

 彼は俺達の顔を見渡しながら言う。思えば駄菓子屋なんて、普段は子供達しか使わないよな。

 

「あの、お兄さんたちは観光で来てるんですか? 島では見ない人ですけど」

 

 そんな折、うみちゃんと呼ばれていた子がチューベを二つに折りながら声をかけてきた。なんか、見た目の割にしっかりしてる印象だ。

 

「ああ、うん……色々と訳ありでさ」

 

「……この人たち、宿なしらしいですよ」

 

 思わず視線を逸らした時、藍がカウンターに頬杖をつきながらそう告げる。ちょっと藍、何バラしてんだ。

 

「え、宿なし……?」

 

「……なんか、事情がありそうだな」

 

「え、えーとその、実は……」

 

 

 

 

 ……チューベを持った二人に視線を向けられ、俺は思わず事情を話してしまった。

 

 同時にお互いの自己紹介もしたところ、この二人も本土からやってきていて、今は親戚の家でお世話になっているらしい。

 

「……なるほど。宿無しになった経緯はそれなりにわかったよ。にしても、あのじーさんも容赦ないな」

 

「よりによって鳴瀬さんの家に頼みに行くとか、無謀でしたねぇ」

 

「そうなの。あそこのお爺ちゃん、怖すぎて」

 

 鷹原とうみちゃんは交渉の矢面に立った先生を可哀想な目で見ていた。よくわからないけど、そんなに同情されるような出来事だったのか。

 

「というわけで、俺達は島のテントコレクターに会いに行かなきゃいけないんだが、誰か居場所を知らないか」

 

「ああ、それなら俺の友人の良……」

 

「あの、鷹原さん、鷹原さん」

 

 鷹原が誰かの名前を口にしかけた時、うみちゃんがくいくいとその服を引っ張る。

 

「ここで知り合ったのも何かの縁ですし、この人たち、うちに泊めてもらえるようお願いしてみませんか?」

 

「え、お願いって、鏡子さんに?」

 

「そうです! あの家なら部屋数も多いですし、鏡子さん優しいですから、きっと泊めてくれますよ!」

 

 うみちゃんが両手に握りこぶしを作りながら言う。確かにそれが叶えば、俺達も万々歳だけど。

 

「えっとその……うみちゃん、って言ったかな。これだけの人数、さすがにご迷惑じゃない?」

 

 力説するうみちゃんへ、九條が申し訳なさそうに言う。

 

「大丈夫です! 私と鷹原さんもこの夏、ずっとお世話になっていますし、あと7人くらい増えても何も変わりませんよ!」

 

 純粋な笑顔だった。いや、さすがに変わると思うけど。

 

「でも、このままだと皆さん野宿なんですよね? ダメ元で頼みに行ってみましょう! 当たって砕けろです!」

 

 それで、しろはさんちの場合は実際に当たって砕けちゃったんだけど。大丈夫かなぁ。

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 その後、うみちゃんに急かされながら、俺達は二人がお世話になっている場所……加藤家へと向かった。

 

「着きました! ここですよ!」

 

 駄菓子屋から歩いて数分の場所に大きな建物があった。立派な門構えだけど、本当に普段はここに女性一人で住んでいるんだろうか。

 

 

 

 

「……ああ、鳴瀬さんの親戚って噂の」

 

 そのまま家主の女性……岬鏡子さんに挨拶に行くと、開口一番にそう言われた。あの噂、どこまで広がってるんだ。

 

「そ、それなんですけど、色々と事情があってですね……」

 

 年長者の先生が代表して事情説明をし、各々の自己紹介を済ませた後、どうかこの家に泊めてくれないかと、全員で頼み込む。

 

 大勢で押し掛けるのもどうかと思ったけど、ここが駄目ならいよいよキャンプだし、背に腹は代えられない。

 

「いいよ」

 

 そして鏡子さんは、二つ返事で簡単にOKしてくれた。

 

「え、いいんですか?」

 

「うん。いいよ。困ったときはお互い様だからね」

 

 驚きの表情を隠せない俺たちを前に、鏡子さんは笑顔を崩さなかった。

 

「元々、羽依里君とうみちゃんだっているしね。今更増えても変わらないよ」

 

「ありがとうございます。お世話になります」

 

 俺達は揃って頭を下げる。まさかのうみちゃんの予想通りだったけど、これでひとまず野宿の心配はなくなった。

 

「ただし、羽依里君と男の子二人、うみちゃんと女の子二人が相部屋ね。残るもう一つの部屋は、今から皆で掃除すること」

 

「もちろん」

 

「お、お掃除、頑張ります」

 

「よーし、やったるぞー!」

 

 一安心したのか、天を筆頭に意気揚々と立ち上がる。掃除するだけで宿泊場所を確保できるのなら、安いものだ。

 

「ふふ、元気が良いわねぇ。それじゃ羽依里君、お部屋に案内してあげて」

 

「わかりました。こっちです」

 

 言われて立ち上がった鷹原に案内されて、皆が奥の部屋へと向かっていく。

 

 それを見送りつつ、先生がもう一度鏡子さんに頭を下げていた。普段は適当な印象が強い沙月ちゃんだけど、こういう時はさすがしっかりしてると思う。

 

 ……そして気がつけば、居間には鏡子さんと先生、そして立ち去るタイミングを逃した俺だけが残されていた。

 

「それにしても、この時期にお客さんなんて珍しい。夏休みももう少しで終わりだし、お友達と夏の思い出を作りに来たの?」

 

「え? ええ、まぁ……そんな感じっすね」

 

 鏡子さんは笑顔を崩さぬまま、俺にそう聞いてきた。本来の目的は違うんだけど、正直に言うわけにもいかないし。

 

「学校の先生って、こういう旅行の引率もやるんですね。大変そう」

 

「ええ、まぁ……皆若くてパワーがあるので、まとめるのも大変なんですよー」

 

 隣に座る先生も当たり障りのない返事をする。こういう対応ができるのが、大人なんだろうなぁ。

 

「翔君も色々大変だっただろうけど、お友達と一緒にこの島を楽しんで。滞在期間中には花火もあるはずだから」

 

「そうなんすね。楽しみにしています」

 

 ……小さな島なのに、花火もあるのか。

 

 アーティファクト探しの件もあるけど、もしかしたら希亜と一緒に花火が見られるかもしれない。楽しみにしておこう。

 

 

 

 

 ……その後は用意してもらった部屋を皆で掃除した。確かに多少汚れてはいたけど、そこまでの広さはなかったから、奥まで積まれた荷物を運び出してしまえば掃除は楽だった。

 

 荷物の中には『封』と書かれた謎の箱や、達筆すぎて全く中身が読めない本とかあったけど、どうやら全て島の歴史に関わるものらしい。鏡子さんによると、以前住んでいたお婆さんがなかなかの蒐集家だったらしく、庭にある蔵にはこれの数倍の品物が収められているらしい。さすが、古い家だ。

 

 ……そんなこんなで掃除を終えた後は、くじ引きによって部屋の割り振りを決めた。

 

 男の俺と高峰は鷹原との相部屋で固定として、うみちゃんとの相部屋には希亜と天が、掃除をしたその部屋には春風先輩と九條、そして先生が割り振られた。

 

「うみちゃん、よろしく」

 

「うみさん、よろしくっす!」

 

「お二人とも、よろしくお願いします」

 

 荷物を運び入れながら、さっそく同室の二人が打ち解けていた。さすがの天も、子供相手に人見知りを発動したりはしないみたいだ。

 

「……にいやん、彼女と同じ部屋じゃなくて残念だったなー」

 

 ……その時、天が寄ってきて耳打ちをしてきた。

 

「お、俺は別に悔しくないからな」

 

 ……実を言うと、謎の時間移動に巻き込まれずに港のホテルに泊まれていれば、俺は希亜と同室だったんだ。くそ、自腹を切ってまで個室を予約したのに……!

 

「にいやんに代わって、あたしがコイバナいっぱい聞いて悶えてやる」

 

「ほどほどにしておいてくれな……」

 

 そう言ってウインクしてくる天に対して俺は軽い頭痛を覚えながら、自分の荷物を鷹原の部屋へと運び込んだのだった。

 

 

 

 

「ところで翔君、晩ごはんなんだけど」

 

 ……それから15分も経った頃だろうか。居間に春風先輩と二人でいたところ、鏡子さんがやってきてそう聞いてきた。

 

「あ、その辺りはお構いなく。どこかで勝手に食べてきますんで」

 

「……そうは言ってもねぇ」

 

 俺の返答に、鏡子さんは困った顔をする。いくら島とは言え観光地なんだし、食堂の一つくらいありそうなもんだが。

 

「港の方に食堂があるんだけど、確か今日はお休みのはずだよ」

 

「え、休み!?」

 

「うん。明日がヤフルトの日だからね。すっかり忘れてたの」

 

 ヤフルトの日? なんだろう。熱烈なヤフルトファンで、野球観戦に行くからお休みにするとか、そんな感じの店なんだろうか。

 

「一応、港にも商店があるにはあるけど……朝に少し総菜パンを売ってるくらいで、お昼過ぎには開店休業状態になっちゃうの」

 

「そ、そうっすか……」

 

 この様子だと、コンビニなんて到底なさそうだ。晩飯、どうしよう。

 

「でも、今日は貰い物のカレーがたくさんあるから、何とかなると思うよ。私の料理は人様に出せるようなものじゃないけど、カレーは温めるだけだしね」

 

「そういうことなら、ごちそうになります」

 

「うん。任されるよ」

 

「あ、あの、私もお手伝いします」

 

 その時、春風先輩がおずおずと手をあげた。俺がしゃしゃり出るのも変な話だし、ここは先輩に任せよう。

 

「新海くーん、ちょっといいー?」

 

 カレーの隠し味にはヨーグルトやハチミツが良いんですよ……みたいな話をしながら台所へと消えていく二人を見送っていると、九條から呼ばれた。

 

「……九條、どうした?」

 

「皆のお布団を用意してたんだけど、ここの収納が高くて、私じゃ手が届かないの」

 

 呼ばれた場所に行ってみると、九條は小さな台に乗りながら頭上を指差す。その先には半開きになった引き戸があり、その奥に布団が入っているのが見えた。

 

 ……なるほど。九條も頑張ってつま先立ちしていたけど、引き戸を半分開けたところで力尽きたのか。

 

「よし。俺が降ろすよ。九條は下で布団を受け止めてくれ」

 

「うん。お願いね」

 

 俺は九條と入れ替わって台に登る。それなりの高さがある台だし、俺の身長なら楽勝だ。そのまま引き戸を全開にして、畳まれた布団を引っ張り出す。

 

「いいか。下ろすぞ?」

 

「うん。いいよ」

 

 小さな台の上でバランスを保ちながら、俺は下方の九條の姿を探す。

 

「……げっ」

 

 そしてようやく九條の姿を見つけたと思ったら、反射的にその胸元に目が行ってしまった。

 

 よく考えたら、今日の九條は白いワンピース姿で、普段に比べたら露出が多い。必然的に胸元も広いわけでその……立派な谷間が見えてしまった。

 

 九條の、すごいな……希亜には到底あのボリュームはないぞ。いや、希亜のもいいんだけど!

 

「……新海くん、どうかした?」

 

「あーいや……いくぞ!」

 

「わぷっ」

 

 視線を必死に逸らしながら、投げるように布団を九條に渡すと、その布団は九條の顔面を直撃した。

 

「わ、わ、わ」

 

 そして視界をふさがれてバランスを崩したのか、そのまま転倒して大きな音がした。

 

「わ、悪い。九條、大丈夫か」

 

「う、うん。お布団がクッションになってくれたら、大丈夫」

 

 俺も慌てて駆け寄り、九條を抱き起す。咄嗟に持っていた布団を下にしたらしく、怪我はないみたいだ。

 

「……これはどうしたことだ」

 

 ……その時、先の音を聞いたらしい皆が集まってきた。

 

「か、翔、これは一体どういうこと……?」

 

「え?」

 

 明らかに動揺した希亜の声にはっとなり、周囲を見渡してみる。

 

 落下の衝撃か、乱雑に床に広がった布団と、その上に座る九條。そして、それを抱きしめている俺。

 

「こ、これは、不倫現場……!」

 

 ……いや春風先輩、誤解ですからね。というか、なんで心なしか嬉しそうなんです? そんな場面に見えなくもないですけど、偶発的な事故ですから!

 

「修羅場だ! 証拠写真! 証拠写真!」

 

「おい天、めっちゃ嬉しそうにスマホのカメラ向けんな! 撮るんじゃねぇ!」

 

「大丈夫。にぃにの顔しか撮ってないから」

 

「どさくさに紛れてコレクション増やすな! いいか、これは偶発的な条件が重なった結果であって……!」

 

「うーわ、あんなこと言ってますよ。結城先輩!」

 

 思わずそんな言い訳をするけど、火に油を注いでいるだけだった。

 

「ふ、不倫現場……? えっ? えっ?」

 

 ……一方の九條は全く状況が飲み込めていないようだし、俺が言い訳をすればするほど泥沼だった。くそ。こいつら、楽しんでやがる。

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 ……すったもんだあって、夕食時。

 

「それじゃ、皆、たくさん食べてね」

 

 居間に集まった俺達の前には、人数分のカレーが用意され、スパイシーな香りを漂わせていた。

 

 鏡子さん、料理は苦手……みたいな話をしていたけど、そんな謙遜しなくても良いと思う。十分美味しそうだ。

 

「……そういえば、鷹原やうみちゃんは一緒に食べないんですか?」

 

「あの二人、確か夕飯は空門さんちで食べるって言ってたよ。お呼ばれなんだって」

 

 ああ……姿が見えないとは思っていたけど、二人は結構島に長く滞在してるって言うし、それなりに島民とも仲が良いんだろう。

 

「それじゃ、冷めないうちにめしあがれ」

 

「ありがとうございます。それでは遠慮なくいただきます」

 

「「いただきまーす」」

 

 皆で挨拶してからスプーンを手に取り、熱々のカレーを口に運ぶ。

 

「……!?」

 

 ……一口食べた瞬間、口の中に無数の味覚が一気に広がった。

 

 甘み、苦み、酸味に塩味。本来なら一番にやってくるだろうカレーの芳醇な香りとコク、そして辛みといったものは一切なかった。

 

 全く想定していなかった味に、脳がパニックを起こし、速やかに危険信号を出す。

 

「く、あ……」

 

「ぐぉぉぉ……」

 

 隣の天と高峰も喉を押さえて苦しんでいる。俺もなんだか息苦しさを感じてきた。実際に盛られたことはないけど、毒を盛られた時の苦しさってこんな感じなのかもしれない。

 

「……ジ・オーダー。アクティブ!」

 

 ……次の瞬間、左目のスティグマを光らせながら、希亜が気合いで立ち上がった。

 

「待て待て待て! 希亜、何する気だ!」

 

「私の中で、あのカレーには罪があると判断した。よって裁く!」

 

「ストーップ! その輝く左目をしまえ! こんなところでアーティファクトを使ったら……!」

 

「無理! パニッシュメント!」

 

「……ああもう! 発動しろ、オーバーロード!」

 

 魂を焼く強烈な光の奔流が顕現したのを視認するかしないかといった所で、俺はオーバーロードを発動させ、時間を巻き戻した。

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 ……それから15分も経った頃だろうか。居間に春風先輩と二人でいたところ、鏡子さんがやってきてそう聞いてきた。

 

「あ、その辺りはお構いなく。どこかで勝手に食べてきますんで」

 

「……そうは言ってもねぇ」

 

 俺の返答に、鏡子さんは困った顔をする。いくら島とは言え観光地なんだし、食堂の一つくらいありそうなもんだが。

 

「港の方に食堂があるんだけど、確か今日はお休みのはずだよ」

 

「え、休み!?」

 

「うん。明日がヤフルトの日だからね。すっかり忘れてたの」

 

 ヤフルトの日? なんだろう。熱烈なヤフルトファンで、野球観戦に行くからお休みにするとか、そんな感じの店なんだろうか。

 

「一応、港にも商店があるにはあるけど……朝に少し総菜パンを売ってるくらいで、お昼過ぎには開店休業状態になっちゃうの」

 

「そ、そうっすか……」

 

 この様子だと、コンビニなんて到底なさそうだ。晩飯、どうしよう。

 

「でも、今日は貰い物のカレーがたくさんあるから、何とかなると思うよ。私の料理は人様に出せるようなものじゃないけど、カレーは温めるだけだしね」

 

「そういうことなら、ごちそうになり……」

 

 

『記憶をインストールする』

 

 

「……い、って」

 

 ……その時、鈍い頭痛に襲われ、直後に別の俺の記憶が流れ込んできた。

 

「え、翔君どうしたの」

 

「だ、大丈夫です。それより、料理なら九條が得意なんですよ。彼女に手伝ってもらいましょう。おーい、九條―!」

 

 別の枝で起こった惨劇の記憶を読み取った俺は、そう言って九條を呼びに廊下へと走った。

 

 ……俺の行動の変化によって悲劇は回避され、夕飯は美味しいカレーを堪能することができた。

 

 ちなみに料理をしてくれた九條に代わって、俺は春風先輩と布団の用意をしたのだけど……例によって先輩も露出多めの服で、その後の展開はほとんど同じだった。

 

 くそ、うまくいかないもんだな……。

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 ……その後、夕飯を済ませてきたらしい鷹原とうみちゃんも帰宅し、順番で風呂に入ることになった。

 

 一度見せてもらった風呂場は至って普通の……いや、ハイテクなのかローテクなのかわからない謎のボタンがたくさんついた風呂だった。

 

 お世辞にも広いとは言えないし、人数が人数だ。全員が入り終えるまでに相当な時間がかかってしまった。

 

「これだけの人数なら、明日から共同浴場に行くのも良いかもしれないな」

 

「この島、共同浴場があるのか?」

 

「ああ、役所の近くにあるんだよ」

 

 男三人もそれぞれ入浴を済ませ、部屋でまったりしていると鷹原がそう教えてくれた。確かに、この人数だと水道代も馬鹿にならないだろうし。明日にでも場所を教えてもらうことにしよう。

 

「あのー、入っていいですかー?」

 

 ……その時、ふすま越しにうみちゃんの声がした。鷹原が返事をすると、丸い缶を持ったうみちゃんが部屋に入ってきた。

 

「蚊取り線香持ってきました。人数増えてますから、寝ぼけてひっくり返さないようにしてくださいね」

 

「子供じゃないんだから、わかってるよ」

 

 本当ですかー? とか言いながら、うみちゃんが笑う。お風呂上がりで髪を結っていないせいか、どことなく大人びて見える。

 

 それにしても、この缶に入った蚊取り線香は懐かしい。俺達は基本マーノットだからな。

 

「それとですね。これを持ってきました」

 

 続けて、うみちゃんは俺の方へテーブルタップを差し出してきた。あの、コンセントがたくさんついたアレだ。

 

「これがあればスマホ、充電できますよね?」

 

「ああ、ありがとう」

 

 ……そういえば、この部屋は壁のコンセントの数が少なくて、俺も高峰もスマホの充電ができなかったんだ。これは助かった。

 

「それじゃ、鷹原さんも新海さんも、それから司令官さんもおやすみなさい!」

 

 そして俺にテーブルタップを渡すと、すぐにうみちゃんは部屋を出て行ってしまった。

 

「……ふむ。なかなかに元気な子だな」

 

 うみちゃんが閉じていった襖を三人で見ていたら、高峰が率直な感想を口にしていた。確かに、すごく元気な子だ。

 

「……本当だよ。俺は部活で色々あってこの島に逃げてきたんだけど、あの子の元気に救われたし、励まされもしたんだ」

 

 ぽそりと、鷹原が言う。もしかして、昼間のプールでの特訓とやらが関係しているんだろうか。

 

「おーい、にぃにー」

 

 もう少し詳しく話を聞くべきか悩んでいると、今度は襖越しに天の声がした。そして誰かが返事をする前に、そのふすまが僅かに開けられ、パジャマ姿の天が顔を覗かせる。

 

「にぃに、そっちの荷物にドライヤー入ってない?」

 

「ああ、あるぞ。これだな」

 

 俺が自分の鞄からドライヤーを取り出すと、天は四つん這いになりながら部屋に入ってきた。それと同時に、風呂上がりでしっとり濡れた髪から石鹸のいい匂いがした。

 

「あんがと。んじゃねー」

 

 そして俺の手からドライヤーを受け取ると、そそくさと部屋を後にしていった。確か、脱衣所にもドライヤーはあったはずだけど、女性陣は皆髪が長いし、順番を待っていられないんだろう。

 

「……」

 

 ……そんなことを考えていると、さっきから鷹原が固まっていることに気がついた。

 

「鷹原、どうした?」

 

「いやその、俺って男子校でさ。女の子のあんな格好に免疫無くて。妹さん、なんだかんだで可愛いしさ」

 

 そう言って視線を泳がせる。うん? あいつが可愛いだって? 聞き違いかな?

 

「妹だし、俺は全く気にしたことないぞ。あいつ、状況によってはタオル一枚で家ん中うろつくからな」

 

「ちょっとやめて、変な想像しちゃうから」

 

 更に実例を挙げると、鷹原は顔を赤くして悶える。本当に免疫無いんだな。まぁ、俺もそこまで強いわけじゃないが。

 

「あ、そうだ忘れてた」

 

「きゃーーー!」

 

 そんな話をしていたら再び襖ががららと開けられ、天が顔を覗かせた。こいつ、せめてノックしろよな。鷹原、驚きすぎて叫んじゃっただろ。

 

「にぃに、みゃーこ先輩が話あるから部屋に来てほしいって」

 

「え? ああ、わかった」

 

 ……一瞬、夕方の件を怒られるのかと思ったけど、あれは別の枝の話だった。話って何だろう。

 

「後、高峰先輩も来てほしいって言ってましたよ」

 

「了解した。すぐに行くとしよう」

 

 そう言って立ち上がった高峰につられるように、俺も九條達の部屋に向かった。話って何だろう。

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

「……やっと揃ったわね」

 

 九條達の部屋に行くと、そこには他の皆も集まっていて、その中心にはソフィーがいた。

 

「もしかして、俺達を呼び出したのはソフィーなのか?」

 

「そうよ。当面の宿泊先は見つかったみたいだし、この辺りで状況を整理しておこうと思ったの」

 

 ぬいぐるみの小さな手をピコピコと動かしながら、ソフィーが続ける。そういえば、港で話したのが最後だった気がするな。

 

「それで、私達はやっぱり時間を移動しちゃったんだよね……?」

 

 そんな中、一番に口を開いたのは九條だった。2000年に時間移動した証拠はこれまでに散々体験してきたんだけど、どうしても確かめずにはいられなかったみたいだ。

 

「……そうね。信じられないことだけど、なんらかの要因によってアナタ達が2000年の鳥白島へ飛ばされたのは事実」

 

「……やっぱり、島のユーザーが関係してるんだよな?」

 

「恐らくね」

 

 ぬいぐるみの表情は読み取れないけど、どこかため息交じりな気がした。ソフィーとしても、想定外の事態なんだろう。

 

「でも、少し気になるよねぇ……」

 

「気になるって何が?」

 

「一度に10人近くの人間の時間移動を可能にするアーティファクト。これは間違いなく第一世代の代物。本来なら、セフィロトで厳重に管理しているはず」

 

「そういうことなら、そんな強力なアーティファクトがこっち側の世界に流出する事自体が稀ってことだよな」

 

「そうね。仮に流出したとしても、こんな遠くまで気づかれずに移動するなんてありえない」

 

 ……世界の眼が破損したことによるアーティファクト流出事件の中心は本来、俺達の住む白巳津川だったはずだ。そこから遠く離れたこの鳥白島に、どうしてアーティファクトが存在するのか。謎は深まるばかりだ。

 

「カケル、島のユーザーの反応は変わらず?」

 

「ああ、相変わらず島全体に巨大な反応がある。この島のどこかにいることは確かだろうな」

 

 俺は探索のアーティファクトを起動してみる。島に来る直前と、その反応は何ら変わりはない。

 

「……なら、このままユーザー探しを続けなさい。私の方でも色々調べてみるから」

 

「わかった」

 

 今日も希亜と一緒に島のユーザーを探してみたけど、どこにいるのか皆目見当もつかなかった。この島の中にはいるんだろうけどさ。

 

「……ところで、アナタ達は島民とも随分仲良くなってるみたいじゃない。そのうち、彼らから島のユーザーに関する情報が手に入るかもしれないわね」

 

「正直なところ、そんな下心で仲良くなったわけじゃないんだけどな……」

 

 島民の皆は普通に良くしてくれているし、それを裏切るような真似はできればしたくない。

 

「……でも、確かにこの調子で打ち解けていけば、島のちょっと怪しい噂とか教えてもらえるようになるかも」

 

「ああ、それはあるかもな」

 

 九條の意見はもっともだ。例えば島で謎の火事が起こったとして、余所者だからと何も教えてもらえないよりかは、少しでも情報がもらえる方がいい。もしかしたら、それが島のユーザーへ繋がる糸口になるかもしれないわけだし。

 

「あと、もし身の危険を感じることがあれば、ためらうことなくオーバーロードを使うこと。いいわね」

 

「ああ、それもわかってるよ」

 

 最悪、島のユーザーとの戦いで仲間の誰かが傷つくことがあるかもしれないし。まぁ、鏡子さんのカレーに身の危険を感じた時、オーバーロードは既に一度使ってしまったんけど。

 

「時間を巻き戻すにしても、まずは翔が島のユーザーの手がかりを掴むことが重要。私達も何か情報を得たら、逐次報告する」

 

「そうだな。皆、よろしく頼む」

 

「でもそうなると、悩ましいのは情報共有の手段だよね……」

 

 希亜の頼もしい言葉を聞いていると、一方で九條が不安そうな顔をした。

 

 確かに、どうやって情報共有するべきか。この島だとLINGも使えないし。四六時中一緒にいるわけにはいかない。

 

「……私には仕組みがよくわからないけど、この島ではスマホが使えないんでしょう? なら、定期的に集まるしかないじゃない」

 

 俺達が押し黙ってしまうと、ソフィーは少し呆れた声を出しながら、至極真っ当なことを言ってきた。やっぱりそれしかないか。

 

「それじゃあ……これから毎日、この時間にこの部屋で報告会を開くことにしよう。皆、それでいいか」

 

「私は異論はない」

 

「うっす」

 

「わ、私も、大丈夫です……」

 

 俺がそう提案すると、皆が頷いてくれた。この部屋は廊下の一番奥に位置してるし、誰かが通りかかることもないだろう。

 

「……決まったみたいね。それじゃ、また明日。目ぼしい情報を得られるといいわね」

 

 話がまとまったと見るや、ソフィーはいつものように無駄にかっこよく空間の狭間へと消えていった。

 

 ……それを見送った後、俺達は誰からともなく伸びをする。

 

「とりあえず、今日は寝るか……」

 

「そうだね。皆、色々あって疲れてるだろうし」

 

「それじゃ先輩方、にぃに、おやすみなさーい」

 

 そのまま解散の流れになると、いの一番に天が立ち上がり、皆に挨拶をしながら襖の先へと消えていった。

 

 どこまでも自然体な奴だなぁとか思ったけど、今日は色々なことがあったし、慣れない移動で身体が疲れているのは事実だった。

 

「さて、そろそろ我々も休むとしよう。失礼する」

 

「だな。それじゃ、おやすみ」

 

 思えばここは女性の部屋だし、必要以上の長居は無用だ。俺と高峰も軽く挨拶をして、足早に九條達の部屋を後にした。

 

 

 

 

 ……そして自分達の部屋に戻って、鷹原と二言三言言葉を交わすと、そのまま自分の布団を敷きへ、中へと潜り込んだ。

 

 ……普段はベッドを使っているから、畳の上に敷かれた布団というのはどこか新鮮で、それこそ旅館にでも来た気分になる。

 

 不慣れなはずだけど、不思議と心地良い。やっぱり、日本人は布団なのか。

 

 ……そんなことを考えているうちに、俺の意識は次第にまどろんでいく。さすがに今日は疲れたみたいだ。

 

 ……明日こそ、島のユーザーの手がかりを掴んでやる……。

 

「……ぐぅ」

 

 ……こうして、俺達の鳥白島での夏休みが始まった。

 

 

 

第三話・完




第三話・あとがき

こんにちは。トミーです。
冒頭の叫び声の正体は、やっぱり良一でした。夏の終わりが近づいても、のみきと二人で仲良く遊んでいるようです(語弊)

そしてようやく登場しました羽依里君とうみちゃん。二人の会話からもわかるように、サマポケ側の舞台設定はうみちゃん√に限りなく近い夏といった感じです。更には藍や鴎が普通に登場したりしてますが、二次創作ということでご容赦ください。私、登場人物多いの大好きなので(

さて、まだ主要キャラとしては紬と静久が出てきていませんが、次回からは本格的な夏休み……じゃない、島のユーザー探しが始まる予定です。
半分勘違いしているとはいえ、島民の皆ももてなす気満々ですし、夏は色々な誘惑も多いもの。果たして翔君は集中してユーザー探しをすることができるでしょうか……?

というところで、次回に続きます。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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