トロピカる部『活動日誌』   作:ホンバラ

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chapter.1 どんと、トロピカるデイ

「くるるん〜」

 タオルに包まれたくるるんが気持ち良さそうに声を上げた。

 散らかってしまった部屋は、まなつたちの復旧作業もありすっかり元通りになっていた。 

「よしよし……」

 ローラが、くるるんの小さな身体を優しく拭いてあげている。

 机上では、ジャージに着替えたまなつの、力の抜けた声が上がった。

「トロピカれない……。もどかしい」

 雨音は依然、ザンザンと室内に響いている。

「……ドント トロピカる(Don't tropical)」

 不可解な英語が漏れた。

「一応だけど、文法的にそれはペケ」

「えっ」

 みのりの、いきなりの指摘だ。

「tropicalは本来、形容詞。Don'tは普通、動詞につくものだから……」

「どーし? けいよーし……?」

「それに、『〜できない』だったら、Don'tじゃなくて、Can'tかな」

「きゃんと……」

 固まるまなつ。

 あすかたちが、こちらをじっと見ている。

「……おぅ、あい、きゃ~んと!」

「次のテストが思いやられるな」

 おどけるまなつに、あすかが冷ややかな視線を送る。

「あはは……」

 さんごは苦笑するだけだ。

「で、どうするの? このまま雨が止むまでお喋り?」

 ローラが皮肉混じりに尋ねた。

「それもいいねー!」

 まなつが明るく答える。

「でも、日誌にはなんて書こう?」

 さんごが心配そうに尋ねた。

「日誌??」

「生徒会に提出する活動日誌だろ」とあすかが続ける。

「私たちは正式な部として認められちゃいるが、毎週、活動内容を書いた日誌を提出する決まりになっただろ」

 あすかが、拳を震わせながら表情を歪ませる。

「全く、どこまでも嫌がらせとしか思えない……」

「どうどう」

 みのりが抑える。

「いいじゃない。テキトーに嘘とか書いちゃえば」

 ローラが突っぱねるように言った。

「それはさすがに……」とさんご。

「ダメだよ」

 まなつが、まるで子供を諭すように口を開いた。

「私たちトロピカる部は正々堂々。じゃなきゃ、Don'tだし、Can'tだよ」

「……」

 何となく意味を味わう一同。

「わかってる……。ジョークじゃない」

 そう言って、ローラはそっぽを向いてしまう。

 真っ直ぐにこちらを見つめてくるまなつに、少し恥ずかしくなったのかもしれない。

「でも……、結局何をするんだ?」

 あすかが口を開く。

 んー、とまなつは腕を組む。

「そうだ! じゃあスローガンを決めない?」

「……スローガン?」

「私たち、トロピカる部のスローガン!」

 え……?

 みんなの脳裏に、ひとつの疑問が重なった。

「……スローガン、って」

 まずあすかが口火を切った。

「……もう、決まってたんじゃ?」とみのりが続く。

「へ?」

「まなつがいつも言ってる……」と、呆れたようにローラが続いて、

「『今、一番大事なことをやる』……でしょ?」

 さんごが、間をおいて尋ねた。

 すると……

「……そうなの?」

 一斉に全員がずっこけた。

 まなつは、ぽかーんとその様子を眺めている。

「……そうなの? って」

 さんごが、頭を押さえながら起き上がった。

「あ、うん! 私はそうだよ」と、まなつ。

「……でも、みんなは?」

「え……?」

「みんなのことも、聞いときたいなーって」

「私たちの、か……?」

 あすかが戸惑いの声を上げた。

「そういうことなら、確かに、考えたことないかも……」

 みのりが口元に手を当てて、考え始める。

「みんなで考えたことをスローガンにしようよ。その方が部活っぽくない?」

 一斉に、全員の唸り声が上がった。

 響いてくるのは、建物を打ちつける激しい雨音。

 いつもより、時間がゆっくりと流れていった――

 

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