裏山
夜の闇に包まれた裏山に不自然にぽつんと佇むピンク色のキャンピングカプセル。その中では、別の世界から迷い込んでしまったのび太(別)とドラえもん(別)がこの世界での生活の拠点としていた。その2人も今は既に就寝済みだった。
のび太(別)「う、うん…トイレ…」
のび太(別)がそんなことを呟きながら起き上がる。そして、のろのろと動きながらトイレに入る。その後、用を済ましたのび太(別)は再びベッドに戻ろうとする。その時、彼の目に窓から見える町の景色が映り込んだ。それを見たのび太(別)は窓に近寄り、町を眺める。
のび太(別)「僕達の町と本当に全く同じだな…。皆、心配してるかな…」
のび太(別)は、ふとそんな事を思い、不安に襲われる。本当に元の世界に帰れるのか、帰れなかったらどうしようかなど心の奥から湧き水のように溢れてくる。だが、すぐに頭を振るとそれらの不安を振り払う。
のび太(別)「きっと帰れるさ!そうだよ。皆だって探してくれてるかもしれないし、この世界の僕も協力してくれてるんだ。だから、大丈夫だよね」
自分に言い聞かせるようにそう言うと、再びベッドに入ろうとする。と、その時だった。窓から視界全てを覆う程の光が溢れる。
のび太(別)「うわっ⁉︎な、何⁉︎」
あまりの眩しさに思わず目を瞑り、手を翳すのび太(別)は急な事態に困惑を隠せない。そして、暫くすると光は消える。のび太(別)がドラえもん(別)を起こそうと後ろを振り向くと、既にドラえもん(別)が真剣な表情でこちらを見ていた。
のび太(別)「ドラえもん、今の!」
ドラえもん(別)「分かってる。すぐに原因を探しに行こう!」
のび太(別)「うん!」
二人はキャンピングカプセルから出ると、タケコプターをつけて空高く飛び上がり、町の方へと向かっていく。すると、上空に浮かんでいる巨大な紋章に気付いた。
のび太(別)「な、何あれ⁉︎」
ドラえもん(別)「分からないけど…昼間の奴と何処か同じような力を感じる」
のび太(別)「って事は…まさか!」
二人は原因を探して回りながら、紋章について考える。その時、二人は背後から自分たちを呼びかける声が聞こえた。振り向いた先には、こちらに向かってくるのび太が見えた。
のび太「二人とも大丈夫⁉︎」
のび太(別)「うん、僕らは大丈夫」
ドラえもん(別)「そっちは?」
のび太「僕は大丈夫なんだけど、どうにも様子がおかしいんだ」
ドラえもん(別)「おかしいって?」
のび太「あまりにも静かすぎるんだよ」
のび太(別)「夜なんだから当たり前じゃないの?」
ドラえもん(別)「いや、いくら夜でも起きてる人くらい居る筈だ。それでも、騒ぎ一つ起きてないってことは…」
のび太の話を聞いたドラえもん(別)は周りを見渡しながらも、思考を止めることなく働かせ続ける。すると、同じく辺りを見ていたのび太(別)は下に何かを見つけて、降りていく。後の二人も疑問に思いながらも降下していく。
のび太「どうしたの?」
のび太(別)「なんか人影みたいなのが見えたから」
ドラえもん(別)「なんだって!」
のび太「その人影はどこに?」
のび太(別)「えっと…あっ、あそこ!」
のび太(別)は人影の方へ向かって走っていく。他の二人もそれを見て追いかける。そして、近づいて行くとその人影の正体が分かった。その人物は警察官の制服をきた若い男性で、今は力無く地面に倒れていた。
のび太「永山さん!」
のび太(別)「知り合いなの?」
のび太「うん、ちょっとね。あの、大丈夫ですか!」
その人物は以前にのび太が助けた警官、永山だった。のび太は永山の体を揺するが、一向に目を覚まさない。次にのび太は脈を確認する。
のび太「生きてはいる。意識だけ失ってる?」
ドラえもん(別)「とにかくここは…お医者さんかばん〜‼︎」
お医者さんかばんを出したドラえもんはかばん本体とコードで繋がっている聴診器をつけると、永山の体に当てる。すると、お医者さんかばんから電子音が断続的に鳴り、すこしすると解析の終了を告げる音がなった。そして、診断結果が画面に表示される。
《意識ヲ失ッテイルダケデ今ハ大丈夫デス。シカシ、原因ハ不明デスガ、ジョジョ二衰弱シテイッテイマス。コノ状態ガ続ケバ非常二キケンデス》
のび太(別)「なんだって⁉︎」
ドラえもん(別)「そんな⁉︎」
のび太「もしかして、これと同じ事が他のみんなにも…!」
キョウ「ご名答」
三人「‼︎」
のび太が先程自分が感じた疑問の答えに辿り着くと、暗闇の中にキョウの声が響く。それを聞いた三人が顔を向けた先の暗がりの中からキョウが姿をあらわす。
キョウ「それにしても、こんな時間に外を出歩くなんて思ってたより悪い子のようですね」
ドラえもん(別)「何しに来たんだ!」
キョウ「いやぁ、なに。まあ、端的に言うと君たちの妨害、ということになるのかな?」
そう言うとキョウは右手に握ったガイアメモリを構える。それを見た三人も身構えるが、その前を突如として幸が遮るように現れる。
のび太「幸ちゃん!」
幸「のび太、ここは僕に任せてよ」
のび太「で、でも1人じゃ…」
幸「僕を信じてよ」
自分の心配をするのび太に微笑みながら声をかける。それを聞いたのび太は黙って一回頷くと、後ろの2人に目配せして、キョウたちの横を通り過ぎる。その時、キョウがのび太たちの方に視線を向けようとすると、足下にシアン色の光弾が撃ち込まれる。それにより、反射的に幸の方を見る。
幸「よそ見なんて随分と余裕なんだね」
キョウ「まあね。前までの私ならともかく、今の私ならライダーといえども1人を相手するなんてわけないよ」
幸は腰のカードホルダーからカードを引き抜きながら、キョウはメモリを構えながら互いに様子を見る。だが、キョウの言葉からは余裕からくる油断の色が見えた。
幸「言ってくれるね〜」
キョウ「さて、君は私をどうするのかな?まさか、たった1人で足止めが出来るとでも?」
キョウの言葉に幸は笑みを浮かべる。だが、細かな表情だけは暗闇のせいか見えなかった。
幸「なんか勘違いしてるみたいだから、一応言っておくよ」
キョウ「何?」
幸「別に僕は足止めのためなんかに此処に来たわけじゃない」
キョウ「…1人で私を倒すつもりですか?」
幸「もう、察しが悪いな〜」
幸の闇に隠れた表情が露わになり、キョウに向けられる。その時、悪寒が走り、キョウの背筋は凍った。幸は笑っていた。だが、それは口だけ。彼女の目にはそんな表情はなかった。先程ののび太に向けた微笑みとはまるでベクトルの違う笑み。あえて、それを表現するならば…“狂気”。
幸「あなたを殺すために決まってるでしょ」
キョウ「⁉︎」
幸「あなたの最終的な目的は知らないけど、あなたはのび太の命を狙った。そんなやつに倒すなんて生易しいこと、するわけないよ。だから、ここで死んでよ?」
キョウ「‼︎」
幸は濃密な殺気と狂気を放ちながら、言葉を放つ。その一言一言にさえ、それらが込められているかのように感じた。そして、最後の言葉を聞いた瞬間、キョウは無意識的にメモリを起動し、ドライバーに差し込んだ。そして、思った。こいつは異常だ、どこか狂ってる、と。
《プレディション》
プレディション「どうやら君が一番危険のようだ。ここで排除する!」
幸「ふふっ。いいよ、別に。そっちが先に死ななかったらだけど。…変身」
《KAMENRIDE DIEND》
幸は挑発的に返しながら、変身する。その際のディエンドライバーの音声もいつもより少し低く聞こえた気がした。ディエンドは向かってくるプレディションに銃口をむけた。そして、そのトリガーを、引いた。
学校付近
のび太(別)「ねぇ、大丈夫なの?あの子、1人で」
のび太「大丈夫さ。幸ちゃんは十分強いから」
のび太(別)「で、でも…」
ドラえもん「2人とも、あれ!」
のび太(別)は1人あの場に残した幸のことを心配していたが、のび太はそうは思ってなかった。幸は自分に信じて、と言ったのだ。のび太が仲間を信じるには、それで十分すぎる言葉だった。そんなことを話しながら学校の校門の近くまで来ていた3人だったが、突然ドラえもんが2人に慌てた様子で声をかける。その言葉に2人は学校の校庭を見た。
そこにいたのは前回、廃工場にも現れた水のエル(劣化態)だった。それも大量の数の個体がひしめき合っていた。
のび太「こんなにいるなんて⁉︎」
ドラえもん(別)「と、とにかくこいつらをなんとかしよう。学校から一体でも出られたら町の皆が!」
のび太(別)「わかったよ!変身!」
のび太(別)が変身したのを合図に2人も変身する。そして、校庭へと駆け出す。それに気付いた劣化態たちも3人に向かって進む。
ディケイド「はあっ!」
ディケイドは劣化態の集団に向かって飛び蹴りを放ち、一気に数を減らす。そして、そのまま劣化態が固まっている場所の真ん中に着地する。
ディケイド「こうしてみると益々、多く見えるな」
ディケイドがそう呟いていると、周りから劣化態が押し寄せる。正面から切りかかってくるが、それを半身になって躱し無防備な背中に蹴りを見舞う。蹴られた個体はそのまま何体かを巻き添えに倒れる。だが、それも気にせずに他の個体は襲いかかってくる。ディケイドは横からの攻撃を一歩下がりつつ腕で防ぐ。そして、それを弾くと後ろの個体を蹴り飛ばす。先程、弾いた個体が再び飛び掛かってくるが、カウンター気味に右拳を喰らわせ吹き飛ばす。
ガルガイン「倒しても、倒してもきりがないよ!」
ガルガインは一定の距離を保ちながら四方八方から向かってくる劣化体たちに射撃を浴びせる。だが、劣化態もただ接近しようとするだけでなくトマホークを投擲し、遠距離から攻撃を試みる。
ガルガイン「甘いよ!」
それをガルガインは精密射撃により全て迎撃する。その隙に何体かが激しい弾幕を抜けて接近してくる。それを確認すると、周りへの弾幕は緩めずに迎え撃つ。振るわれたトマホークを相手と密着するほどまで接近し、回避する。懐に潜り込んだガルガインは肘と膝の連撃を放つ。そして、その個体を他の接近している奴らにぶつける。そこに勢いをつけた横からの蹴りで一気に薙ぎ払う。
ボルガ「ここで食い止めないと、街が大変なことになる!」
ボルガは右手の剣で数体まとめて切り裂く。さらに、こちらに投げられた幾つものトマホークはレッグソードも使用し、全て弾きかえす。弾かれたトマホークは全て投げた個体に向かっていき、撃破される。その時、ボルガの背後から一体の劣化態が襲いかかる。
ボルガ「バレバレだよ、っと!」
ボルガはそれを跳び上がって躱すと、宙で後ろへ回転しながら奇襲してきた個体をレッグソードで斬り捨てる。そして、着地してから剣を前に突き出すとまたも回転する。だが、回転はどんどんと速度を上げていき、まるで独楽のようになり、その周囲はかなりの風圧だった。ボルガはその状態で辺りの劣化体を切り刻んでいき、さらにそこから動き回りどんどんと劣化体の数を減らしていく。
ガルガイン「すごいや、ドラえもん!いつの間にそんな技を!」
ディケイド「いや、確かに凄いけど終わった後が…」
ガルガインがボルガの技に感心して賞賛する一方で、ディケイドはある不安を抱く。そして、その不安は見事に的中する。
ボルガ「目が、目が回る〜」
暫くして回転を止めたボルガは、目が回ってふらふらとよろめく。勿論、劣化態はそんな隙は見逃さずどんどんと襲いかかる。
ガルガイン「やあっ!」
ディケイド「たあっ!」
だが、ガルガインとディケイドがそれらの行く手を阻み全て殲滅する。そして、ガルガインがボルガに近付いて一言いう。
ガルガイン「君はじつにばかだな!」
ディケイド「本当だよ!少しは後先のことを考えなよ」
ボルガ「のび太くんに言われるのは納得いかないけど、返す言葉もない…」
ボルガは納得いかないようだったが、自分がやらかした所為なので言い返すことはしない。少々、アクシデントはあったが、3人は順調に減らしていった。
《KAMENRIDE BLACKRX》
ディケイドBLACK RX「リボルケイン!」
ディケイドBLACK RXは光り輝く刀身をもつ杖“リボルケイン”を取り出すと、それを振るう。すると、刀身にあたる部分がまるで鞭のようにしなり辺りの敵を切り裂いていく。ディケイドBLACK RXはガルガインの隣に立つとリボルケインを構える。
ディケイドBLACK RX「一緒にいくよ!」
ガルガイン「任せて!」
お互いに声を掛け合うと、ガルガインは両手の二丁の銃から、ディケイドBLACK RXは剣先から光弾を発射する。それらの光弾は攻撃手が射撃の名手なだけあって一発の撃ち漏らしも外しもなく全て命中する。それにより劣化態は全滅した。
ガルガイン「やった!」
ディケイド BLACK RX「まだだよ!」
ボルガ「あ、そうだ!肝心のあいつは!」
3人は水のエルを探そうと学校の中に向かおうとする。が、そのとき嫌な予感がしたガルガインは直感的に上を見る。
ガルガイン「上だ!」
ボルガ「なっ⁉︎こんな近くに!」
ディケイド BLACK RX「くっ⁉︎」
水のエル(究極)「やはり、きたか」
水のエルは3人の前方の空中で佇んでいた。その姿はあまりに幻想的で一瞬見惚れてしまいそうになるが、水のエルが怨恨のハルベルトをこちらに向けるとハッとなる。
水のエル(究極)「ふんっ!」
水のエルの持つ怨恨のハルベルトの切っ先から槍状のエネルギーが発生する。そして、それはディケイドたち3人に向かって飛来する。
ディケイド BLACK RX「やばいッ!」
ディケイドBLACK RXは咄嗟に前に出ると、リボルケインで防御する。槍状のエネルギーとリボルケインの光のエネルギーが衝突して辺りに閃光が迸る。だが、やがてぶつかり合っていたエネルギーとエネルギーは爆発を起こした。
のび太「ぐあっ‼︎」
その爆風によって吹き飛ばされたディケイドBLACK RXは変身を解除されながら地面に叩きつけられる。2人はのび太に駆け寄ろうとしたが、間を空けずに第2、第3の槍状のエネルギーが放たれる。後ろに無防備なのび太がいる以上、避けることは出来ない。2人は右脚にポインターを装着すると、バックルにあるスマホを操作する。
《Execeed Charge》
ガルガイン「だあぁぁっ!」
ボルガ「とりゃぁぁっ!」
2人は右脚にエネルギーが溜まったことを認識すると、跳び上がる。そして、前方に一回転してこちらに迫ってくるエネルギーに向かって飛び蹴りを放つ。エネルギーと2人が接触すると、またも爆発を起こす。
のび太(別)「がはっ!」
ドラえもん(別)「うわっ!」
爆発の中から変身解除した2人が落ちてくる。そこへ水のエルが地上へと降りてくる。水のエルは地面に蹲る2人に向かって、怨恨のハルベルトを振り上げる。2人は抵抗できる力は残されておらず、思わず目を瞑る。その時、振り上げられた怨恨のハルベルトの柄の部分に何かが発射され水のエルは全身が微かに痺れるような感覚を味わった。それにより水のエルは動きを止め、そこへのび太の声が聞こえてきた。のび太の手には以前に自作した銃剣型秘密道具“ショックブレードガン”が握られていた。
のび太「いまだよ、2人とも走って!」
それを聞いた2人は痛む身体に鞭打って水のエルから離れようとする。だが、水のエルは逃さまいと再び怨恨のハルベルトを振り下ろそうとする。が、そこへ何かが投げ込まれた。それものび太が以前に作ったショック機能をもった手榴弾型秘密道具“ショック手榴弾”だった。ショック手榴弾は距離を取ろうとする2人を追う水のエルの目の前で炸裂し、強烈な光と人を簡単に気絶させる程度の電気を放つ。だが、そんなものは水のエルには効かず、目くらまし程度にしかならなかった。
水のエル(究極)「無駄なことを」
水のエルは視界が光に覆われた状態で怨恨のハルベルトを横一線に振るう。すると、水色に輝く斬撃が発生して目の前の光を斬り払う。そして、そのまま直進し3人の付近の地面に直撃し、その衝撃で3人は吹き飛ぶ。
のび太「くそっ…」
のび太(別)「つ、強すぎる…」
ドラえもん(別)「どうすれば…」
地面で這いつくばる3人は水のエルの力に戦慄する。一方、水のエルは地面の3人を見下ろすと問いかける。
水のエル(究極)「何故、そこまでして戦おうとする?」
のび太「皆を守るためだ」
水のエル(究極)「皆とはこの町にいる人間共のことか?何故、お前がそこまでする必要がある?何故、そこまで自ら傷付こうとする?」
のび太「そんなの決まってるよ。僕がそうしたいからだ!」
水のエルの問いかけにのび太は地面に手をつき立ち上がろうときて膝たちになりながら力強く答える。自分の戦う理由を。だが、水のエルは理解できない、といった様子だった。
のび太「僕はこれまでの旅で知ったんだ。世の中には色々な人がいる。いい人やわるい人だけじゃない、本当に色々な。そして、その大勢の人が集まって初めて世界は成り立つんだ。人がいなくちゃ、それは世界じゃなくて、ただの抜け殻だ。だから、僕はそんな世界を形作る人たちを守りたいと思ったんだ。その障害になるものがあるなら僕が破壊する!」
水のエル「だが、所詮は人間。1人でそんな決意をもって戦おうが我には敵わない」
のび太「1人だとしても…」
のび太(別)「1人じゃない‼︎」
水のエルに反論するのび太の言葉を遮り、のび太(別)は叫んだ。それに水のエルは押し黙り、のび太も目を見開いて驚く。
のび太(別)「1人なんかじゃ決してない。だって、僕等がいるから!仲間がここにいるんだから!」
水のエル(究極)「お前はここの世界の住人ではない」
のび太(別)「そんなの関係ない。僕はこの世界の僕の助けになりないと思った。理由なんてそれで十分だ!」
ドラえもん(別)「そうさ!それに、僕はのび太くんを助けるために未来から来たんだ。別の世界だろうと、それは変わらないよ。僕は2人ののび太くんを助けるんだ!」
のび太「ふ、2人とも…」
のび太は水のエル相手に立ち上がって啖呵をきる2人を驚きの表情で眺める。2人はのび太の方に振り返ると笑顔を向けながら手を差し伸べる。
のび太(別)「ほら、いこうよ」
ドラえもん(別)「1人で頑張るのは良いことだと思うけど、1人で頑張り過ぎるのはいけないよ。人が1人で出来ることなんて限られてるんだから」
のび太「でも…僕は皆を…」
2人の言葉に動揺しながらも、のび太は関係ない皆を巻き込んでまで頼る気にはなれない。仲間が傷ついたり、いなくなってしまうのはもう見たくない。そう思っていると…
のび太(別)「この世界の皆に頼れないならさ、それまでは僕らに頼ってよ。僕等だって鍛えてるんだ、簡単にやられたりなんかしないさ。それに、1人で頑張ってる君を放っとけないし」
ドラえもん(別)「一方的に守る守られるだけが仲間じゃない。それは君も知ってるはずだよ。さっきも言ったけど、僕らは君を助けたいんだ。だから、何があっても君の味方だよ」
のび太「…」
心から言っていると分かる2人の言葉にのび太は思わず涙が流れそうになる。だが、今やるべき事は泣く事ではない。それを分かってるのび太は涙をぐっとこらえると、2人と同様に笑顔を浮かべる。そして、自らに差し出された手を両手で掴むと2人に引っ張られながら立ち上がる。
のび太(別)「さあ!」
ドラえもん(別)「一緒に!」
のび太「うん!」
のび太は2人の言葉に頷くと水のエルの方に向き直る。他の2人も堂々とした表情で水のエルのほうを向く。水のエルは心なしか3人の姿が自分よりも大きく感じた。それはつまり、取るに足らない筈の下等だとおもっていた種族に威圧された、ということだった。
水のエル(究極)「何なのだ…何なのだ貴様らは!」
のび太(別)「通りすがりの」
ドラえもん(別)「仮面ライダーだ!」
のび太「だってさ。だから、覚えておけ!」
そう言うと3人はベルトを腰に巻く。そして、それぞれのアイテムを取り出す。のび太(別)とドラえもん(別)はスマートフォンにコードを打ち込み、のび太はカードを掲げる。
3人「変身‼︎」
《KAMENRIDE DECADE》
《Complete》
《Complete》
のび太の周りに14の影が現れて、それらが重なる。のび太(別)とドラえもん(別)の身体に光の線が走り、更に強い光を放ってその身体を包み込む。のび太はディケイドに、のび太(別)はガルガインに、ドラえもん(別)はボルガにへと姿を変える。
ディケイド「ん?」
その時、ディケイドの腰のライドブッカーから2枚のカードを取り出す。すると、ブランク状態だったカードに絵柄が浮かぶ。それを見ながらディケイドは仮面の中で笑みを浮かべる。そして、その内の1枚をディケイドライバーに装填すると、2人の背後に立つ。
《FINALFORMRIDE COLLABORATION》
ディケイド「ちょっとくすぐったいよ」
ガルガイン「え?うわぁ!」
ボルガ「ちょ⁉︎わあぁ!」
ディケイドの言葉に戸惑う2人だったが、ディケイドは2人の背中に手をかざす。すると、2人は突然宙に浮かびだし、引き寄せられるようにお互いが近づいていく。2人はぶつかると感じて何とかしようと手足をばたつかせる。だが、そんな抵抗も意味を成さず、2人は衝突する。その瞬間、2人から激しい光が発生する。その眩しさにディケイドは腕で顔を覆うが、光が晴れると予想通りといった風に再び笑う。
?「これって…どうなってんの⁉︎」
光が晴れた先にいたのは1人の戦士だった。白銀の身体に両腕足や両肩、胸部、背部にメタルブラックの装甲があり、身体には緑と青のフォトンストリームが流れていて、脚にはボルガのレッグソードが。複眼は黄色で、腰の携帯部分にはガルガインとボルガのメモリが付いていた。
ディケイド「それは2人の力が合わさった姿。言うなれば…仮面ライダーボルガインってところかな?」
ボルガイン「仮面ライダー、ボルガイン…」
ボルガインは自分の手を見ながら、そう呟く。声も2人の声が合わさったような声だった。そして、よしっと呟くと前を向いて構える。
ボルガイン「さあ、反撃開始だ!」
ディケイド「ああ!」
水のエル(究極)「2人合わさった程度で何が出来る!」
水のエルは槍状のエネルギーを無数に展開する。そして、それらを一斉にディケイドとボルガインに向けて発射する。ボルガインはガルガインの時の二丁の銃を手にすると、それらに向かって連射する。その光弾は一発で槍状のエネルギーを粉砕する。
水のエル(究極)「何⁉︎」
ボルガイン「よし!行ける!」
ボルガインは射撃を続けながら未だ飛来する槍状のエネルギーに向かって駆け出す。ボルガインの射撃を掻い潜ってくる槍状のエネルギーへとレッグソードを振るい切り裂く。ガルガインの精密な射撃にボルガの巧みな剣裁き。それらが融合した戦闘スタイルは最早敵なしだった。
ボルガイン「はあぁぁぁっ!」
水のエル(究極)「ぐおっ⁉︎」
全ての攻撃を捌いたボルガインは水のエルの横っ腹に蹴りを放つ。防御も間に合わなかった水のエルは、その威力とパワーに吹き飛ぶ。だが、すぐさま地に足をつけ、立て直そうとする。が、間髪入れずにボルガインは攻撃に移る。
ボルガイン「だあぁぁぁぁぁっ‼︎」
水のエル(究極)「ぬうぅぅぅ!」
水のエルの懐に飛び込んだボルガインは拳を振るう。水のエルはかろうじてガードをするも、直後放たれた逆の拳をくらいダメージを受ける。水のエルの武器である怨恨のハルベルトはハルバード型の武器。故に、ボルガインはそれが自由に振るえない超至近距離で戦っていた。水のエルは苛立ちを隠せずに、不用意に反撃の拳を振る。しかし、それをボルガインは外側に弾き、ガラ空きになった胴に両の拳と蹴りの連打を浴びせる。
ボルガイン「おりゃあ!」
水のエル(究極)「ごはっ!」
ボルガインは連打の締めとばかりに水のエルの顎を下から蹴り飛ばす。打ち上げられた水のエルはなんとか空中に浮く。だが、そのな体には相当なダメージが蓄積されていた。一方、ボルガインは膝を深く曲げて水のエルに向かってジャンプする。しかし、そこまで行くにはまだ高度が足りない。その時、背中のメタルブラックの装甲が変形して、飛行ユニットとなる。ボルガインはそこから飛行ユニットで加速を行い水のエルの目の前に現れる。
水のエル(究極)「こ、これは…!」
ボルガイン「喰らえ!」
水のエルの虚をついたボルガインはボルガの時の剣を装備するとそれを振るう。水のエルは怨恨のハルベルトで受け止めるものの、ボルガインのパワーにより水のエルの手から怨恨のハルベルトが弾き飛ばされる。
水のエル(究極)「しまった…」
ボルガイン「これであの厄介な武器はもうない!ここだ!」
ボルガインは剣を袈裟懸け、横薙ぎ、逆袈裟、刺突、切り上げと素早い剣裁きを見せる。水のエルはろくな防御も出来ずに喰らい続ける。
ボルガイン「次、そっちいくよ〜!」
ディケイド「OK!」
《FINALKAMENRIDE DECADE》
ボルガインの掛け声に反応しながら、あらかじめ操作しておいたケータッチをバックル部分につける。すると、ディケイドは胸に14のライダープレートが並んだディケイド コンプリートフォームになる。それを見たボルガインは水のエルの背後に回り込み、思いっきり蹴り飛ばす。ディケイドは飛んできた水のエルをライドブッカーですれ違いざまに切り裂く。
水のエル(究極)「ぐっ!」
ディケイド(コンプリート)「やあっ!」
倒れこんだ水のエルはよろめきながらも立ち上がるが、ディケイドはそこへライドブッカーをふるう。さらに、そこへ斜め下からの切り上げに右足での蹴りにと流れるような動きで攻撃を加えていく。ディケイドは刺突の後に後ろ回し蹴りを喰らわせ、水のエルは吹き飛ぶ。ディケイドの横にボルガインが降り立つ。
水のエル(究極)「お、おのれ…貴様らぁぁぁ‼︎」
ディケイド(コンプリート)「うわっ!」
ボルガイン「もしかして…暴走⁉︎」
水のエルが怒りの叫びをあげると、そこを中心に凄まじいエネルギーが吹き荒れる。そのエネルギーはディケイドやボルガインでも容易には近づけない。どころか、周りで暴れている規格外のエネルギーからダメージを受ける。
ボルガイン「このままじゃ、近づくこともできない」
ディケイド(コンプリート)「けど、放っておいたらこの世界どころか近くの世界まで」
水のエル(究極)「ウオォォォォッ‼︎」
2人が話してる間にも、エネルギーはどんどん量と大きさを増していく。よく見れば水のエル自身の身体にも少しずつヒビが入っている。あまりのエネルギー量に身体が内側から崩壊を始めている。もう一刻の猶予もなかった。ディケイドとボルガインは意を決する。
ボルガイン「こうなったら、やる事は一つだね」
ディケイド(コンプリート)「こっちもエネルギーをぶつけて打ち消す!」
《FINALATACKRIDE BOLGAIN》
ディケイドがカードを装填するとボルガインとディケイドの右脚にエネルギーが溜まっていく。そして、水のエルに向けて蹴り飛ばすようにその一部分を蹴り出す。そのエネルギーは辺りのエネルギーを物ともせずに進み、水のエルまで到達するとそれはマゼンタと緑と青の円錐となり、水のエルまでの道を作る。2人はそこへ向けて走り出し、高く飛び上がる。飛び上がった2人はその円錐に向かって急降下しながら飛び蹴りを放つ。
ディケイド(コンプリート)「はあああああッ‼︎」
ボルガイン「だああああああッ‼︎」
ディケイドとボルガインの蹴りが水のエルまで届くと、水のエルを抉るように円錐が回り始める。それと共に2人の蹴りも威力を増していく。そして、その威力を増した蹴りはやがて水のエルの身体を貫通する。
水のエル「ぐっ、ウオオォアアァァッ‼︎」
水のエルは蹴りで貫かれた箇所を抑え苦しみながら、最期の断末魔をあげながら爆発を起こす。その爆発の熱を背中で感じながらディケイドは変身を解く。ボルガインもそれにならって変身を解く。すると、ボルガインはのび太(別)とドラえもん(別)に分かれた。
のび太(別)「終わったんだね、これで」
ドラえもん(別)「うん、そうだよ。僕たちがやり遂げたんだよ」
のび太(別)「なんか一気に疲れがきちゃったな〜」
のび太「そうだね。でも、良かった。これで守れたのかな?」
ドラえもん(別)「そうだね」
3人は無事にことが終わったことに安堵しながら、話していた。そこへ、銀色のオーロラが現れる。それに気付いたのび太(別)が声を上げた。
のび太(別)「これ、僕たちが通ってきたやつだ」
ドラえもん(別)「って、ことは…帰れるってことだね!」
のび太(別)「やったー!」
2人は帰る方法が見つかったことを互いに笑い合いながら喜ぶ。その時、銀色のオーロラの向こう側から声が聞こえた。
?「な、なんだこれ⁉︎」
?「こんなの見たことないよ」
オーロラの向こう側からのび太(別)とドラえもん(別)のよく知っている声が聞こえてくる。
のび太(別)「皆の声だ!」
ドラえもん(別)「早く帰ろう!」
2人は銀色のオーロラに向かおうとするが、潜る直前で振り返ってのび太のほうを見た。
のび太(別)「色々とありがとね、こっちの僕」
のび太「いいよ、僕も助けられたんだ。お互い様さ」
ドラえもん(別)「こっちの世界の僕や皆にも頼れるようになるんだよ」
のび太「うん、分かってるよ。君たちから教えられたことは忘れないよ」
ドラえもん(別)「そう、なら良かった」
のび太(別)「うん。僕たちはいつどこにいたって君の仲間だよ」
のび太「ああ、ありがとう!」
のび太(別)「じゃあね!」
ドラえもん(別)「元気でね!」
そう言うと、2人は銀色のオーロラを潜っていった。そして、2人の姿が見えなくなると銀色のオーロラは消えてしまった。その後、あたりは静かさに包まれた。
のび太「…帰ろうかな」
のび太は銀色のオーロラがあった場所を見つめていたが、やがて踵を返して校門の方へと歩き出した。のび太が校門から外に出た時に声がかけられる。
幸「終わったみたいだね、のび太」
のび太「うん。そっちは大丈夫だった?」
幸「問題なし。なんかあいつ途中で逃げちゃったし」
校門のところにもたれながらのび太に声をかけた幸はのび太の問いに大丈夫だったという意の言葉をかける。それを聞いたのび太も安心したように微笑んだ。
のび太「よかった。やっぱり、強いね」
幸「当たり前だよ。のび太と同じで僕も通りすがりの仮面ライダーなんだし」
のび太「そっか。じゃあ、帰ろうか?」
幸「うん」
幸の言葉にのび太は笑いながら返すと、また家に向かって歩き出す。少しの間、のび太の後ろ姿を見ていた幸だったが、少し小走りでのび太の隣にくる。
幸「のび太」
のび太「何?」
幸「僕だって、君の仲間なんだよ?」.
のび太「っ…うん、分かってるよ」
幸「なら、良し!さ、ママさんにバレないうちに早く帰ろ?」
のび太「ちょっ、幸ちゃん!」
のび太の言ったことに満足した幸は満面の笑みになり、のび太の手を取り走り出す。それにのび太は慌てながらも何とかついて行った。だが、のび太の顔にも満面の笑みが浮かぶ。その空には無数の星が煌めいていた。
裏山
鳴滝「どうやら、ディエンドに手酷くやられたみたいだな」
裏山の千年杉の近くで鳴滝は何者かに声をかける。だが、何も返ってこない。それを感じた鳴滝は再び口を開く。
鳴滝「しゃべることもままならないくらいにやられたのか。いつぞやに油断するなと言ったのだが、お前の耳には届いてなかったみたいだな」
鳴滝が喋り終えると、千年杉の陰から何かが飛び出し暗闇の中に消えていった。それを見た鳴滝は前を見る。そこにはのび太たちの住む町の景色があった。
鳴滝「怪人を倒した直後に元の世界への道など、そんな都合よく現れるわけないだろう」
1人になった鳴滝は誰に言うでもなく呟く。あたりには静けさの漂う空間しか存在しない。故に、次に呟いた言葉を拾うものも当然いなかった。
鳴滝「今回だけだぞ、ディケイド。次は必ず…」.
それを最後に鳴滝の姿も闇に溶けていった。
やっと、やっと終わることが出来ました!どれだけの時間がかかったか…大半待たせてしまい誠に申し訳ないです。が、無事?にコラボを終えることができて非常に安心しております。焔崩し様、今回は本当にありがとうございます!これにてコラボ編完結です。では、また次回に!
全てを破壊し、全てを守り抜け!