妹は隠岐紅音   作:ゆずよもぎ

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隠岐紅音にお姉ちゃんと呼ばれ隊一番隊平隊員のゆずこぞうです、よろしくお願いします。

実妹紅音ちゃん概念はいいぞ。


夏の日

 ちりりん、と風鈴が踊る。ついでに私の髪も踊る。ええい目にかかってくるな鬱陶しい。ここまで伸ばしてやったことに対するご恩はないのかこいつら。

 

 奉公を忘れた毛髪どもを適当にくくってぼけっと空を眺める。風が涼しい。この風をあのクソ上司に一度浴びせてやりたい。人類はあんなにクーラーのきいた部屋に長時間いられるようにはできていないんだ、こういう自然の風を通した方が絶対いい。

 

 ああもう、せっかくお盆で帰省してるんだからこんな時ぐらいはあいつのことを考えずに過ごしたい。虚空に浮かべたハゲ頭を脳内でボコボコにしていると、青くデカく四角いアイスを片手に妹がやってきた。

 

「お姉ちゃん何してるのー?」

「世界をちょっとマシにする方法を考えてるの」

 

 なにそれー、と笑いながら妹は私の隣に寝転がった。その姿勢アイス食べにくくない?

 

「そういやさー」

 

 アイスの角がしゃくっと削られる。さっきは自然の風がいいって言ったけどやっぱ嘘、私もアイス食べたい。

 

「……一口食べる?」

 

 そんなアイスをガン見してたつもりはないんだけど貰えるもんは貰っておく。ソーダの味がする。

 

「で、話なんだけど、お姉ちゃんまだ結婚しないの?」

「うぇっほん!!」

 

 むせた。アイスの残骸を吐き出さずとっさに飲み込めた私は褒められていいと思う。というか妹よ、その質問はダメだよ……。

 

 とりあえず口の中に残った甘い水を飲みこんで仕切り直し。

 

「んんっ、私だって結婚できるならしたいんだけどね、相手がいなくてねー……」

「? お姉ちゃんって彼氏さんいなかったっけ?」

「え、いないけど」

「えー、お姉ちゃんぐらいかわいかったらすっごいモテると思うんだけどなー」

「それを言ったら紅音の方がかわいいじゃん、そっちこそ絶対モテてるでしょ」

「そんなことないよ……ないよね?」

「いや、私に聞かれても紅音のことだし知らないんだけど」

「そっかぁ」

 

 そこで一度言葉を切り、妹は再びアイスをしゃくっと削った。そしてこちらを向いてにかっと笑って、

 

 

「じゃあさ、私がお姉ちゃんと結婚すれば全部解決だね!」

 

 何この子かわいい。

 

 

「あっちょっお姉ちゃん、いきなり抱きつかれるとちょっとびっくりするしアイス落ちちゃう……!」

「紅音がかわいいこと言うのが悪い、家族とか女同士とかそういうの全部抜きにして結婚したくなったから責任取って」

「冗談を本気にされても困るっていうかぁ……!」

 

ちなみにこの後二人まとめてお母さんにこってり絞られた、解せない。




実の姉妹だからこそのバグ距離感、いいですよね。好き。

このお姉ちゃんに生まれたかった人は私と握手しましょう。

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