メジロマックイーンと俺 作:おれ
「君に会わせたい子がいるんだ」
何かを考えている素振りをしていたライアン急にそんなことを言い出した。どうやら話を聞いてみるにその子は病気がちで,あまり外に出ることができないらしい。
「いいのかよ。こんな初対面で君にだってあったばかりだぜ?」
「急にまじめになるなぁ、君」
いいからいいから、とおれの腕を掴んだライアンに連れてかれて豪邸の方に連れてかれる。そこまで言われたら断れないので、なすがままにされる。ふと上を見上げると少女が窓から外を見ているのが見えた。
「ねぇ、ちょっと待ってあの子、もしかしてライアンが言ってた子?」
「あちゃあ、やっぱりかぁ」
頭に手を当ててそう言うライアンをほっといて、周りに手ごろな木が無いか探し始める。
「何してるのさ」
「要するにあの子を元気にさせればいいんだろ」
「まだ何も言ってないんだけど、、、」
困惑し止めようとしてきたライアンに任せとけって、と言って宥めつつ木をするすると登ってく。ちょうど木の葉が生い茂っている場所の下に隠れたおれはガサガサと枝を揺らし、少女の気を引く。
「なんですの?」
「よし、気づかれてないな」
心の中でカウントを3、2、1と数える。一気に飛び出て驚かそうとした時に、おれが一匹だけ捕まえていたセミが虫かごの中で鳴き始める。
「まあ、ただのセミでしたか」
上からの声に内心ほっとしながら、出るタイミングを完全に失ったことに気づいて焦り始める。3秒間悩んだ末、今出ることにした。
「ばあああああああ!!!! 」
ええい、どうにでもなれ! と心の中で思いながら飛び出す。反応は。と少女を見たらその部屋には少女だけではなく見知らぬおばあさんがこちらを見つめていた。
今、おれは正座をさせられたいた。おばあさんに見つかったおれはあの後、黒服のおっさん達にこの部屋に連れてこられた。目の前にはおばさんが、後ろには黒服が仁王立ちしている。いつの間にかいたライアンの方を見てみれば、ぷいっと目を背けられた。おばあさんが床を足で打ち鳴らす。ばんっ! という音が鳴る。体がびくっとなり、おばあさんの方に姿勢を正す。
「あなたがどうして我が邸宅にいらっしゃるかはこの際不問にしますが、何故マックイーンを襲うような真似をしたのですか?」
「ライアンがそのマックイーンって子が最近元気ないって言ってたから、その元気を出してあげようとして、、、」
ライアンの方を指さして口ごもりながら答える。ふふっと笑い声がしたので顔をあげたら、今までおばあさんに隠れていたマックイーンていう子が口に手を当てて笑っていた。尻尾をゆらゆら揺らしおれの目の前まできたマックイーンは、手を差し伸べて立ち上がらせてくれた。
「もういいではないですかおばあさま。彼は私のためにしてくれていたようですし」
「マックイーンがそう言うのであれば、これ以上怒る必要もないですね」
おばあさんはですが、と続けて
「君のご両親にはこのことをお伝えしなければなりませんね」
と言った。そしておばあさんが黒服のおっさんに何か指示をする。黒服のおっさんが渡したのは何かの紙だった。おれの目がぎょっと開く。もしやと思い、ズボンのポケットに手を突っ込んで動かすも何もない。それはお母さんがおれが迷子になった時に困らないように持たせてくれた電話番号だった。
おれは母親が来るまでソファに座らせて待たせてもらえたけれど、気分はさながら死刑を待つ人のようだった。マックイーンは自分の部屋に帰ってしまったが、ライアンはおれを心配してかこの場に残ってくれた。
「トレーニングの途中だったんだろ。いいのかよ。続きをしに行かなくて」
「こんなことがあったんだし流石にやる気は起きないかな」
「そっか」
元気に話を続ける気分でもないので、一言二言交わしただけで口を閉じる。ライアンは急にそうだ! と手を叩いた。
「明日もうちに来なよ。どうせ虫取りしかやることないんでしょ?」
「おれは天才だからな、そんな暇人じゃないんだ」
「じゃあその天才さんがしなきゃなんないことってなんなのさ」
「宿題とか、ケンちゃんと遊んだりとか、、、」
「十分暇じゃん。暇なときでもいいから来なよ」
「しょうがないなぁ」
はぁ、とため息をつきながら答える。ちらりと窓の外を見ると空はもう夕焼けに染まっていた。
母親が来てからは時間が早く経って行った。家に帰ってからもこってりと絞られたおれは疲れたのでベッドの上に寝っ転がる。ぼすんという音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じようとすると、そこで日記のことを思い出す。面倒くさいのでこのまま寝てしまおうかと考える。でも一日かかないとどんどん面倒くさくなっていくなと考え直したたおれは机に向かった。