大きな雨粒がバタバタと窓を打ち鳴らす――
あおぞら中学校の屋上、「トロピカる部」の部室。
そこでは、突然の雨で屋外活動を封じられたまなつたちが手持ち無沙汰に集まっていた。
「うう……」
物欲しそうに外の景色を眺めるまなつが、何とも寂しそうに声を漏らした。
「しばらく止みそうにないね……」
さんごが木製椅子に腰掛けながら残念そうに呟いた。
「そんな~……。ビーチバレーで、パーッとみんなでトロピカりたかったのに~……」
まなつががっくりとうなだれる。
「体育館とか借りられないかな?」
思いついたようにさんごが言った。だが、
「今日はバスケ部とバレー部が使用中」
向かいに座るみのりが冷静に答えた。
再び空気が沈みだす。
「……今日は企画倒れかな」
眉間にしわを寄せ、立ち尽しているあすかが呟いた。
すると、
『なに一斉に落ち込んでるの。くよくよしたって始まんないでしょ』
机上のマーメイドアクアポットから、ローラの声だ。
『だめだってわかったなら、次よ、次。さっさと前を向きなさい』
そう言うと、勢いよく、ローラがポットから飛び出した。
呆気にとられ、まなつたちは思わず固まってしまう。
ローラは、「今さら何よ」とでも言う風に、つんと彼女たちを見つめている。
「……今回はこいつの言う通りだな」
あすかがまるで観念したように漏らした。
「あら、物分かりがいいじゃない」とローラ。
したり顔だ。
「うるさい」
「そうだね……。なにか他にできることを探して……」
さんごが前を向いて頷いた。
そして、
「雨にも負けず、トロピカっちゃおう!」
既に立ち直っていたまなつの笑顔が、室内をまるで晴れたかのように明るくさせた。
「――と言っても、何をするの?」
みのりがポーカーフェイスで尋ねた。
「ビーチバレー! イン部室!」
「却下だ!」
まなつが落胆の声を上げる。
「部屋の中じゃ、できることも限られるよね……」
さんごが苦笑しながら続けた。
「だったらゲームをしない?」
ローラが意気揚々と語りだす。
「私が『女王様』。みんなは『しもべ』。私を一番敬った人の勝ち」
「何だそれは。認められるか」
「なによ~……」
「そうだ! じゃあスケボーは?」
まなつが再び提案する。
「また、イン部室?」
みのりが尋ねる。
「ノン! アウト。お外だよ」
まなつは、棚に置かれたスケートボードを取り出すと、颯爽と部屋の入口へと歩いていく。
「1階の部室棟。あそこなら屋根もあるし、雨に濡れる心配もないよ」
すると、机上のアクアポットからスケボーに乗ったくるるんが現れる。
「くるるんー」
くるるんは、スケボーの滑車を回し、まなつとともに入口へと転がっていく。
「そっか。くるるんも外で遊びたいよね」
まなつの声にウキウキと弾みがついてくる。
「覚悟すべきは、ここから校舎に駆けこむほんの一瞬……」
ふっふっふ、と笑うまなつが扉の取っ手に手をかける。
ガラガラッ、と勢いよく扉が開かれる。
その時だった。
ゴーーーッ!!!
荒れ狂う風が室内に吹き荒れ、横殴りの雨が入口からなだれ込んだ。
一同の髪が荒々しくなびき、窓ガラスがガタガタと音を立てて揺れ動く。
そして、棚上の観葉植物が、バサバサと、まるで倒れんばかりに悲鳴を上げた。
そして……
バタンッ!!!
「……」
一瞬の出来事だった。
「……くるるん~」
暴風に飛ばされたくるるんが床で目を回している。
「……」
入口付近では、びしょ濡れになったまなつが立ち尽くしている。
室内は大きく散らかってしまっている。
全員、言葉もない。
「……これは」
あすかがやっとの思いで呟いた。
「……いつの間に、そんな」
起きたことがまだ信じられないさんご。
「町の天気は変わりやすいから……」
目をぱちぱちとさせるみのり。
そう、熱帯に位置し、海に面している「あおぞら市」では天候の変化が顕著なのである。
やがて、あすかがごく常識的な判断を口にした。
「あまり、外には出ない方がよさそうだな」
「……そーれすね」
どこか、空しさを感じずにはいられないまなつであった――