破壊神ゴジラvs鬼神エヴァンゲリオン~最終戦争~   作:井上ああああ

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ゴジラとモスラが怪獣語でしゃべるのは「三大怪獣 地球最大の決戦」へのオマージュです


第11話:ゴジラvsエヴァ 最終決戦 パート3

 海。

 シンジの目の前に海が広がっている。

 

 

「シンジ……。」

 

 

 声がした。 

 低い声だった。

 

 

「父さん?」

 

「よく来たな、シンジ。」

 

 

 父ゲンドウだ。

 彼は麦わら帽子をかぶり釣竿を持っていた。

 

 

 

「困っているのか?」

 

「うん、強く強くてどうしようもない相手がいるんだ。そいつに勝てないんだ。」

 

「暴力と破壊で勝とうとしていないか?」

 

 

 暴力と破壊? 

 でも、それ以外でどうやって勝てっていうんだよ。

 シンジは父に問いかけた。

 

「でもそれ以外で勝つ方法なんてある?」

 

「あるさ、勝つ方法はいくらでもある。例えば、相手の心に働きかけるなんていうのはどうだ?」

 

「心?」

 

「そう……、でかくて強いやつほど心は寂しく孤独なもんだ。その孤独をつけば勝機があるかもな。」

 

 

 ゲンドウは釣り竿をつかんだ。

 そして強く引いた。

 

 

「ふっ、またハズレだ……。」

 

 

 ゲンドウが釣ったのは魚ではなく長靴だった。

 

 

「釣りだよ、気になるかな? これも力ではない。魚を釣るのは力ではないんだよ。海に裸で挑むのはバカのすることだ。シンジ……。」

 

 

 シンジの目の前の父はそういった。

 

 

「激しい力には力で挑んでも意味がない。忘れるな。」

 

 

 初号機は太平洋の近くに沈んでいった。

 その傍らにはカヲルたちが火星でみつけた『武器』があった。

 まるで、主人の命令を待つかのように。

 

 シンジは未だに意識を失っていた。

 深い海の闇の中へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 地上ではゴジラと宿敵モスラがにらみ合っていた。

 

 

 白の女王モスラ。

 世界の守護者。

 ゴジラの天敵。

 

 だが、モスラはゴジラにこれ以上の破壊を行ってほしくはなかった。

 もう今度こそ止められない。

 こいつは暴走する。

 

 そうなる前に…説得はしておきたい。

 モスラは鱗粉を使い、ゴジラの脳内に語り掛けた。

 

 

『やめなさい。』

 

 

 ゴジラは驚いた。

 こやつ、我が脳内に語り掛けてきたか。

 

 

『そうです。あなたにはこうするしか勝ち目はありません。』

 

 

『無駄なことを…。なぜ人間を庇うのだ。』

 

『この世界の人間は無関係ですよ。』

 

『否、こやつらも同じことをしでかすかもしれぬ。汚らわしい文明の申し子どもは余が破壊してやろう。邪魔するなら貴様もだ。もう話しあうのも面倒だ。死ぬがいい。』

 

 

 両者はお互いの心で罵倒しあっていた。

 人間たちにはわからぬものだった。

 

 

 

 白の女王モスラはとうとうこの場にたどり着いた。

 ネルフ本部のドローンはその様子を撮影していた。

 

「モスラ…。」

 

 日向はつぶやいた。

 映画の中では毎回ゴジラに勝つ生かすかない虫。

 でも今回は救いの主だ。

 

 

 巨大なカイコガに虹色の模様が浮かんでいるそれはゴジラと比較しても大きさはあまりなかった。

 せいぜい、80mほど。

 

 

 だが、そのまばゆい光は世界中を包んでいた。

 ゴジラでさえも目を細くしていた。

 そのまばゆい光はゴジラの黒い岩肌も白く輝かせていた。

 

 その光は太平洋上に浮かぶオーバーザレインボウからもみえた。

 艦長とその部下たちは、小型のデストロイアの一団をようやく殲滅させた。

 アルカトラズ島でカマキラスを倒したコズロフ三兄弟にも。

 インドにいたメガニューラの一団を倒した虎やシンたちにも。

 第三新東京市のはずれの教会でシスターを守ったリーにも。

 

 

 そして、オルガが残した魑魅魍魎たちに追い詰められていったミサトにもみえた。

 その光は彼女たちにも力を与えた。

 

 

 ドイツにいる二号機にも体力が戻ってきた。

 長い間気絶していた四号機も同じくだった。

 

 

 

 ネルフ本部にいた冬月は少し希望を感じた。

 

 

 

「弐号機と四号機をモスラのサポートにつかせろ。」

 

 

 冬月は日向に告げた。

 

 

「はい。」

 

 

 

 先ほどゴジラが放ったビッグバン以上の怨念と憎悪のまじった破壊エネルギーの火球は全てモスラに吸収された。

 それは1度、彼らの世界を焼き尽くしたはずだった。

 モスラは時間をゆがめ、戻したのだ。

 そして、ゴジラに恨みを持つメガギラスを使い彼のエネルギーを吸収させた。

 

 

 冬月にもそれはなんとなくわかった。

 

 

「怪獣との共闘だ。」

 

 

 モスラは虹色に輝く鱗粉を体中に漂わせていた。

 ゴジラはモスラをにらむと、青白い熱線を口から吐いた。

 だが、モスラのそれはゴジラの憤怒と憎悪のこもったマイナスエネルギーを吸収した。

 守護神の持つ優しさ・希望のポジティブなエネルギーの前に打ち消されていった。

 

 

 虹色の鱗粉はそれどころか、熱線を逆流させ希望のエネルギーでゴジラを攻撃しはじめた。

 ゴジラはたじろいた。

 天敵モスラ。

 つくづく憎い敵だ。

 モスラの持つエネルギーはゴジラでは吸収できない。

 

 

 モスラは鱗粉をさらに放った。

 それは金色の物になっていた。

 ゴジラの喉をその鱗粉は刺激し始めた。

 そして、体内にある魂や憎悪を徐々に浄化した。

 

 

 ゴジラは睨みつけた。

 

 俺を弱体化させる気か。

 よかろう、羽虫め。

 相手になってやろう。

 お前はもうすでに倒している。

 忘れるなよ。

 

 

 モスラの触覚がうねると、そこから緑色の光線を出した。

 ゴジラは避けなかった。

 あえてその攻撃を受けた。

 そして、ゴジラ細胞にモスラの攻撃を学習させた。

 

 

 ゴジラは対抗し、背びれをチェレンコフ光で輝かせるとモスラに浴びせた。

 モスラの緑色の熱線は迎撃せんと、ゴジラの物にぶつけた。

 そして、激しいスパークが起きモスラの体は吹き飛んでいったのだった。

 力負け。

 ゴジラの熱線の威力のが強かったのだ。

 

 

「ああっ!!!」

 

 

 冬月は悲鳴をあげた。

 

 

 大陸から離れ、モスラは海へと逃げ込んだ。

 やがて、翼を斜め状に細くたたむと水中形態に変化した。

 ゴジラもモスラを追いかけ水中の中へと入りこんだ。

 それを追いかけるためにネルフのドローンもまた、水中に入り込んだ。

 

 モスラの泳ぐ速度は速かった。

 一瞬で、海底へと向かっていった。

 ゴジラも負けていなかった。

 破壊神はそれをみると、歩行速度のそれとは考えられないスピードでモスラを追い詰めていった。

 

 

「畜生!」

 

 

 冬月は地団太を踏んだ。

 ネルフのドローンは置いてけぼりを喰らった。

 

 

 

「人工衛星に変えろ。ヤツを逃がすな!弐号機と四号機は何をしておる!遅れれば解雇処分にするぞ!」

 

 

 

 モスラはマリアナ海溝へと逃げ込んだ。

 ゴジラはそれを逃がさなかった。

 我々が来た次元の裂け目があった。

 もう必要ない。

 あれ事消えてもらおう。

 

 ゴジラは熱線を放った。

 モスラはそれを数秒の差でよけた。

 かろうじで。

 

 

 熱線は次元の裂け目を焼きつぶし、破壊した。

 モスラはかろうじて避けれたことを幸運に感じた。

 

 

 先刻の時間操作で膨大なエネルギーを消費した。

 避けるので精いっぱいだ。

 

 

 ゴジラはモスラを追いかけて突き進んだ。

 やがて、両者はマントルを突き進みながら追いかけ合った。

 マグマが地表がモスラの体を削っていったが、ゴジラはそんなものに動じなかった。

 

 

 

 やがて、戦いは太平洋から突き進んでアメリカのフロリダの地下に代わっていった。

 

 

 周囲はもう夜になっていた。

 

 

 フロリダでは香港の金龍タワーに対抗した、ジェネシス・タワーが建設されていた。

 高さ1000mあるそれは金龍タワーなき後、世界一高い超高層ビルの一つになろうとしていた。

 

 

 フロリダの海からモスラは何とか逃げ出してきた。

 それをゴジラは追いかけた。

 陸上に浮かび上がったモスラは天空高くつきだした。

 ゴジラはそれをにらんだ。

 

 

 モスラの白い光が暗い闇の中で輝いた。

 ゴジラはそれを逃がさなかった。

 

 ジェネシスタワーでみていた観光客の一団がゴジラをみるとスマホで写真を撮り始めた。

 その光に気が付いたゴジラは唾を吐くように熱線を吐いた。

 そして、その軽い熱線はジェネシスタワーを一瞬で砕いた。

 

 

 鬱陶しい光どもめ。 

 

 人々の悲鳴が聞こえた。 

 ゴジラは無視した。

 やがて、フロリダの市街地に上陸すると背びれを紫色に変えた。

 そして、ガス状の熱線はフロリダの街中を一瞬で包んだ。

 人々はうめき声をあげながら紫色の熱線で包まれ焼け死んでいった。

 

 

 

 

 モスラはそれを観て焦った。

 このままだと無駄に死ぬ。

 生命が…。

 

 

 彼女はゴジラの頭の中に再び語り掛けた。

 

 

『もうやめて!』

 

『断る。』

 

 

 彼女はゴジラの中に残る良心を信じてまた話しかけた。

 

 

『あなたには良き心があります。それをお忘れですか。我らが周回した世界の一つには地球を守るために戦ったこともあったはずです。その時の記憶は消えてしまったのですか。良心を取り戻すのです。』

 

『そんなもの知らぬ。』

 

 

 ゴジラは白い目をギロリと睨ませた。

 そして、咆哮をあげ衝撃波とともにモスラを吹き飛ばそうとした。

 だが、モスラは素早かった。

 彼女もまた、光と同じほど早く動けたからだ。

 やがて、モスラも突風を起こすとゴジラの衝撃波と相殺した。

 

 

『いいえ、残っております。血のつながりの薄いとはいえ、息子。あれを育てたのはあなたの中に愛があるからです。』

 

『それで余を説得できるとでも、貴様はそのように思っておるのか?』

 

『私とともにもう一度やりなおしましょう。』

 

『断る。それにな、貴様が嫌いなんだよ。昔からな』

 

 

 ゴジラは呆れの感情とともに熱線を放った。

 モスラは急いで避けようとしたが、完全にできなかった。

 よけきることができなかった。

 とうとう、ゴジラは彼女の想定していた以上に素早く対処できるようになっていた。

 守護者の羽を突き刺した。

 

 彼女は悲鳴をあげると、都市部の中へと墜落した。

 ビルの破片がモスラの体という体を突き刺している。

 以前からそうだった。

 モスラの弱点、それは耐久力にあった。

 

 ゴジラはそんなかつての天敵を睨みつけた。

 

 

 

 

『安らかに眠れ。』

 

 

 

 ゴジラはそういい、口を開けたその時だった。

 空から何かが落ちてくるのがみえた。

 新手の客か。

 

 

 

「やめなさい!!」

 

 

 

 アスカだった。

 弐号機は巨大なパラシュートとともに大西洋に降下した。

 冬月の命令。

 モスラを守れ。

 遂行してやる。

 

 

 ネルフのドローンもかすかに近づいていった。

 人工衛星もゴジラをうつしていた。

 

 

 

「アンタにこの世界を壊させない。」

 

 

 

 アスカは上空からロンギヌスの槍を叩きこんだ。

 来ているのは二号機だけではなかった。

 西海岸からきた四号機もいた。

 彼もロンギヌスの槍を投げ飛ばした。

 リツコが作った複数の複製されたロンギヌスの槍。

 それはまとめて降り注いだ。

 

 

 だが、ゴジラは微動だにせず尾の一撃でそれを跳ね飛ばした。

 まるでハエを叩き落とすがごとく…。

 

 

 

「ちっ!」

 

 

「ちくしょう!」

 

 

 カヲルとアスカは舌打ちをした。

 

 

「二人ともけがはない?」

 

 

 リツコの声だ。

 彼女も無事だった。

 アスカとカヲルに安心がさしこんだ。

 

 

「シンジと初号機は?」

 

「わからない…。」

 

「やられたのね…。」

 

 

 アスカは舌打ちをした。

 

 

「仇はとるわ。」

 

「僕も手伝うよ。」

 

「あいつを海に呼び寄せよう、そこでアブソリュートゼロを撃って氷漬けにする。」

 

「そして、ディオメンションタイドを撃つ。」

 

「挟み撃ちね!」

 

「サンドイッチだよ!」

 

 

 四号機のアブソリュートゼロを乗せたキャノン砲は光った。

 ゴジラはそれを黙ってみつめた。

 

 5号機にコアはあった。

 だが、そこに魂があったのかわからない。

 もしもあったのなら、自分の過失。

 

 だから負けた。

 自分が世界で一番強いとカヲルは思い込んでいた。

 慢心でデストロイアに5号機をやられた。

 カヲルは四号機に乗り、フルパワーを使いゴジラに挑むことにした。

 

 

 

 そして、四号機は怪獣の王であり破壊の神であるゴジラをにらんだ。

 

 

 

 

「これ以上無駄で美しくない破壊でこの世界を汚すのやめてくれないか。」

 

 

 カヲルの言った言葉などゴジラには通じなかった。

 ゴジラが何を考えているかも、カヲルにはわからなかった。

 だが、あの警戒すらしない立ち振る舞いはこっちをなめてる証拠だ。

 

 

 なめやがって。

 

 

 こんな感情が生まれるのもリリンと長くいたせいかな。

 まあいい。

 どうでも…。

 

 

 

「氷漬けになれ!」

 

 

 カヲルのキャノン砲は光を放った。 

 絶対零度砲、別名アブソリュートゼロはゴジラに降り注いだ。

 そして、一瞬で氷漬けにした。

 

 

「やれ、セカンド。」

 

「任せて!」

 

 

 アスカはチャンスを逃がさなかった。

 そして、ディオメンションタイドの起動ボタンを押した。

 

 

「発射!!!」

 

 人工衛星は起動した。

 そこから放たれた巨大なブラックホールは氷漬けになったゴジラに差し込んだ。

 そして、ゴジラを飲み込もうとした矢先だった。

 

 

 

 ビキビキ…。

 

 

 氷の結晶が割れていく音が聞こえた。

 

 

 そして、次の瞬間。

 

 大きな青白い光が闇夜を包んだ。

 その衝撃波で弐号機と四号機は吹き飛んだ。

 

 

 

「うわああああっ!!!」

 

 

 カヲルはATフィールドを何とか張った。

 だが、飴細工のように吹き飛んでいった。

 

「ぐっ!!!!!!!!」

 

 

 悲鳴をあげカヲルは吹き飛んでいった。

 この衝撃波だけで装甲がかなりダメージを受けている。

 弐号機に至っては、かなりダメージがひどい。

 もう立つことはできない、起き上がるので精いっぱいだ。

 

 

「あが・・・・。」

 

 

 二号機は立とうとした、だが足の装甲が抜けていくのを感じた。

 そして、アスカは目を凝らした。

 その中に、白い光が二つうかんでいた。

 

 ゴジラの目だ。

 

 

 

「あ・・・・ああ・・・・・・。」

 

 

 

 まさか・・・。

 まさか!!!

 

 

 

「ブラックホールを熱線で破壊した!!!」

 

 

 

 

 破壊神はそこにいた。

 

 絶対零度で凍らせた。

 とどめにブラックホールで吸い込んだ。

 

 

 ブラックホール、宇宙の神秘。

 マイクロとはいえ、ブラックホールであった。

 それをたやすく破壊するなんて…。

 

 

 

 

「くそっ・・・・。」

 

 

 カヲルもボロボロになった四号機をようやく持ち上げた。

 彼らしくもない暴言を吐いた。

 

 

「どうすれば・・・。」

 

 

 だが、それは次に恐怖に代わっていった。

 ゴジラはその白い穴ボコのような目で二体をにらんでいた。

 

 

 

「あ・・・あ、あ・・・・・あああ・・・・・。」

 

 

 恐怖、絶望。

 その二文字。

 一気に二人は自信を砕かれた。

 

 

「勝てない。」

 

 

 アスカは思わず言った。 

 カヲルも同じことを考えた。

 そんな時だった。

 天空から何かがふってきた。

 

 

 青いエヴァ零号機だ。

 

 

 ふと、アスカは零号機の存在に気が付いた。

 

 

「あれ?零号機?」

 

 

「零号機?ファーストは確か初号機と同化したはず。」

 

 

 

 カヲルはふとつぶやいた。

 リツコはそれに返した。

 

 

「あれは人工知能で動いてるの。気にしないで。」

 

 

 地面に降り立った零号機は強化されたポジトロンスナイパーライフルを放った。

 ゴジラの顔面にそれは当たった。

 だが、ダメージ一つなかった。

 

 

 効いていない。

 

 

 ふと、カヲルは資料で観た壁画を思い出した。

 ゴジラの前に倒れる四体の巨人。

 それはまさか・・・・これを予言したもの。

 初号機はいなかったが・・・。

 

 

 

「あいつには何をやっても勝てないのよ。」

 

 

 アスカはそれらしくない言葉をいった。

 

 

「なにをやっても・・・・。」

 

「なにをいってるんだ、セカンド!!!」

 

「でも、あなただってそう思ってるんでしょ?」

 

 

 図星だ。

 絶望・恐怖…。

 零号機の中にいるナオコの魂もまた感じていた。

 二人と同じ感情を。

 

 

 

 

 

 

 そんな時だった。

 空に雲がかかっていくのがみえた。

 そして、大きな雷が発生していた。

 やがて、大西洋から何かが浮かび上がるのがみえた。

 それは雷を吸収していった。

 

 

 それは空中高く飛ぶと、大気圏外に飛んでいった。

 紫色の光だった。

 

 

「エヴァ初号機。」

 

 

 カヲルは告げた。

 アスカは喜んだ。

 

 

「シンジ!!!生きてたの!!!」

 

 

 

 紫色の初号機は12枚の翼を開くと、月の近くに飛んでいった。

 そして、太陽の力を吸収した。 

 

 

「いくぞ。」

 

 

 シンジは太陽光をため込んだ斧を突き出した。

 やがて、地面に向かって降り注いでいった。

 大きな衝撃音と振動を起こし地面にまるで隕石のように降り注いだ。

 大量の電撃を帯びて…。

 

 

 

「これでも喰らえ!!!!」

 

 

 シンジは雄たけびをあげ、槍の先についたゴジラの背びれを振りかざした。

 

 

 

 

 これはヤツの骨でできている。

 ならば、ヤツを殺せるはず。

 

 だが、ゴジラはそれでも笑っていた。

 上空に目をやった。

 破壊の神の背びれが光っていた。

 

 

 

 

「いいぞ、やってみろ!」

 

 

 

 シンジは微笑んで強気で煽った。

 もしも、コイツの骨でこれができているなら。

 あいつの吐きだすエネルギーを吸収できるはず。

 守護者であるシンジはそのように考えていた。

 

 

 

 シンジの考え通りに事は動いた。

 ゴジラは青白い熱線を口から放った。

 

 

「くっ」

 

 

 腕が熱い、焼けそうだ。

 

 

 まるでこっちの肌にもヤツの熱線で焼かれるような思いがする。

 シンジは怖かったが、目をつぶらなかった。

 ありのままを受け止め、熱線をその武器で吸収していった。

 

 

 

 

「いける!!!」

 

 

 発令所で観ていた冬月は叫んだ。

 多くのオペレーターもそうおもっていた。

 ただ一人、日向は違った。

 彼は冷静にことのなりゆきをみていた。

 

 

 

 そして、ゴジラの口の近くまでたどり着いたその時だった。

 

 

 

 ビキッ…。

 

 

 槍が音を立てて崩れ始めていった。

 

 

 

「え…。」

 

 

 

 そして、ゴジラの背びれをもじた刃が吹き飛んでいった。

 シンジは地面にたどり着くと目の前で起きたことが信じられなかった。

 

 

 

「まさか。」

 

 

 

 シンジはゴジラをみた。

 傷は一つついていない。

 以前のように冷たい瞳孔のない目でシンジを見下したようにみている。

 

 

 

「強すぎたのか…。」

 

 

 

 ゴジラは強くなっていた。

 その熱線の力に負けてしまったのだ。

 受け止められなかったのだ。

 

 

「バカな…。」

 

 

 シンジはだしぬけに言った。

 

 

 

「シンジぃ!!!!!」

 

「シンジ君!!!!!」

 

 

 呆然としていた初号機の顔をゴジラの腕がつかんだ。

 やがて、ゴジラの手は再び初号機を地面に叩きつけた。

 

 

 どぉおおおおん!!!

 

 

 轟音が響いた。

 

 

 

 マイアミの市街地があったそれは、大きなクレーターとなっていた。

 弐号機と四号機はその光景をみつめるしかなかった。

 

 

 

「シンジ。」

 

「シンジ君。」

 

 

 

 無力にみるしかできなかった。

 

 

 クレーターの中心に初号機はいた。

 天を仰ぎ、倒れていた。

 ゴジラは倒れた初号機をゴミのような目でみた。

 

 

「う・が・・・。」

 

 

 

 シンジのうめき声があがった。

 ゴジラは背びれを光らせると、再び熱線を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴジラの放った熱線は初号機の腹部にあたった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああああああああああああああああああああああ!!!あああああああああああああっ!!!!」

 

 

 

 シンジは悲鳴をあげた。

 

 

 その時だった。

 

 地球に大きな穴が開いた。

 その穴は初号機を巻き込み、地中を掘り進んだ。

 そして、コアの近くへと到達した。

 その影響で、胸の装甲が溶けつくしていった。

 綾波レイがその身を捧げたコアも無惨に割れ始めた。。 

 

 

 

 

 

 

 衝撃音が再び鳴り響いた。

 世界中で。

 

 

 世界中で大きな地震がおきた。

 ネルフ本部も、インドも、アルカトラズ島も…・。

 マグニチュード5の地震が襲った。

 

 

 オルガの放った兵士と戦っていたミサトも足を崩した。

 本体が倒れても、彼の魂が死なない限り永遠に終わらないのか。

 ミサトの中に絶望が生まれた。

 

 

「シンジ君。」

 

 

 ミサトはただそれをいうだけしかできなかった。

 そんな彼女も体力の限界がきていた。

 もう倒れそうだ。

 強化人間の兵士アーノルドもまた息切れをし始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 地球地下深く。

 大きな穴が開いたそこでは、初号機がマントルに呑まれて行った。

 上海でゴジラに倒された時のように、目に光りはなかった。

 初号機の上半身と下半身はバラバラに吹き飛んでいた。

 

 

 

 死。

 

 

 

 

 

 ゴジラはため息をついた。

 

 

『お前がどのように、そして…どんなに強くなっても無駄だ。私はその倍以上に強くなるのだよ。』

 

 

 

 ふと、彼は目をやった。

 そこには初号機の持っていた槍らしきものがあった。

 

 

 

 まあ、ここまでやったことは称えよう。

 その勇気に免じて、これをこいつにくれてやるか。

 

 

 ゴジラは尾でその槍をつかんだ。

 

 

『ッ!』

 

 

 

 その時、尾に少しばかりの痛覚が走った。

 どうやら、嘘偽りではない。

 だったら猶更だ。

 こんなものは、こいつにくれてやろう。

 

 

 

 大きくあいた地表の穴の中に槍を放り込んだ。

 初号機と槍はそのまま、地底のマグマの中に消えていった。

 

 

 

『安らかに眠れ。』

 

 

 

 ゴジラはしつこく挑んできた敵に敬意を示した。

 

 

 

 アスカとカヲルはそんな圧倒的な強さを観て心の奥底から恐怖した。

 

 

 

 

 

 

 

 勝てない。

 強い。

 

 

 

 

「あ…。」

 

 

 

 

 そんな彼らを嘲笑うかのように、ゴジラは口を開けた。

 青白い光が輝いていた。

 明らかに狙いは…アスカたちだった。 

 

 

 

 

「私たちを狙っている?!」

 

「もうダメだ…。」

 

 

 そんな時だった。

 市街地から白い光が降り注いだ。

 そして、金色の鱗粉も…。

 

 

「モスラだ。」

 

 

 アスカはつぶやいた。

 その時であった。

 

 

 

 モスラはゴジラの光線の前に立ちはだかった。

 まるでエヴァを守るように。

 

 

 

『興味深い、弱いものたちを守るというのかね。』

 

 

 

 モスラはその体の性質を変えた。

 体を硬化させると、鎧のようなもので肌を覆った。

 鱗粉の1部が二号機にふりかかった。

 

 

 

 

『この世界を守って。』

 

 

 

 アスカに声が聞こえた。

 その声はマリに似ていた。

 

 

 

「マリ?」

 

 

 

 マリに似た声が聞こえた。

 

 

 

 

 モスラは覚悟を決めていた。

 説得が通じないなら、死んでもらうしかない。

 

 

 

 鎧の体、これは死を覚悟したモスラの最終形態だ。

 彼女は鎧形態に虹色のエネルギーをためこんだ。

 

 

 

 そして、音がした。

 

 

 ひゅんッ!!

 

 

 

 虹色のエネルギーが降り注ぎ、モスラの体は光よりも速く動きゴジラを切り裂こうととびかかった。

 鎧モスラ、ゴジラの熱線それらはぶつかった。

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

 その光線はモスラを貫き一瞬で粉みじんに破壊した。

 彼女の体は金色の鱗粉のみになった。

 二体の周囲を金色の雪のような鱗粉が包んでいた。

 

 

 まるで金粉だ。

 それも輝いている。

 

 

 

 

「モスラが死んだ…。」

 

 

 アスカは絶望の表情を浮かべそういった。

 鎧モスラの皮膚すらもゴジラの熱線に負けてしまった。

 

 

「あれはただの鱗粉じゃない、モスラの魂だ。」

 

 

 

 モニターでみていた日向は告げた。 

 彼にはわかった。

 最初からモスラは自分がゴジラに敵わないとわかっていたんだ。

 その魂をかけて、賭けに出た。

 それは失敗した。

 

 

 ゴジラは二体をみつめると、その青白い死の光を向けた。

 二号機と四号機は震えあがった。

 

 

「みんな逃げて!!!」

 

 

 リツコの悲鳴がとどろいた。

 

 

 

 

「どうする?」

 

「逃げ場などないさ。」

 

 

 カヲルはそういった。

 諦めだった。

 もう何をしても意味がない。

 

 

「そうよね。」

 

「死ぬなら、戦って死ぬのを選ぶよ。」

 

「戦士は戦って死ぬべき、か。」

 

「いい言葉だね。」

 

「私の言葉じゃあないわ。」

 

 

 

 カヲルは零号機に目をやった。

 

 

 

「零号機の中にいる人は?」

 

『私の娘に手出しはさせない!』

 

「なるほどね、じゃあいこうか。」

 

 

 

 

 全員は死を覚悟した。

 そして、それぞれの武器を持った。

 

 

 体力も精神力も限界まできていた。

 エヴァの装甲も。

 だが、彼らの決意は同じだった。

 

 

 最後まで戦おう。

 死を覚悟して。

 いつものように…。

 

 

 

 

 その様を見てゴジラは歓喜で震えた。

 

 

 

『見事だ、素晴らしい。』

 

 

 

 勝てぬとわかっているのに闘争をやめない。

 人間は文明に依存しなければ、その闘争本能は彼を歓喜させるものがあった。

 これはその典型例。

 

 

 たいていの人間の場合はゴジラを前にすると恐怖で震えてしまう。

 だが、こやつらは恐怖を混沌を意思で抑えようとしている。

 

 

『弱いからこそ、強いのだ。心で知恵で狂気で恐怖をごまかす。』

 

 

 

 ゴジラは目の前にいるエヴァたちに敬意を表した。

 弱いものにもプライドはある、維持はある。

 守らねばならぬものがある。

 だからこそ戦う。

 

 

 

『闘争こそ、我が喜び!我が喜びの炎で焼かれるがいい!汝らの死は美しいのだ!』

 

 

 

 炎で肉体を焼いたあと、魂を食ってやる。

 こやつらの魂が欲しい。

 

 

 

 

『さあ、我が前で安らかに眠るがよい!』

 

 

 

 

 

 ゴジラは青白い光を放とうとした。

 その影響か、人類全体に絶望が広がっていった。

 

 

 

 終焉が始まろうとしていたのだ。

 

 




最終決戦はあと二回ほどで終わるはずです。(予定)
少し用事が忙しいので次の更新は8月になると思います。

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