向かう道に手を差し伸べるのは間違っているだろうか 作:夏夕日空
カーテンの隙間から僅かに陽の光が差し込み、それに照らされるように埃が舞う室内でテムはその陽光に瞼を歪めベットで目を覚ました。
「……もう朝か、寝てるとどうしてこんなにも時間が立つのが早いんだろう」
寝ていて固くなった身体をほぐす様に伸びるテムに合わせて古びたベットがギシギシと誰もいない部屋に響く。
「……今何時だろう? げ、ヤバイもうこんな時間だ!!」
寝起きでまだ開き切っていない目でぼんやりと枕元の木で出来た時計に手を伸ばし既にお昼に近い時間である事が分かり急いでベットから飛び起きテムはいそいそと着替え始めた。
「やっばいなぁ、こんな時間まで寝てたら絶対怒鳴られるよ!」
すると、部屋の外から重石が落ちた様な大きな音をさせながら部屋の扉に近づいてくる音が聞こえてきた。
「一体いつまで寝てるんだ、 いい加減に起きなさい!!」
バァンと部屋に響く程強く押された扉は部屋の床に散らばっていた紙を舞い上げさせた。
「起きてます、起きてますからそんなに怒鳴らないでくださいよ」
怒鳴られた事が怖かったのかテムは目元に薄っすらと涙を浮かべながら最後のボタンに手を掛けた。
「はぁ……全く、怒鳴られたく無かったら最と早く起きるだね、どうせまた夜遅くまでなにか作ってたんだろう? こんなに散らかして」
「あはは……すみませんウェスタさん」
苦笑いを浮かべるテムに呆れたように更に深いため息を漏らすウェスタは足下に散らばった紙を拾い上げた。
「……研究熱心なのは良いけど根を詰め過ぎないようにね、ただでさえ君は冒険者の中でも身体が弱いんだから」
目の下に薄っすらと隈が出来ているテムを思い詰める様な切なげな瞳で見つめるウェスタにテムはゆっくりと目を反らした。
「……ごめんなさいウェスタさん、ご心配おかけして」
カチカチと時計の音が時間を刻み、外から聞こえてくる鳥の声しか響かない静寂の中ウェスタはゆっくりと拾い上げた紙をテムに差し出した。
「ーー受け取ったよ"君の言葉"だから目を向けてくれ」
恐る恐る瞳を戻すとそこには目に入るだけで安心させてくれそうな柔らかい微笑みがあった。
「私はね君のその大空を思わせるような瞳が大好きなんだ」
そう言うとウェスタはテムの寝癖だらけのボサボサの髪を優しく赤ん坊に触れるように優しく撫で始めた。
「一生懸命な君が好き、素直な君が愛おしい、だからねテム」
柔らかく撫でていた手を離しその瑠璃色な瞳で真っ直ぐとテムを見つめる。
「君の
握り拳を作りながらニッコリと笑うその姿に背筋が寒くなる感覚を覚えたかの様にテムは丸まっていた背中を立たせた。
「き、肝に銘じておきます!!」
「よろしい、じゃあ早く下に行って朝ご飯食べよう……と言ってももうお昼ご飯になっちゃうけど」
ウェスタの目がテムの後ろの時計を見ると既に針が一番上に差し掛かろうとしていた。
「そうですね……自分もお腹空いてきました」
「そう言えば君が作った野菜の皮を簡単に剥く道具、ムキトールだっけ? アレをミアが絶賛してたよ、料理下手なリューやシルでも皮むき出来るから準備の手間が省けるって」
既に冷めきっている朝食を食べていると、ウェスタが温め直したじゃがいものスープをテーブルに置きながら言い放った。
「それは良かったです、前にリューさんから皮むきぐらいは出来るようになりたいと相談されましたからね、喜んでもらえて何よりです」
そう言いながらテムは湯気が立ち籠めるお椀を持ちながらフーフーと息を吹きかけスープを口にした。
「それでミアからその道具をもっと作れないかって相談されたんだけど大丈夫そう? もちろん代金は出すって」
「 大丈夫ですよ材料はまだあるので少し時間をもらえればすぐにでも作れます」
「そう、良かったわ……あ! スープおかわりする?」
「はい、いただきます」
それから暫くしてウェスタが作ってくれた朝食を食べ終え創作室でムキトールを作り終えたテムはムキトールを袋に詰めミアのいる"豊穣の女主人"へ向かう為玄関へ向かた。
「それじゃあ行ってきますウェスタさん」
「ええ、行ってらっしゃいテム、転ばないようにね」
「大丈夫ですよ松葉杖もあるし周りには何時も気おつけてますから」
右手に袋を持ち左手で松葉杖に身体を預けるテムにウェスタはお弁当を手渡し不安そうな顔でテムを見つめた。
「ーー大丈夫ですよウェスタさん、自分はそこまで貧弱じゃあありませんから、これでも一様冒険者なんですよ」
力こぶを強がる様にウェスタに見せるテムにウェスタは優しく微笑み。
「……そうよね、テム行ってらっしゃい」
「はい、行ってきます!
扉を上げ青い青い空の下に出掛けていくテムに扉が閉まり切るその瞬間まで手を振り続けてくれるウェスタの姿を胸に刻んで。