第6世界転生記   作:ホリイ

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新章開始しました
原作なしです
がんばります


11話 マザーズラブ・イズ・ストロング1

 サザンカは夜のタコマのストリートを何をするでもなくぶらついていた。

 ここは彼女のマンションのあるベッドタウンで、サザンカのようなメタヒューマンにとって比較的、住心地のいいエリアである。

 もっともだからと言って夜歩きができるほど安全なわけではない。

 彼女も何度かおかしな輩に声をかけられたが、彼らは全員後悔するはめになった。

 今やこの街で彼女に手を出そうとする者はいない。

 

『ロータスの調子はどう?』

『術後は良好だよ、ただしばらくは動けないね。彼女の家族の様子は?』

 

 コムリンクで会話をする相手はスミスだった。

 彼とロータスは今シアトルにいない。

 前回の仕事から1週間ほどたっていた。

 二人はその仕事で得た報酬により、ロータスのサイバーウェアのアップデートのためにシアトルの外にでかけているのだ。

 スミスのツテのある腕のいいストリートドクがいるらしい。

 

『ふふ、お姉ちゃんに会えなくて寂しそうだったわ。でも貴方が雇った護衛も、真面目に仕事をしていたわよ。』

 

 サザンカはロータスのことをフォーマーカンパニーマンだと思っていたが、実はストリートチルドレン出身だった。

 彼女の二つ名はサムライスレイヤー。

 恐ろしいことに彼女はノンサイバーの状態でサムライを殺してそのウェアを奪い、自分の体に埋め込んでいったのだ。

 その費用を出したのはスミスである。

 彼は偶然その殺しを目撃し、その才能に目をつけてあしながおじさんしたのだ。

 ロータスがスミスに懐いているのはそれが原因だった。

 

『それはよかった、ロータスの調子が良くなり次第帰るよ。しばらく君に仕事を紹介できないのはすまないね。』

『気にしないで、別に私のツテはあなただけじゃないし。』

 

 スミスが肩をすくめる気配があった。

 

『君を独占できないのは残念だよ。』

『気持ち悪いジョークね。』

 

 スミスはHAHAHAと笑うと通話を切った。

 

「しばらく、仕事は無さそうね。はあ…ヴィジョン・クエストに専念しましょうか。ねえシロガネ、もっとヒントくれない?」

『だめー、そう簡単にイニシエーション4になれると思った?頑張って考えなさい。』

 

 この一週間、サザンカはミルクと遊んだり、原質(魔法のブーストアイテム)を探したり、そしてシロガネから出されたクエストに頭を悩ませたりして過ごしていた。

 あとはジェイムズにアルカナ技能の授業を行っている。

 これはイニシエートするために必要な技能である。

 しかし彼はそれについて全くの無知だった。

 ジェイムズの魔力は6だ、サザンカは好漢である彼の成長を望んだのだ。

 

「あれ?」

 

 その時サザンカは道の先にナイトエラントのパトロールカーが駐車しているのに気づいた。

 

「何か事件かしら?」

『ランプはなにもついてないわよ。ほら、自販機の前に誰か座り込んでるわ。休憩中でしょ。』

 

 サザンカはSINレスの脛に傷持つ身である。

 何も悪いことをしていなくても、パトカーなど見たら避けたくなるものだ、ランナーである彼女は進む道を変えようと思ったが、よく見るとその座り込んでいる人物は知り合いだった。

 

「あれ?キャロル何やってるの?」

「あ、サザンカさん…。」

 

 それは彼女の友人の警察官だった。

 同い年の、SWATに所属するアデプトで、UCASでは珍しいオニであり、小麦色の肌と緑がかった黒髪の美少女だ。

 サザンカが現実世界の『彼』と融合する前に仕事の途中で偶然知り合い、協力関係となった。

 だが今彼女は巡回警官の制服を着ている。

 

◎◎

 

「巡査部長に昇進、それはおめでとう。」

「全然めでたくないんですよ~。」

 

 彼女はくたびれているようだった。

 

「部下の使い方を覚えろって地域課に異動になっちゃって…、でもみんな私と仕事したくないって言うんです。」

「へー…。なんでかしらね。」

「わかりません。私は普通に仕事をしてるだけなのに。」

 

 サザンカはちょっと気まずい思いになった。

『彼』はコネ値2、忠誠値5の巡回警官のコンタクトを設定していたのだ。

 だとすれば彼女、キャロル・ガルシア・ヒメネスが異動になって今悩んでいるのは、自分のせいということになる。

 

「そんなわけで、今一人でパトロールしてるんです。はぁ、早くSWATに戻りたい。」

 

 SWATは刑事課に所属する実力行使部隊だ。

 サザンカはナイトエラントの上層部が魔力6の凄腕であるキャロルを、一時的とはいえ前線から外したのを奇妙に思った。

 なお彼女の知り合いのアデプトはトロールのミルクを含め魔力6ばかりだが、本来魔力6の覚醒者は中々いない。

 

「うーん、部下の使い方を覚えれば戻れるってことよね。」

「そういうことだと思いますけど。」

 

 サザンカは背中を預けることのできるこのコンタクトのために力を貸そうという気持ちになった。

 

「じゃああたしがしばらく一緒にいてあげる。それでキャロルの仕事ぶりにアドバイスさせて。」

「え、ええ~?」

 

 キャロルは困った顔になった。

 

「それはまずいですよ、PCに一般人…一般人?を乗せるなんて。」

「バレなきゃいいでしょ。」

 

 PCはパトロールカーの略語のようだ。

 彼女は現実世界のTRPGを思い出して懐かしくなった。

 

「まああたしに任せなさいって!」

「は、はあ。」

 

 彼女は押し切った。

 

◎◎

 

「起きて下さい、起きて下さいー!」

 

 二人がいるのはダウンタウンの猥雑とした歓楽街だった。

 店の真ん前で人が何人も倒れているという通報が入ったのだ。

 しかしそれはどう見てもただの酔っ払いだった。

 キャロルはその一人に必死に話しかけている。

 

「キャロル…こんなのほっときましょう。ただの酔っ払いよ。」

「いえ、でもお店の人は困ってます。」

「それはそうかもしれないけど、こんなのナイトエラントの仕事じゃないでしょう。」

 

 現実世界では警察が酔っぱらいの対応をしているのはよく見るが、ここは第6世界だ。

 こんなことをする必要はない。

 

「ねえ、貴女ゲル弾入のピストル持ってるでしょ?それで2,3発撃ってやれば起きるわよ。」

「ええ!?そんなことしたらかわいそうですよ。」

 

 サザンカはなぜ彼女がペアを解消されたのかを理解するとともに、面倒くさくなって、威力をめちゃくちゃ抑えた拳打(クラウト)の魔法を使った。

 

◎◎

 

「間違いないんです!隣の家の住人は昆虫精霊に体を乗っ取られてるんです!」

 

 そう言うのはヒューマンの老婆だった。

 昆虫精霊の目撃の通報だ。

 老婆の家に入ってみると、その家の内部の壁には白い紙がいたるところに張ってあり、彼女の頭にはアルミホイルで覆われたヘルメットがかぶせられていた。

 

「た、大変ですサザンカさん。対精霊部隊を呼ばないと!」

「キャロル…落ち着きなさい。絶対に違うと思うけど、霊視してくるね…。」

 

 当たり前だが隣家の住民は普通の人間だった。

 

「というわけで、勘違いですよ。」

「そんなことありません!魔法でごまかしてるんです!早くアイツラを殺してきて!」

「は、はあ。」

 

 キャロルは一体どうすればいいのかと困り果てている。

 気の短いサザンカはまたもや面倒くさくなって、電撃(ライトニング・ボルト)の魔法で老婆の頭のヘルメットを吹き飛ばすとその胸ぐらを掴んだ。

 

「フフフ。よく気づいた。だが残念だな、ナイトエラントは既に我々昆虫精霊が乗っ取った。お前は生かしてやる、だから誰にもこのことを言わず、二度と通報するな。」

「そ、そんな…。わかりました!だから殺さないで!」

 

 彼女の魅力は8、脅迫と虚言技能は5だ。

 多分4hitぐらいした気がする。

 

「さ、サザンカさん何を!?」

「いいのよ、これで事件解決。次に行きましょう。」

 

◎◎

 

 次の通報は盗難だった。

 そのストアに行くと、店の事務室に小汚いホームレスが座り込んでいる。

 テーブルの上には酒が並んでいた。

 どうやらそれを盗んだようだ。

 

「ええと、SINレスは逮捕するのが規則になっていますね、すぐ刑事課を呼びます。」

「待ちなさい。」

 

 サザンカはキャロルの頭にチョップを入れた。

 

「いた!サザンカさん痛いですよお。」

「それは建前だけの規則でしょ?SINレスを全部捕まえてたら留置所はすぐ満員になっちゃうわよ。」

 

 キャロルは困ったような顔をした。

 

「ええ?でもどうするんです?無罪放免ですか?」

「そうね、カウンシルに行きましょう。」

「へ?」

 

 サザンカたちはホームレスをパトカーの後部座席に乗せた。

 ちゃんと毛布を敷いてだ。

 彼はとても汚い、毛布は後で洗濯することになるだろう。

 そしてライトを一切消して隠密で橋を渡ると、サーリッシュシー(ネイティブ・アメリカンの国)の飛び地であるその島で彼を解放した。

 

「いい、これはからはここで盗みをしなさい。二度とシアトルに入るんじゃないわよ!?」

「へ、へいわかりゃした。」

 

 脅迫技能がまた役に立つ。

 サザンカは魅力値の高いであろうキャロルにフェイス系技能を教えなきゃと考えた。

 

「サザンカさん、こんなのまずいですよ…?」

「バレなきゃいいのよ。」

 

◎◎

 

「ええと、次は無銭飲食のSINレスの子供だそうです。」

「はあ!?ようするに、ストリートチルドレンでしょ。そんなの福祉施設に送ればいいじゃない。」

 

 しかし、キャロルは続けた。

 

「それが、身なりがとてもよくて、ストリートチルドレンに見えないそうです。コムリンクを無くした迷子じゃないかって。」

「はぁ、しょうがないわね。」

 

 ナイトエラントって大変なのね…。

 サザンカはキャロルを除いて嫌っている彼らに少し優しくしてあげようと思った。

 そして、パトロールカーはオーバーンのスポーツバーにたどりつく。

 そこには通報した店主と、確かに上等そうに見える服を着た中学生くらいの少女がいた。

 

 エルフで、金髪で、複数の人種の混血に見える。

 その顔はサザンカとよく似ていた。

 そしてその少女はこう言ったのだ。

 

「ママ!やっと見つけた!」

「はぁ!?」

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