吸血王と魔法と異世界   作:マスラヲ

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今回は主人公の考察回になっています。

吸血王という人間とは異なる次元の生き物としての考え。
それを存分に発揮してもらうための回です。

多少無茶苦茶な発想をしていますが、それが吸血王ライールです。
凡人とは違うのだよ!凡人とは!

……調子に乗りました。ごめんなさい。
本編をどうぞ。


12話

「おい貴様ら。殺すぞ」

 

俺は旧世界を周っている間、いや前世の時からずっと疑問に感じていたことがある。

 

なぜ人間はくだらないことで争うのをやめられないのか、と。

 

やれ金がほしい。

やれ女がほしい。

やれ土地がほしい。

やれ権力がほしい。

やれ名誉がほしい。

あれがほしいこれがほしい。

 

ほしいほしいほしい。

だから戦ってでも奪う。

そんな理屈だろうか。

 

まぁあんまり真剣に悩んでいたってほどでもないが、吸血王として生まれた後になると、ますます人間達の欲望が醜く見えて仕方がない。

エヴァのこともあるが、そんな利己主義的な考え方をしてしまうことが本性に刻まれている人間を俺はどうしても解せない。もちろんそんなやつらばっかりというわけではないが、あまり好きになれないな。

 

そして同時に思う。なぜそれが直らないのか。

俺の前世の世界でも大きな戦争は核兵器を互いに突きつけ合うことでなくなったが、争い自体はなくならない。

『争い』こそ人類の歴史。

いくら彼らが否定しようともこれは変えられない事実だ。

それが人間の本能。

 

ここで最初の疑問に戻る。

 

なぜやめられないのか。

 

旧世界の人間達については仕方がないとある程度諦めてもいる。

やつらは科学文明の進化と共に育っていくものだからだ。

俺が旧世界においていくら考えを巡らせたところでどうしようもないしどうしようとも思わない。

魔法関係ないし。単純にやる気が起きない。

 

でもあえて。

俺はそんなくだらない妄想とは無縁な存在として生まれたため、答えは未だ出ていないが。

現時点での俺の結論を言うとするなら。

 

『価値観』であると考えている。

あるいは概念そのものといってもいい。

 

またさらに少し話が大きくなっている気がするが、ようはまだ文明が未発達であるが故の差別や迫害。それから発生する争い。

絶対的な強者が現れないうちはこれが延々と続く。負の連鎖。

 

なら逆に考えて、21世紀の地球にあったこの世界の人間達にとっては進歩的な考え方をする俺の方がむしろおかしいのだ。

俺は疑問に対してそういった結論に達し、『旧世界にいる間は』考えるのも止めた。無駄だと思ったからだ。

 

旧世界においては魔法世界へ旅立ちたいという思いの方を優先したので、だからどうしようとか具体的なことは考えていなかったのもある。

 

だがこと魔法に関して自重する気のない俺にとっては理想卿にも等しい魔法世界なら話は別となる。

 

旧世界人ではなく魔法世界人の場合は?

どう考えてもおかしい。

俺からすれば「もったいない」人生を送っているとしか思えない。

魔法という力を持ちながら。

なぜ旧世界人と同じようなことをするのか。

まったくの無駄であるのに。

だから来る前は期待もしていた。

旧世界とは違うのだと。

 

だから。

 

ゲートをくぐった先で『それ』を見てしまった時。

そもそもその魔法世界全体に『俺が気持ち悪い』と感じてしまう風潮が蔓延してしまっているという事実を見せられた時。

 

俺はそれを壊すために行動したくなった。

 

旧世界ではなんとも思わなったことを変えてやろうと実行しようとする。

そうだ。できるのだ。

旧世界で気付いた俺の早すぎる価値観を持ってすれば。

その価値観を教えてやる方法さえ考えれば。

色々とハイスペックな俺がその方法を実行すれば。

魔法世界を変えられるのではないか?、と。

 

そんな確信を密かに心に秘め、俺は少女と男たちの目の前にこうして立っている。

すでに行動することは決めていた。どの道俺がこの世界で後顧の憂いなく楽しむためには、胸糞悪い現状を打破しなければ無理だ。というかそっちが気になって集中できないだろうが!

 

おそらくこちらの人間達が亜人達のことを普通に隣人として扱っていたならば、俺は特に何も思わなかっただろう。

なぜなら俺は、魔法を争いや戦争に使うこと自体に関しては否定しない。

何世紀経とうとも争いはなくならず、そこで魔法というひとつの道具があるのだから魔法による戦争だって起こって当然だろう。戦いではありとあらゆる方法で人を殺すことを目的としているのだから、便利な魔法の利用が発明されるのは自然なことだ。俺だって殺すために、生きるために使う。

 

だから此処から先は俺の我がまま。自己満足。

それを自覚しているがゆえに、俺は主張しよう。

 

「つまらん魔法の使い方をするな」

 

そう。

色々言った。価値観がどうの。世界がどうの。差別、迫害がどうのと。

 

だが極論。

一切の理屈をはぶいて俺に残る考えは。

 

究極的自己中心的思考で答えを出す、ということだ。

 

なぜなら俺は吸血王。

それが許される存在だから。

 

「俺の気分を害する真似を魔法でするんじゃない。しかも目の前で」

 

そんなことをされたら俺は。

全力で止めるぞ。殺してでも。

 

旧世界と変わらぬ魔法世界の『現実』を。

旧世界では「まぁ仕方ない」で済ませたことを。

魔法の楽園で魔法のつまらん使い方をする現状を。

 

だから俺は助けた後の少女の話し次第で。

今浮かんだひとつのアイディアを実行することを決めた。

 

まぁ要は単純に。

 

何かがキレた。

 

俺は――――――――――をつくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁんだぁ?てめぇ。何の用だよぉ!」

「おいおい。まさかお前も混ざりたいってか? シッシッ。これは俺らんだ。やらねえよ」

「……そうか」

 

一言ではどうやら正しく伝わらなかったらしい。

まぁ当然か。こんな馬鹿どもに俺の実力など察しようがないからな。

 

「悪いがそういうことだ。失せろ」

 

他の二人から『親分』と呼ばれる、3人の男の中でも一番体格のいい男がそう言って、もう用はないだろうとばかりに視線を俺から外した。

 

馬鹿が。

 

親分とかいう男が視線を外したその瞬間。

俺は音もたてず、スッとその背後に立ち。

 

ズシュ。

 

「は?」

 

手刀を心臓に突き刺した。

 

「な、は、ご、ごぼっ……」

「一人目」

 

断末魔の叫びもあげられず、怒りや絶望などが混ざった目で俺を見つめたまま、そいつは絶命した。

 

次の行動に邪魔なので死体は投げ飛ばし(視線の端でエヴァが陰に回収しているのが見えた)、未だに自分たちの親分が死んだことに気付かずに少女にジワジワとにじり寄る男二人に近付いて行った。

まわりで見ていた他の一般人でさえ気付かない。なぜなら俺の魔法《反射》で俺と男たちのまわりを光の屈折を利用して見えなくしているからだ。音は近くに人が寄ってこないのでいいだろう。

 

「ぐへへ。本当にきれいだねぇ。なんだよこのすべすべの肌は」

「馬鹿言え。それよりもさっさと剥いちまおうぜ」

「おう!」

 

お前らはロリコンかと。だんだんかわいそうになってきたぞ。むしろこんな少女でしか性欲を発散できない環境で生きていたのか。娼婦館ぐらいあるだろうに。

……いやエヴァはいいんだよエヴァは。

 

ともかく。

 

「まぁそれは叶わないんだがな」

「「はへ?」」

 

《魔法の射手。火の二矢》

 

間近で声を掛けられて初めて俺に反応した時にはもう遅い。

魔法の射手が二人の男の腹を正確に貫通し、その威力を思う存分発揮して二人の体は内側から燃えた。

一気に燃え上がったためやはり声も出せずに灰になって風に紛れた。

これでゴミの掃除終了。

 

「あ、あなたはいったい……」

 

少女はその一部始終を見ていた。

少女はちょうど男達と対面にいたので、俺が背後から順に3人の男を排除していったがわかったからだ。

 

「俺か?俺は吸血王だ」

「きゅ、きゅうけつおう?」

「ようは吸血鬼だな」

「きゅうけつき……ですか?」

「お?」

 

始末ができて少し気分が乗っていた俺はつい正直に何者か答えてしまったのだが、思っていたのとは違う反応を返された。

少女は吸血鬼がなにかわからないという顔をしていたのだ。

 

「ふむ。とりあえず今は安全なところに行こう。手を」

「あ、ありがとうございます」

 

少女は素直に俺の手を取った。

 

「……手を貸しといてなんだが、俺が恐くないのか?」

「え?なぜです?」

「なぜとは。俺は人間だとは思わなかったのか?」

 

吸血王と名乗っておいて今さらだが、それがわからないなら俺は見た目が完全に人間と同じなので、彼女を奴隷商に売り飛ばすとか言っていたさっきの連中と同類だとは考えないのだろうか。

 

「でも助けてくれました」

 

にっこりと花が咲くように微笑む少女。

 

「私がこの国に来てからもう1ヶ月になりますが、今まで誰ひとりとして。私を助けてくれるような方は現れませんでした。なので私は人間はそういう存在なのだと」

「……つまり君を助けた時点で俺は人間ではないと言いたいのか?」

「ええ。私には『きゅうけつおう』というものがなにか分かりませんが、何者かと尋ねた後に答えたのが名前ではなく種族名のようでしたので。勝手に人間ではないのだと考えましたのもあります。間違ってますか?」

「……いや」

 

なんとまぁ。賢くそして強い少女だ。

というかさっきまで恐怖に身を震わせていたのにこの堂々とした態度。

 

どうやら彼女に対する評価を変更しなければならないようだ。

 

「だがこれだけは言っておく。俺はただ善意で君を助けたわけではない」

「ではなぜ?」

 

そう言った俺に、警戒の色は見えないがそれでも真剣な表情をした少女。

 

「実は遠い土地から来たばかりでね。知識が少ない。なので『首輪』のない君に話を聞いて情報を集めようと思ってね。人間に聞いても自分勝手な解釈の元に説明されそうで」

「……情報ですか」

 

遠い土地とぼかしたのはもちろん旧世界のことをはぶくためだ。面倒だし彼女は知らなくてもいいことだろう。ゲートをくぐった先は一般人からはただの別の場所へ飛ぶための転移門だと説明されているらしく、それが異世界へのゲートだとは知らされていないと検査を担当していた魔法使いが言っていた。

ゲートの近くにある広場でさえ、隠さないことで一種のカモフラージュにもなっているのだろう。

まさかこんな所に異世界へつながる道があるとは、みたいな。

 

少女は首輪という単語の所で若干顔をゆがめたが、それでも助けてくれたという事実をちゃんと認識しているのか、彼女は了承を言葉にした。

 

「分かりました。ただひとつだけ条件をつけさせてください。助けてもらった身の上で申し訳ないのですが……」

「いいだろう。たいていのことなら俺がなんとかしよう。それで?」

「ありがとうございます。実は私、親とはぐれてしまって。こんなところを彷徨っていて下郎に捕まってしまったのもそういう訳があったんです。だから親と合流するまでの護衛を頼みたいんです」

「そんなことならお安い御用だ。交渉成立だな」

 

むしろそれくらいの交換条件でいいのかと言いたくなる。俺は結構根掘り葉掘り聞くぞ?

 

「は、はい!ありがとうございます!ええと……」

「俺はライール。ついでにあっちにいる金髪の女の子は俺の連れでエヴァだ」

「よろしくお願いします。私は樹人族の琴音(ことね)と申します」

 

こうして俺は。

あるいは本気で、という決意を固めるべく少女に魔法世界の話を聞く。

 

 

 

 

 

 

そう。

俺はキレた。

だから俺は俺のために。

魔法世界に価値観を押しつけるために。

なによりも魔法のために。

 

 

 

 

『国』をつくろう。

 

 

 

 

 




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