メジロマックイーンと俺   作:おれ

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4話

 お昼ご飯を食べた後、マックイーンとまたオセロをしていると部屋のドアが開き、あ──っ!! という声とともにライアンが入ってきた。おれの方に詰め寄ってくる。そんなライアンを無視して盤面の方に視線を戻す。ちらりとマックイーンを見ると、自分の番で集中しているのか全くライアンに気づく気配がない。代わりに、真剣勝負をしているから静かにしてくれと伝えると少ししょんぼりしてマックイーンの隣に座った。マックイーンとおれがオセロを置く音だけが鳴り響く。いつしかライアンも黙り込んで集中していた。最後の一手を置いて、自分のオセロの数を数える。結果は1枚差でおれの勝ちだった。うおっしゃー! と言って、ガッツポーズをして後ろに倒れる。

 

「マックイーンもまだまだだな」

「つ、次こそは、、、! 勝ちますわ!」

「ねぇ〜もっと違うのやろうよ」

「それもそうだな」

 

 リュックを漁り、ウマ生ゲームというボードゲームを出し二人の目の前に置くと二人して不思議そうな顔をして覗き込んだ。

 

「なんですのこれ?」

「すごろくだよ」

 

 

 おれが持ってきたのは日本のトレセン学園公式で商品化されてるトゥインクルシリーズを自分がウマ娘になってかけていくシナリオだ。みんなで準備しながら簡単なルール説明をする。そして最後に駒をスタートに乗せてゲームが始まる。じゃんけんをして順番を決める。最初はおれだった。

 

 

 このすごろくは基本的にトレーニングマスと怪我マス、そしてお出かけマス、レースマスで構成されている。1から10まであるルーレットを回す。出たのは4だった。ルーレットに従って駒を進めていく。

 

「げ。さっそく怪我マスかよ」

「確かこうなったら、負傷カードをランダムで取るんだっけ」

 

 はい、とライアンが負傷カードの山札を渡してくる。おそるおそる引くと「夜更かし気味」とあったのでほっとする。まだ挽回はできそうだ。

 

「次はわたくしの番ですわね」

「マックイーンは何を目指すんだ? すごろくだからG1のレースしかないけどさ」

 

 やっぱ王道のクラシック三冠かなと思っていると、マックイーンが急に立ち上がり大きな声で叫んだ。

 

「メジロのウマ娘として天皇賞は外せませんわ! 」

 

 食い気味に迫られる。引き気味にそうか、と答えたおれに気づいたマックイーンはこほんと咳払いをして、改めてルーレットを回した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 すごろくも中盤に入り、クラシック級の5月に入った。おれ4月の皐月賞を勝ち、三冠の第一歩に入ったところだった。マックイーンは天皇賞が重要だからとレースを回避している中、ライアンはトレーナーと恋愛を繰り広げていた。このすごろくにはなんであるのかはわからないけど、通常のすごろくのコースに加えて恋愛イベントが盛り沢山のコースがある。ライアンはすごろく序盤でこのコースに捕まってしまい、まだ抜け出せずにいた。

 

「ライアン、お前いつまで恋愛しているんだ?」

「だってトレーナが『お前がレースで負けるのを見たくない』って言って元のコースに戻させてくれないんだもん」

「最後のマスでルーレット回して5以上出すだけだぜ?」

 

 またしても5未満の3を出して耳が垂れて、涙目になっているライアンを結局は運だからなとなだめつつ、自分の番になったのでルーレットを回した。

 

 

 

 

 

 

 そして今、マックイーンが目指した天皇賞・春のマスに皆の駒が止まっている。シニア級の最初にやっと恋愛コースから抜け出したライアンも一緒だ。

 

「マックイーンだけじゃなくてライアンも天皇賞に出るんだよな?」

「もちろん。なんたってメジロ家の悲願だからね」

「あなたはでますの?」

「いや、おれはクラシック三冠とったから出なくていいかな」

 

 レースマスでレースに勝つのは単純で、ただマスに書いてあるルーレットの出目以上の数を出せば良い。ただ、天皇賞・春の勝利条件はルーレットででる最高の10を超えているから普通にやったら勝てない。そこで重要になってくるのが、今まで止まってきたトレーニングマスや怪我マスだ。トレーニングマスを何回止まったかで勝利条件の難易度が下がり、怪我マスに止まった時に引く負傷カードを何枚持っているかで難易度が上がる。

 そして今回マックイーンは難易度大幅に下がり、6以上を出せば勝て、ライアンは厳しいけど最高の10を出せば天皇賞に勝てる。

 1つのレースに2人以上が出た時でも勝てるのはやっぱり一人で、これは出目が大きい方が勝つ。

 

「う、うそですわ。わたくしが負けてしまうなんて、、、」

「大どんでん返しじゃん。すげぇ、、、!」

「愛の力は最強だね!」

 

 結果はマックイーンが9、ライアンが10だった。マックイーンが回し、9を出してさっきまでどや顔をしていたのが思い出されるのに対して、今のマックイーンは耳や尻尾が垂れ、今にも泣き出しそうな雰囲気を出していた。ライアンに対してかけた言葉と同じように、これも運だからなと慰める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すごろくで全員ゴールまで行き、戦歴はおれがクラシック三冠を獲った3戦3勝で、マックイーンは天皇賞・春を落としたが、その後の天皇賞・秋では勝利して3戦2勝。ライアンは天皇賞・春は奇跡の勝利をしたけど、天皇賞・秋ではマックイーンに負け、2戦1勝だった。そしてすごろくを終えたおれにはある思いが芽生えていた。

 

「おれ、トレーナーになりたい。トレーナーになって君たちを勝たせたい」

 

 いつの間にか立ち上がって、気がつけばそんなことを口に出していた。今思えば、ウマ娘のレースへの思いを直接聞いたのが初めてだったからかもしれないけど、その時のおれにはどうでも良いことだった。呆然としている2人を前にして急に小っ恥ずかしくなったおれはリュックを掴んで立ち上がり、持ってきたものを片付けないで別れの挨拶だけして逃げるように帰っていった。

 

 

 おれの目標はトレーナーになって、マックイーンたちを勝たせるになった。

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