ドラえもん のび太の仮面冒険記   作:Δデルタ

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Δデルタ「よ、漸く投稿…出来た…」←力尽きる
のび太「おい、起きろ」
ドラえもん「そうだ。まだ、後編あるんだから」←思いっきり踏みつける(注:129.3Kg)
Δデルタ「ぐおっ⁉︎」
郎夜「焔崩しさん、投稿遅くてすまねぇ。この愚作者に変わって謝罪する」
奈々「まったく、うちの作者は…」
幸「本当だよ…。さて、今回と次回は焔崩しさんとのコラボ回だよ。じゃあ、第7話を…」
一同「どうぞ‼︎」


第七話-前編-

裏山

 

深夜の裏山に、暗闇の中に一人佇む人影があった。その人影の姿は初めこそ分からなかったが、空に浮かぶ三日月を隠していた雲が消えると、その光が裏山をぼんやりと照らし、その姿が見えた。それはベージュ色のコートを纏い、フェルト帽を被った姿の鳴滝だった。鳴滝は、無表情で空を見上げていた。

 

鳴滝「この世界も…何れ破壊されるだろう…。ディケイド、貴様は自分の世界すらも自らの手で壊す。だが、その前に私は貴様を…」

 

そこまで言うと鳴滝は急に言葉を切り、ゆっくりと後方に振り返る。そこには、先程まで居なかった筈のワインレッドのスーツを着た男、キョウが不気味な薄ら笑みを浮かべて立っていた。鳴滝はキョウに向き直る。

 

鳴滝「何の用だ、キョウ」

キョウ「いえいえ、綺麗な月が出ていたのでね、少し夜の散歩でもとおもいまして。そしたら、偶然あなたを見かけたものですから挨拶をと」

 

キョウは鳴滝の問いに、少し芝居掛かった様な口調で返す。それに鳴滝は暫く疑いの目を向けるが、キョウが相変わらず不気味に薄ら笑みを浮かべているのを見ると、ふんっ!と鼻を鳴らすと無表情に戻る。

 

鳴滝「随分と余裕だな。お前はTXガイアメモリの収集で忙しいのではなかったのか」

キョウ「その心配ならご無用です。順調に集められていますからね」

 

すると、キョウはポケットから大量のTXガイアメモリを取り出す。それらのTXガイアメモリは様々なイニシャルの物があった。

 

キョウ「いやぁ、私もまさかこの期間で、ここまでのメモリを集められるとは思ってませんでした。我々“財団X”の力をもってすればメモリを探すことなど雑作もないという事でしょうか」

鳴滝「何が我々財団Xの力だ。それがこの世界に散らばったのは、お前らの不手際が原因ではないのか?」

キョウ「ふむ、確かにそうでした。すっかり、その事を失念していました。ですが、貴方だって我々の力を借りて、この世界に怪人やら何やらを送り込んでいるのではないのですか?」

鳴滝「私が送り込んでる訳ではない。もともと、世界間の壁が不安定になり、勝手に怪人どもがこの世界に雪崩れ込んできてるのだ。私は、そこに少し手を加えているだけだ」

キョウ「似たようなものでしょうに。屁理屈ばかり…」

 

キョウは鳴滝の言葉に呆れて、肩を竦める。しかし、鳴滝はそんな態度を取られても表情一つ変えなかった。その時、キョウは思い出したように再び鳴滝に話しかける。

 

キョウ「そうそう、面白い事があったのを思い出しました」

鳴滝「…何だ」

キョウ「おやおや、気になるのですか?」

鳴滝「どうせ、気にならないと言っても無理矢理聞かせようとするだろ。いいから、話したいならさっさと話せ」

キョウ「では、遠慮無く。実は、偶然なんですがこの世界と非常に酷似した世界を見つけたんですよ」

鳴滝「そうか…それで?」

キョウ「おや?興味が湧かないのですか?」

 

キョウは自身の予想していた反応をしなかった鳴滝に首を傾げる。それを見た鳴滝は相変わらずの表情で淡々と話す。

 

鳴滝「別に特別珍しくもないだろう、似たような世界など。現にクウガの世界とアギトの世界だって、似てると思うが?」

キョウ「いえ、それがね…そこに住んでる人物も酷似、殆ど一緒なんですよ」

鳴滝「何?」

キョウ「ですからね、そこにはあののび太くんもいたんですよ。勿論、別世界のですが」

鳴滝「…そうか」

キョウ「これにも興味は沸きませんか?」

鳴滝「別に。並行世界の野比のび太だったとしても、ディケイドでないのならば用はない」

 

キョウは鳴滝のつまらなさそうな様子に若干呆れるが、直ぐに調子を取り戻す。そこで、鳴滝が急に話しかけだした。

 

鳴滝「…おい、私も暇ではない。用があるならさっさと言え」

キョウ「…相変わらず、底が知れませんね。分かりました。実は…」

 

キョウは鳴滝に自分の目的を話す。それを聞いた鳴滝は一瞬目を見開き、顔を顰める。

 

鳴滝「貴様は何を…」

キョウ「ただの実験(・・)ですよ」

 

月の明かりに僅かに照らされたキョウは不気味に笑いながらそう言う。その表情を見た鳴滝は背筋に悪寒が走るのを確かに感じた。

 

鳴滝「…良いだろう。その実験とやらに協力してやる」

キョウ「助かります。では、私はこれで」

 

次の瞬間、一瞬だけ月が雲に隠れ、再び月に照らされた場所にはもうキョウはいなかった。鳴滝はそれを見届けると、踵を返して去っていった。

 

 

のび太の部屋

 

のび太「ふぁ〜」

 

日課である訓練の為に起きたのび太は、ドラえもんに気付かれない様に準備をしていた。だが、日課とは言ってもやはり眠気は完全には醒めていないようであった。

 

のび太「ムニャムニャ…あれ?そういえば…?」

 

のび太はここでドラえもんに続く二人目の居候の姿がない事に気付いた。実は、のび太の知らぬ間に居候になった幸であるが玉子とのび助に気に入られ、その幸が二人に頼んでのび太の部屋で暮らす事になったのだ。のび太は勿論、反論はしたのだが流石に両親相手には敵わず、結局のび太の部屋で暮らす事に決まってしまった訳である。のび太は部屋を軽く見回してみるが、やはり居ないようであった。

 

のび太「まあ、幸ちゃんの事だから大丈夫でしょ。それに幸ちゃんがフラフラどっか行くのは今に始まった話じゃないし。そのうち戻ってくるだろう」

 

そう結論づけたのび太は自身の勉強机の鍵付きの引き出しからDフォンを出しポケットに入れ、ポラロイドカメラを首にかけると家族を起こさないように家から出た。

 

のび太「よし。じゃあ、早速行くとするか」

 

そう言いのび太は裏山に向かって行った。その時、いつも通りのランニングとは思えない程の速さのランニングで向かったのは言うまでもない。

 

 

裏山

 

キョウ「ふふっ、いよいよですね」

鳴滝「私には、お前が理解できないな。何故、こんな面倒なことを?」

 

裏山の一番上にある千年杉の近くにキョウと鳴滝はいた。鳴滝の質問にキョウはいつも通りの口調で答える。

 

キョウ「何度も言ったと思いますが?実験(・・)ですよ」

鳴滝「…もういい」

 

キョウの答えに、これ以上の追求を諦めた鳴滝は口を閉ざす。それを見たキョウも無言になり、しかしその顔には不気味な笑みが張り付いていた。そんな事が起こっているとも露ほども知らないのび太は裏山に到着して、いつと訓練している場所に向かった。しかし、そこにはのび太が予想していなかった人物がいた。

 

幸「ん?おはよう、のび太。意外と遅かったね?」

のび太「な、何でここに?」

幸「何で?のび太が此処で訓練してるっていうから、僕もそれに付き合おうかなと思っただけさ」

のび太「何でこの場所が…。いや、やっぱいいや」

 

のび太は何故幸が自分の訓練を知ってるのか聞こうとしたが、何時ものようによく分からない答えが返ってくると思いやめた。そんなこんなで幸が訓練に参加することになった。

 

幸「で、訓練って何やってるんだい?」

のび太「うん。取り敢えず、徒手格闘と剣、それから射撃での訓練かな。日によってや若干変わる事があるけど、これが基本的な内容だよ」

幸「ふ〜ん。意外と少ないね」

のび太「まあ、一人だからね。思った程、やる事がないんだよ」

 

幸はのび太の言葉に納得すると、何やら思案顔になる。のび太はそんな幸の様子を見て、声をかける。

 

のび太「どうしたの?」

幸「いや…。のび太、新しい訓練内容を思いついたよ」

のび太「えっ?」

 

のび太は幸の突然の提案に驚く。そんなのび太の様子を見て、幸は思いついた事を説明する。

 

幸「組み手なんかどうかな?」

のび太「く、組み手?」

幸「どうかな?」

のび太「いいけど…。珍しいね」

幸「ん?何が?」

 

幸はのび太の言葉に首を傾げる。

 

のび太「いや、だって幸ちゃん格闘も強いけど、自分から正面きって戦うようなタイプじゃないし」

幸「ふ〜ん、成る程。確かにそうだけど、僕だって全く自分が戦わない訳じゃないよ?」

のび太「確かにそうだったね。…ありがとう」

幸「えっ?」

のび太「僕の為に訓練に付き合ってもらっちゃってさ」

 

幸は突然のお礼に戸惑うが、のび太の言葉を聞くと笑みを浮かべる。

 

幸「別にお礼を言われる程の事じゃないよ。これは僕がやりたくてやってるだけなんだ。だから、僕がお礼を言われる必要はないよ」

のび太「それでも、だよ。幸ちゃんがどう思ってるにしろ、僕は訓練に付き合ってもらってるだ。だから、ありがとう」

幸「…全く、のび太って変なところで真面目になるね。けど、そこまで言われたらそのお礼、受け取らない訳にもいかないね」

のび太「そう。さて、そろそろ始めようかな。何か僕の訓練とかで気付いた事があったら、教えてね」

幸「分かってるよ。その為に僕がいるんだから」

 

のび太は首のカメラを幸に預けると、何時もの訓練を始めた。その中で、幸に気づいたことを指摘してもらいながらやっていた。のび太は、今まで一人でやってた時よりも、この訓練の時間が充実していると感じていた。そして、何時ものメニューを粗方終わらせた後、幸の提案した組み手に移ることした。

 

のび太「幸ちゃん、そろそろ組み手やらない?」

幸「そうだね。じゃ、始めようか」

 

そう言いつつも、幸は構える気配が全くない。それを不思議に思っていたのび太だったが、幸はディエンドライバーとカードを取り出した。

 

のび太「へっ?」

《KAMENRIDE KAIXA》

 

面食らうのび太をよそに、幸は構わずカードを装填し撃ち出す。すると、のび太の前に紫のエックスファインダーに黄色のダブルストリームが身体を走るギリシャ文字のΧを模したライダー“仮面ライダーカイザ”が現れた。カイザは右腰のホルスターから自身と同じΧを模した剣・銃一体型の武器“カイザブレイガン”を抜き、ミッションメモリーを装填する。すると、カイザブレイガンから黄色に輝くフォトンブレードが生成され、ブレードモードとなる。そして、カイザブレイガンを逆手に構えてのび太に襲い掛かる。

 

のび太「ちょっ⁉︎」

 

のび太は幸の突然の行動に戸惑いながらも、自分に向けて振るわれたカイザブレイガンを躱す。しかし、カイザはそこから更に連続でカイザブレイガンを振るう。のび太は襲い掛かるカイザブレイガンを次々と躱しながら、この状況の原因である幸を問い詰める。

 

のび太「ちょっと!これ、どういう、こと⁉︎」

幸「どういうことって、さっき言った通りだけど?組み手だよ組み手」

のび太「いや、幸ちゃんが、相手、してくれるんじゃ⁉︎」

幸「それでも良いけど、こっちの方が面白そうだったからね」

のび太「面白そうって…こっちはそれどころ、じゃっ!」

幸「ほらほら、余所見してると危ないよ〜」

 

幸の答えにのび太が更に問い詰めようと視線を僅かに幸に向けた瞬間、振るわれたカイザブレイガンがのび太の顔の真横を通過する。それにより、髪の先が少し切られ、のび太の意識が強制的にカイザに向かされる。

 

のび太「やるっきゃないか。変身!」

《KAMENRIDE DECADE》

 

Dフォンからディケイドライバーを召喚したのび太はディケイドに変身し、ライドブッカーのソードモードでカイザブレイガンを受け止める。そして、一気に上へ弾き、がら空きの胴を切り裂こうとする。しかし、カイザは素早くバックステップをする事により、ギリギリで回避する。お互いの距離が開いた事で、ディケイドもカイザも自分の得物を構えなおして、対峙する。

 

ディケイド「何でこんな事に…」

 

ディケイドは今の現状を嘆きながらも、攻撃を仕掛ける。ライドブッカーを横薙ぎに振るうが、カイザは上体を後方へ僅かに反らすことで苦もなく回避する。そして、逆にカイザブレイガンを斜め下から切り上げる。それに対し、ディケイドは振るわれたカイザブレイガンにライドブッカーをぶつける。火花を散らしながら鍔競り合うが、ディケイドはライドブッカーに更に力を込めて、カイザブレイガンを下へと押し込める。カイザはカイザブレイガンから片手を離して、裏拳を放つ。

 

ディケイド「ふっ、たあっ!」

 

しかし、ディケイドもライドブッカーから片手を離し、それを受け止める。そして、無防備の背中に蹴りを見舞う。蹴りを諸に喰らったカイザは、体勢を崩しながら前へよろける。ディケイドはそこに更に畳み掛ける。体勢を崩しながらも前を向いたカイザに連続で斬撃を繰り出し、最後に渾身の蹴りを入れる。それにより、カイザは思いっきり吹き飛ぶ。

 

ディケイド「これでっ!」

《FINALATACKRIDE DE・DE・DE・DECADE》

 

ライドブッカーを構えたディケイドの前に15枚のホログラム状のカード型エネルギーが縦に重なるように並ぶ。そして、ディケイドがその中を走ると、カードを走り抜ける度にライドブッカーにエネルギーが溜まる。それを見たカイザは、よろよろと立ち上がり腰についている携帯“カイザフォン”を下に回転させ、ENTNRを押す。

 

《Exceed Charge》

 

カイザブレイガンを一度ガンモードにする。そして、コッキングレバーを引くと、銃口に黄色のエネルギーが集まる。そして、トリガーを引くとそのエネルギーが発射された。しかし、それはホログラム状のカード型エネルギーに阻まれ、ディケイドに届く事は無かった。それでも、カイザはフォトンブラッドが集まったブレードモードとなったカイザブレイガンを逆手で後ろで振り上げ、構える。

 

ディケイド「だああああっ!」

 

ディケイドは最後のカードを通り抜け、エネルギーの溜まったライドブッカーで敵を切り裂く“ディメンションスラッシュ”を繰り出す。カイザもディケイドに向かって駆け出し、黄色のX状の光になって相手を一瞬で切り裂く“カイザスラッシュ”を発動する。そして、二人はお互いの丁度真ん中の位置でぶつかりあった。しかし、勝負は一瞬だった。ディメンションスラッシュとカイザスラッシュがぶつかり合った瞬間、ディメンションスラッシュが競り勝ち、そのままカイザを切り裂いた。切り裂かれたカイザはその場で爆発する。ライドブッカーを振り切った状態で静止していたディケイドは変身を解いて、溜め息を一つ吐いた。

 

のび太「はあ〜…。朝から、これは辛い…」

幸「お疲れ様、のび太。流石だね」

 

労わりの言葉を掛けられたのび太だったがそれには答えず、こんな目に合うことになった元凶をジト目で睨む。それに幸は全く動じず笑みを崩さない。それを見たのび太は呆れた表情になり、さっきよりも大きな溜め息を吐く。

 

のび太「幸ちゃん」

幸「何?」

のび太「組み手は偶にで良いよ、うん…」

幸「そう、分かったよ。あ、あとこれ」

 

そう言って手渡されたのは、冷えたスポーツドリンクだった。それをのび太はお礼を言いながら受け取り、座り込んで蓋を開け一気にかなりの量を飲む。

 

のび太「ぷはぁ〜!これだけ動いた後はやっぱり美味しいや!でも、いつの間にこんなの…ま、いっか」

 

のび太は幸がいつの間にか、スポーツドリンクを持っていた事に一瞬疑問を抱いたが、さっき自分が戦っているときに用意してくれたんだろうと思い、考えるのをやめた。そして少し休憩した後、のび太はもう一つの目的を思い出した。

 

幸「どうしたの?」

のび太「ちょっとね。お〜い、出ておいでよ!」

 

のび太がそう呼ぶと、近くの茂みから葛葉が出てくる。葛葉は飛び出してくるなり、のび太に飛びつく。のび太はそれに少々、驚きながらも難なく受け止める。

 

のび太「ふふっ、どうしたの?くすぐったいよ」

葛葉「キューン」

 

のび太に抱かれたまま頭を擦り付ける葛葉に、のび太はくすぐったさを感じながらも撫でる。そんな感じで戯れていたが、そこで幸が声をかけてきた。

 

幸「のび太、その子狐は?」

のび太「ああ、葛葉って言うんだ。かわいいでしょ?」

幸「へぇ〜」

葛葉「キュッ!」

 

幸はそう言いながら葛葉に手を伸ばすが、葛葉はその手から逃げる様にのび太の腕から抜け出し、のび太の肩に移る。

 

幸「どうやら、僕の事がお気に召さなかったみたいだね」

のび太「多分、幸ちゃんのこと怖がってるんだよ。僕も最初の方はそんな感じだったし」

幸「そうなんだ」

のび太「うん。だから、これからだんだん慣れてくるよ。そうすれば、怖がらなくなるよ。ね?葛葉」

 

のび太はそう言って、葛葉の頭を撫でる。葛葉も嬉しそうに鳴き声をあげる。それから、いつもの様に餌をあげ、少し遊んだ後に葛葉は山の中に帰っていった。それを見たのび太と幸は立ち上がる。

 

のび太「そろそろ、帰るとしようかな」

幸「そうだね」

 

二人は帰るために裏山を降りていく。しかし、その途中で急に足を止めた。そのまま二人は暫く動かなかったが、のび太はコピーロボットを取り出すと、ボタンを押して自分とそっくりの姿にする。そして、コピーロボットに自身のタケコプターを渡し、指示を出す。

 

のび太「少し時間が掛かりそうだから、皆が起きないうちに帰って誤魔化しといてくれない?」

コピーロボット「うん、分かったよ」

 

そう言うとコピーロボットはタケコプターをつけて、空を飛んで家に帰って行った。それを見届けたのび太は再び前方を向く。そこには何も居なかったが、暫くすると奥の木々の間から何かの影が近づいてきた。そして、その影がのび太達の前に出た時、その姿が明らかになった。青色の複眼、大型の背中の羽、そして貴族の様な風格を持つクジラの様な怪人“水のエル”だった。

 

のび太「こいつは…」

幸「成る程、これは少し面倒くさい相手だね」

 

のび太達が水のエルに驚いていると、水のエルは徐に右手を上げて、こちらに向ける。そして、口を開いた。

 

水のエル「人でない者は滅びなければならない…」

のび太「ふっ!」

幸「よっ!」

 

水のエルは念動力で衝撃波として放ってくる。のび太と幸は、それを左右に飛び退くことで回避する。そして、のび太はディケイドライバーを、幸はディエンドライバーを構える。

 

のび太「変身!」

《KAMENRIDE DECADE》

幸「変身!」

《KAMENRIDE DIEND》

 

二人はお互いのドライバーにカードを装填して、ディケイドとディエンドに変身した。ディケイドはガンモードのライドブッカーを、ディエンドはディエンドライバーで水のエルに狙いをつける。そして、二人同時に引き金を引き、連射した。ディケイドとディエンドの同時射撃を喰らった水のエルは、火花を散らしてよろめくが直ぐに立て直すと、今度は先に鯨の尾びれのような物がついた杖“怨嗟のドゥ・サンガ”を構えて、向かってきた。それを見たディケイドはライドブッカーをソードモードにする。そして、ディケイドも水のエルに向かっていく。

 

ディケイド「はああっ!」

水のエル「ふんっ!」

 

ライドブッカーと怨嗟のドゥ・サンガがぶつかり合い、鍔競り合いになる。ディケイドはライドブッカーを握る両腕に力を込める。水のエルも負けじと力をいれる。両者の力は拮抗していて、お互いに一歩も引かない。

 

《KAMENRIDE ZOLDA》

《KAMENRIDE TODOROKI》

ディエンド「のび太!」

 

ディエンドは、ディエンドライバーで緑の身体に戦車の意匠が取り込まれている銀の装甲に包まれたミラーライダー“仮面ライダーゾルダ”に濃い緑色の身体に頭部の一本角、顔の隈取りと手は銀色で胸部にギターの弦を模した斜め掛けの装甲を纏った音撃戦士“仮面ライダー轟鬼”を召喚した。ディエンドはディケイドの名前を呼び、ディケイドはそれだけでディエンドの言わんとする事を察して鍔競り合いを中断してそこから飛び退く。その直後、ディエンドとゾルダはディエンドライバーとゾルダの専用武器であるハンドガン型のバイザー“機召銃マグナバイザー”で、水のエルを狙い撃つ。更に、そこへ轟鬼が飛びかかっていき、拳に雷を纏わせて攻撃する技“鬼闘術 雷撃拳”を連続で浴びせる。

 

水のエル「ぬぅ…」

ディケイド「はあっ!」

 

今までの連続攻撃のダメージでふらつく水のエルに、ディケイドは休む暇も与えずに向かっていく。そして、ライドブッカーで連続で斬りつける。轟鬼もエレキギター型の音撃武器“音撃弦 烈雷”を逆手に構え、水のエルを斬りつける。そして、ディケイドと轟鬼は見事な連携を取りながら斬撃を放つ。水のエルも防御しつつ反撃をしようとするも、後ろで控えているディエンドとゾルダが射撃を繰り出し、それを許さない。段々ダメージで動きが鈍ってきた水のエルを見て、ディケイドと轟鬼は同時に蹴りと拳を放ち、距離を開ける。

 

水のエル「ぐっ⁉︎う…うぅ…がぁ…」

ディケイド「さてと…」

ディエンド「決めるかな」

《FINALATACKRIDE DE・DE・DE・DECADE》

《FINALATACKRIDE DI・DI・DI・DIEND》

 

ディケイドの前に15枚のホログラム状のカード型エネルギーが、ディエンドの前にはゾルダと轟鬼を吸収しながら円形のエネルギーが展開される。そして、ディケイドがディメンションキックを放つ。水のエルは念動力と怨嗟のドゥ・サンガを盾に耐えるが、後から放たれたディメンションシュートを喰らい、それにより体勢が崩れた処にディケイドが水のエルの防御を突き破り、ディメンションキックで貫く。

 

水のエル「ぐ、ぐぅ…グオオオォォォッ‼︎」

 

二人の必殺技を立て続けに喰らった水のエルは、その場でよろめきながら身体中から火花を散らし、頭上に天使の輪の様なものを浮かべながら爆散した。それを見たディケイドとディエンドは変身を解除する。

 

のび太「これで終わり、かな?随分、呆気ないような…」

幸「う〜ん、のび太の言うことも分かるけど…何か隠してる様な感じはしなかったし、大丈夫だと思うけどね」

のび太「そっか…そうだよね。それじゃ、今度こそ帰ろうか。朝からこんな戦ったから疲れちゃったよ。だから、もう一回寝るとするかな」

幸「そんな時間あるの?」

のび太「…あ」

 

のび太と幸は裏山を降りていった。だが、二人はまだ知らなかった。この世界全体を巻き込む異変がこれから始まると言うことを…。ところ変わって裏山の頂上。そこでずっと佇んでいた鳴滝とキョウだったが、やがてキョウが笑みを浮かべた。

 

キョウ「来た…!」

 

そこに現れたのは、青色に輝く野球ボール位の大きさの球体だった。その球体は、フワフワと浮遊しながら鳴滝の手に収まる。それを見たキョウは益々、笑みを深める。

 

キョウ「これが!」

鳴滝「ああ。さっき、ディケイドに倒された怪人のエネルギーの塊。謂わば、魂の様なものだ」

キョウ「では、早速お願いしますね」

鳴滝「…本当にやるんだな?こんな事をすれば、何が起こるのか私にも分からんぞ」

キョウ「だからですよ。分からないなら、試してみるのが一番でしょう?」

 

それを聞いた鳴滝は、次元の壁を出現させる。すると、その中から先程、ディケイドとディエンドに倒された筈の水のエルが出てきた。そして、鳴滝は手の中の青色の球体を水のエルに向ける。すると、青色の球体は一人でに水のエルに向かい、瞬く間に溶けるように吸い込まれていった。

 

鳴滝「これで…」

キョウ「始まる!平行世界とはいえ自身と全く同じ存在をその身に宿した時、一体どうなるのか!さあ、その答えを見せてくれッ‼︎」

水のエル「ぐっ…⁉︎くっ…な、何…が…おこっ…て…こ、これはぁぁぁぁぁぁッ⁉︎」

 

水のエルは自身の中に入ってきたものに違和感を覚えるが、直後その身体が青色の光に包まれる。そして、自身の身を壊さんばかりに溢れてくる凄まじいまでの力に驚き、苦しみもがく。水のエルは自分の身に何が起こっているのか分からず、只々自身の奥底から溢れ出る力を抑え込もうと、自らの力と理性を総動員させる。しかし、抵抗虚しく水のエルの意識は圧倒的な力の前に飲み込まれてしまう。更に水のエルの身体が一際強い輝きを放ったかと思うと、水のエルは青色の光となって何処かへ飛んで行ってしまった。

 

鳴滝「何て事だ…!これは…」

キョウ「素晴らしい…素晴らしいぞっ!これ程までとは…!ふっはっはっはっ!ふははははははっ…」

 

水のエルが消えた後の裏山の頂上に残ったのは、目を見開き驚愕と恐怖の表情を浮かべる鳴滝と狂ったような笑顔で片手で顔を抑えながら狂気を感じさせる笑い声をあげるキョウだった。だが、この実験の齎した影響は既にこれだけに収まっていなかった。裏山の更に別の場所で次元の壁が出現した。そして、そこから二つの人影が飛び出てきた。

 

???A&B「うわっ⁉︎」

???A「イッテテ…此処は?」

???B「えっと…どうやら裏山みたいだね」

 

飛び出てきた???Aは、飛び出て来た時の痛みに悶えながら場所を問い、???Bは場所を特定する。それを聞いた???Aも立ち上がって周りを見回して確認する。

 

???A「本当だ…。さっきまで僕の部屋にいた筈なのに。一体どうなってるのさ?」

???B「分からない。でも、此処が裏山って事は僕たちの町に違いない。だから、町に行って皆に話してみよう」

???A「うん。僕、何だか嫌な予感がするよ」

???B「僕もだよ。だから、早く行こう」

 

そう言うと、二つの人影は町の方に向かって裏山を降りていった。

 

野比家

 

野比家ののび太の部屋では準備を終え、ランドセルを背負ったのび太と幸がいた。

 

ドラえもん「二人とも、忘れ物は無いね?」

のび太「僕は大丈夫。幸ちゃんは?」

幸「大丈夫、問題ないよ」

 

今朝の朝食の時間に玉子の話によると幸も学校に通う事になったとの事だった。まあ当然と言えば当然なのだが、正式な戸籍や住民票などもないのにどうやって学校に通う事が出来るようになったのか。

 

幸「そこは気にしちゃいけないよ」

のび太「幸ちゃん、急にどうしたの?」

幸「いや、細かい事は気にしちゃいけないって事を画面の向こう側の皆さんにね」

のび太、ドラえもん「?」

玉子「二人とも、そろそろ時間よ〜!」

幸「は〜い!ほら、行くよのび太」

 

若干メタっぽい事を言う幸に首をかしげるのび太とドラえもんだった。その時、下から玉子の声が聞こえてきた。幸がそれに返事をするとのび太の手を引く。

 

のび太「うん。ドラえもん、行ってくるね」

幸「行ってきます」

ドラえもん「行ってらっしゃ〜い」

 

幸はのび太の手を引きながら部屋を出て、玄関まで行く。玄関では、玉子が待っていた。

 

玉子「準備できたのね。幸ちゃん、そのランドセル如何かしら?」

幸「はい!とっても気に入りました。ありがとうございます!」

玉子「いいのよ、それくらい。でも、喜んでくれて何よりだわ。気をつけてね」

幸「はい!行ってきます!」

のび太「行ってきます」

玉子「行ってらっしゃい」

 

のび太と幸は玉子に見送られながら家を出た。その様子を玉子は微笑ましそうに見ていた。学校へ行く道を歩いていたのび太は幸の様子を見て、ある事に気付いた。

 

のび太「ねぇ、学校が楽しみなの?」

幸「え、如何して?」

のび太「だって朝から何だか楽しそうじゃない。だからかな」

幸「まあ、確かにそれも無くはないんだけど…。(一番の理由はのび太なんだけど、言ったって気付いてくれないよね…)はぁ〜」

のび太「どうしたの、溜息なんてついちゃって」

 

幸がのび太の鈍感さに頭を悩ませて溜息を吐くと、その悩みの種になっているとは全く気付いていないのび太が呑気に溜息の理由を聞く。それを幸は何でもないと言い、そこから色んな話題に移る。それから楽しそうに話していた二人だったが、不意に幸が立ち止まって周りを見る。それに気付いたのび太は不思議に思い、声をかける。

 

のび太「どうしたの?急に立ち止まっちゃって」

幸「うん。…のび太、こっちから行こう」

のび太「え、如何して?こっちの方が…」

幸「いいから、いいから。行こう?」

のび太「ちょ、ちょっと⁉︎分かったから、引っ張らないで」

 

のび太は何時も自分が通ってる道とは違う道を行こうとする幸に理由を聞くが、幸は誤魔化してのび太の手を引いて連れて行く。その直後、さっき行こうとしていた道を静香と武とスネ夫の三人が会話をしながら通った。

 

幸「ふぅ〜。(何とか、邪魔が入らずに済んだ)」

のび太「さっきからどうしたの?様子が変だけど…」

幸「…君のせいだよ…」

のび太「えっ?」

幸「何でもない。さっ、早く行こう!」

 

心配するのび太に幸は思わずボソッと呟くが、それを誤魔化して歩き出した。それにつられてのび太も不思議に思いながらも歩き出した。その後、二人は何事もなく学校に着く事ができた。因みに学校までの道中、二人は誰にも会わずに来た。だが、のび太はそんな幸の頑張りに気づくことは無かった。そして、昇降口の下駄箱まで来た二人は上履きに履き替えた。

 

のび太「職員室はそこを右に曲がっていけば見つかるから」

幸「うん、ありがとう。まあ、後でね」

のび太「うん、またね」

 

幸と別れたのび太は階段を上り自分のクラスに向かっていた。周りに生徒がいないのをみるに、時間もあまりない様だった。のび太は少し早足になり、階段を上りきった。そして、自分のクラスに到着した。

 

のび太「ふぅ、間に合った」

 

騒いでいたクラスの皆はドアの開く音を聞き、そちらを振り向くが入ってきたのがのび太だと確認すると殆どの生徒はまた騒ぎだした。のび太が自分の席について一息ついていると、静香と武とスネ夫が近づいてきた。

 

静香「おはよう、のび太さん」

のび太「おはよう」

武「のび太、今日は遅刻しなかったみたいだな」

のび太「僕だって、そんな毎日する訳ないじゃないか」

スネ夫「とか言って、このまえ五回連続遅刻の校内最高記録を出したのは誰だっけ?ね、ジャイアン」

武「そうそう。次は十回連続でも狙ってみるか?がはははっ!」

 

のび太は武とスネ夫のからかいを軽く聞き流しながら、クラスの皆がいつも以上に騒がしいのに気付いた。のび太は学校内や町中の情報に詳しいスネ夫に聞いてみることにした。

 

のび太「ねぇ、スネ夫。今日は皆やけに騒がしい、て言うかそわそわしてるけど何かあるの?」

スネ夫「おっ、いつもそういうのに疎いのび太にしちゃあ珍しいな。明日は雨か?」

のび太「…で、何かあるんだね?」

スネ夫「うん。どうやら今日、この学校に転校生が来るって話さ。僕らと同じ学年の」

のび太「それでか」

 

のび太はスネ夫の嫌味混じりの説明を聞きながら、クラスの様子に納得する。そこで、のび太はその転校生と言うのが誰のことなのかすぐに分かった。

 

のび太「(成る程、幸ちゃんの事か)」

スネ夫「でも、どんな人でどのクラスに来るかってのが分かってないんだよ」

武「そうなんだよ。スネ夫でも知らねえから、どんな奴なのか見当もつかねえんだ」

のび太「スネ夫でも分かってないなんて珍しいね」

 

のび太は本音でそう言った。スネ夫の情報網はかなり広く、その域はこの町だけでなく隣町まで及ぶこともある。なので、この町周辺の情報は結構すぐにスネ夫のところに入ってきて、スネ夫のクラスメートや友人もその情報を楽しみにしてる事もある。その情報通のスネ夫が、転校生と言う大きな情報を何も分かっていないことにのび太は素直に驚いた。

 

スネ夫「そうなんだよ。転校生とかだったら引っ越してきたって事だから、見慣れない子とかがいても不思議じゃないんだけど…」

静香「でも、転校生ってどんな子なのかしら?お友達になれるといいわね」

のび太「そうだね。(ここで言ってもいいけど…まあ、いっか)」

先生「皆、HRを始めるぞ」

 

腕を組んで自分のところにあまり情報が入ってこないことを不思議がるスネ夫の横では、静香がまだ見ぬ転校生がどんな人物なのかと思いを馳せていた。だが、教室に先生が入ってきた事で武達や他のクラスの皆も自分の席につき、静かになる。それを見た先生は出席簿を教卓に置き、教室を見渡して話し始める。

 

先生「え〜、今日は皆に大事なお知らせがある。実は、このクラスに転校生が来ることになった」

 

先生がそう言うと、クラス全体がざわめきだす。それもそうだろう。今まで話題になっていた転校生が、このクラスに来ると言うのだから。

 

先生「静かに!それでは、今からその転校生を紹介する。入って来なさい!」

 

先生がそう言った直後、教室のドアが開き転校生が入ってくる。クラスの全員の視線がそちらに向けられる。そして、クラスの、特に男子は思わず目を見開き固まった。それはのび太も例外ではなかった。勿論、他の男子とは違う理由でだが。その原因となった人物は教卓の隣に来て、クラスの全員の前に立つ。そして、自己紹介を始める。

 

幸「今日からこの学校に転校してきた、海東 幸です。皆さん、今日から宜しくお願いします♪」

クラス男子全員「(キタアアアアアアアァァァッ‼︎)」

 

自己紹介をする幸を見てのび太や出木杉を除くクラスの大多数の男子のテンションは最高潮だった。なにせ、転校してきたのが女子で、しかも綺麗な黒髪に整った可愛らしい顔の超がつくくらいの美少女で、更に極め付けは自己紹介の最後に見せた笑顔だ。これに一般の男子小学生が惹かれない訳がなかった。

 

先生「では、海東くんは…そこの席に座ってくれ」

幸「はい」

 

先生が指差したのはのび太の隣の列の後ろから二番目の席だった。幸は指定された席に座り、教科書類を出していた。その時、隣の席の男子生徒が声をかけた。

 

男子生徒A「あの〜…」

幸「ん?」

男子生徒A「ぼ、僕、稀崎って言います!よ、よろしくお願いします!」

幸「うん、宜しくね」

男子生徒A「あ、あ…は、はい!」

 

その男子生徒は他の男子より幸とお近づきになりたいのか、緊張しながらも自己紹介をした。それに幸は笑顔で返し、それを見た男子生徒は顔を赤くして惚けていたが、すぐに我に帰り言葉を返す。それに満足きたのか男子生徒はこっそりガッツポーズしていたが、それを見たのび太など以外の男子は全員先生に気付かれないように嫉妬と殺意を込めた鋭い視線を送っていた。だが、幸せの中にいる男子生徒はそれに気付くことはできなかった。因みに、この男子生徒は放課後にクラスの嫉妬と殺意の視線を浴びせた男子達によって何処かに連れて行かれたらしい。そして次の日、彼は全身包帯だらけのミイラの様な姿で学校に現れたのは完全な余談だ。何はともあれ、幸の自己紹介は大成功だった。そして、一時間目の放課になった。

 

女子生徒A「ねえねえ、どこから来たの?」

女子生徒B「お家どこ?」

男子生徒B「趣味とかは?」

男子生徒C「好きな人とかは⁉︎」

女子生徒C「BLとか興味ある?」

男子生徒D「生まれる前から好きでしたぁーっ‼︎」

女子生徒D「あ、あの…結婚を前提にお付き合いをっ‼︎」

幸「え、えっと…。(よ、予想はしてたけど、ここまでとは…どうやって抜け出そうか…。てか、質問になってないのあるし、一部ちょっとアレだし、このクラス大丈夫なの⁉︎)」

 

幸は大勢の生徒から男子女子問わず、質問責めにあっていた。幸は自分の想定より斜め上の状況に戸惑っていた。そして、一部の生徒の変わった質問にこれからの学校生活に不安を感じていた。そこで幸は頼みの綱であるのび太に助けを求めようと、そちらを見るも…

 

幸「(い、居ない?)」

 

その席にのび太は居らず、代わりに何か字が書かれているメモが置いてあった。幸は群がる生徒の合間から、そのメモを読む。そのメモにはこう書かれていた。

 

《ごめん。僕には無理》

幸「(逃げた⁉︎)」

 

のび太と言う現状唯一の突破口を失った幸は愕然とする。このまま幸は、この時間ずっとこんな状況に置かれるかと思われたが、そこへ救いの手が差し伸べられた。

 

静香「皆、そんなにいっぺんに質問しても、海東さんが困っちゃうだけよ」

出木杉「そうだよ。皆、一人ずつ質問しようよ」

 

この状況を見かねた静香と出木杉は幸を取り囲んでいる生徒達を窘める。すると、幸を取り囲んでいた生徒達は申し訳なさそうな顔になる。それを見た幸は苦笑しながら気にしてないと言うと生徒達は表情を戻し、また質問を始める。ただし、今度はちゃんと一人一人落ち着いて質問をしていた。

 

放課後

 

無事、転校初日を終えた幸はのび太と共に帰路についていた。だが、幸はずっとジト目で一言も話さずのび太を見ていて、微妙な雰囲気になっていた。それに居心地が悪く感じたのび太は話しかける。

 

のび太「何でそんなに不機嫌になの?」

幸「別に。ただ、のび太があんな状況で僕を見捨てるほど薄情なんだなぁって分かったからさ」

のび太「それについてはずっと謝ってるじゃないか…」

幸「謝って済むなら警察はいらないよ。ふんっだ!」

のび太「はぁ…」

 

幾ら何を言っても一向に機嫌を直さない幸にのび太は困り果てて溜息を吐いた。のび太も自分に非があると言うのは分かっているので、ずっと謝っていた。しかし、それでも幸の様子は変わらなかった。のび太がどうしたものかと頭を悩ませながら歩いていた。その時、幸が急に足を止めた。それを見てのび太も立ち止まる。見れば、周囲にいる人たちも立ち止まって、空を見ていた。それにつられて、のび太も空を見る。そこには奇妙な青色に輝く光の球が浮遊していた。

 

のび太「何だあれ?」

幸「分からないけど、普通じゃないのは確かだね」

のび太「うん。なんか妙な力というか、異常なものを感じるよ」

 

二人がその球から発せられる雰囲気に警戒していると、光の球は急に呻き声の様なものをあげながら、動き回り始める。その不気味な光景を見た町の人たちは更にざわめき始める。そして、光の球がより大きな呻き声をあげたかと思うと、激しく動き始め、地上に向かって落ちてきた。そこには、先程まで様子を伺っていたのび太と幸がいた。

 

のび太「うわっ⁉︎」

幸「⁉︎」

 

二人は左右に飛び退く事で落下してきた光の球を避ける。光の球が落下した地点では砂埃が舞っていて、そこから光の球が飛び出してくる。砂埃が晴れた地点を見たのび太と幸は驚く。そこには光の球よりも少し大きいクレーターが出来ていた。と、同時に周囲から悲鳴が聞こえた。

 

幸「これは…!」

のび太「皆、逃げて‼︎」

 

慌てて周りを見た幸は目を見開き、のび太は他の人たちに逃げるように叫んだ。そこには、光の球が暴れながら飛び回っていて、その光の球が通過した道路や建物が抉れたり、破壊されていた。一部の建物は、その衝撃でコンクリートなどが落ちてきていて非常に危険な状況だった。町の人たちはパニックに陥っていて、まともに避難できる状態ではなかった。

 

幸「ふっ!」

 

その時、幸はディエンドライバーで光の球を狙撃する。ディエンドライバーの射撃を喰らった光の球は動きを止めると空へと舞い上がり、真っ直ぐ何処かへ飛んでいく。

 

のび太「幸ちゃん、追うよ!」

《MACHINEDECADER》

幸「分かったよ」

《MACHINEDIENDER》

 

のび太は幸に呼びかけながらDフォンを操作してマシンディケイダーを呼び出す。幸ものび太の声に応えながら、のび太のと同じ形でシアン色のDフォンを操作して、マシンディケイダーと同型のシアン色を基調としたバイク“マシンディエンダー”を呼び出す。そして、二人はヘルメットをつけると、飛んで行った光の球を追ってマシンを走らせた。

 

 

空き地

 

???A&B「はぁ〜…」

 

時は少し遡って、裏山に現れた二人は空き地の土管の上で深い溜息をついていた。二人の周りはどんよりとした空気に包まれており、とても近寄り難い雰囲気だった。

 

???A「どうなってるんだ…。裏山から降りてきたはいいけど、何故か学校に行く時間になってるし、家に行ったらママに叱られて、それで午後になってやっと皆を見つけたと思ったら様子が変だし…」

???B「おまけに裏山の研究所まで無くなってて、訳がわからない…」

 

二人は再度溜息を吐くと、黙り込んでしまう。その様子はとても痛々しいものであった。暫く、言葉を発せずにいた二人だったが、唐突に一人かもう一人に声をかけた。

 

???A「ねぇ」

???B「ん?」

???A「これから、どうしようか…」

???B「…」

 

???Aが不安そうな声音で問いかけるが、???Bも現状が分からないので言葉を返すことができない。それを見た???Aは再び黙り込む。二人が意気消沈といった感じで

俯いていた時、片方の一人が急に顔を上げて土管から降り周囲を見渡す。それを見たもう片方は不思議に思い、首をかしげる。

 

???B「どうしたの?」

???A「しっ!…何か聞こえない?」

???B「何かって?」

???A「何って、こう…呻き声みたいなのがさ」

 

???Aの言葉を聞き、???Bも土管から降りて耳をすます。すると、本当に何やら呻き声の様なものが聞こえてきた。それを聞いた???Bは???Aの顔を見る。

 

???A「ね、聞こえるでしょ?」

???B「うん!それに…近づいてきてる?」

 

???Bの言う通り、その呻き声はだんだん大きくなってきていて、近づいてきているのが分かった。二人は辺りをしきりに見回しながら呻き声の正体を見つけようとする。そして、呻き声がこれまでで一番よく聞こえた時、二人は一瞬だが見た。自分達の上空を通過する、光の球体を。

 

???A「今の見た⁉︎」

???B「勿論!よく分かんないけど、何かが起こってるのは確かなんだ。だから、さっきのを追えば何か分かるかも」

???A「うん!それに今の。一瞬しか見えなかったけど…凄い力を感じた。嫌な予感がする…だから、ドラえもん!」

???B「行こう、のび太くん!」

 

二人の人物“のび太”と“ドラえもん”はタケコプターを装着すると、さっきの光の球を追う。後に、二人は知る事になる。自分達が置かれた状況を。

 

 

廃工場

 

光の球を追ってきたのび太と幸はある廃工場の前でマシンを止める。そして、ヘルメットを外し、マシンから降りる。

 

幸「どうやら、ここに来たみたいだね」

のび太「うん。油断しないようにね」

幸「ああ」

 

のび太は幸の返事を聞くと、廃工場の僅かに空いた入り口から中の様子を伺う。そして、扉を開けて中へと入る。幸もそれに続き、ディエンドライバー片手に辺りを警戒しながら入る。

 

のび太「何もいない?」

幸「けど、さっきのがここに入ったのは確かだ。だから、ここにいる筈だよ」

 

のび太と幸はお互いに警戒を怠らずに状況の確認をする。そして、光の球を探す。工場内は不気味なほど静まり返っていて、物音一つ聞こえない。その様子に思わず背筋に薄ら寒いものを感じた時、二人の死角となっている所から何かが飛びかかってくる。

 

のび太、幸「!」

 

二人はその気配をいち早く感じ取り、避ける。そして、距離をとりつつ、襲い掛かってきたものを挟み込むような位置に移動して、その存在を見た。それは外見は水のエルに酷似しているが、背中の羽根は小型となっており高貴な装飾は簡素な鎧の様なものになっており、貴族や美意識を思わせる風格は一欠片もなく、更に自我や自意識さえも感じさせず、人形の様な印象を抱かせる“水のエル 劣化態”だった。

 

のび太「まさかこいつ…?」

幸「のび太、どうやら一体だけじゃなさそうだよ」

 

幸の言葉通り、周りから多数の水のエル(劣化)が現れる。その手には、魚のヒレの様な両刃がついた手斧“私怨のトマホーク”を持っている。のび太と幸は互いに背中を向けて構える。

 

のび太「さっきのがこいつらなのかは分からないけど、取り敢えずやるしかないみたいだ」

幸「みたいだね」

 

のび太はディケイドライバーを腰にあて、ベルトを装着する。そして、ライドブッカーから一枚のカードを取り出す。幸もディエンドライバーを右手に持ち、カードを取り出す。のび太と幸は同時にカードを装填する。

 

のび太、幸「変身!」

《KAMENRIDE DECADE》

《KAMENRIDE DIEND》

 

のび太と幸の周りに人型の幻影が現れ、それらが重なるとのび太と幸はディケイドとディエンドへと変身した。そして、二人の変身が完了した直後、水のエル(劣化)達が襲いかかってくる。

 

ディケイド「ふっ、はっ、だあっ!」

 

 

ディケイドとディエンドは迫り来る水のエル(劣化)を蹴散らしていく。ディケイドは正面のをソードモードのライドブッカーで斬り裂き、斜め後ろから斬りかかってきた奴のトマホークを受け止め弾く。そして、無防備となった正面を容赦なく斬りつける。更に、後ろに接近していた敵の横薙ぎに振るわれた斬撃を屈んで避けると、振り向きざまに斬り裂くと、そのまま敵を蹴り飛ばしその後ろにいた集団にぶつけて、その集団はドミノ倒しの様に倒れる。それを見逃さず、ライドブッカーをガンモードにして倒れた奴ら全てを狙い撃つ。

 

ディエンド「ふっ、よっと!」

 

ディエンドは斜め上から飛びかかってきた奴らをディエンドライバーで正確に射撃を当て、撃ち落とす。横からきた奴の攻撃も半身で躱して、肘打ちを叩き込む。敵の一人がディエンドに向かって私怨のトマホークを投擲する。ディエンドはそれを飛び上がり空中で回転することで回避し、そのまま私怨のトマホークをキャッチする。そして、着地しながら上から私怨のトマホークを近くにいた一体に向けて振り下ろす。更に、私怨のトマホークを投擲し、投げられたトマホークは何体もの敵を切り裂いていく。そこへディエンドはダメ押しとばかりにディエンドライバーを連射する。

 

ディケイド「全然減らないな。はあっ!」

ディエンド「たぁっ!大して強くはないけど、何体いるのやら…」

 

二人は水のエル(劣化)の数の多さに呆れながらも、倒していく。だが、倒しても倒しても水のエル(劣化)はウジャウジャと湧いてくる。離れて戦っていた二人は周りの敵を倒しながら、合流した。

 

ディケイド「こうなったら…」

《KAMENRIDE BLACK》

 

ディケイドはカードを装填するとその身体が強烈な光に包まれる。すると、身体がバッタ男の様な姿に変わる。そして、その上から強化皮膚が包み込み、また姿が変わる。夜の闇の様な漆黒の身体に真っ赤な複眼、所々に赤と黄色のラインが入った戦士“仮面ライダーBLACK”へと変身した。そのまま、Dブラックはカードを取り出すとディケイドライバーに装填する。

 

《ATACKRIDE KINGSTONEFLASH》

 

すると、Dブラックの腰あたりから赤色のエネルギーの閃光を放つ。その閃光は工場内全てを覆い、赤色に包まれる。そして、閃光が晴れた時、大量にいた水のエル(劣化)は全て消滅していた。Dブラックはディケイドに戻る。

 

ディケイド「全部やったのか…?」

ディエンド「…いや、まだ何かいるみたいだね」

 

ディエンドの言葉にディケイドは気を引き締めて気配を探る。そして、何者かの気配がする方向へ向き目を凝らす。

そこには、ディケイドやディエンドも見た事がないライダー。腰にスマートフォンを付け、両手には下部にブレードがついた銃“GNピストルビット”をもっている緑色のライダー“仮面ライダーガルガイン”と同じく腰にスマートフォンを付けて、手には剣“インフィニティブレイド”を持ち、つま先辺りに剣“ボルガレッグソード”が付いているライダー“仮面ライダーボルガ”だった。

 

ディエンド「敵かな?」

ディケイド「さあ?まだ何とも。もしかしたら、光の球の正体かも」

ディエンド「見た目はライダーみたいだけど、ライダー全員が味方って訳じゃないしね」

ディケイド「そうだね。それに結構やるみたいだ」

 

構えを解かずに警戒をやめないDブラックとディエンド。一方、ガルガインとボルガも二人をかなり警戒しながら、向こうに聞こえないように会話する。

 

ガルガイン「彼奴らって敵なのかな?何か僕たちと似てるような感じがするんだけど…」

ボルガ「確かに…。でも、あの二人かなり強い。それにさっきの見たでしょ?」

ガルガイン「だけど、さっきの奴らをやっつけたんなら…」

ボルガ「だとしても、僕たちの敵じゃないとは限らないだろう?だから、不用意に近付くのは危険だよ。さっきの光の球の事もあるし」

 

何かお互いがお互い深読みしすぎてとんでもない勘違いが発生していた。それに気付かず両者の間には緊迫した空気が流れる。お互いに相手の出方を伺っている時、意を決してディケイドが話しかける。

 

ディケイド「ねぇ、一つ聞くよ」

ボルガ「…何だい?」

ディケイド「(どっかで聞いた事がある声だな…)君達は敵?それとも味方?」

ボルガ「さあね?それはこっちの台詞なんだけど?(何かのび太くんみたいな声だな…)」

ディケイド「へぇ…。なら、こっちが君達にとって敵だとしたら?」

ボルガ「だった、らあっ!」

ディケイド「!」

 

ディケイドの言葉にボルガはインフィニティブレイドを構えて突っ込んでくる。ディケイドもそれに反応してライドブッカーを構え、向かっていく。ディケイドとボルガがぶつかり合い、両者の得物も甲高い音をあげながらぶつかり合った。それを見たガルガインはディケイドにGNピストルビットを向けるが、足下にシアン色の光弾が撃ち込まれ注意がそちらに向く。

 

ディエンド「君の相手はこっちだよ?」

ガルガイン「くっ⁉︎」

 

ディエンドはガルガインに向かって走っていく。それをガルガインは迎撃しようと連射するが、ディエンドの射撃により全て撃ち落とされる。

 

ガルガイン「うそぉ⁉︎」

ディエンド「驚いてる暇なんてあるのかな?」

ガルガイン「くっ!」

 

自分の射撃を全て相殺されたガルガインは驚くが、接近してくるディエンドに意識が戻される。ガルガインは距離を取ろうと慌ててバックステップで離れようとするが、それより早く接近したディエンドが蹴りを入れる。ガルガインは咄嗟に腕を上げて防御に成功するも、続けて放たれたローキックで体勢を崩され、そこに再び渾身の蹴りを入れられる。それにより、ガルガインは蹴り飛ばされる。

 

ディエンド「こっちは任せて、そっちは存分に戦ってね。それじゃ!」

 

ディエンドはディケイドにそう言うと、吹き飛ばされたガルガインの下へと向かっていく。それを聞いたディケイドは意識を目の前のボルガに集中すると、鍔競り合いを止めて離れる。

 

ディケイド「という事だから、僕とお前の一対一だ」

ボルガ「望むところさ!」

 

そこで再びディケイドとボルガは同時に駆け出す。お互いに自分の間合いまで接近すると、剣戟が繰り広げられる。ボルガはインフィニティブレイドを左薙ぎに振るうが、ディケイドはそれを半歩下がる事で紙一重で避け、逆に斬りつける。ボルガは身体を強引に捻ることで回避すると、膝蹴りを入れる。更に、身体をくの字に曲げたディケイドを切り裂こうとするが、ディケイドは片方の手で相手のインフィニティブレイドを持つ方の腕を掴むことで攻撃を止める。そして、くの字の状態から戻る勢いを利用して思いっきり頭突きを喰らわす。だが…

 

ボルガ「ふっ、甘いね」

ディケイド「⁉︎痛って!な、なんで⁉︎」

ボルガ「そりゃあ、石頭はこっちの専売特許だからね。ほら、お返し、だぁっ‼︎」

ディケイド「があっ‼︎」

 

全然痛がる様子を見せず逆にこちらがダメージを喰らった事に驚くディケイドに、ボルガは頭を思いっきり仰け反らせ、そしてかなりの勢いがついた頭突きを放つ。あまりの衝撃と痛みにディケイドは頭を押さえながら後退り、蹲る。そこへボルガが一気に畳み掛けようと、インフィニティブレイドを構えて向かってくる。そして、振り上げたインフィニティブレイドを一気に振り下ろす。

 

ディケイド「そっちも甘いね!」

ボルガ「なっ⁉︎うわぁぁっ!」

 

だが、ディケイドはインフィニティブレイドが振り下ろされる前にライドブッカーをガンモードにし零距離射撃を放つ。ボルガはそれをまともにくらい後退し、倒れる。ディケイドは倒れているボルガを撃つ。しかし、ボルガは転がることで避けて、そのまま立ち上がる。ディケイドは構わず射撃を放つが、ボルガは前へ飛び込みながら前転し接近する。ディケイドはすぐさまライドブッカーをソードモードにし、斬りかかる。

 

ボルガ「おりゃあっ!」

ディケイド「なっ⁉︎」

 

ボルガはそれを上半身を思いっきり仰け反らせてイナバウアーなような体勢で避ける。そして、そのまま両手を地面につけてバク転しながらその勢いで蹴り上げる、所謂サマーソルトキックを放つ。その際、足のレッグソードによって斬り裂かれる。ディケイドは斬り裂かれた際の衝撃で吹き飛ぶ。

 

ボルガ「どうだっ!」

ディケイド「くっ…、やるな。だけど!」

《KAMENRIDE BLACK RX》

 

ディケイドの身体が光に包まれる。そして、光が晴れるとそこには、黒と濃い緑の身体に真っ赤な複眼、左胸に描かれたRXと言うマークが特徴の戦士“仮面ライダーBLACK RX”がいた。

 

ボルガ「か、変わった⁉︎」

DブラックRX「まだまだ行くよ!」

《FORMRIDE BLACK RX ROBORIDER》

 

すると、再びDブラックRXの姿が変わる。黒と黄色の頑強な身体に赤い複眼、全体的にロボットの様な印象の戦士“悲しみの王子 ロボライダー”へと変身した。

 

ボルガ「な、なんかゴツくなったな…。けど、それでも!」

 

ボルガはDロボライダーに向かってかけていく。そして、インフィニティブレイドを振り下ろす。ボルガはそれを見てDロボライダーがあまり俊敏に動けない事を見抜きながら切り裂く。しかし、その刃はDロボライダーの身体を通ることはなく、ダメージにはならなかった。

 

ボルガ「そ、そんな⁉︎」

 

ボルガはDロボライダーの防御力に目を疑うが、すぐに我にかえるとインフィニティブレイドとレッグソードでの連撃を与える。しかし、それでもダメージとはならず、Dロボライダーはボルガの蹴り足を掴む。

 

ボルガ「しまった!」

Dロボライダー「だあっ!」

 

Dロボライダーはボルガの足を掴んだまま、顔面をぶん殴る。Dロボライダーのパワーでのパンチを喰らったボルガは思わず、仰け反る。だが、未だに足を掴まれているので離れる事ができない。Dロボライダーは思いっきりボルガを空高く放り投げた。

 

ボルガ「ぐがっ!」

Dロボライダー「逃がすか!」

 

ボルガを放り投げた方に方向に向かっていくDロボライダー。その行動に容赦などという言葉は見当たらない。ボルガは空中で射撃武器であるセンターライフルを連射する。

 

Dロボライダー「そんなもので、止まるかぁっ!」

ボルガ「…なんてタフネス…」

 

ボルガがDロボライダーの防御力に唖然としていると、Dロボライダーの少し手前にドラム缶が数個重なっているのを見つけた。そのドラム缶からはオイルの様なものが溢れでていた。

 

ボルガ「ようし!」

 

未だ滞空しているボルガは再び照準を合わせる。そして、センターライフルを発射する。だが、銃弾はDロボライダーから外れる。それを不思議がるDロボライダーだったが、次の瞬間オイルの入ったドラム缶に銃弾が命中し爆発を起こす。Dロボライダーは驚く暇もなく、その爆発に飲まれた。それを見たボルガは難なく着地する。

 

ボルガ「はぁ、はぁ…。のび太くんみたいに上手くできるか心配だったけど、何とか当てられた…」

 

ボルガは乱れる呼吸を整えながら安堵し、仮面の下でほくそ笑む。だが、ボルガは知らなかった。先程の行動が、現在のディケイド、ロボライダーにとってどんなに悪手だったか。ボルガは爆炎の中から、ロボットの足音の様なものを聞いた。そして、顔を上げた瞬間目を見開いた。何故なら、そこには…

 

Dロボライダー「うおぉぉぉぉっ‼︎」

ボルガ「わあぁぁぁぁっ⁉︎」

 

爆発の炎を吸収しながら咆哮を上げて向かってくるDロボライダーがいた。その姿は対峙したものにとって最早恐怖でしたかない。ボルガは今のDロボライダーに接近されまいと、センターライフルを連射する。しかし、恐怖で照準が上手く定まらないのか結構な数を外し、当たったとしてもDロボライダーの装甲の前には無力だった。そうこうしてる内にDロボライダーはボルガに接近する。そして、腕を振りかぶる。

 

Dロボライダー「らあっ‼︎」

ボルガ「!」

 

ここに来て正気を取り戻したボルガは、Dロボライダーの拳をセンターライフルでガードする。しかし、炎を吸収した事でパワーアップしているDロボライダーの拳はセンターライフルを容易く粉砕して、その衝撃でボルガは吹き飛ばされ廃材の束に突っ込んだ。ボルガが突っ込んだ廃材の束は崩れ、大きな音を立てる。

 

ボルガ「く、くそっ!どうすれば…」

 

ボルガは考えた。今、あのDロボライダーに対抗しうる手段を。ボルガは必死に頭を回転させる。そして、考えついた。Dロボライダーのパワーをも受け止める手段を。それは自身の特技の一つであり、アイデンティティーを利用したものでもある。そう、それは…

 

ボルガ「でえぇぇぇいっ‼︎」

Dロボライダー「⁉︎うおぉぉぉぉっ‼︎」

 

石頭による頭突きである。だが、頭突きと侮るなかれ。なんと、その頭突きは炎を吸収してパワーを増したDロボライダーの拳を受け止め、拮抗する。Dロボライダーも予想外の反撃に驚きながらも、自らの拳に力を込める。ボルガも押し切られまいと力を入れ直す。結果、両者は互いに弾かれ距離をとることになった。

 

Dロボライダー「何て石頭…」

ボルガ「だから、言っただろ?石頭は僕の専売特許だってね。行くぞ!」

Dロボライダー「っ!うおぉぉぉぉっ‼︎」

ボルガ「だあぁぁぁぁっ‼︎」

 

Dロボライダーは腕を振りかぶり、ボルガは頭を仰け反らせる。そして、再び互いの拳と石頭が激突する。一方、その頃のディエンドとガルガインも互いに一歩も引かぬ状況にあった。

 

ディエンド「はっ!」

ガルガイン「うおっ⁉︎たあっ!」

 

ディエンドの光弾をガルガインは横に転がる事で躱し、逆にディエンドを狙い撃つ。ディエンドはそれをギリギリで躱すと、カードを装填する。

 

ディエンド「中々やるね。だけど、これはどうかな?」

《ATACKRIDE BLAST》

 

ディエンドはディエンドブラストを発動し、大量の光弾がガルガインを襲う。だが、ガルガインはバックステップをしながら、両手のGNピストルビットでの早撃ちの連射で全て相殺する。大量の光弾を捌ききれた事に安心したガルガインだったが、ふと前を向いた時ディエンドの姿が消えていることに気付いた。ガルガインは慌てて周りを見回すが、気付いた時には自身の左斜め後ろでかなりの至近距離まで接近を許していた。

 

ガルガイン「しまっ…⁉︎」

ディエンド「ふっ、やあっ、たあっ!」

 

自身の失態による動揺で隙を見せたガルガインに向かって、ボディブローを放つ。ガルガインは何とか身体を捻り、相手の拳に自身の手を添えて受け流す。だが、続けてディエンドライバーで殴打する。銃使いであるディエンドが銃で殴りかかってきたという事に驚いた所為でディエンドライバーの一撃を顔面にまともに喰らう。更に、そのまま何も出来ずにディエンドライバーでの近距離連射を喰らう。ガルガインは思わず後ずさり、距離をとる。

 

ガルガイン「痛ってて…。今までの様子から格闘もこなすだろうとは思ってたけど、まさか銃で殴りかかるなんて」

ディエンド「別に射撃だけが僕の武器じゃないしね」

ガルガイン「こっちだって、撃つことしか出来ないわけじゃないよ」

《Ready》

 

そう言うとガルガインは緑色の剣“サイクロンソード”にミッションメモリを装填し、その刀身に風を纏わせる。そして、一気にディエンドに斬りかかる。ディエンドは横薙ぎに振るわれたサイクロンソードを少し下がってギリギリで回避し、逆にカウンターを浴びせようとする。しかし、ガルガインはディエンドが回避した直後、サイクロンソードの風を斬撃として飛ばし、それを近距離で諸に喰らったディエンドは火花を散らしながら吹き飛ぶ。だが、ディエンドは受け身をとりながら直ぐに立ち上がる。

 

ディエンド「はぁ、はぁ…、くっ⁉︎まさか、僕がこんなに綺麗に一撃貰うなんてね。少し油断してたかな?」

ガルガイン「なら、油断はもうやめなよ。僕だって油断した相手に負ける様な鍛え方はしてないからね」

 

斬撃を喰らった箇所を片手で押さえながら息を整えるディエンドに、ガルガインはサイクロンソードを持っている方とは逆の手でGNピストルビットを持ちながら言い放つ。それを聞いたディエンドは、押さえていた手を離していつもの構えに戻る。

 

ディエンド「そうだね。そうさせてもらうよ、っと!」

《KAMENRIDE IBUKI》

ガルガイン「っ!」

 

ディエンドは黒い身体に青の顔面の隈取りと腕、頭部の金の三本の角に袖のないダウンジャケット状の金管を模した装飾を纏った音撃戦士“仮面ライダー威吹鬼”を召喚する。威吹鬼はトランペットを模した拳銃“音撃管 烈風”をガルガインに向って連射しながら、駆け出す。

 

ガルガイン「はっ!」

 

ガルガインは自分に発射された弾をGNピストルビットで撃ち落とすと、接近してきた威吹鬼にサイクロンソードを振り下ろす。だが、威吹鬼は手刀や蹴りに真空の刃を纏わせて切り裂く技“鬼闘術 旋風刃”を纏った蹴りを放ってサイクロンソードと打ち合う。威吹鬼の蹴りによる真空の刃が、サイクロンソードの纏う風を切り裂いていく。それを見たガルガインは打ち合いを止めて、距離を取ろうとする。しかし、威吹鬼は素早い動きと烈風の射撃ですぐさま距離を詰めて、離させない。

 

ガルガイン「くそっ⁉︎距離が、取れないっ!」

 

ガルガインは威吹鬼の射撃と手刀や蹴りを捌くことに精一杯で中々距離が話せないことに思わず悪態を吐く。それに構わず威吹鬼はどんどん攻めたてる。そして、とうとう威吹鬼の手刀により、サイクロンソードが弾き飛ばされる。

 

ガルガイン「あっ、しまった!…があぁぁっ!」

 

ガルガインが弾かれたサイクロンソードの方を向き隙がうまれたところに、威吹鬼はここぞとばかりに攻め込む。上や横などあらゆる方向から旋風刃による手刀や蹴りを浴びせ、更に銃撃も加える。そして、最後に威吹鬼が放った下からの手刀の切り上げによって、ガルガインは打ち上げられながら後ろに吹き飛ぶ。

 

ガルガイン「ぐあっ⁉︎ぐっ…こんな所で…こんな所で、負けられるかぁぁぁぁ‼︎」

 

ガルガインは地面に落ちる瞬間、両手を地面につける。そして、そのままバク転をして更に後ろに下がり、その先にある壁を思いっきり蹴る。それにより、ガルガインは一気に威吹鬼の上まで跳ぶ。

 

ガルガイン「っらぁぁぁぁぁっ‼︎」

 

そこで素早く両手にGNピストルビットを持ち替えると、威吹鬼に向けて撃ちまくる。ビームの雨から逃れることは出来ず、威吹鬼はそれらを喰らい続ける。そして、ガルガインが着地すると同時に威吹鬼は爆発して消えた。

 

ガルガイン「はっ…はっ…。や、やった…」

ディエンド「あそこから逆転なんて凄いね」

ガルガイン「っ!えっ…」

 

荒い呼吸を整えようとしているガルガインは、ディエンドの声に勢いよく振り向く。が、次の瞬間ガルガインの口から困惑の声が漏れた。何故なら、そこには二人(・・)のディエンドの姿があった。驚くガルガインに、ディエンドはあるカードをひらひらさせながら見せる。それはILLUSIONと書かれたカードだった。ディエンドは、このカードの効果で分身を生み出す“ディエンドイリュージョン”を発動したのだ。

 

ディエンドA「お疲れのところ悪いけど…」

ディエンドB「第二回戦の開始だよ」

ガルガイン「くっ!」

 

二人のディエンドに銃を向けられたガルガインは相手が発砲する前に横に駆け出す。それを追ってディエンドもガルガインと平行に駆け出す。そして、互いに一定の距離を保ちながら射撃を放ち合う。

 

ディエンドA「はっ!」

ガルガイン「ふっ!」

ディエンドB「やっ!」

 

ディエンドA、Bの射撃を躱したり、相殺したりすると、ガルガインがお返しとばかりにビームの連射を喰らわせる。それをディエンドも回避や相殺をして、撃ち返す。これをお互いに走りながら繰り返す。

 

ディエンドA「中々の射撃だね」

ガルガイン「そりゃ、僕の特技の一つだからね」

 

そう言うと、お互いに向かって射撃をしながら方向転換して駆け出すディエンドとガルガイン。そして、距離がつまったところでディエンドAが蹴りを放つ。それをガルガインは、屈んで避けてディエンドAの後ろに回り込む。そこへ、ディエンドBが横から拳を放つ。ガルガインはその拳をGNピストルビットで受け止めると、蹴り飛ばす。そして、ディエンドAが振り返った瞬間に、零距離射撃を叩き込む。それにディエンドAはのけぞりながら後退する。その衝撃でディエンドは分身が解けた。

 

ディエンド「うっ⁉︎…まさか、ここまでなんてね」

ガルガイン「やっと、一人に戻った」

 

ディエンドは相手の力を見誤っていたことを悔やみ、ガルガインはディエンドイリュージョンが解けた事に安堵した。二人は、それから言葉を発するとこなく対峙する。そして、今にも動き出すという瞬間…

 

ディエンド「っ!」

ガルガイン「⁉︎」

 

ディエンドとガルガインの前に、あの光の球が現れる。だが、その光の球からは先程とは比べ物にならない程の力を感じられた。その力は向こうで戦っていた二人にも感じられたようで、Dロボライダーから戻ったディケイドとボルガもやってきた。一同はその力、この状況に混乱する。そして、光の球は暫くその場で浮遊していたが、地面に降り立つ。その時、凄まじい衝撃と光の波動が周囲に放たれる。ディケイド達はそれに思わず腕で顔を覆う。そして、衝撃が治ったことで光の球があった場所を見たディケイド達は驚愕を隠せなかった。

 

一同「っ⁉︎」

 

そこにいたのは水のエルの様な姿だがどこか違う怪人だった。それは、纏っている衣や装飾が大型化していて、身体の所々が金色になっており、そして身に纏っている雰囲気が以前のそれとは格段に違っている“水のエル 究極体”だった。

 

ディケイド「こ、こいつは…一体…」

 

ディケイド達は思わぬ敵の出現とそのオーラに威圧されていた。水のエルはそんなディケイド達の方を向き、ディケイドはそれに身構える。

 

水のエル(究極)「人でないものは…消えろ…」

 

そう言って手をディケイド達に翳した。

 

 

続く

 

 

 

 

 

 




後書きの間

Δデルタ「今回と次回の後書きにゲストが来ることになった!」
のび太「それって…」
Δデルタ「そう、こちらの二人だ。どうぞ!」
のび太(焔)「やあ、どうも!」
ドラえもん(焔)「こんにちは!」
Δデルタ「焔崩しさんの所から、のび太とドラえもんだ」
ドラえもん「本当にもう一人の僕達なんだ」
ドラえもん(焔)「そりゃあ、別世界の僕なんだしね」
郎夜「でも、本編じゃ互いに認識するどころか、いきなりバトってるがな」
のび太(焔)「そ、それは…」
奈々「まあまあ。それより、そろそろ本編の話に行きましょうよ」
幸「そうだね。所で、今回は異様にBLACK系が多かったけど」
Δデルタ「スーパーヒーロー大戦GPのてつをがかっこよかった!」
のび太(焔)「成る程、だからなのか」
ドラえもん(焔)「でも、ロボライダーと戦う事になるなんて…うぅ、頭が」
のび太「だ、大丈夫?」
ドラえもん「君がそれを言うか。でも、別世界のとは言え炎を吸収したロボライダーのパワーと互角の僕の石頭って一体…」
奈々「本当にそれに関しては凄いの一言しか言えませんね」
郎夜「本当にな。で、あの最後の水のエルだが、どんだけパワーアップしてるんだ?」
Δデルタ「詳しくはいえないが、少なくとも強化態以上とだけ言っておく」
のび太(焔)「ただでさえ、四体一でも圧倒した強化態以上だなんて…」
ドラえもん(焔)「ぼくたち、生きて帰れるかな…」
のび太「ま、まあ、大丈夫…だと思う、よ。うん…」
ドラえもん「余計に不安煽ってるよ、のび太くん…。さて、そろそろ締めに入ろう!」
Δデルタ「だな。じゃあ、のび太(焔)頼めるか?」
のび太(焔)「OK!それじゃあ。勘違いして戦っていた僕たちの前に現れた水のエル。だけど、その力は圧倒的で…。そんな敵に僕たちは勝てるのか、そして無事に元の世界に帰れるのか!次回、第7話-後編-。全てを破壊し、全てを守り抜け!」

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