第6世界転生記   作:ホリイ

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久しぶりに投稿させていただきました
何度かオリシを回したのでそれをもとにした話を書こうと思います


16話 マザーズラブ・イズ・ストロング6

「あれ?」

 

 気がつくと、サザンカは自分が椅子に腰掛けているのに気づいた。

 瀟洒なつくりの金属製の背もたれのないチェアで、目の前にはデザインを合わせたと思しき黒色の同じく金属製の丸い小さなテーブルがある。

 そして、その向こうには同じチェアが置かれ、一人のヒューマンの男が腰掛けていた。

 

「やあ、こんにちはサザンカお嬢さん。いや、本来は男性だったのかな。」

 

 おそらく『平凡』の資質を持っていそうなその痩せた白人の中年男性は、気楽そうな様子でサザンカに話しかけてきた。

 仕立てのいいスーツに身を包み、ある意味スミスと似ているが、間違いなく彼とは別人だ。

 

「ええと、ここはどこかしら?私ドラゴンと空中戦をしてたような気がするんだけど。」

 

 夢でも見てるのかしら、と思うサザンカに、男は簡単な様子で爆弾を投げ込んできた。

 

「ここはまあ、言ってみればあの世かな。君はあのドラゴンにまあまあの火球を受けてね、今心臓は止まっているよ。」

 

 そう言われてサザンカは思い出した。

 アヤメの警告のドラゴンスピーク(ドラゴンの意思伝達方法)を受けた次の瞬間、巨大な火球が迫った来たのが最後の記憶だった。

 しかしサザンカは妙に冷静に現在の状況を推察した。

 

「てことは貴方は転生担当の神様?土下座して生き返らせてくださいってお願いしたほうがいいのかしら。」

 

 男は苦笑して手を振った。

 するとテーブルの上にティーカップが二つ出現する。

 そして彼はそれを手に取ると口にふくんだ。

 

「残念ながら私は神なんてそうたいしたものじゃないよ。実は私も死人でね、ここから君のことを時々覗いていたんだが、君が落ちてきたから少し話してみようと思ったんだ。」

 

 その男はどうやら異世界転生ものにも詳しいようだ。

 サザンカは男にうながされてカップを手に取った。

 しかしそこで考え直す。

 

「これ、飲んじゃったら私も死者確定ってこと?」

「日本神話だね。ヨモツヘグイだったかな。安心していい、これは言ってみれば味のある幻覚だよ。今現世では君の仲間たちが必死に蘇生をしている。もうしばらくすれば向こうで目を覚ますだろう。」

 

 サザンカは男の『意図を探ろう』としてみた。

 だがどうもうまくできている気がしない。

 男のダイスプールは桁が外れている気がした。

 

「美味しい。紅茶には詳しくないけど、いい葉っぱを使ってるわね。」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。」

 

 男は少しはにかんだ。

 どうも不思議な愛嬌がある。

 

「ところで貴方のお名前は?私だけ名前を知られてるなんてずるいわ。」

「うーん、死人の名前なんて知ったところで意味はないが。そうだね、Dとでも呼んでくれ。」

 

 その名前には一つ心当たりがあった。

 緊張が走り、肩に力がこもる。

 

「貴方が私に何の用が?」

「君は上方世界から来たんだろう?興味を持つのは当然だよ。」

 

 サザンカの知らない言葉が出てきた。

 

「上方世界?」

「ああ、君の世界ではここは物語として描かれているんだろう?」

 

 サザンカ諦めたように肩をすくめた。

 

「結局貴方神様みたいなものじゃない。それで、私に何を聞きたいの?残念だけど未来のことは知らないわ。」

 

 Dは苦笑してカップに再び口をつけた。

 

「神様じゃあないんだけどね、それで君に聞きたいのは、君がこれからどうするつもりかということさ。」

「どうする?」

 

 それはとても抽象的な質問だった。

 サザンカは綺麗な金色の瞳をぱちくりさせてオウム返しをした。

 

「君は今はそこまででもないが、素晴らしい素質を持っている。しかもエルフだ、おそらく偉大なメイジになるだろう。あの道化師のようにね。」

 

 サザンカはお茶を吹き出しそうになった。

 あんな化け物と一緒にされては困る。

 

「私、イモータルエルフじゃないわよ。まさか、貴方が私をそうするつもり?」

 

 イモータルエルフはグレートドラゴンがエルフを遺伝子改造して作ったとも言われる存在だ。

 古の、世界に魔法が残っていた時代、第四世界から生き続ける超越者で、くだんの道化師はイニシエーションの階梯は24を超えていると言われている。

 つまり魔力30以上だ。

 

「うーん、君なら自力でそこまで行きそうな気がするがね。まあ単純に、私は君にホラーと戦う戦士の一人になって欲しいのさ。」

 

 ホラーとは昆虫精霊をはじめとする異次元からの侵略者だ。

 ドラゴンは彼らと戦い続けてきた。

 

「それは、当たり前じゃないの?この世界で生きようと思ったらホラーとは戦わざるをえない。」

 

 サザンカはとまどったようにまばたきした。

 ホラーは世界の敵だ、それと戦わない選択肢はなかった。

 だがDはその返事が欲しかったようだ。

 

「それを聞いて安心したよ、大丈夫じゃないかと思っていたが、君には危険を愛好する様子が合った。そのために自らホラーを呼び込んだりしないかと心配になってね。」

 

 サザンカは慌てた、こんな存在に危険分子と思われては長生きできない。

 自分は被告人席に立っているということに今更気づいたのだ。

 

「そ、そんなことはしないわよ。まあそれは私の趣味だけど…他の人を巻き込もうなんて思わないわ。」

 

 Dは大きくうなずく。

 

「私はまだしばらくここにいなくてはいけない。世界のことは頼んだよ。」

「いや、私そんなことを頼まれるたいそうなものじゃないんだけど…。」

 

 だが彼は納得し、どうやら話は終わったようだ。

 サザンカは周囲がかすみはじめたのに気づいた。

 

「現世の君の体は少々ひどいことになっているがなあに、人間の技術は大したものだ。しばらく休めばなんとかなるだろう。」

「待って、アルビラは、ナイトエラントの中央署はどうなったの?」

 

 Dは再び手を振るとテーブルの上のティーカップが消滅する。

 そしてなんでもないことのように言った。

 

「あのドラゴンなら君たちから受けたダメージが大きかったからね。どうやら引いたようだ。中央署も無事だよ。」

 

 サザンカは一息つくとDに別れの挨拶をした。

 

「教えてくれてありがとう、二度と会わないことを祈るわ。」

「つれないね、できれば私が戻るまで長生きしてくれ。」

 

 そうして彼女は消える世界に身を任せ、そして後にはDのみが残される。

 しかし、サザンカの座っていた席には代わりに別の人物が座っていた。

 

「さて次は君と話をしようか、名前は…ナイアルラトホテップだったかな。」

 

 その席には銀の鎧に身を包み、背中に大剣を背負った少女が座っていた。

 

 彼女は、薄く笑った。

 

◎◎

 

「目を開けたわ!」

 

 目覚めはミルクのドアップだった。

 中々刺激的だが、悪くはない。

 

「ママ!よかった!ごめん…あたしが避けれなかったから…」

 

 一緒に泣いているのはアヤメだ。

 エルフの子供の姿に戻っている。

 顔に彼女の涙が落ちるのを感じた…あれ?感じない。

 

「重度の火傷よ、すぐドクワゴン(武装した民間救急隊)がくる。意識を保ち続けて。」

 

 何か夢を見ていたような気がするが、よく思い出せない。

 そういえばどうやらドラゴンに敗北したようだ、これはドラゴンスレイヤーの導師精霊であるシロガネにイニシエーションの階梯を落とされるかもしれない。 

 しかし彼女の気配はなかった。

 

「まさかクビになったかしら…。」

「なんですって?いえ、なんでもいいわ!話し続けて。」

 

 ミルクはどうやらドクワゴンが来るまでの間、医療キットでサザンカの治療を行っているようだった。

 周りにはジェイムズにキャロルといった仲間が心配そうにこちらを覗き込んでいる。

 

「なんだかこれから死ぬみたいなシーンね。」

「馬鹿なことを言わないで!」

 

 サザンカはミルクの怒鳴り声を聞きながら再び意識を手放した。

 

◎◎

 

「アルビラは引いたか、まったくランナーに借りを作るとは。」

「まったくですね、署長。」

 

 そう呼ばれたのは初老のヒューマンだった。

 警官の制服を身にまとい、デスクに深く腰を下ろしている。

 その姿からは隙が感じられない。

 管理職となった今でも訓練を続けているのだろう。

 

「アンダーソン、情報統制は?」

 

 彼と会話しているのはミルクのもとに連絡員として訪れた『軍曹』のあだ名を持つ警官だった。

 綺麗な姿勢で気をつけをし、報告を行う。

 

「本社の援助を受けました。あれは馬鹿な幻術師の『立体見世物』だったという方向にしています。」

「ふむ、ドラゴンと敵対したなどと知られるのはまずい。しかしヤマダめ、まったくとんでもないことをしてくれた。」

 

 ヤマダは自身の正義感に基づいた行動を行ったのだろうが、それは組織としてあってはならないことだった。

 

「職員の思想確認が必要だな…。」

「はあ、しかしアンケートを取るわけにも。」

 

 署長と呼ばれた男は少し思案した。

 

「それは後々だな、それで例のミスティックアデプトは生き延びたのか?」

「はい、五体満足のようで、サイバーを入れる必要もないそうです。」

「F15の火球を食らってか…。」

 

 彼は呆れたように嘆息した。

 

「監視をつけろ、ドラゴンを従えるメイジなど放置できん。」

「了解しました。」

 

 そして、キャロルの異動が決まった。

 SWATに戻ることは、残念ながら永遠になくなったのである。

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