破壊神ゴジラvs鬼神エヴァンゲリオン~最終戦争~   作:井上ああああ

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これで終わりです。


最終話:さらば、ゴジラとエヴァンゲリオン

 ゴジラとシンジの最後の戦いが終わった。

 シンジは結局、ゴジラに勝つことはできなかった。

 だが、和解はできた。

 そして、世界は二度目の破壊からなんと再生することができた。

 

 リツコは時田と結婚をすることとなった。

 彼女らしく、結婚式は身内だけで行いおごそかなものになるとシンジは聞いた。

 時田と彼女はジェットアローンの量産化に乗り出すそうだ。

 エヴァに依存せず、街の防衛をするため。

 あるいは、それを売ってネルフの予算を増やすため。

 

 オーバー・ザ・レインボウの艦長もカヲルとともに健勝であるそうだ。

 カヲルはこの世界を守り続けると覚悟は固かった。

 

 冬月も、噂に聞くとミサトの伯母と縁談をするらしい。

 実現できるかは不明だと、シンジは思った。

 シンジもあったことはあるが、ミサト以上の怪人だ。

 

 綾波は初号機にいたままだ。

 最近、ケントは初号機に近寄ると「れいれい」と呼びかける。

 綾波が初号機の中にいることがわかっているのだ。

 

 

 しかし、失ったものもあった。

 ゴジラによって命を奪われた人々の存在が戻ってくることはなかった。

 魂が解放されただけで、死そのものはそのままだった。

 

 中国大陸やマイアミで死んだ人々はそのまま死んだままだった。

 マリはその一つであった。

 

 数週間後のドイツ。

シンジは仲間たちともに、真希波・マリ・イラストリアスの葬儀にきていた。

 彼女は第一始祖民族のクローンだった。

 ゴジラの息子であるバガンを巻き添えに、その命を散らした。

 

 彼は気が付いた。

 相田ケンスケがいた。

 彼はマリと付き合っていた、目を赤くしていた。

 

 普段ケンスケに冷たいアスカもその日ばかりは同じく泣いていた。

 アスカとバディを組んでいたのだから、それもやむないとシンジは思っていた。

 葬儀にはネルフの面々、艦長を筆頭にした国連軍の関係者、さらにヒカリもきていた。

 どうやら、マリとヒカリには面識はあったようだ。

 

 葬儀は一通り終わった。

 ミサトは息子を連れ先にホテルへといったようだ。

シンジは友人たちのことが気にかかり、教会に残った。

 そこにはシンジだけではなく、アスカやヒカリ、加持たちがいた。

 背中を丸め大きな声で泣き叫ぶケンスケをシンジはみつめるしかできなかった。

 

 加持はそんなケンスケをみつめ言った。

 

 

「あいつはお前を守って死んだんだ、お前の命は何があっても絶対に粗末にするんじゃない。お前の命はあいつの命でもある。それを絶対に忘れるな。お前とあいつが生きていた記憶と一緒にそれはあるんだ。あり続けるんだ。絶対に…絶対に忘れるんじゃないぞ。」

 

 

 加持なりの気遣いだろう。

 昔は遠回しで気障な言い方が多かったが、最近は直接的にいうようになった。

 あれが本来の彼なんだろう。

 加持さんはケンスケに自分を重ねてるんだ。

 セカンドインパクトで失った弟を重ねてるんだ。

 ほんのちょっとだけケンスケが羨ましくシンジにはみえた。

 

 

「わかってる。」

 

 ケンスケは小さく言った。

 加持はシンジに目をやった。

 そして、立ち上がり教会のドアに近づくと小さく告げた。

 

 

「シンジくん、あいつを元気づけてやってくれ。あと…クリスマスに送るのはスイカにしてくれ。」

 

 

 それだけいうと、加持さんは姿を消した。

 シンジはケンスケに近づくと、その肩を叩いた。

 

 

「ケンスケ。」

 

「シンジ。」

 

 

 ケンスケは肩を震わせて言った。

 

 

「大事な人を失うってこんなにつらいんだな。」

 

「そうだよ。」

 

「俺、どうしたらいいんだろう。」

 

「彼女を忘れないことが一番大事だと思う。」

 

 

 父さんも死んだ。

 その時、僕は悲しかった。

 今、僕にはケンスケのそばに立ってやるしかできない。

 それしかできない。

 

 

「人は多くのこと忘れる、でも忘れちゃいけないことがある。」

 

 

 父が言った言葉だ。

 自分に。

 今はケンスケにいってやろう。

 

「忘れるわけないだろ、忘れられねえよ。そんなの。あいつ冷えたココアが好きだったんだ。一緒にあいつとバルコニーに立って飲むんだよ、ココアを…。それがあいつ好きだったんだ。」

 

「ケンスケ…。」

 

「俺、日本に帰るよ。ここには楽しかった思い出が多すぎる。今度ばかりはもう俺はダメだよ。悪い…シンジ。」

 

「でも…。」

 

 

 すると、ケンスケの近くにヒカリがよってくるのがみえた。

 

 

「相田君、私も鈴原を失って悲しかった。辛かったよ。今でも悲しい。大好きな大好きな人を失うって辛い事なんだよ…。」

 

 

 そうだ、委員長はトウジを失った。

 永遠に。

 死んだ人間は帰ってこない。

 

 

「どうすりゃいいんだろう。」

 

「今は泣きましょう。あとで思い出して笑ってあげればいい、あたしはそうした…。鈴原の時。」

 

「委員長…。」

 

「あなたが大好きだった人が笑った世界を大事にしてあげて、それが精いっぱいの恩返しになるんだからっ。」

 

 

 ヒカリはケンスケを強く、強く抱いていた。

 

 

「だから、いくらでも泣いていいわ。」

 

 

 ケンスケはヒカリの胸の中でおいおいと泣き叫んでいた。

 ヒカリはそんな彼を優しく抱き寄せていた。

 アスカはそんな二人を優しくみた。

 彼女はシンジに微笑んだ。

 

 

「外にでない?」

 

「いいよ。」

 

 

 アスカはシンジを連れて教会の外に出た。

 

 

「今日は来てくれてありがとう。」

 

「ああ。」

 

「マリ、あいつも喜んでると思う。」

 

「彼女とは面識が少なかったけど、大事な仲間だよ。」

 

「ええ、そうね。」

 

 

 アスカはシンジをつれ、外に出た。

 ふと気が付いた。

 アスカの指には指輪がついていた。

 

 

「気になる?これ?」

 

「うん。」

 

「加持さんからもらったの。」

 

 

 今のアスカは落ち着いていた。

 非常に冷静だ。

 

 

「結婚式やるからきてね。」

 

「アスカ、大人になったね。」

 

 

 シンジの誉め言葉を聞くとアスカは笑顔になった。

 シンジは、すごく美しい笑顔だと少し思った。

 アスカは何かを思い出したように掌を打ち付けた。

 

 

「ああ、そうだ。」

 

「どうしたの?」

 

「うん、あの片腕のおじさんがこの前家に来てさ。チョコレート食べにきたよ。本当に来たよあいつ。」

 

 ああ、あいつか。

 アーノルド。

 

「え?マジ?」

 

「なんか、変なとこ正直だよね。」

 

 

 シンジとアスカは笑いあった。

 もう長い仲だ。

 最高の親友だ。

 

 

「あ、そうだ。」

 

 

 シンジは指を鳴らした。

 

 

「アスカのお爺ちゃんが手紙を渡された、これをアスカに渡せって。」

 

「え?あの人はどうなったの?」

 

「結局、アメリカ政府に連行されちゃった。死刑になるのは変わらないって。」

 

「そうか…。」

 

 

 アスカは少し残念そうにみていた。

 シンジにはわかった。

 彼女は祖父との和解がしたかった。

 それはかなうことはないだろう。

 

「で、手紙って?」

 

「これだよ。」

 

 

 シンジは手紙を手渡した。

 アスカは急いでその手紙を取った。

 

 その手紙にはこう書かれていた。

 

 

『アスカ、我が孫よ。お前の戦いをずっとみていた。残念ながらもう私は勝てぬとわかったよ。お前とお前の母キョウコは強いのだ。私はもう敵わないだろう。敗北を認める、おめでとう。私はお前と会うことはできないだろう。だが、お前ならきっと我らの血を強くできる、そう信じている。健勝であれ。』

 

 

 アスカはその手紙を握った。

 祖父フリッツ。

 悪人であった。

 強欲で冷酷な祖父だった。

 その祖父は私を認めた…。

 

 

「きっと、君のお祖父ちゃんはどこかしらで愛情があったのかもしれない。じゃなかったらこんな手紙を残さないよ。僕も内容は読んでないけどね。」

 

 

 シンジはようやく気が付いた。

 アスカの目に涙が出ていた。

 

 

「アスカ…。」

 

「本当、あいつ…どこまでも卑怯な爺よね。こんな手紙をよこしちゃって…。」

 

 

 アスカの祖父は悪人だった。

 

 

 シンジが聞くところにはカヲルは連行する前に彼の話を聞いたらしい。

 キール・ローレンツ、今は亡きゼーレのリーダー。

 彼が言うにはシンジの祖父であるそうだ。

 事実はわからない。

 そして、そんなキールについて、フリッツはカヲルに言ったそうだ。

 

 

『渚カヲル、キールはお前を守るために月で育てた。お前を狙うものが多くいたからだ。』

 

 

 その時彼は気づいた。

 キール議長がカヲルを育てたのはただ、利用するだけではなかったのかも。

 そこには何かしら特別の感情があったのだろう。

 嘘偽りだけではない、何かが。

 彼はそれを知るために、それがなんなのかわかるためにエヴァに乗り続けるそうだ。

 

 シンジはカヲルの本音を聞くことができる数すくない一人。

 使徒の生き残り、渚カヲル。

 人間も使徒リリンなら、彼と変わらない。

 シンジにはそう思えた。

 

 

 シンジはアスカをみつめた。

 もう彼女は14歳のわがままな少女ではなく、大人の女になっていた。

 

 

「でも、ありがとうシンジ。」

 

 

 アスカは涙を拭いていた。

 そして、ふと思いだした。

 

 

「あなたが初号機パイロットで本当によかった。あなたとあえて本当によかったと思う。本当に…。」

 

「なんで?」

 

「あなたのやさしさよ。きっとゴジラはそこが好きになったのよ。あなたは大したやつよ。」

 

 

 アスカが褒めてくれる。

 なかなかないな。

 

 

「ありがとう…。」

 

 

 そろそろ時間だ。

 彼女と長く話をしたいけど、そうはいかない。

 時間だから。

 

 

「またね、アスカ。」

 

「年末にまた遊びにいくわ。」

 

「うん、そうだ…ケンスケのことよろしく、あいつ相当凹んでるから。」

 

「うん、ここに残るように説得するわ。彼も私たちの友達だもの。」

 

「ありがとう。」

 

 

 アスカは手を振った。

 シンジはそれに応じると、車に乗った。

 

 

「よお、シンジくん。」

 

 そこには青葉がいた。

 彼が運転手だったようだ。

 彼は無事だった。

 シンジは彼が無事だったことが1番嬉しかった。

 

 

「もういいのか?もっと話してあげてもいいんじゃねーの。あのメガネの子、シンジ君のツレだろ?」

 

 

 青葉はシンジにそういった。

 

 

「いいんだよ。」

 

 

 ケンスケは弱い男じゃない。

 僕があいつを良く知ってる。

 乗り越える。

 

 

「なあ、シンジ君。」

 

「何?」

 

「君のおかげで俺は生きていられる、当たり前だけど中々言えなかったことだけどさ…ありがとうな。」

 

 

 青葉はその長い髪をくしゃくしゃと書くと照れ臭く笑っていった。

 シンジも青葉に褒められて少しうれしかった。

 

 

「なあ、シンジ君。俺実はネルフやめるんだ…。」

 

「え?!」

 

「実家の母さんが戻ってこいって、ずっと迷惑かけてきてたから親孝行してやろうと思って。それにさ…。」

 

 青葉は手を震わせていた。

 そして、声を震わせて言った。

 

 

「子供ができたし。俺が死んだらこの子はどうなると思って怖くなったんだ。わかるだろ。」

 

「わかるよ。」

 

「この君の運転手としての仕事が最後のネルフの仕事だ。」

 

「これが!?」

 

 

 当たり前の話だ。

 僕を助けるために来て、怖い思いをした。

 辞めたくなるのも無理ないよ。

 でも寂しくなるな。

 

 

「…寂しくなる。」

 

「遊びに来てくれよ、俺の故郷、横浜。海がきれいなんだ。日向は来た事あるんだぜ。あいつ、図々しいんだよ。3日もいやがって…。」

 

 

 日向さん、彼は今回の騒動で一番株を上げた。

 ゴジラ討伐に貢献したことで昇進したそうだ。

 おまけにピンク色のミドリさんと付き合うことになったらしい。

 

 

「日向さんに言ったの?」

 

 

 本部で冬月さんと仲良く待機中の日向さん。

 

 

「あいつ、泣いてたよ」

 

「さみしくなるな…。」

 

 

 シンジはポツリといった。

 その時、青葉は車を停めた。

 

 

「ごめんな、シンジ君…ごめんな。」

 

「うん。」

 

「俺もずっと、いてやりたい。けど…ダメなんだ。」

 

「いいんだよ、青葉さん。」

 

 

 ずっと長い間一緒だった青葉さん。

 大事な僕の兄貴分。

 それもいなくなる。

 とうとうその時がきたか。

 楽しいことは永遠に続かない。

 当たり前だ。

 みんな前進して進んでいく。

 未来へまっすぐ。

 

 青葉さんの逃げはただの逃げじゃない。

 子供のために向き合うために前進した、それだけなんだ。

 

 

「そうだ、日向さん、昇進するらしいよ。」

 

「ずっと昔から思ってたけど、あいつハゲるぜ。」

 

 

 シンジは大いに笑った。

 青葉も笑っていた。

 こうやって笑い合える。

 そんな場をこの人は与えてくれた。

 

 

「僕も気を付けないと。」

 

「多分シンジ君もハゲると思う。」

 

「そういう、青葉さんだってハゲるかもしれないよ。」

 

「俺はハゲないってマヤちゃんが言ってた。」

 

「へー‥そうなんだ。」

 

「なんだよ!」

 

 

 そうだ、マヤさん。

 青葉・マヤ・日向。

 この3人が並ぶこともみかけなくなった。

 マヤは青葉と結婚した。

 

 

「マヤさんもやめるの?」

 

「うん…。」

 

「寂しいな。」

 

「俺も寂しいけど、仕方ないよ。」

 

 

 海か。

 父さんは釣りをしていたな。

 いつか父さんが生きていたら釣りにいきたかった。

 

 

「釣り、行きたいな。」

 

「あ、いいな。」

 

「青葉さん、釣竿買ってね。」

 

「シンジ君のが給料いいだろ?」

 

 

 シンジと青葉はお互いに笑い合った。

 こうやって笑い合えるのも最後。

 

 

「な、シンジ君。お酒飲もうぜ。」

 

「いいよ、ミサトさんよりも僕のが強いと思うけどお酒…それでもいいの。」

 

「ほーう、じゃあみせてもらうぜ。」

 

 

 

 二人はホテルに戻ると、大いに酒を飲み交わした。

 これが恐らく最後の夜。

 彼とは長い付き合いだが、これが最初で最後の飲酒だった。

 青葉は酒にすぐに酔った。

 そして、みているすべてのみんなの前でシンジはいかにすごいか、そして理想の弟かをご高説披露した。

 二人は過去の話で盛り上がった。

 日向さんがつまらないジョークを言ってリツコとミサトをドン引きさせたこと、ネルフが停電になったこと…。

 全て全ていい想いでだ。

 シンジにとっても人生のピース。

 大事な思い出だった。

 それはおそらく青葉も同じだ。

 

 

「ねえ青葉さん、生まれ変わったら何になりたい?」

 

「シンジ君は?」

 

「普通の人。」

 

「俺は・・・女子更衣室の監視カメラだな!」

 

「そんなのあるの?」

 

「ネルフにはある。」

 

 そんな会話をしていると、数時間が過ぎた。

 やがて、青葉は酔いつぶれてそのまま眠っていった。

 ミサトで酔っ払いになれていたシンジは青葉を背負うと、マヤとの部屋に連れてきた。

 もう、彼を背負えるほど身長は高くなっている。

 

 

「シンジ君…やだ!!連れてきてくれたの!!!本当にいい子なんだから…。」

 

「マヤさんもネルフやめるんですよね。」

 

 

 マヤともお別れだ。

 あとからリツコさんに聞いた話だったが、マヤさんは僕とミサトさんが付き合うことを嫌悪していたらしい。

 潔癖症だったとか。

 

 

「そうね、これでお別れ。」

 

「青葉さんをよろしくお願いします。悪い人じゃないですよ。」

 

「わかってるわ。」

 

 

 マヤは一瞬表情が曇った。

 だがすぐに笑顔になった。

 

 

「って、それじゃ…あなたがこの人のお嫁さんみたいじゃない!」

 

「え?」

 

「あははははは!」

 

 

 マヤさんは笑っていた。

 こんな彼女をみるのは中々ない。

 笑顔はみたことがあるが、笑っているのは初めてだ。

 

 

「ね、シンジ君。」

 

「はい。」

 

「今までありがとう。今でも生きているのはあなたのおかげだから…。ずっとずっと言いたかった事よ。あなたがエヴァに乗ってくれて使徒を倒してゴジラもなんとかしてくれて感謝しても足りないわ。本当にありがとう。」

 

 

 シンジはマヤをみつめた。

 もうこの人とあうこともないだろう。

 

 

「マヤさんもどうか、お元気で。」

 

「それじゃ、もう会えないみたいだから。さようならにしましょう。きっとまたどこかで会える。その時のために…。」

 

「さようなら。」

 

「さようなら、シンジ君。」

 

 

 マヤは手を振った。 

 そして、ホテルのドアは閉じられた。

 

 

「もーう!!ゲロ吐いちゃって!!!」

 

 

 マヤの悲鳴が聞こえた。

 本当いい母親になるよ。

 ゲロにドン引きしないなら昔の潔癖症じゃない。

 

 

「さよなら、マヤさん…。」

 

 

 これが青葉さんとのお別れ。

 もう会えないかもしれない。

 でもそれでもいい。

 楽しかった思い出があるから。

 

 

「さようなら、青葉さん。」

 

 

 そういうと、シンジは青葉の部屋を後にした。

 少し、彼の目に涙が浮かんだ。

 大人になった証なんだろう。

 シンジはそう思うことにした。

 

 

 やがて、彼はミサトとの部屋にたどり着いた。

 ドアを開けると、ミサトは息子のケントを抱きながら月をみていた。

 月の光でミサトはより美しくみえた。

 

 

「おかえり。」

 

「ただいま。」

 

 

 バルコニーにいた。

ケンスケは言ってたな、こうやって外にでるのがマリさんが好きだったって。

 シンジは少し思い出した。

彼はマリがミサトにだぶってみえて、駆け寄った。

ミサトさんはなぜかいつも死神に狙われているようにみえる。

 優しく優しく抱きついた。

 

 

「ミサトさん…。」

 

 

 ミサトはその腕を優しくつかんだ。

 

 

「いでっ!!」

 

 ひねられた。 

 シンジは抱擁を解いた。

 

 

「大人になってからの方が甘えん坊ね。」

 

「悪い?」

 

「いーえ、全然。もっと甘えてほしいわ。」

 

 

 ミサトは笑っていた。

 この笑顔、シンジはこれがみたかった。

 だからエヴァにも乗る、ゴジラとも戦える。

 

 

「ねえ、シンちゃん。」

 

「なに?」

 

「私ね、二人目…できたの。」

 

 

 シンジは目を見開いた。

 二人目、それは…子供ということか。

 

 

「本当!?」

 

「知ってるでしょ、アタシは嘘つくの下手なの。」

 

「ああそうだね、でも僕もそうだ。」

 

 

 ミサトは微笑んだ。

 お互いに嘘をつくのが下手。 

 だから愛し合える。

 

 

「だから、ビールも控える。しばらく育児休暇ももらうの。」

 

「そうか…。」

 

「私いなくても、戦闘は自分で動けるでしょ?」

 

 

 ミサトは少し悲しそうだった。

 彼女は息子をベビーベッドに寝かせると、シンジをみた。

 シンジは首を横に振り、ミサトの手に触れた。

 

 

「ミサトさんがいないと、戦闘した気になんない。」

 

「え?」

 

「だって、いざ死ぬ時ミサトさんがみてくれていないと死んでも死にきれないよ。」

 

「シンジ君。」

 

 

ミサトは頬を染めた。

 男らしいこと言う生意気な大人になっちゃって…。

 

 

 

「それに。」

 

「それに?]

 

「僕のカッコイイ所を特等席で世界で一番大好きなあなたにみてほしいんだ。」

 

 

 ミサトはさらに余計に顔を赤くした。

 

 

「あ、あのねえ…。」

 

 

 シンジは微笑むと、ミサトを抱き寄せた。

 

 

「あとついでに言うとあなたをもう一度抱きたいから、世界を巻き戻した。」

 

「し、シンジ君。」

 

 

 昔は私がこの子を赤くしてたけど、最近は違う。

 してやられることが多い。

 これも大人になった証か。

 少しの沈黙の後ミサトはシンジを抱く力を強くした。

 

 

「それは、嬉しい。」

 

「僕も。」

 

 

 ミサトとシンジは目線をからませ合った。

 沈黙が二人を支配した。

 ふと、シンジは新聞が目についた。

 

 

『LA二大ギャング、怪獣を前に歴史的和解そして解散。』

 

『差別主義者と不法移民、共闘して怪獣を迎撃…ともに警備会社を設立する。』

 

『有名な人食い虎、大カマキリを食う!?』

 

『インド最強暗殺者が人々を守る!?』

 

 

 テレビをみると、日本に住んでいる中国人牧師がインタビューに答えていた。

 シンジはほくそ笑んだ。

 これが僕の守った世界。

 みんなそれぞれの事情で生きている。

 

 

 

 

「あと、加持くんが次の子供は俺の名前を付けてくれって。」

 

「・・・まあ、考えておこうか。」

 

 

 加持さんにはお世話になってるし、悪い人ではないの間違いない。

 可能性としては悪くはないかな。

 

 

「ねえ、シンジくん。」

 

「ん?」

 

「ゴジラと話をしたの?」

 

「うん。」

 

「なんて言っていたの?」

 

 

 シンジは破壊神が言った言葉を思い出した。

 この世界にはゴジラと同じような存在が多くいる。

 あるいはその中にはゴジラよりたちの悪い邪悪な存在もいるかもしれない。

 

 

「この世界には自分と同じような存在がいる。君たちだけの世界じゃないんだって。そして、自分に似た存在が来るかもしれないって…。」

 

「なのかもね。」

 

 否、くるだろう。

 近いうちに。

 

 ミサトは加持の友人のCIAからアメリカ政府の1部の高官はゴジラの存在をすでに把握していたと明かされた。

 中国も。

 13号機も金剛もゴジラに対抗するべく作られたもの。

 特に13号機はゴジラ細胞の1部と異次元の生命体を混ぜて生み出された生命体だった。

 

 

「この世界にはまだ謎が多い。彼がいうならきっといつかそいつらがくるんだろう。いつか必ず…。」

 

 

 ギドラはそうだった。

 ゴジラは自分とモスラがいなくなってもヤツは存在するとわかっていたから、ギドラを倒すことを提案した。

 遅かれ早かれ、ギドラはこの世界に襲来する予定だったんだろう。

 

 

 

「ゴジラは…憎かったんだと思う。自分を産んだものが。世界中の全てを否定したんだ。でもその先にあったのは孤独な闇だけ。無の世界だった。だから僕は説得をしたんだ。復讐や憎悪の先に待っていたのは孤独な闇。それが彼に耐えられなかったんだよ。」

 

「そうよ、シンジ君…。復讐は新しい復讐を産むの。」

 

 

 

「もしかしたらあのゴジラはあらゆる次元のゴジラの記憶や魂が一つになったモノなのかもしれない‥。勝てなくても当然だね。」

 

 

 ミサトはふとシンジをみた。

 そんな奴の心もとかしてしまう。

 本当の怪物はこの子の人たらし的なところなのかも。

 

 

「私も、あなたにあうまでは復讐しかなかった。戦場でいっぱいいっぱい殺して…大好きなあなたの手を血で染めさせてしまった。そのことを一生かかってつぐないたい。そのためなら…私はなんでもするわ。」

 

 

 ミサトはシンジの手を握った。

 まだ強い。

 握力ではシンジは今でも勝てないだろう。

 だけど、握り返した。

 

 

「僕も、あなたにあうまでずっと一人だった。あなたを失いたくはなかった。」

 

 

 ミサトはふと考えた。

 シンジと自分はお互い足りないところを補うパズルのピース。

 電池のプラスとマイナス。

 二人そろって初めて一人前なのだ。

 

「ゴジラはもしかしたら、僕たちの憎悪そのものなのかも。」

 

「そうかもしれないわね。」

 

「彼と僕たちの世界はそれぞれ分割された、きっと…どこかで彼も幸せになっているといいな。」

 

「きっと、その世界のとは別の世界の先でマリさんも生きているんじゃないかな。私そう思うの。」

 

「だといいね。」

 

 

 ミサトとシンジは肩を寄せ合い、月をみた。

 二人目が生まれる。

 それなら、余計に世界を守らなくてはいけない。

 エヴァ初号機の中にいる綾波も同じことを考えているとシンジはわかっていた。

 

 

「僕は僕が生きるこの世界を守り続けるよ。」

 

 

 シンジはミサトにそう言った。

 そして、肩の力を強めた。

 月明りは二人を包み込んだ。

 

 そんな時だった。

 シンジのスマホが鳴り響いた。

 ネルフ本部に待機していた冬月のものだ。

 

 

「サードか?葬式の最中、悪いな。アメリカ国防総省から通報があった。人工知能で作られた巨大ロボット軍団がカナダの街を破壊している。人類に対して報復するそうだ。エヴァ初号機でこれを鎮圧してくれ。」

 

 

「わかりました。」

 

 

 シンジは微笑んだ。

 ミサトはそれに微笑みで返した。

 

「行くの?」

 

「ああ、僕の仕事だからね。」

 

「いってらっしゃい。」

 

 

 

 シンジはすぐさま走っていった。

 その先には日向とミドリの乗ったVTOL機があった。

 ミサトはホテルの屋上でそれを見送った。

 足元には同席していたペンペンもいた。

 

 

「やっちゃって。」

 

 

 ミサトは小さな声で言った。

 

 

「いってきます。」

 

 

 シンジは微笑んだ。

 この世界に悪は消えない。

 多国籍企業、邪悪なヤクザ・マフィアや半グレ、破壊主義者やテロリスト…。

 

 もしかしたら…

 ミュータント怪獣、巨大な暴走ロボット。

 あるいは別の惑星や多元宇宙からの侵略者。

 

 あり得ない話ではない。

 

 それらの起こりえるかもしれない悪を倒すためにエヴァは存在し続ける。

 シンジは戦い続けることを選んだ。

 彼を天は優しく見守っていた。

 

 その先の宇宙ではまだ、多元世界が広がっていった。

 その多くには人が戻ってきていた。

 

 ゴジラが破壊したはずの世界の多くも時空が戻り、魂が戻り文明が再会していた。

 これらは今日も広がっていった。

 

 

 そんな多元世界の海にある世界。

 

 そこの海底の洞穴にはある生命体の一家が住んでいた。

 かつて多元世界を破壊し、何億という魂を食い殺した怪獣王。

 その姿があった。

 

 

『父上!』

 

 

 声がする。

 ゴジラは目を覚ました。

 

『何の用だ。』

 

『もう朝です!』

 

『もうそんな時間か…。』

 

 

 人のいない世界。

 ゴジラがたどり着いた世界はただ『人がいない』だけではなかった。

 そこは恐竜・怪獣が多く住む世界だった。

 そして、さらにそこにはゴジラと同族が多くいた。

 

 アディショナルインパクトの逆転、その結果彼は多くの能力を失った。

 恐らくもう世界最強ではないかもしれない。

 ただの恐竜、それでもよかった。

 

 やがて、メスをみつけつがいとなったゴジラは子供を産んだ。

 まだ幼いが勇敢な子供であった。

 ゴジラは生まれた子供にバガンという名前をつけた。

 彼がかつて世界でゴジラの息子として面倒を見ていた怪獣の名前だ。

 

 海底にはかつてデストロイアだった甲殻類が魚を仲良く食べていた。

 空をメガニューラだった虫が飛んでいるのもみた。

 カマキラスのような3mほどのカマキリもいた。

 

 

 彼らは転生をしたようだ。

 その多くは特殊能力などもうないだろう。

 

 

『父上、東の沖にティラノサウルスがおります。奴らは魚の群れを不必要に食っております。この海は誰のものか目に物みせてやりましょう。』

 

『よかろう。』

 

 

 またやつらか。

 懲りぬ奴らだ。

 協定を破り、この地に踏み込んだか。

 海と海岸は我らのもの、草原と山々は奴らのもの。

 それで話は済んだはず。

 

 

 ゴジラは起き上がった。

 バガンを連れ、陸に上がった。

 その大きさは以前とは違い、50m程度になっていた。

 それでもこの恐竜ばかりの世界ではかなり強い方になる。

 

 

 ゴジラは起き上がり雄たけびをあげ、ティラノサウルスの群れに牽制をした。

 

 

『この世界は我の物。消えるがよい。』

 

 

 支配者は大きく気高く叫んだ。

 その咆哮は哺乳類がまだ弱者のままでいる世界に大きく響いた。

 暴君竜の群れは真の支配者に首を垂れると、そのまま去っていった。

 ゴジラはその光景をみて心の奥底から微笑んだ。

 そして、遠い先のシンジに心の中で言った。

 

 

『ありがとう、人間よ。』

 

 

 ゴジラはふと山をみた。

 雷龍の群れがゴジラをみつめていた。

 空には翼竜の親子の群れが。

 鎧竜がゴジラに感謝するかのように一声をあげた。

 この海の近くに住んでいるのだ。

 

 

 この世界の支配者は、ゴジラだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一応このシリーズはこれで終了ということになります。
三部作ということで区切りがいいので終了いたします。
今考えている新作のプランについてですが、多元世界ということでエヴァのない世界を舞台にしたものか、あるいは別ジャンルの作品も考えております。


完結記念ということで来週以降のタイミングで登場人物・機体・怪獣の紹介解説を投稿すると思います。
それをもって、完結済みに致します。



最後まで読んでいただきありがとうございました。
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