トロピカる部『活動日誌』   作:ホンバラ

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chapter.4 トロピカる、さんご

 真剣な目で、ひたむきに、さんごは様々な色のチョークを手に取っていく。

 いつになく積極的なさんごを、一同は静かに見守っていた。

 やがて、さんごがチョークを置いた。

「できた……」

 ゆっくり振り向くと、さんごは呟いた。

「私、みのりん先輩の絵を見ていて感じたの……」

 そして、柔らかな笑顔で、真っ直ぐに言った。

「私の、私だけの、『トロピカってる』があっても、全然いいんだ、って!」

 さんごが、体を避けた。

 その瞬間、さんごの絵が、一同の前に露わになった――

 

 ×   ×   ×

 

 ディフォルメされたまなつ、さんご、みのり、あすか、ローラ、くるるん、その可愛げな表情が、黒板いっぱいに描かれている――

 

 ×   ×   ×

 

「これ……、私たち?」

 みのりが、見つめながら尋ねた。

「はい……」

「かわいいー!」

「これは、私には描けないな……」

「くるるーん!」

「さんごも、やるじゃない」

 ポットの中で、なぜかローラが自慢げに言う。

「ありがとう……」

 さんごは、恥ずかしそうに礼を言うと、続ける。

「私ね。みんなといて……、いろんなところに行って、いろんなことができるのが、とっても楽しくって。だからこれが……、みんなが! 私の『トロピカってる』!」

 さんごの言葉が、絵の中の全員の笑顔に重なった。

「まさに、トロピカる部、ここにあり! だねっ!」

 嬉しさを全身で噛み締めながら、まなつが言った。

「確かに。すごい、『トロピカってる』」

 みのりも思わず微笑んだ。

 さんごが、照れくさそうに、つられて笑った。

「くるる~ん!」

 くるるんが飛び上がり、ポットのシャッターを押した。

 カシャッ。

 さんごの絵が、泡の中でふわふわと空中に浮かび上がる――

 だが、勢いあまって、コテン、と机上に転がってしまったくるるん。

「くるる~ん……」

「……くっ」

 あすかが、思わず吹きだす。

 すると、

「あはははは……!」

 まなつたちもつられて笑いだす。

 さんごの絵が、まなつたちの笑い声に反応するように、ゆらゆらと泡の中で揺らめいている――

「何よっ! みんなだけ、楽しそうにしちゃってぇ!」

 ローラが、突然ポットから飛び出してくる。

「わぁっ!?」

 驚く一同。

「いや、勝手に引っ込んだのはお前だろ……!」

「うるさい! ねえ、私にも描かせなさいよぉ」

 ローラが勢いよくさんごに迫る。

 だが、途中でバランスを崩して、前のめりに倒れそうになる…… 

「わぁっ……!?」

「きゃあっ……!?」

 とっさにさんごが支えるが、そのまま二人は転倒してしまう……

「だ、大丈夫っ!?」

 まなつたちが駆けつけて、目を回している二人の様子をうかがった。

 そんな時だった――

 コンコン。

 ノックの音……。そして……、

『みんなー! いるー?』

 女性の声がする。

 ……この声は……

「……まさか」

 苦い表情であすかが呟く。

「……桜川先生の声だあっ!?」

 まなつが仰天した。

 瞬間、一同はひどく慌てだした。

 理由は、目前で横たわっている、誰がどう見ても100%、人魚のためである……

「ア、アクアポットは……!?」

 目を回しつつも、ローラはとっさに机上のポットを見た。

 ローラの場所から、机上までは、短時間では埋められそうにない距離があった。

 ポットの隣では、くるるんが、一同の気も知らずに、のんびりと寝転がっている。

 ――どうする――

 ローラは、まるで時が止まったかのように固まった。

 その間に、様々な選択肢がローラの脳裏に浮かんでは消えた。

 ――どうする――!?

 ガラガラッ!

 外の荒れた天候を背に、桜川先生が、ボロボロになった傘を閉じながら入ってきた。

 

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