破壊神ゴジラvs鬼神エヴァンゲリオン~最終戦争~   作:井上ああああ

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シン・エヴァ要素あります。

次回、エピローグです。
近日中に投稿します。






第13話 破壊と創造

 ゴジラは虚無の中で目を覚ました。

 そこにはなにもなかった。

 何もない空間の中をゴジラは浮かんでいた。

 

 

『何もない…。』

 

 

 どれだけ時間がたったのだ。

 彼にはもう、わからなかった。

 具体的にはわからないが、何億年と寝ている気がする。

もはや、彼には誰もいなかった。

 何もない世界で浮かぶたった一人だけの神。

 

 

 あらゆる次元を、複数の次元に浮かぶ何万、何億という多元世界は今ゴジラの究極の破壊によるその全てが滅びた。

 呑み込まれた。

 火で、光で。

 

 彼の怒りはありとあらゆる多元世界の海を破壊しつくしてしまった。

 ゴジラの怒りの炎は宇宙に生きるすべての生き物を破壊し、呑み込んだ。

 

 その結果は虚無だったのだ。

 そこには無だけしかなかった。

 すべての存在を破壊し焼き尽くすゴジラ。

 彼の破壊に耐えれるのは彼自身しかいなかったのだ。

 

 かつてビッグバンがそうであったように、生命が生まれると思い込んでいた。

 違ったのだ。

 自分の行う破壊は圧倒的すぎた。

 生命も、あらゆる存在も戻ってくることはなかったのだ。

 

 

『私は愚かだった…。』

 

 

 すべてを破壊しつくしたあとには無しかなかった。

 生命すら生まれ得ない虚無。

 その中でゴジラは一人、孤独にたたずんでいた。

 破壊の先には何も生まれない。

 

 

『これが私の望みだったのか。何もない世界が…。』

 

 

 一人で寂しく告げた。

 

 

 かつての天敵は全て殺した。

 憎たらしい文明も。

 その代わり、配下も全て死んだ。

 子供といえるものも死んだ。

 もう誰も自分にはいない。

 

 

 あらゆる文明の破壊を、世界の破壊を望んだ。

 自分をただの恐竜ではなくさせた文明を持つすべての者を憎み殺すことを望んだ。

 これがその末路だったのか。

 

 

 気が付いてしまった。

 ゴジラ、世界の破壊者。

 破壊の神。

 怪獣の王。

 

 彼はあらゆる万物を破壊できる力があったが、なかったのだ。

 創造する力が。

 文明とは破壊もあるが、創造も兼ねているのだ。

 

 今思えば、あふれる憎悪と憤怒の身が私を突き動かしていた。

 周囲の恐怖がそれを支えた。

 だが、逆を言えば…恐怖と破壊するものがなければ自分には意味などないのだ。

 

 

『こんなことは求めていなかった。』

 

 

 ゴジラはずっと憎悪と憤怒に狂っていた。

 すべての文明を破壊し、怪獣たちの世界を作ろうとした。

 

 

 だが、それも彼以外は死んだことでできなくなった。

 そして、自分は死ぬこともできぬ、ただ虚無の世界を眺めることしかできないのか。

 

 彼の体の中に浮かび上がった。

 悲しみが。

 孤独が

 

 それは長い間、彼が失っていたものだった。

 

 

 だが、ゴジラは気づいていなかった。

 彼は孤独ではなかったのだ。

 

 無敵であることがあだとなった破壊神の体内である存在が目を覚ました。

 

 

「あれ?」

 

 碇シンジは目を覚ました。

 肉体はない。

 なのになぜ目を覚ますんだろう。

 

 

「あ、そうだ…。」

 

 

 ゴジラに殺されたんだ。

 そして、肉体は消えてしまった。

あいつの歯でズタズタにされた。

 エヴァ初号機とともに。

 

 負けた、そして死んだんだ。

 情けないことに自分は負けた。

 でもなぜ生きているんだ。

 

 

『碇くん。』

 

 

 声がした。

 

 

「え?綾波?」

 

『私たちは死んだのよ。』

 

「そうか、君も死んだのか。」

 

『ええ。』

 

 シンジは後悔した。

 自分は世界最強だと思い込み、傲慢になっていた。

 力を正しく使っているそんな気でいた。

 

 

「ごめん、綾波。」

 

『あなたのせいじゃないもの。そんなことより、なぜ私たちはこうやって自我を保てるかわかる?』

 

「え?」

 

『最初に彼らの声を聴いてごらんなさい。』

 

 

 シンジの魂はかすかに残っていた聴覚をいかした。

 魂だけになっても感覚はあることにシンジは驚いた。

 

 声が聞こえる。

 何だろう…。

 

 

『ツライ。』

 

『クルシイ。』

 

『ウランデヤル!!』

 

『ニクイ…!!』

 

『コロシテヤル!!!』

 

 

 シンジはぞっとした。

 憎悪や後悔、憤怒といった声が聞こえた。

 怨念だ。

 

 

「まさか…。」

 

『これがヤツの力の原動力よ。この中では正常な精神を保てない。当然よね、死んだんだもの。みんな憎悪や後悔、苦しみに呑まれて怨念の力に変わっていくの。』

 

 

 ゴジラに破壊された世界の複数の生命体すべてが飲まれて行った。

 その魂が。

 それらは怨念の声を吐き、呪いの言葉を叫びながらゴジラを生かしていた。

 正常を保つこともできず、怨念のみが残っている。

 

 

「なぜ僕らはここまで正常な精神を保てるんだ。」

 

『モスラの力よ。』

 

「モスラか…。」

 

『碇くん、私はモスラの魂と一体になったことで全てがみえたの。みせてあげる。』

 

 

 すると、シンジの魂にある光景がうつった。

 赤い海その中で父とシンジが対話をしていた。

 そして、赤い海からすべての生命が帰っていくのがみえた。

 やがて、シンジはマリとともに別世界を創造した。

 ここで視界の映像は止まった。

 

『あなたがみているあなたはあなたであってあなたではない、別世界のあなたよ。』

 

「これは?」

 

『アディショナルインパクト、現実と虚構を混ぜる禁断の行為。多元世界を上書きし新しい世界を創造する行為よ。エヴァのない複数ある多元世界ネオンジェネシス、その一つを作るため。』

 

 

 シンジにはわかった。

 ようやく。

 そうか、これか…。

 これが原因でゴジラはこの世界に来てしまった。

 

 

『そして、この結果生まれたのが第一始祖民族よ。それが今の私たちを産んだ。』

 

「そうか…。」

 

『すべては別の円環の理から逃れるための緊急避難、誰かが幸せになる頃に誰かが泣くことになる。その泣いた魂たちがゴジラに神の力を与えている。』

 

 

 彼も来たくて来たわけじゃない。

 純粋に破壊を楽しみたいわけじゃない。

 犠牲者じゃないか。

 

 

「誰も悪くはないんだよ。」

 

 

 

 恐らくはこれを行った別世界の僕もきっと逃げたかったんだ。

 仕方ない。

 誰も悪いわけじゃないんだ。

 誰も悪くない…。

 

 だったら…。

 

 

 

「だったら、ゴジラだって犠牲者じゃないか…。」

 

『よく気が付いたわね。』

 

「助けてあげないと…。でも、どうすればいいんだろう。」

 

『アディショナルインパクトの逆転を行うの。』

 

 

 逆転。

 でもそんなことができるのか。

 

 

「どうやってできるの?」

 

『あなたと私に受け継がれたモスラの時間逆転を使う。そうすれば世界が戻る。あらゆる多元世界が解放される。でもそれだけじゃ器ができただけで意味がない。そこで、ゴジラに頼んであらゆる魂を吐き出してもらうの。』

 

「でも、それだけ許してくれるかな。」

 

『この世界の一つには、人間がいない世界がいる。そこはきっと彼も気に入ると思う。』

 

 

 そうか、文明がない世界。

 そこではきっと、彼も平和に生きられる。

 許してくれるかもしれない。

 

 

『説得するのよ。彼を。それしかもうないわ。』

 

「僕に…できるかな。」

 

『やってみる価値はある。モスラはゴジラの心に話しかけられる。その力はあなたにあるの。あなたを信じてるわ、碇くん。だからあなたも彼を信じてあげて。彼の中にある残された善意と希望に…。』

 

 

 ミサトさんがいっていたな。

 奇跡を待つより捨て身の努力。

 やってみよう。

 シンジは決意した。

 そして、シンジの魂は光輝いた。

 

 

 

 そこにゴジラの魂がみえた。

 悲しみの紺色のオーラがにじみでている。

 

 

 

「あいつ、寂しがっているんだ。」

 

 

 

 シンジにはわかった。

 見知らぬ天井、それをみつめ孤独に耐える日々が続いた。

 気が付けば孤独になれてしまった。

 

 だが、ミサトさんにあって孤独は消えていった。

 アスカやカヲルくんにもあった。

 綾波にもリツコさんにも、青葉さんにも。

 だから孤独じゃなくなった。

 

 

「ミサトさんに会う前、僕もああやって孤独だったな…。」

 

 

 ゴジラの気持ちがなんとなくわかる。

 孤独はやっぱ悲しいよ。

 シンジは思い切って話しかけた。

 恐怖が立ち上がるのを感じたが、抑えた。

 肉体がなくなっても、感情は残っていることにシンジは驚いた。

 

 

「ねえ。」

 

 

 シンジはゴジラの脳内に話しかけた。

 すると、ゴジラの目は見開いた。

 

 

『何だ?私以外にも生命がいたのか。なぜ話しかけることができるのだ。』

 

 

 驚きだ。

 まさか声を掛けられるとは思っていなかったんだろうな、とシンジは感じた。

 

 

「違う、僕は君の中にいる魂だよ。」

 

『なに!?』

 

「君と戦ってた紫色のアレ覚えてないですか?アレですよ。アレの中にいる人間です。」

 

 

 ゴジラはふと黙った。

 そして思い出した。

 何度も何度も倒したアレか。

 あのしつこい奴。

 倒しても倒しても何度も何度も蘇るヤツ。

とうとう、体の中から話しかけてくるとは…。

 

 

『あのしつこい奴か。』

 

「しつこくてごめんね。」

 

『何をしに来た。』

 

「放っておけないから来ました。」

 

 

 破壊神はため息をついた。

 この期に及んでまだ食いつくか。

 一度やると決めると諦めぬたちか。

 

 

『お前は本当に、本当に…しつこいやつだ。何度殺しても戻ってくるとは‥。ここまでしつこいのは初めてだ。』

 

「でも、寂しいんじゃないですか?」

 

 否定できない。

 素直に認めるのは吉か。

 

 

『そうだ。』

 

「あなたの話を聞かせてください。」

 

 

 ゴジラは驚いた。

 話を聞く?

 人間が?

 

 

『私は元々、海の底で眠っていた。心地よかった。時々起き上がりクジラやダイオウイカを食う日々であった。毎日がゆっくりとしていた。だがある日大きな光が上がった。』

 

「水爆実験だ。」

 

 

 ゴジラは水爆実験で蘇った。

 この世界のゴジラもそうなんだ。

 

 

『それがすべての始まりだ。』

 

 

 そうだったのか。

 恐らくそこでこいつはあらゆる力を吸収して強くなるミュータントになったんだ。

 あらゆる破壊の力を吸収する。

 だから何度死んでも死んでも蘇る。

 

 

『我が肉体は醜く大きくなってしまった。私を倒すために人間はあらゆる兵器を生み出した。そこで争いの日々が始まったのだ。』

 

「あなたは争いが好きじゃなかったの?」

 

『好きだったさ、だがそれ以上に憎かったこの世の全てが…そしてある日。我が力はさらに強くなった。その代償として我々の住んでいた世界は消えてしまった。』

 

 

 それで第一始祖民族と繋がったのか。

 現実と虚構を統合させるアディショナルインパクト。

 それはこのような歪みを産んだのだ。

 

 

「その時にあなたは神の力すらも吸収した。」

 

『そうだ。』

 

「あなたは何を望むんですか?」

 

『平穏だ、誰にも邪魔されぬ世界。子を作り、妻を持ち家族を作りたい。それが望みだ。』

 

 

 平穏。

 恐らくそれは僕の考える物とは違うだろう。

 彼の望む平穏、それは人類のいない世界。

 誰も阻害されることなく自由に生きられる世界。

 そこで家族を作りたいんだ。

 

 

「破壊の神、ゴジラ…。偉大なる万物の王よ。あなたにいっておくことがあります。」

 

『なんだ。』

 

「その原因になったのはあなたの考える通り、人間だ。恐らくは別世界の僕だ。」

 

 

 ゴジラは黙った。

 ふつふつと怒りが上がっている。

 元凶か。

 シンジは話をつづけた。

 

 

「だが考えてくほしい。あなただって関係のない世界を多く滅ぼした。それは誰かにとっての世界なんだ。それを忘れないでくれ。」

 

『貴様、喧嘩を売りに来たのか?それならば今すぐ、魂を吐き出してもよいぞ!!!それとも…憎悪に焼かれて死ぬか!?』

 

 

 ゴジラの目が赤く輝いた。

 怒りだ。

 シンジは怖気つかなかった。

 元から死んでるんだ。

 死ぬことなんて怖くない。

 

 

「でも事実ですよ。あなたが文明を許さない。だから破壊の力で世界を焼き尽くした。それについて、僕は許すことはできない。だけど怒りや憎悪じゃ何も変わらないんだ…。」

 

 

 ゴジラの怒りは冷めた。

 確かにこやつの言ってることは正しい。

 我が破壊は無益なものであった。

 怒りでは何も解決できぬ。

 孤独をいやすことはできぬ。

 

 

『そうだ、お前の言う通りだ。』

 

「僕は‥ただ家族の元に行きたい。友達の元に。だからあなたと話をしに来たんだ。」

 

 

 家族か。

 私が真に欲したもの。

 求めたもの…。

 

 

『そうか…。だが、もう手遅れだったな。我はここで孤独に生き続けるしかないのだ。』  

 

「いや、まだ遅くはないんだ。今からでもやり直せる。お願いです。力を貸してください。」

 

『何をしてほしいのだ。』

 

 

 シンジは叫んだ。

 もう体はなかったが‥。

 

 

「僕と一緒につぐないをしてくださいッ!!!」

 

『つぐない?』

 

 

 驚いた。

 人間の口からつぐないの声が出た。

 

 

 

「僕はモスラの力を得た、時を逆転させることができる。だからあなたは僕たちを解放してください!すべての魂を吐き出してください!この世界には文明も人もいない世界がある!そこを戻すことができるんだ。」

 

 

『…そうか。』

 

 

 世界があれば、そこに魂を戻すこともできる。

 虚無に落ちることもない。

 元に戻るわけだ。

 

 

「世界をもう一度分断するんです、あなたの世界と僕の世界を。」

 

 

 分断か。

 まあ、悪いことばかりではない。

 

 

『できるのか?』

 

「できるはずです。」

 

 

 ヒトのいない世界。

 それはどんなものだろう。

 俺の心の中にいるのだ、嘘はつけない本音か。

 こやつは嘘がつけぬのだ。

 知恵に依存した人間にあるまじき存在。

 

 

「ただ、お願いがあります。僕は時を戻す。だからあなたの中にいる魂たちを解放してください。世界を戻すことにご助力お願いします。」

 

『それがそなたの望みか?』

 

「はいッ!」

 

 

 ゴジラはふと考えた。

 ヒトのいない世界。

 それがどのようなものか、考えたこともない。

 だが、いけるのであればいってみたい。

 何よりも孤独は耐えがたい。

 

 

『手を貸そう。』

 

「ありがとう!」

 

『知恵あるものを許したわけではない、だがお前は好きだ。』

 

「本当に…ありがとう。」

 

 

 シンジは考えた。

 彼に謝らなくてはいけない。

 人類を代表して。

 

 

「ごめんなさい、あなたを傷つけてしまったすべての人たちに代わってあなたに謝りたい。」

 

 

 怪獣の王は黙ってその謝罪を受け入れた。

 どこまでも純粋なやつだ。

 嘘をつけぬヤツは嫌いではない。

 

 

『その言葉を…聞きたかった。たった一度でも。』

 

 

 そんな中ゴジラはふと思い出した。

 

 

『我々の住む世界とお前たちの住む世界を分断するのであればその前に我が宿敵・古き友であるギドラを葬らなければいけない。ヤツは我が蘇らなくてもお前たちの世界を滅ぼすだろう。』

 

「ギドラ。」

 

『お前が我が体を剣で切ったその瞬間に戻ろう。あそこがちょうどいい頃合いになろう。』

 

「はい。」

 

 

 少しシンジは考えた。

 なんだかまるで父さんみたいだ。

 彼は子供が欲しかった。

 だから僕たちはある意味ではお互いを欲しがっているのかもしれない。

 内心では‥。

 

 

 

「じゃあ、いきますよ。」

 

『ああ。』

 

 

 

 シンジの魂は光輝いた。

 モスラとともになったことで得た超能力が輝いた。

 時間を逆流させたのだった。

 

 

 その逆流は第一始祖民族が行ったアディショナルインパクトの巻き戻しでもあった。

 ゴジラも雄たけびをあげ大きな体内放射を行った。

 それは彼の周囲の何もかもを逆流させた。

シンジの行うアディショナルインパクト、ゴジラの体内放射で発生するエネルギーこれらは混ざり合うと複数の世界を生み出し、ゴジラの中にいた魂たちは解放されていった。

 

 

 その中で彼はある世界をみつけた。

 そこに間違いなく人のいない世界はあった。

 シンジの言う通りであったのだ。

 

 

『これがそうか。』

 

 

そこではゴジラと同族の生命体もいた。

その時、彼は気が付いた。

自分は間違ったことをしていたのだ。

彼らの魂すらも吸っていたのだ。

 

 

『私は間違っていたのだ。』

 

 

ゴジラは反省した。

 

 まだまだ時間はさかのぼった。

 両者の力は混ざり合い、宇宙の再生と再創造を行っていった。

 

 

 ゴジラは逆流する時間の中で、シンジの魂の1部に触れた。

 そのシンジも意図的ではないが、世界を滅ぼしてしまったのだ。

 彼は察して、言葉を出した。

 

 

『忘れるな、若者よ。お前ひとりのせいではない。』

 

 

 なぜか、わからないがシンジは救われる気がした。

 こういってもらってほしかったんだろう。

 気休めでもいい言葉が。

 

 

 その時、世界が光で包まれた。

 再創造が終わった。

 

 

 まばゆい光に包まれるとシンジは空中に浮かんでいることに気が付いた。

 体がある。

 初号機もある。

 

 

「もどった。」

 

 

 元に戻った。

 モスラの時をかける能力で…戻ってきたんだ。

 できたんだ!

 

 

『碇くん、彼との約束忘れてあげないでね。』

 

 

 綾波もいる。

 シンジはその体の存在に心躍りそうになったが耐えた。

 その両腕には大剣があった。

 シンジは雄空中の中で、剣を背中のパッドに抱え込んだ。

 そして、そのまま地面に着地した。

 

 

 ふと海を見つめると弐号機も四号機も零号機もいた。

 

 

「みんな無事だ。」

 

 

 ゴジラにあの時の記憶はあるだろうか。

 彼は横にいるゴジラを見た。

 彼は上空をみていた。

 その目は怒りに包まれていない。

 

 

 という事は…僕を許している。

 

 

 

「僕を信じてくれてありがとう。」

 

『約束を果たそう。』

 

 

 

 

 ゴジラは雄たけびをあげた。

 青白い光は天高く飛び上がった。

 大気圏外に延びると、その光は曲がりくねりながら黄金の破壊神であるギドラに延びていった。

 ギドラの体は爆破四散すると、その艦隊を巻き添えにして宇宙空間に散っていった。

 

 

「すごい…。」

 

 

 シンジはその動きに圧倒されていた。

 なんて強さだ。

 まるで圧倒的。

 これを神というのか。

 

 

 

 攻撃がやんだゴジラは初号機に向き直った。

 初号機も彼をみつめた。

 

 

 ふと、シンジは気が付いた。

 ゴジラの存在が消えかかっている。

 アディショナルインパクトの逆転の影響だ。

 あらゆる怪獣たちが、ゴジラとともに人のいない世界に行くのだ。

 

 分離していく。

 一つになった世界が再び分かれていく。

 元の世界に帰っていく。

 すべてが…元に戻っていく。

 

 

 そして、ゴジラの中にあった魂たちが光り輝きながら宇宙に消えていくのがみえた。

 残っていた魂たちがあるべき世界に戻っていくのだ。

 

 

『シンジ…。』

 

 

 声がした。

 綾波に似ている。

 でもこれは違う。

 別だ。

 

 

『ありがとう、シンジ…。』

 

「母さん?」

 

 

 母さんだ。

 母さんも解放された。

 ようやく、戻っていった。

 恐らくは父さんのいる世界にいくんだろう。

 

 

「ありがとう、母さん。」

 

 

 シンジの背中に安堵が走っていくのを感じた。

 喜びが心の中を駆け巡っていく。

 成功だ。

 

 

『若者よ、目を閉じよ。』

 

 

 ゴジラの声だ。

 シンジは彼の言う通り目を閉じた。

 そこには赤い海がみえた。

 

 

『そなたの決断のおかげで他の世界でも生命が戻っていくのだ。』

 

 

 赤い海はやがて液体から人や生命体、ペンペンを作っていくのがみえた。

 これは夢ではない

 別世界の現実。

 そこにはシンジとアスカがいた。

 14歳のままの姿。

 

 

 

『我が破壊した世界も戻っていくのだ。』

 

 

 シンジにはみえた。

 彼が破壊した世界の全てが戻っていく。

 シンジとヒカリが付き合っている世界、トウジとアスカが付き合っている世界。 

 光とともに彼らが戻っていくのがみえた。

 どこかの村にいるケンスケたちの世界。

 それらは戻っていった。

 

 

『そなたの父と母の魂はガフの扉の先に逝く。それはそなたらが天国というものだ。いずれはそなたも行くことになる。今ではないがな、その時をそなたの父は待っておるはずだ。』

 

 

 シンジは瞼を開けた。

 

 

「ありがとう。」

 

 

 ゴジラの存在は薄れていった。

 消えかけていた。 

 まるで砂が風に吹かれていくがごとく。

 存在が消えていきかけていた。

 それと同時であった。

 世界中で猛威を振るっていった怪獣たちは姿を消していった。

 メガニューラも、デストロイアも、オルガの放った兵士も、カマキラスも。

 ゴジラに誘われるがごとく、あらゆる怪獣たちは人のいない世界へと誘導されていった。

 

 

『我が友よ、ともにゆこう。』

 

 

 現実と虚構を統一させるアディショナルインパクト、その逆をいったのだ。

 これにより、ゴジラの住む世界は別次元のものになった。

 

 

 

『すまなかったな、人間よ。』

 

 

 謝罪の言葉だ。

 気が付けば朝になっていた。

 

 

『忘れるな、この世界はお前たちだけのものではない。我のようなものがまだどこかにおるかもしれぬ。その時、世界を守れるのはお前だけなのだ。』

 

「はい。」

 

『もう会うこともないだろう。』

 

 

 シンジにもわかった。

 もう、会うことはない永遠の別れだ。 

 

 

「お元気で。」

 

 

 シンジは天敵にそう告げた。

 ゴジラは少し表情が柔らかくなると、シンジに返した。

 

 

『ありがとう。』

 

 

 それを最後にゴジラは完全に消えていった。

 それは複数の世界に別れて消えて言ってるようにみえた。

 ゴジラもまた複数の多元世界のそれが混ざった生命体であることをほのめかすように。

 まるで砂埃のようになると、空中へ天高く舞い上がった。

 ゴジラは消えていった。

 完全に。

 

 

「もうあうことはない、か。」

 

 

 シンジは疲れに襲われた。

 

 

 その頃、ミサトは自身を縛り上げていた触手の持ち主が消えたことが気が付いた。

 その横では彼女への復讐に狂っていたはずのアーノルドが手を差し伸べていた。

 和解の証だ。

 ミサトはその手をつかんだ。

 

 

「ありがとう。」

 

「お前を許したわけではない・・・だがもう会うことはないだろう。せいぜい長生きをして死ね。」

 

 

 彼はそのまま背を向け去っていった。

 ミサトは微笑んだ。

 

「あなたもね。」

 

 

 

 彼女だけではなかった。

 

 

 アルカトラズ島でたたかうコズロフ三兄弟も。

 オーバーザレインボウの艦長も。

 ロサンゼルスやテキサスのギャングたちも。

 第三新東京の外れに住むリーすらも。

 皆が勝利を喜んだ。

 人類は勝ったのだ。 

 

 

 破壊の神は消えた。

 ゴジラは去った。

 世界の破壊は防がれた。

 

 

 

「はあ…。」

 

 

 

 初号機はフロリダの海に浮かんでいた。 

 ふとみると、アメリカの人々がシンジに声援を送っているのがみえた。

 彼は照れ臭く笑った。

 

 

「シンジ!?」

 

 

 アスカの声だ。

 

 

「アスカ?」

 

「なんでアイツ消えたの?」

 

「彼らだけが住む世界にいくように時間を逆転して、多元世界の上書きの上書きをしたのさ。」

 

「え?」

 

「また、説明するよ。」

 

 

 シンジはふと思い出した。

 

 

『激しい力には力で挑んでも意味がない。』

 

『でかくて強いやつほど心は寂しく孤独なもんだ。その孤独をつけば勝機があるかもな。』

 

 

 全部あの夢の中で父がいっていた言葉。

 それを使っただけ。

 あれが本当の父かどうかわからない。

 だが、虚構であっても魂だけであったとしても父さんが助けてくれたことに変わりはない。

 

 

 

「何をしたかわかっているよ、シンジ君。」

 

 

 カヲル君の声。

 彼も無事だった。

 

 

「まあ、なにもいわないでおくよ。」

 

「やっぱ、すごいねカヲルくんは。」

 

 

 二人は冗談をいった。

 そんな時だった。

 

 

「あんたたち…!」

 

 

 リツコの声だ。

 生きていた。

 

 

「リツコさん。」

 

「本当に、バカね。」

 

 

 シンジは照れ臭く笑った。 

 こういう時のリツコさんは照れ隠しをしている。

 

 

「バカは世界を救うんですよ、リツコさん。」

 

「その通りね。」

 

 リツコ。

 声が元気そうだ。

 相変わらずで何より。

 

 

「ミサトさんは?」

 

「無事よ、ペンペンもあなたの子供も。」

 

「よかった…。」

 

 

 みんな無事だ。

 

 

「シンジ君、今回もやってくれたな!」

 

「日向さんも無事だったんだ。」

 

 

 日向さんの声だ。

 一度聞くと忘れられない高い声をしている。

 

 

「多分何回か死んだと思うけど蘇ったよ。」

 

「はは、そうかそうか!生きていて何よりだ!」

 

 

 何か日向さん上機嫌だな。

 今回は大活躍だったし、まあいいかな。

 

 

「流石だ、みんな。」

 

 

 冬月の声だ。

 彼も生きていた。

 

 

「あーっと、ちょっと待ってくれ。少し席を外す。」

 

 

 冬月は一旦席を外れたようだ。

 

 

「はあ、今度という今度はやばかった…。」

 

 

 シンジはため息をついた。

 長かった。 

 何回死んだんだろう今回。

 3回ぐらい死んでるよな…。

 流石に本当にやばかった。

 

 

「地球が滅びるとか人類が絶滅するとかならわかるけど、宇宙が滅びるってスケールが違うよなあ…今回、いくらなんでもバカげているよ。」

 

 

 シンジの出し抜けに言った言葉に思わずその場にいたすべては笑い転げた。

 だが、実際にあったことだ。

 

 

「まあ、もう二度と経験したくないよね。」

 

 

 アスカが締めの言葉を言ったその時だった。

 

 

「なに!?本当か!!!」

 

 

 冬月の焦る声が聞こえた。

 何事だろう。

 

「なんだろう。」

 

「何かな。」

 

 冬月の声はより強くなった。

 

 

「よく聞け、サード!青葉くんの意識が回復したそうだ!」

 

 

「本当!?」

 

 

 

 青葉さん。

 怪獣に刺されて意識を失った青葉さん。

 怪獣の存在が消えたことで、毒も消えたのだ。

 

 

 

 

「ああ、本当だ。よかったな。」

 

 

 冬月の声は震えていた。

 流石に心配だったんだろう。

 

 

「よかった、本当によかった。」

 

 

 シンジの目に涙が浮かんだ。

 安心の涙、彼が今まで経験したことのないものだった。

 

 

「みんな生きててよかった。」

 

 

 彼は涙を流し終えるとため息をついた。

 ふと、ネルフの専用機がエヴァを回収していくのがみえた。

 

 

「あーあ、もう疲れた…。」

 

「今度ばかりは流石の僕も何回か死ぬんじゃないかと思ったよ。」

 

「あたしも…。」

 

 

 アスカとカヲルは愚痴をいいあっていた。

 彼らは勝ったのだ。

 朝日は、シンジたちを差し込み勝利で祝うかのように輝いた。

 零号機はそんな彼らを冷ややかに単眼でみていた。

 

 

 

「みんな無事だ…よかった。」

 

 

 シンジはふと天をみあげた。

 あの先にゴジラも生きている。

 僕も生きている。

 

 それぞれが生きている。

 別々の世界で。

 それでいいんだ。

 

 

 シンジは目をつぶり勝利を感じた。

 

 

『碇くん、おめでとう。』

 

「ありがとう、綾波。君のおかげだ、ありがとう。」

 

 

 世界を救った救世主は勝利を祝った。

 

 

 




エヴァはゴジラには勝てなかったけど、それぞれ別の世界に行くことで和解したということです。
一応、本作のギドラは元々ゴジラたちとは違う次元の存在だったのでアディショナルインパクトの書き換えをやっても存在し続けているので、倒しておかないとやばいという設定です。
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