吸血王と魔法と異世界   作:マスラヲ

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3話

仕事を受けたその日は何事もなく終わった。

昼には農夫たちを取り仕切る組合から簡単な弁当が出て、夜は街の宿が一杯ということで雑魚寝だがおいしい食事も酒場で摂れる。その時に色々情報も耳に入ってきたが、それは後で。

 

一日過ごしてみて思ったのは、この街は以外に金銭的に潤っているなということだ。

まさか傭兵(俺は旅人だがそのようなものだ)風情に日雇いで日当が出るとは思わなかった。

せいぜい倒せば報償がでる程度だと思っていたのに。

それに昼飯を提供してきたことにも驚いた。至れり尽くせりだろうこれは。

 

後は魔法を使える機会さえ巡ってくれば文句はない。

俺は想いを明日に馳せながら目をつぶり眠りについた。

さぁ明日は現れてくれるのだろうか。

 

噂の盗賊、【黄金の魔女】は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり農夫たちが各々の家に引き揚げて行くことで仕事が終わりとなり、俺は疲れを癒すために、そして近隣の情報を集めるために噂話が集まる酒場に入ると、酒場特有の喧騒に包まれた。

雑多な雰囲気がするが、そこに不快感はなく、開拓地特有の人々の陽気さや明るさが満ちたいい酒場だ。

 

俺もカウンターに座り、店主に強めの酒を注文し、ちびちびやりながらその中に溶け込んで耳を傍立ててみた。

 

「最近商人の数が減ってないかい? そういえばあの―――――」

「馬鹿野郎! あそこの看板娘は俺が狙ってんだよ! お前は―――――」

「母ちゃん元気かなぁ。仕送りが―――――」

「おっちゃん! 酒おかわり! あと―――――」

「どうだいこのあと。娼婦を買ってさぁ―――――」

 

本当に色々な話が聞こえてくるものだ。実際に入ったのは初めてなので、他と比べるということもできないが、これだけバリエーションが豊富なのもそうないだろう。

だが俺が聞きたいのは『これ』じゃない。

そう。例えば……これか。

 

「西の方じゃ戦が絶えんらしい。なんでも俺の故郷の国が周辺の国に喧嘩を売ったらしくてね。確かにうちの騎士様方は強いんだがね」

「そりゃあおめぇ。なんだってそんなことに? 治安がまた悪くなるだろうによう」

「そんなもん金だろ金。人が動く時は金か女と相場が決まってんだよ」

「ある意味であってるかもな。噂じゃ王子が隣の姫様に惚れちまったらしく結婚を申し込んだが断られ、なら力強くって腹積もりらしいぜ」

「ひぇ~、おそろしやおそろしや。まぁここじゃ関係ない話だけどよ」

「お前の国はなんていったっけ?」

「モラヴィア王国さ」

「そういやほかん所でも似たようなことが―――――」

 

 

なるほど。どうやら現在のヨーロッパは危険な状態にあるらしい。

戦乱の世。

いくつもの小国家が覇権を争い戦いを繰り広げる。

 

俺の知識ではヨーロッパ、戦争とくればせいぜいジャンヌ・ダルクって女がいたっけな?ぐらいだ。

まぁ時代的にそれはそれであってるっぽいが。

 

とにかく色々命の危険がはびこる危険地帯という認識でいこう。

俺にとってはなんでもないことだが、人から見てどうなのかという考え方でいかないと、この先困るだろうしな。

 

今ふと思いついたが戦争で手柄を立てて貴族か騎士になればそれなりにおもしろそうだな。不老不死な関係で長くは君臨できないだろうが数年は楽しく過ごせそうだ。うまい具合に小国で貴族に

 

「お前さん聞いたかい? あの話」

「ん? ああ、もしかして【黄金の魔女】のことか?」

 

お?これは……。

 

「なんでも相当やり手の盗賊らしいじゃねえかい。もう幾人もの商人が被害にあってるらしい」

「俺は直接その被害にあったって奴に話しを聞いたぜ。そいつはこの街から隣の街へ荷物を届ける最中だったんだが、その日は野宿をするために適当な木の下に野営準備をしていた。その時ガサガサと草木が一瞬強風に煽られて葉っぱや土が舞い上がり、そいつの目を塞いだ。すぐに止んだんだが気付いた時には荷物の一部がなくなってったって寸法よ。そして見たんだと。月に向かって空を走る小さな人影を」

「いやはや。なんとも奇妙な出来事だな。いっそ怪奇現象だと言ってくれた方がまだ納得できらぁ」

 

音もなく忍び寄り食べ物や金銭を掠め取り、そして忽然と姿を消す。その手口と闇夜に光る金髪を指して【黄金の魔女】。

その姿は様々な噂が飛び交っている。

子供だった、美女だった、そもそも人ではなかった、などなど。

確かに襲われた人は大勢いるのに、確かな情報は入ってこない不思議。

 

俺はこれを魔法による犯行だと考えた。

 

確かにまだ現時点で魔法の存在はそれほど広がってはおらず、いわゆる魔法使いと呼ばれる存在もこっちの世界では少ないが、いないわけではない。

それにいくら優秀な盗賊だってまったく姿を見られず、気配も悟らせず、物だけを掻っ攫うなんて真似、果たして出来るだろうか。

ましてやまだ科学的な進歩もないこの時代だ。純粋な体さばきだけで歴戦の傭兵を護衛に雇った商隊の警戒の網目を潜り抜けるなど、おそらく不可能だ。断言してもいい。

 

それを可能とする物が魔法というわけだ。

 

俺はこの予想が立った時から【黄金の魔女】を捕まえようと決めた。

何もとっちめてやろうというわけではない。

確かに人から物を盗むのは感心しないが、魔法を扱える者がなんの理由もなく人から盗みを働くわけがない。盗まなければならない事情が絡んでいるはずだ。

魔法というこの世界では万能の力を持っているなら、他にも稼ぎ方は色々ある。俺のように。

それでもあえて盗賊に身をやつしているということは……。

 

とにかく遭遇すれば簡単に捕まえられるだろう。

俺はそう考え、それからしばらく酒場に居続けた後、今日の野宿先に帰った。

 

 

 




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