のび太「何だか相変わらずのテンションだね」
ドラえもん「ただでさえコイツ面倒なのに夏休みに入って余計にはしゃいでる」
Δデルタ「休みだ休みだ〜。わ〜い‼︎」
郎夜「本当に面倒だな…」
奈々「もう仕方が無いんじゃあ」
のび太「それもそうなんだけどね。まあ、良いか。話すネタも無いしそろそろ始めよう」
郎夜「だな。ほんじゃ、まあ。第五話を…」
皆「どうぞ‼︎」
空き地
この日、空き地には三人の少年と一人の少女の姿があった。そして、その中で一際、小柄で三段リーゼントの様な髪型の少年が自慢気な表情で他の三人に話していた。
スネ夫「でね、この前の休みに行ったハワイ旅行なんだけどすっごい楽しくてさ。青い空、白い砂浜、そして輝く海!もう、最高だよ!」
静香「へぇ〜、良いわね。羨ましいわ〜」
武「おい、スネ夫。もっと、話聞かせろよ」
のび太「…。(ああ〜、長い。いつまで話す気なんだ…)」
スネ夫の旅行自慢に静香と同年代の中でも大柄なジャイアンと呼ばれる少年の剛田 武が目を輝かせ話に聞き入っていた。一方、のび太は口には出さないものの、胸の中でスネ夫に愚痴を言う。
スネ夫「あっ、そうだ〜!今度の休みに皆で僕の家の四畳半島の別荘に行かない?僕のパパに頼んで連れってって貰おうよ」
武「本当か!」
静香「ありがとう、スネ夫さん!」
のび太「(このパターンは…何だ結局そう言う事か)」
スネ夫の提案に武と静香は大きな声で感激し、のび太はこの話の流れからある事を察して心の中で大きな溜息を吐く。
静香「のび太さんも行くの?」
のび太「いや、僕は…」
スネ夫「悪いなのび太。その別荘、三人用なんだ。いや〜、すまないね。また、誘ってあげるよ」
のび太「(僕の予想と一字一句一緒だよ。分かり易い奴だな)」
のび太が静香の問いに返答する前にスネ夫は嫌味ったらしく言い放つ。それにのび太はその予想通りの答えに呆れる。
スネ夫「今から、僕の家に来ない?ハワイ旅行のお土産とかもあるんだ」
武「おお!行こうぜ、今すぐ‼︎なっ?静香ちゃん」
静香「ええ、のび太さんも行きましょう?」
のび太「いや、僕は良いよ。先に帰る」
スネ夫「ほっとこうよ、静香ちゃん。旅行に行けないのび太を誘っても可哀想なだけだよ。家で漫画でも読みながらゴロゴロしてるんだな。その間に僕達はゆっくりとバカンスを楽しんでくるから」
武「がははっ!そういうこった、じゃあなのび太」
馬鹿にした様な笑いを浮かべてスネ夫と武は静香と共に歩いて行く。のび太はそれとは逆の方向へ足を進める。
のび太「はあ〜、ったく誘うつもりが無いなら呼ぶなよ。折角の暇な時間なのに…」
のび太はブツブツと文句を言いながら家に着いた。そして、自分の部屋に向かう。
のび太「ただいま〜」
ドラえもん「あっ、のび太くん。お帰り。スネ夫の用事って何だったの?」
のび太「下らない自慢話だよ…」
ドラえもんの質問にのび太はゲンナリした表情で答える。ドラえもんは不思議に思い、更に問う。
ドラえもん「それにしては随分な様子だけど」
のび太「それはね…」
のび太は空き地での出来事をドラえもんに話す。それを聞いたドラえもんは呆れた様な顔になった。
ドラえもん「何だ、何時ものことか」
のび太「そうだよ。全く、コッチも暇じゃ無いんだから、そんな事で呼び出さないで欲しいよ」
のび太は寝転びながら漫画を読み始めた。ドラえもんは暫く何か考え始めた様子になる。そして、唐突にのび太に声を掛ける。
ドラえもん「のび太くん」
のび太「何?」
ドラえもん「旅行に行きたい?」
のび太「はっ?」
いきなりそんな提案をされたのび太は顔をドラえもんの方に向けたまま固まる。数秒後、フリーズが解けたのび太は当然の疑問を投げかけた。
のび太「ドラえもん、何言ってるの?」
ドラえもん「いいから旅行に行きたい?」
のび太「そりゃあ、まあ…どっちかと言うと行きたいかな」
のび太は取り敢えず、そう答える。のび太は先程、旅行より漫画を読む方が良いとは言ったが、一年前の経験から旅行と言うか旅自体は嫌いでは無かった。ただ、その気が中々起きないだけなのだ。
ドラえもん「よし!行こう!」
のび太「…何言ってるの?」
ドラえもんはのび太の疑問を聞かず、ポケットの中に手を入れゴソゴソと動かし、道具を探し始める。のび太はそれを怪訝な表情で見ていた。
ドラえもん「あった!どこでもドア〜‼︎」
のび太「ただのドアじゃん。て言うか、何でドアだけなの?」
やがて、お目当ての物を見つけたドラえもんはそれを引っ張り出す。それは、ピンク色の普通のドアだった。
ドラえもん「のび太くん、今見たい物とかある?」
のび太「えっ、う〜ん。そうだな、アメリカの自由の女神かな?」
のび太の要望を聞いたドラえもんはどこでもドアの方に向く。
ドラえもん「よし、じゃあ。アメリカの自由の女神の所へ!これで準備完了だ。のび太くん、靴取って来て」
のび太「な、何で?」
ドラえもん「いいから、早く」
のび太は取り敢えずドラえもんの言うとおり靴を取りに一階の玄関に行った。その途中、居間からニュースが聞こえてきた。
TV「え〜、次のニュースです。一昨日、○○市で連続殺傷事件が発生しました。被害者達は野生動物に襲われた様な傷を負い精神的に酷く不安定な状態にある様です。専門家の見解では恐怖で混乱しているとの事です。襲われた被害者達は皆、同じ系列の会社に勤めていると言うことで警察は会社での人間関係のトラブルなどを調べている様です」
玉子「怖いわね〜。ここら辺で起きなきゃいいけど…」
のび太「ママ、ちょっと出掛けてくるね」
玉子「気を付けるのよ、最近物騒だから」
のび太「分かってるよ」
のび太は玉子にそう答えると、自分の部屋に戻って行った。
のび太「ドラえもん、靴取って来たよ」
ドラえもん「分かった。準備は良い?」
のび太「あ〜、ちょっと待って」
のび太は机の引き出しからポラロイドカメラを取り出し、それを首にかける。そして、ドラえもんの方を向き直る。
のび太「準備出来たよ」
ドラえもん「よ〜し、じゃあ出発〜‼︎」
ドラえもんはどこでもドアを開ける。すると、その向こうはのび太の部屋…では無く自由の女神の目の前だった。それを見たのび太は唖然とする。
のび太「ど、ドラえもん、此処って…」
ドラえもん「うん、アメリカのニューヨーク、リバティ島だよ」
のび太「…これはどういう事?」
ドラえもん「このどこでもドアはね、行き先を言えばどんな場所にでも行ける道具なんだ」
のび太「へぇ〜(秘密道具って、何でもありなのか…)」
ドラえもんの説明にのび太は驚きながらも、心の中で秘密道具の万能性に呆れる。そんなのび太の今日胸中も知らずにドラえもんはのび太に話し掛ける。
ドラえもん「のび太くん。ほら、観光しようよ。折角、来たんだしさ」
のび太「そうだね。よし、行こう!」
のび太は先ず自由の女神をポラロイドカメラで何枚か撮る。更に、違う角度で写真を撮り、その後は近くの街を観光した。一通り観光を終えたのび太とドラえもんはどこでもドアを出す。
ドラえもん「さて、次はどこへ行こうか?」
のび太「う〜ん、じゃあね…エジプト!」
ドラえもん「はい、きた。エジプトへ!」
のび太とドラえもんはどこでもドアを潜りエジプトに到着する。のび太は始めて見るエジプトの光景に感嘆する。
のび太「ほぇ〜、やっぱり一面砂漠だね。それにあっついな〜」
ドラえもん「そりゃ、エジプトだからね。さあ、行こう」
のび太「そうだね」
のび太とドラえもんは砂漠が広がる地を歩いて行く。途中、のび太は砂漠の風景や生物などを写真で撮っていた。そうこうしている内にのび太とドラえもんはピラミッドの前に到着した。
ドラえもん「うわ〜、大っきいね!」
のび太「うん!TVとかで見るのとは迫力が全然違うよ!」
二人は始めて見るピラミッドやスフィンクスに大きな声を上げて感動を露わにしていた。のび太はそんな中でも写真を撮ることは忘れず、色々な所から写真を撮っていた。そして、あらかた満足した二人は次の場所へ行こうとするが、ここでドラえもんがある事に気付いた。
ドラえもん「あっ〜〜‼︎」
のび太「ど、どうしたのさドラえもん」
ドラえもん「もうすぐ近所の猫達の集会の時間だ!こうしちゃ居られない!」
ドラえもんはポケットの中から出した時計を見ると、大慌てしながらどこでもドアで日本へ戻ろうとする。
のび太「ちょ、ちょっとドラえもん…」
ドラえもん「ごめん、のび太くん!悪いけど一人でまわってて。どこでもドア好きに使っていいから、それじゃ!」
ドラえもんはそう言うと日本へ帰って行った。暫く、ポカーンとしていたのび太だったが、ドラえもんに言われた通り一人で色々な所をまわる事にした。
のび太「次は…富士山!」
のび太はどこでもドアを潜る。すると、富士山の頂上に着いた。そこは、のび太が想像を超える絶景だった。
のび太「うわ〜〜〜‼︎こりゃあ、凄いや‼︎」
のび太は今まで通り、富士山の頂上からの絶景を写真に収めながら、始めての光景を楽しんでいた。そして、あらかた楽しんだのび太は次の目的地を考える。その時、ある一つの事を思い付いた。
のび太「これをスネ夫に見せたら、絶対驚いくだろうな〜。よし、何枚か見せてやろうっと」
のび太はスネ夫の家に向かう為、日本に戻った。そして、スネ夫の家に向かっていた。
のび太「ん?あの人…此処ら辺の人じゃ無いな」
男性「くそ、どこだ。俺は早く…」
その男性は、髪はボサボサで顔も髭の手入れが出来ていない様子で薄汚れた背広を着ていて全体的にくたびれた印象を抱かせた。
男性「ん?そこの君」
のび太「は、はい。何でしょう?」
男性「骨川さんの家を知らないかい?」
のび太「骨川…スネ夫の家か…」
男性「知っているのかい!」
のび太「ええ、僕も今から行こうとしてましたし」
男性「なら、案内を頼んでも良いかな?」
のび太「はい、分かりました」
のび太と男性は一緒にスネ夫の家に向かう事になった。その途中、のび太がまだ名前を聞いていない事に気付いた。
のび太「あの〜」
男性「何だい?」
のび太「僕は野比 のび太です。貴方の名前は…」
男性「僕は
のび太「はい、忠さん」
忠「…君を見ていると息子の事を思い出すよ」
のび太「お子さんがいるんですか?」
忠「ああ、丁度君と同じ位の年かな。最も、今はもう会えないけどね」
のび太「…そうですか」
のび太はそれ以上の追及をやめた。何だか他人が入り込んではいけない様な雰囲気を醸し出していたからだ。何と無くお互い黙ってしまう。そして、二人はスネ夫の家に着いた。
のび太「着いた」
忠「此処が…あいつの」
忠が何か言っていた様だったが、のび太には聞き取る事が出来なかった。のび太はインターフォンを押そうとする。
忠「すまない」
のび太「うわっ⁉︎」
忠はのび太がインターフォンを押す前にのび太を後ろに突き飛ばした。のび太は驚きながらも受け身をとると、忠の方を向く。
のび太「何するんですか!」
忠「…驚いたな。まさか、咄嗟に受け身をとるとは…。もしかして、格闘技か何かやっているのかい?」
忠は心底驚いたと言う表情で尋ねる。しかし、のび太はその質問に取り合う気は更々無かった。
のび太「質問に質問で返さないで下さい。もう一度聞きます。何のつもりですか?」
忠「何のつもりか…。そうだな…先ず第一に君を突き飛ばしたのはこれから起こる事に巻き込みたく無かったからかな」
のび太の有無を言わさぬ気迫に忠は微塵も怯えや動揺も見せず、淡々と答える。そして、その返答にのび太は顔を顰めた。
のび太「起きる?起こすの間違いじゃ無いですか?」
忠「確かにそうだね、訂正しよう。そして、第二に僕が此処に来たのは復讐の為だ」
のび太「復讐…」
忠「そうだ。少し昔話をしよう。僕は息子と二人暮らしをしていた。妻は息子を産んで直ぐに事故で亡くなった。僕は息子に辛い思いをさせない様に仕事も早く終わらせて、息子との時間もなるべく取れる様にしたさ。だけど、その後、無理が祟ってね。倒れてしまったんだよ。その時、息子に泣きながら言われたんだ。僕の為に無理しないで、僕は平気だから、だって男だからって。正直、嬉しかったよ。息子がいつの間にかこんなに立派になっていて。それからの僕等の生活はより幸せだったよ。本当に…」
過去の話を語る忠の表情は本当に幸せそうだった。だが、その表情は途端に一変し、憎しみの篭った表情になる。
忠「だが、そんなある日。息子は事故にあった。即死だったよ。原因は飲酒運転だった。犯人は会社の重役でね、捕まったが直ぐに無罪放免で釈放になった。恐らく、その立場を利用したんだろう。僕にはそれが納得出来なかった。だから、僕は直接本人に問い詰めたさ。そしたら何て言ったと思う?ああ、あの子供か、それは悪い事をしたな。だが、だからどうだと言うんだ?私はもう無罪だ、今更何を言われても判決は揺るがない。まっ、恨むのなら会社を恨むのだな、って。我慢ならなかった、息子を殺しておいて自分は悠々と生きている事に。だから、僕はその事実を世間に公表しようとした。だが、誰も相手にしてもらえず、僕は会社をクビになったよ。それからと言う物、僕は抜殻の様になった。生きている事の意味を見出せず、自殺を謀ろうといた」
そう語った忠の過去をのび太は沈痛そうな表情で聞いていた。それを見て、忠は更に語る。
忠「だが、その時だったよ。あの男が現れたのは。あの男も君の様に親身になって僕の話を聞いてくれてね。そこで言われたんだ。その会社に復讐をしなくは無いか、とね。正直、したかった。それがいけない事だとは十分理解していた。だけど、息子を失った今の僕にはそれ以外の道は無かった。僕はそれを言ったさ。すると、あの男は、ならその為の力を君に与えよう、受け取りたまえ。そう言って貰ったのがコレだよ」
忠はそう言うと背広の内ポケットからある物を取り出す。それは持ち手が黒く、上に白いドームとその真ん中に赤いスイッチが着いたものだった。
のび太「ゾディアーツスイッチ…」
忠「知ってるのか、君は本当に何者だ」
のび太「それで復讐したんですか?」
忠「ああ、先ずは息子を殺したあの屑だ。いやぁ、奴の最後の瞬間は見物だったね。泣き叫びながら許しを請う姿は本当に醜くて滑稽だったよ。まあ、散々痛め付けて殺したがね。その後、僕は奴の言葉を思い出したんだ。恨むのなら会社を恨むのだなと言う言葉を」
のび太「…まさか…」
忠「僕はその言葉通りに会社を恨み、復讐した。まあ、殺しはしなかったが、かなりの恐怖を植え付けて置いたから何人立ち直れるのやら」
のび太「…」
忠「そして、これで最後だ。僕等の会社の大元の会社。骨川グループ、詰まり此処の一家を皆殺しにすれば僕の復讐は完了する」
のび太「そうですか…」
忠「だから、此処は見逃してくれないか?君を巻き込みたく無いんだ」
忠は真面目な表情でのび太に頼んだ。のび太はこれが本気で頼んでいるのは理解している。この人は心根はとても優しい人だ。現に僕を巻き込むまいとこうして説得していてくれるし、さっきの突き飛ばしもかなり手加減がされているのが分かった。だが…
のび太「出来ません」
忠「のび太くん…」
のび太「貴方の方こそ、こんな事はやめて下さい。貴方の様な人がこれ以上罪を重ねるべきではありません」
だからこそ、此処で退く訳にはいかない。此処で退いたら友達であるスネ夫達も間違い無く巻き込まれるだろう。それに、この人にこれ以上誰かを傷付けて欲しく無い。だから、のび太は此処に留まる事を決める。
のび太「それでも貴方がこれ以上進むと言うのなら…」
《DECADRIVER》
のび太「僕が貴方を止めます」
忠「君は…」
のび太はディケイドライバーを出現させて、腰に装着させる。すると、のび太の腰に銀色のベルトが巻かれる。それに対し、忠は強く握る。
忠「君の気持ちは嬉しい。だが、僕も此処でやめる訳にはいかないんだ‼︎」
忠がゾディアーツスイッチを押すと、身体が黒煙に包まれ狼座の星が浮かび上がる。そして、その星座が身体に付くと黒煙が晴れ、忠の身体は異形になっていた。青緑色の身体に尻尾、狼の様な頭部、黄色の目に両手両足には長く鋭い爪の“ウォルフ・ゾディアーツ”に変わっていた。
ハウンド「さあ、今の僕を止められるかな?」
のび太「止めますよ、絶対!変身!」
《KAMENRIDE DECADE》
のび太はディケイドライバーにカードを装填する。すると、のび太の周りに14の影が現れ、それらがのび太に重なり仮面ライダーディケイドへと変身する。それを見たウォルフ・ゾディアーツは驚きの声をあげる。
ウォルフ「君が…怪人…」
ディケイド「正確には仮面ライダーですけどねっ!」
ディケイドはウォルフ・ゾディアーツに向かい一気に突っ込む。そして、拳を振るい攻撃する。ウォルフ・ゾディアーツは拳に蹴りを当てる事で受け流す。ウォルフ・ゾディアーツは隙によって無防備になったディケイドを切り裂こうとするが、ディケイドはその腕に裏拳を打ち込み止める。更に、そこから腕を曲げ肘鉄を叩き込み、ウォルフ・ゾディアーツが怯んだ処に蹴りを入れ吹き飛ばす。だが、ウォルフ・ゾディアーツは直ぐに受け身をとると、狼の様な四つん這いの姿勢で着地する。
ウォルフ「やはり君は只者じゃ無いね」
ディケイド「そう言う貴方こそ随分と武術の心得がある様ですね」
ウォルフ「何、少しばかり齧っていた程度だよ」
ディケイド「これで齧った程度とは大した才能ですね」
ウォルフ「まっ、現代の社会じゃあ何にも役に立たないけどねっ‼︎」
ウォルフ・ゾディアーツは四つん這いの体勢からディケイドに飛び掛かる。そして、空中でディケイドの頭部に蹴りを放つが、ディケイドはそれを腕で防ぐ。そこからウォルフ・ゾディアーツは更に連続で空中から蹴りを放つ。ディケイドは何とか防いでゆくも、途中で防御を崩されされるがままに蹴りを喰らう。そして、ウォルフ・ゾディアーツは踵落としを放ち、その鋭い爪を利用してディケイドを縦に切り裂く。ディケイドは火花を散らしながら後退りするも、ウォルフ・ゾディアーツは着地して直ぐに距離を詰め前蹴りを放つ。それを喰らったディケイドは空中に上げられ後ろに飛ばされる。その後ろにはスネ夫達の居る部屋の窓があった。
バリーンッ‼︎
ディケイド「ぐあっ‼︎」
スネ夫「う、うわぁー‼︎」
静香「キャアーーーー‼︎」
武「な、何だ⁉︎」
部屋の中に居たスネ夫達は突然の乱入者に悲鳴を上げて驚く。だが、静香は直ぐにその正体に気付きディケイドに駆け寄る。
静香「大丈夫ですかっ⁈仮面ライダーさん!」
ディケイド「くっ、うぅ…。っ!来るな、下がれ‼︎」
ディケイドは苦しみながらも此方に跳んで来るウォルフ・ゾディアーツに気付き警告をするも、静香は咄嗟に動けない。その間にウォルフ・ゾディアーツが部屋に入って来て、ディケイドは静香を抱き抱えジャイアンとスネ夫の居る所に下がる。
静香「えっ…」
ディケイド「大丈夫?」
静香「……!はっ、はい」
ディケイド「そうか、それは良かった」
静香は突然の事に驚くが、今のディケイドにはそれを気にする余裕は無く気付かなかった。そこへウォルフ・ゾディアーツが歩いて近づいて来る。
ウォルフ「もう終わりかい?此方はまだまだいけるのですが?」
ディケイド「はっ、冗談。僕もまだ余裕だよ」
ウォルフ「そうか、では行くよ!」
ウォルフ・ゾディアーツがディケイドに向かって来る。ディケイドは後ろの皆を巻き込まない為、敢えて前へ出て迎え討つ。ウォルフ・ゾディアーツは爪で切り裂こうとするがディケイドはそれを半身になり回避する。そして、ディケイドはカウンターでパンチを繰り出す。そこから、ライドブッカー(ソード)で切り裂く。
ウォルフ「うっ!強いね」
ディケイド「そりゃ、簡単に負けるつもりはありませんからね」
ウォルフ「だけど、これはどうかな?」
すると、ウォルフ・ゾディアーツは部屋の隅に居たスネ夫を素早い動きで捕らえた。
スネ夫「うわぁ〜〜〜‼︎ママ〜〜〜〜〜〜‼︎」
武「!スネ夫‼︎」
静香「スネ夫さん‼︎」
ディケイド「しまった、くそっ!」
ウォルフ「ふふふ、これで形勢逆転だよ」
スネ夫は泣き叫びながら暴れるがウォルフ・ゾディアーツから逃げる事は叶わなかった。武と静香はスネ夫の名を呼び、ディケイドは己の失態に悪態をつく。
スネ夫「うわぁぁぁ‼︎」
ウォルフ「!こら、暴れるな!」
ディケイド「今だ!」
スネ夫は恐怖の余り無茶苦茶に暴れだして、ウォルフ・ゾディアーツがそれに気を取られた一瞬にディケイドはライドブッカー(ガン)で銃撃する。それを喰らったウォルフ・ゾディアーツは後ろに倒れ、倒れてきたスネ夫は咄嗟に入ってきた武が受け止めた。
武「スネ夫、大丈夫か!」
静香「スネ夫さん!」
スネ夫「ジャイア〜〜〜〜ン!うわぁぁぁん〜‼︎」
ディケイド「ふぅ、何とか無事みたいだね…」
スネ夫は助かった事に気付くと武にしがみついて泣き出した。静香も駆け寄りスネ夫の安否を確認する。その光景を見たディケイドは安堵の息を吐き、ウォルフ・ゾディアーツの方に向き直った。
ウォルフ「くうぅ、おのれ…」
ディケイド「これ以上、好きにはさせない‼︎」
《KAMENRIDE SKYRIDER》
そのカードを装填すると、ディケイドの姿が変わっていく。赤い複眼に緑のマスクに銀のクラッシャー、マスクと同じ緑の肩と下半身、オレンジの胸部と腕に手足の黒いグローブとブーツに赤いマフラーの戦士“スカイライダー”だ。
静香「…」
武「すげぇ…」
スネ夫「かっこいい…」
その更なる変身に一同はポカーンとした表情で男子二名はその姿に魅入っていた。ウォルフ・ゾディアーツは少したじろぐ。
ウォルフ「くっ、姿を変えた位でどうにかなるか!はあっ!」
Dスカイライダー「ふっ」
《ATACKRIDE SAILINGJUMP》
Dスカイライダーはウォルフ・ゾディアーツの爪を避けると、ウォルフ・ゾディアーツに掴みかかる。そして、先程自分が割って入ってきた窓からそのまま飛び出る。すると、Dスカイライダーの身体が落ちること無く飛び上がった。
ウォルフ「な、これは…!」
Dスカイライダー「場所を変えて思いっきりやりましょうよ」
ウォルフ・ゾディアーツを掴んだままDスカイライダーは飛び続ける。そして、裏山まで来るとDスカイライダーはウォルフ・ゾディアーツを掴んでいた手を離して落とす。
ウォルフ「うわぁぁぁ‼︎ぐへっ‼︎」
Dスカイライダー「さあ、決着をつけよう」
地面に落下したウォルフ・ゾディアーツはカエルが潰れた様な声を出し、Dスカイライダーは地面に降り立つ。
ウォルフ「やってくれるね…はあっ!」
Dスカイライダー「ふっ、はっ、やあっ!」
ウォルフ・ゾディアーツはDスカイライダーに接近し蹴り放つ。Dスカイライダーはそれを屈んで避けるも、更に連続で蹴りを放ってくる。Dスカイライダーはそれらを捌き続け、最後の蹴りを手刀ではたき落とすと、拳や蹴り、手刀を喰らわせて投げ飛ばす。投げ飛ばされたウォルフ・ゾディアーツはダメージの為か受け身が取れず、背中から思いっきり落ちていった。背中を打ち付けたウォルフ・ゾディアーツは肺の中の空気を一気に吐き出し、その場で苦しみ悶える。
Dスカイライダー「もうやめて下さい。これ以上は…」
ウォルフ「煩い‼︎私は何が何でもやらなくちゃいけないんだ‼︎ウォーーーーーーーーンッ‼︎」
ウォルフ・ゾディアーツはそう叫ぶと、Dスカイライダーに向かって咆哮をあげる。そして、その咆哮は衝撃波となって襲う。Dスカイライダーはそれを空中へ跳び上がる事で回避し、空中で前方宙返りをしてウォルフ・ゾディアーツの後ろに回り込む。そして、振り向き様に回し蹴りを入れ、拳を二発叩き込み前蹴りで吹き飛ばす。
ウォルフ「あがっ!ぐぅぅ…」
Dスカイライダー「これが最後です。本当にやめないんですか?」
ウォルフ「僕は、僕は…まだ‼︎」
Dスカイライダー「そうですか…」
最後まで復讐に拘るウォルフ・ゾディアーツにDスカイライダーは悲しそうに呟くとトドメをさそうとカードを装填しようとする。ウォルフ・ゾディアーツは何とか足掻こうとよろよろと立ち上がる。Dスカイライダーはそんな姿さえも見ていられなかった。その時…
?「もう十分だよ、益野くん」
ウォルフ「!どうして貴方が此処に⁈」
Dスカイライダー「お前は…確か、
突然、現れた男は金井 横瀬。有名な大企業である金井財閥の社長で、度々TVにも出ていた事があった。骨川財閥とはお互いライバル関係の様な立場にある。
ウォルフ「どう言う事だ!まだ、俺の役目は…」
横瀬「貴方の役目は此処で終了です。お疲れ様でした」
ウォルフ「何故だ⁉︎理由を説明しろ‼︎」
横瀬「ふ〜む、そうですね。言うなれば、もう十分と言う事です。騒ぎを起こす役目はね」
ウォルフ「騒ぎを起こす?僕の復讐に手を貸してくれているんじゃ…」
ウォルフ・ゾディアーツの言葉に横瀬は心底馬鹿にした様な表情になりフッと鼻で笑う。
横瀬「ご冗談を。何が悲しくて貴方なんかの為にこんな下らない茶番に付き合わなければならないのです?馬鹿も休み休みに行って欲しい物ですね」
ウォルフ「なっ⁉︎」
横瀬「この際、良いでしょう。話しましょう、私の本当の目的を」
そう言うと横瀬は語り始めた。
横瀬「先ず、私達金井財閥と骨川財閥がライバル関係にあるのはご存知ですね?ここ最近、金井財閥の利益が低迷していましてね。それでどうした物かと考えまして思ったのです。骨川財閥を潰せばもう金井財閥に敵う企業はいなくなる。そして、日本のトップ企業として更に名を馳せられる。正に一石二鳥、これしか無いと思いましたね。ただ、問題はその方法でね。下手に失敗をするとあっという間にマスコミに騒ぎ立てられてしまう。だから、迂闊には動けなかったんです。そんな時です、私があいつに出会ったのは…」
Dスカイライダー「あいつ…?」
横瀬「そう、あの時の私にとっては救世主でしたね。そして、その人物から貰ったのが益野くんが持つそれと…これです」
横瀬はポケットからゾディアーツスイッチを取り出した。
Dスカイライダー「何故お前もそれを⁉︎」
横瀬「いや〜、これは素晴らしい物だ。このスイッチを押すだけで文字通り超人になることができる。最高だよ」
Dスカイライダー「それで?」
横瀬「そして、私は考えました。これらを使えば金井財閥がトップとして君臨する事が出来ると。先ず、当時骨川財閥の子会社の社員だった益野くんにこれを渡し欲望のまま暴れさせる。それで、ある程度大事になった処でこの真実を公開する。そうすれば骨川財閥の利益は右下がりだ」
Dスカイライダー「ちょっと待て。幾ら連続殺傷事件の犯人が骨川財閥の系列だからって、たかが子会社の一社員に過ぎない忠さんじゃあ、利益に影響が出るとは思えない」
横瀬「確かに幾ら何でもそれだけじゃ無理ですね。ですが、それだけじゃ無いとしたら?」
Dスカイライダー「何?」
頭の上に?を浮かべるDスカイライダーを嘲笑うかの様に見下して言い放つ。
横瀬「つまり、益野くんの会社の不祥事も一緒に公表すればどうでしょう。単体では何とも思われない二つの事件。それを一つの事件として公表すれば世間の意見は変わってくる。重役の隠蔽によって犠牲になった子供、その父親の悲劇の復讐劇。ここまで他人の涙を誘う展開なんて早々無いですよ」
ウォルフ「お前…」
横瀬「そして、骨川財閥全体の信用はガタ落ちし、金井財閥は日本のトップ企業に…フッフッフッ、フッハッハッハッハッハッハッ‼︎」
横瀬は空を見上げ大きな声で高笑いをする。それにウォルフ・ゾディアーツは身体をプルプル震わせて、まるで怒りに耐えている様だった。
横瀬「さあ、これで最後です。此処で貴方には死んでもらいます」
ウォルフ「っ‼︎」
横瀬「さっき言ったでしょ?
横瀬はそこまで言い切るとゾディアーツスイッチを押す。すると、黒煙が身体を包みケルベルス座が浮かび上がる。そして、星座が身体に付いて黒煙が晴れると、紫の細身の身体に蛇の様な頭部、更に両腕には白い蛇が付いている“ケルベロス・ゾディアーツ”へと変化した。
ウォルフ「…け…な。巫山戯るなぁぁぁぁぁ‼︎」
Dスカイライダー「なっ、待て。行くな‼︎」
ケルベロス「あらあら、自ら突っ込んで来てくれるとは有難い。では、遠慮無く。はあっ!」
ウォルフ・ゾディアーツはDスカイライダーの制止も聞かずに怒りに身を任せてケルベロス・ゾディアーツに向かって行く。ケルベロス・ゾディアーツはそんなウォルフ・ゾディアーツに右腕を向ける。すると、右腕の蛇が口を開けて伸びていきウォルフ・ゾディアーツの胸を貫いた。
ウォルフ「がはぁっ‼︎」
Dスカイライダー「忠さん!」
貫かれたウォルフ・ゾディアーツは力無く崩れ落ち忠の姿に戻る。Dスカイライダーは忠に駆け寄り支える。
Dスカイライダー「忠さん、忠さん!しっかりして下さい!」
忠「ああ…僕は…僕のしてきた事は…ただの、無駄…だったのか…」
忠は胸を真っ赤に染めて口から血を垂れ流しながら途切れ途切れに小さな声で言う。その表情は何処までも後悔を残した表情だった。
忠「僕は…これから…地獄に行くん…だろうな。息子とももう…」
Dスカイライダー「そんなこと無い!貴方は、貴方は息子さんと二人で安らかに…それで、それで…」
忠の言葉にDスカイライダーは大声で否定する。その声は心無しか涙声の様に聞こえた。その言葉に忠はDスカイライダーに僅かに笑顔を見せる。
忠「ありがとう…その言葉…が、聞けたら…もう…十分…」
Dスカイライダー「忠さん、待って!死んだら…」
忠「…じゃあね…のび太くん…少ない時間だったけど…息子との時間の、様で…楽しかったよ…ありが…」
そこまで言うと忠は静かに目を閉じ力尽きた。Dスカイライダーは暫く無言で忠の遺体を抱えていたが、やがて静かに地面に下ろし寝かせる。
ケルベロス「おやおや、やっと終わりましたか?それにしても感動的な場面でしたね、もうハンカチが手放せませんでしたよ。最もその男は最後まで知らなかった事もありますが…」
Dスカイライダー「…何をだ」
ケルベロス「その男の息子の事故。あれ私が仕組んだんですよ。その男の会社の重役は此方に寝返った奴でしてね、謂わばスパイみたいな者ですね。それでこの状況を作り出す為にわざとそいつに子供を轢かせたんですよ。まあそいつも死にましたけど、どうせ信用も出来ない様な奴です。どうなろうが私の知る処では、がぁっ⁉︎」
Dスカイライダー「…黙れよ…」
得意気に語るケルベロス・ゾディアーツに接近し殴り飛ばす。それによりケルベロス・ゾディアーツは吹き飛ぶも直ぐに体勢を立て直しDスカイライダーを睨みつける。
ケルベロス「お前ッ!どうやら死たいようだなっ!あっ⁈」
Dスカイライダー「お前みたいなのに殺られるか屑蛇野郎が…」
ケルベロス・ゾディアーツの威圧をものともせずに逆に威圧し返す。ケルベロス・ゾディアーツはその迫力に無意識のうちに冷や汗を流していた。
Dスカイライダー「…」
《KAMENRIDE AGITO》
Dスカイライダーは赤い複眼“コンパウンドアイズ”に黒のスーツ、胸部などの金の装甲に同じ金色の二本の角“クロスホーン”を持った超越肉体の金“仮面ライダーアギト グランドフォーム”へと変身する。更にDアギトはカードを装填する。
《FORMRIDE AGITO BURNING》
すると、アギト(グランド)に更なる変化が訪れる。コンパウンドアイズは黄色くなり、全身の金色の部分が赤く染まり、上半身の装甲が大きくなり溶岩の様に赤熱し、クロスホーンが常時展開した様になった燃え盛る業炎の戦士“バーニングフォーム”になる。
Dアギト(バーニング)「…」
ケルベロス「っ!図体が少しデカくなっただけでそれだけだろ!」
ケルベロス・ゾディアーツは感じる威圧感を誤魔化す様にそう言うと両腕の蛇を伸ばしてくる。対する、Dアギト(バーニング)は微動だにせず待ち構える。そして、伸びてきた蛇がDアギト(バーニング)を貫こうとするが…
ケルベロス「な、何っ⁉︎」
Dアギト(バーニング)「…はあっ!」
その攻撃がDアギト(バーニング)を貫く事は叶わず弾かれるだけに終わる。Dアギト(バーニング)はその蛇の片方を片手で掴むと思いっきり引っ張る。それにより、ケルベロス・ゾディアーツはDアギト(バーニング)の方に勢い良く引っ張られる。
Dアギト(バーニング)「たあっ‼︎」
ケルベロス「ぐがっ‼︎」
Dアギト(バーニング)は飛んできたケルベロス・ゾディアーツを力の限り殴りつける。それを喰らったケルベロス・ゾディアーツはボールの様に吹き飛び近くの木を薙ぎ倒し倒れる。
ケルベロス「く、来るなぁぁ!」
Dアギト(バーニング)「ふんっ!」
ケルベロス・ゾディアーツはゆっくりと近づいて来るDアギト(バーニング)に恐怖し、叫びながら周囲の石やさっき倒した木を蛇を使って同時に投げる。だが、Dアギト(バーニング)は立ち止まること無く飛んでくる石や木を無視する。当たった石や木は逆に装甲に当たっただけで破壊される。そして、Dアギト(バーニング)はケルベロス・ゾディアーツの目の前に辿り着く。ケルベロス・ゾディアーツは腰を抜かして情けない声を上げながらDアギト(バーニング)を見上げていた。
ケルベロス「ひっ!か、金なら幾らでも払う!金以外でも宝石でも地位でも何でもやる。だ、だから見逃してくれ!そ、そうだ、何なら手を組まないか?あんたが居れば何だって出来る。も、勿論手柄は山分け、いやあんたの取り分を優先する!だ、だから…」
Dアギト(バーニング)「…お前と話す事はもう何も無い」
《FINALATACKRIDE A・A・A・AGITO》
ケルベロス・ゾディアーツの命乞いを無視してDアギト(バーニング)は右手を握り込み炎を溜める。それを見てケルベロス・ゾディアーツは逃亡を謀ろうとするがDアギト(バーニング)はそれを許さず、左手でケルベロス・ゾディアーツの首根っこを掴むと上へ放り投げる。情けない声を上げながら落下して来るケルベロス・ゾディアーツに向かって炎力を込めたパンチ“バーニングライダーパンチ”が炸裂し、爆発を起こす。そして、その中から気絶した横瀬が落ちて来る。ディケイドの姿に戻り、暫くその場で既に息絶えた忠を茫然と見ていたが、その場に一人の警官が現れる。
警官3「こ、これは一体…」
ディケイド「…あの」
警官3「はっはい!」
いきなり声をかけられた警官は緊張した様子で返事をする。だが、その声の中に恐怖が一切含まれていないのが不思議だったが、それよりも今やるべき事を優先した。
ディケイド「そこの人をお願いします」
警官3「この人…死んでる!これは…」
ディケイド「…その人に何の罪も無いとは言わない。けど、その人はただ普通に生きたかっただけなんだ…」
警官3「そ、それはどう言う…」
ディケイドは警官の話は聞かずにそのまま去ろうとする。警官は事態が呑み込めず混乱していたが、自分が言いたかった事を思い出す。
警官3「あ、あの!この前は助けて頂きありがとうございました!」
ディケイド「えっ?」
ディケイドは警官の思いがけない言葉に思わず足を止めて振り返る。警官は緊張した面持ちで言葉を続けた。
警官3「僕は…以前助けて頂いた者で、永山 啓と申します!」
ディケイド「あ、ああ、あの時のか」
ディケイドは啓が以前、ホイール・ドーパントに襲われていた警官だった事を思い出した。
ディケイド「あの時は大丈夫だった?」
啓「はい!お陰様で無事でした。それで…その、お名前を伺っても宜しいでしょうか?」
ディケイド「…」
啓「い、いえ、やっぱり良いです。貴方が言いたくなければ…」
ディケイド「…仮面ライダー」
啓「へっ?」
啓は突然、ディケイドの言った言葉に首を傾げる。それに構わずディケイドは続ける。
ディケイド「通りすがりの仮面ライダーだ…」
啓「仮面ライダー…?」
ディケイド「それじゃあ」
啓「あっ、ちょっと…」
ディケイドはそう言うとその場から姿を消した。啓は辺りを見回すがもうディケイドは居ない。啓はディケイドの捜索を諦めて、彼から託された事をやり遂げる為、救急車と仲間の警察を呼んだ。
翌日
金井のやった事は全て暴露てTVや世間を賑わせた。金井財閥は倒産、例の寝返った重役も会社からクビを言い渡され再逮捕された。そして、益野 忠の事もTVで報道された。怪人の事は知られる事は無かったが世間からは横瀬の言った通り運命を狂わされた悲劇の復讐者として同情を浴びた。
のび太「此処か…」
のび太は小さな花束を持ってあるお墓の前に来ていた。その墓には益野と書いてある。のび太は持って来た花束をお墓の前に置いた。
のび太「すいません。本当はもっと大きなのを持って来られれば良かったんですが、お小遣いが無くて…今度はお供物と一緒に持って来ますから」
のび太はそう言うとお墓の前にしゃがみ込み目を閉じて手を合わせる。そして暫くして、のび太は目を開けて立ち上がる。
のび太「じゃあ行きますね忠さん。どうか息子さんと安らかに」
のび太は墓の前から立ち去り少し進んだ処で…
ーーありがとうーー
のび太「っ!…どう致しまして…」
ふと、声が聞こえた気がして振り向くもそこには誰も居なく、ただ供えた小さな花束が風によって微かに揺れているだけだった。しかし、のび太には一瞬見えた様な気がした。自分と同じ位の男の子と一緒に此方に笑いかけている忠の姿が。のび太は正面に向き直り家に向かって歩いて行く。その後ろでは、忠の墓が一筋の太陽の光に暖かに照らされていた。
後書きの間
のび太「何?後書きの間って?」
奈々「作者が急に思い付いて採用したらしいよ」
ドラえもん「何やってんだろ、あいつ…」
郎夜「知らん…」
Δデルタ「では、今回の怪人&アイテムの紹介だ!」
ウォルフ・ゾディアーツ
狼座をモチーフとしたゾディアーツ。能力はその身軽さと鋭い爪、更に咆哮を衝撃波として飛ばす事も。戦闘では主に、その身軽さと鋭い爪を活かした白兵戦で真価を発揮し、咆哮の衝撃波での遠距離攻撃も織り交ぜる。
ケルベロス・ゾディアーツ
ケルベルス座をモチーフとしたゾディアーツ。能力は自らな意思で自由に伸ばしたり操作できる両腕の蛇。戦闘では両腕の蛇を鞭の様に使用した近〜遠距離戦や周囲の物体を蛇によって投げ飛ばす遠距離攻撃をするなど全ての間合いにおいて戦闘が可能。ただ、攻撃のバリエーションが乏しいのとパワーの低さが欠点。しかし、両腕の蛇は別でパワーが凄まじい。
郎夜「今回はキレたのび太の大暴れか…容赦が無いな。まあ、俺もこんな奴に容赦する気なんて更々無いけどな」
奈々「今回のは私も同意です!」
ドラえもん「そう言えば、のび太くん。何だか口調変わってたね」
のび太「あ〜、あれはキレるとたまになるんだよ。まあ、よっぽどキレない限りは無いけどね」
奈々「後はあの永山 啓さんですね」
ドラえもん「何だか協力者になるフラグっぽいのが立ってる気がするけど」
郎夜「てか、ありゃなるだろ。普通に考えて」
のび太「だよね」
ドラえもん「作者、もうちょっと隠すとか出来ないの?」
Δデルタ「僕の技量では無理だ!」
郎夜「威張ってんじゃ無えよ!下手くそ!」
奈々「まあまあ、落ち着いて下さいよ師匠」
Δデルタ「んじゃま、今回はここら辺にしとくか」
ドラえもん「そだね」
奈々「それでは皆さん、今回はここまで。次回またお会いしましょう。次回もヨロシクお願いします♪」