吸血王と魔法と異世界   作:マスラヲ

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作者はいわゆる度が過ぎた『鈍感主人公』やいざというとき『女性関係的に行動に出れないヘタれ主人公』は、あまり好きではありません。程度によりますが。

『据え膳は食う』という男前な主人公が好きです。
本作品の主人公もその辺は結構ガンガンいきます。


7話

あの大殺戮劇から数か月。

俺は確かに戦乱の世の到来を感じていた。

 

商隊に礼を言って別れた後も、街や村を転々とした。

もちろん俺の名を売るための活躍の場、エヴァの修行の場を求めて、だ。

とりあえず戦争を吹っ掛けた国と吹っ掛けられた国どちらの陣営にも味方をせず、まとめて蹴散らすことにした。より俺達を高く買ってくれる国に雇われるためだ。雇うのもためらうほどにやりすぎないよう自重はしながらだが。

これは最終的に雇ってもらうための計画段階の最初のひとつにすぎない。

 

もちろん攻撃する時は、今度は全滅させてしまうわけにもいかないので(生き残りから俺達の噂が広まらなければならないので)、あからさまな魔法は使えなかったが、それでも見えないところで使用した。

前提として俺は魔法以外も人外なので、魔法抜きでも純粋な剣技や体術で問題はなかったのだ。

 

ちなみに本格的に暴れ始めると決めた後、エヴァと相談して変装することに決めた。

俺のオリジナル魔法《蜃気楼(ミラージュ)》。

これは体全体に掛けられる高度な変装魔法だ。

姿形を完全に好きに変えることができ、触り心地も見たまんまになるすぐれものなので、結構自慢の魔法である。

 

なぜ変装をしようと思ったのか。

その理由は一言で言えば「面倒だったから」だ。

 

俺はこれから自分の活躍が噂になるように動くとなった時、もし思惑通りに事が進んだ場合、普通に街中を歩いているだけで、馬鹿なことを考える輩や、尾行などをしてくるやつらが出てくるのではないかと考えている。いやこれは確信だ。

 

なら噂になるほどの目立つ行動をする時に変装しておけば、有名になるのは変装後の姿になるわけで。俺達に実害はなくなる。

 

そもそも外出が多い俺達は、普段からよく街の中で食べ歩きや修行のために森の中を部隊を探してながらフラフラしていることが多い。そんな時にまで本来の外見のままでいたために付きまとわれたら。

 

正直うざいにもほどがある。

 

わざわざ変装のためだけに魔法を使う時間が増えると言うのは俺としては楽しくないし。

だったら目立つ時に変装してた方がまだマシだ。別に外見がどうだろうが噂が結果的に広まれば万事解決なのだから。

 

現在俺の姿は赤が濃い茶色がかった髪で30代後半くらいの筋肉隆々な傭兵オジサン風。

エヴァは年代は元のエヴァと一緒にして、茶髪のどこにでもいそうな村娘風。

もしもの時に親子という設定でいけるようにした結果こうなった。もちろん人前ではエヴァに俺のことを「パパ」と呼ばせることも忘れてはいない。なんだろうこの呼ばれた時の何とも言えない気分は。

 

装備についてはさすがに丸腰では(大丈夫でも)世間体的にまずいので新調し、おそろいのちょっと高価な銀鎧を胸や太ももなど大事な所を守るように服の上から着ている。

 

さらに暴れ始めて少し経った後。

俺は優勢に戦争を進めている吹っ掛けた側の国、モラヴィア王国に味方することに決め、その後は一切モラヴィア王国側に手を出すのを止めた。

これも計画の段階を踏んでいるにすぎない。

 

ようやく最近になって噂になり始めているようで、戦場近くに行くと、他の傭兵や兵隊らしき奴らに目線を向けられる。子供連れだというのが目立つからだろう。

しかもこの見た目のせいなのか、変な通り名までついた。

 

『紅蓮の殲滅者』。

 

見たまんまじゃねえか!と思った俺は悪くないだろう。まぁ変装の効果が出てると前向きにとらえることもできるが。

エヴァは人目があるところでは陰に隠れているように指示しているため、今のところせいぜい「紅蓮の殲滅者のおまけ」程度の存在だ。

 

「エヴァ。そろそろいくぞ」

「うん、兄様」

 

さて、それじゃあ今日はエヴァの修行にでも行きましょうか。

 

今俺達がいるのは最前線に一番近い補給拠点ともなっているこの国でも2番目に大きな街だ。

そこの高級宿屋の一部屋をそろそろ1週間になるであろう期間借り続けている。

 

これまでは一か所に留まることで、噂を聞きつけて人が集まってくるのを避けるため2,3日で移動を繰り返していたのだが、そろそろいいだろう。計画も最終段階。

十分俺の強さは広まり、国としてその場契約ではなく正式に戦力として雇いたくなってきただろう頃合いだ。

いずれ近いうちに王国側から接触があるはず。むしろそれが狙いでまわりくどいことをやってきたのだ。

だってやろうと思えば国の国庫に入りこんで強奪することだってできたし。でもそれじゃあ魔法の使い方としてはつまらない。

 

「今日はどうするの?」

「金には困ってないし、傭兵としての報奨金よりもエヴァの勉強の成果を見たいな。適当な敵部隊を探そう」

「わかった。がんばるね!」

 

だが、ただ接触を待っているのももったいない(魔法に関われない的な意味で)。

俺は今回何もしないが、エヴァの魔法を見せてもらおう。彼女の魔法は真祖の吸血鬼だからというのもあるだろうが、才能に満ち溢れていて、美しいのが特徴だ。

 

何と言えばいいのか。俺の魔法は父譲りで若干荒々しい。悪く言えば大雑把だ。母に理論も習ったとはいえ、こと戦闘に関しては父と濃密な時間を過ごした俺は、あるいはなるべくしてそうなったのか。

簡単に言えば、威力さえ出てしまえば細けぇこたぁいいんだよ(父談)、である。

 

対してエヴァの魔法は、俺が師匠にも関わらず魔法陣やそれに流し込まれる魔力が繊細に組まれている。

一種の芸術と言っていいだろう。

簡単に言えば、魔法の理想形がここにある(俺談)、である。

 

だから訓練の成果を見たいと言いつつも、それを言い訳にしている俺がいるのである。

 

早く魔法が見たい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エヴァ!」

「うん! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック。来たれ氷精、闇の精。闇を従え吹雪け常夜の氷雪。《闇の吹雪》!」

 

俺の合図で固まったままこちらに突撃の姿勢を見せていた騎馬軍団に、エヴァの呪文詠唱で撃ちだされた《闇の吹雪》が襲いかかる。

 

「紅蓮の!? て、撤た―――――」

 

ズシャァアアアアア!

 

最近また威力が上がってきたエヴァの魔法の前に、数十からなる騎馬兵の群れは食い散らされた。

相手が魔法使いや銃火器で武装した近代の軍隊ならいざ知らず、槍や剣や弓などで武装しただけの今の時代の人間では、最強種のひとつである真祖の吸血鬼エヴァンジェリンの相手にならない。

 

「修行の成果が出てるな。それにやっぱりエヴァの魔法は綺麗だ」

「うん。ありがとう兄様」

 

褒められてうれしそうに「えへへ」と頬を染めて笑うエヴァ。

顔まで返り血に濡れたままだ。これもまた綺麗な笑顔だと言える。

 

(この子も染まってきたな)

 

良い傾向だろう。かつて出会ったばかりのころは世界のすべてに怯えているような態度だった少女も。

今では前線で立派に胸を張って戦える強い少女へと変わったのだから。

 

数か月という短い期間の中でも、自信がついてきたということだろう。

 

それに最近なんだか―――――

 

「そ、それで兄様。ご褒美の……その……キスは?」

「……」

 

自信の付き方がおかしな方向にいってるような気がしないでもないというかなんというか。

 

つまりだな。

 

「……ん」

「チュッ……えへへ~」

 

いったいどこで彼女の気持ちを後押ししたのだろうか。

 

守ってあげたから?

安心を提供してあげたから?

快適な生活を過ごさせてあげたから?

修行をつけてあげたから?

吸血鬼としての彼女を肯定してあげたから?

目の前で笑いながら圧倒的な力で敵を薙ぎ払ったから?

頭を撫でてあげるのがくせになってやめられなくなってたから?

 

俺は。

 

俺はこれからも同じベットで寝ていく中で、自分の理性を保ち続けることができるのだろうか!

 

むしろ寝るときになるたび期待に目を輝かせてこちらを見てくる「待ってます光線」にそろそろやらせそうだ。

 

父よ、母よ。

 

俺はどうしたらいいのだ。

 

 

 

 

 

 

 




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