彼女たちは、何を想うのか。
何を、日誌に記すのか。
そんなこんなの『エピローグ』です……
始まります――
トロピカる部『活動日誌』
ページ1.
6月〇日、嵐のち、快晴
2年2組 一之瀬みのり
さて、何から書けばいいのやら……
意気込んで席に着いたはいいものの、ペンを持つ私の手がぴたりと止まった。
今日は、本来だったら、あおぞらビーチでビーチバレーをやっているはずだった。
それが突然の豪雨で、急遽「スローガン決め」に……
いつの間にやら、それすら変わって、「トロピカってる」の発表会になっていたのだから、今、何から書くべきか迷っていたとしてもそれは仕方のないことだろう……
相も変わらず、まなつの突飛な行動力……
いや、発想力? には恐れ入るばかりだ。
今日だって、まさか私までが、絵を描くことになるとは思いもしなかった。
……今でも、鮮明に思い出す。
私が描いた、あの浜辺の少女のイメージ。
あれは、たぶん私自身のことだった。
……いや
正確には、かつて私が書いていた「マーメイド物語」の主人公……
自身を重ねていた、理想の私……
正直、あの作品のことはもう思い返したくないし、触れられるのがひどく苦痛なのは確かだ。
……でも
「面白い!」、って……
キラキラした目で、そう言ってくれた人が、今、私の側にいる。
……そうだ。
結局、今日、絵を描くことになったときもそうだったっけ。
「気になっちゃう~!」だとか、
「見てみたい~!」だとか……
私の気も知らないで……
そう言いつつ、私の頬はゆるんだ。
……これ「天邪鬼」っていうのかしら
いけない。
とにかく、日誌をなんとか書かないと……
といっても、何から書けばいいのやら。
……はぁ……
思わずため息……
でも、珍しいことじゃない。
小説も、日誌も、きっと同じ。
向き合い続ければ、必ず終わるもの。
私は、置いていたペンを再び手に取った。
不思議と、早く書いてみたい……
そんな風に感じながら。
みんなも、今頃、こうやって頭を抱えているんだろうな――
※
ページ2.
6月〇日、大雨のち、晴れ
(可愛い虹のイラストが描かれている)
1年5組 涼村さんご
……う~ん
かれこれ、30分はこうしたままかも。
机に座ったままだから、ってことはある?
ちょっと、休憩。
立って、歩いてみよう。
……どうやって書こうかな、今日の日誌。
今日の部活は、みんなのイメージがそれぞれ違っていたから、日誌でも、みんながそれぞれのイメージで内容を書こう!
ってなったけど……
うう、難しい……
スローガンも『トロピカってる』もそうだったけど、難易度、高いよ……
あれ……?
結局スローガンって、どうなったんだっけ?
たしか、まなつが、お父さんの影響で『大事なことをやる』ってなって……
あれ、それはもういいのかな。
そこから、『何のためなのか?』って話になって『トロピカってる』の話題に……
……うう、考えれば考えるほど、まとまりがなくなってくる
……ふう
……でも、今日も、あっという間に過ぎていったなあ。
最近、なんだかずっと夢見心地かも。
これって本当に現実? みたいな……
ちょっと前までは、考えられなかったもん。
友達と一緒に部活を作って、知らない先輩たちとも急に仲良くなって、プリキュアにだって変身して……
あ、人魚にも会っちゃったり……
なんか、もう当たり前になっちゃってるけど。
今思えば、本当は、こんなことしたい! って思っていても、恥ずかしくて……、周りの目が気になって、できていなかったような、そんな気がするの。
でも、今の私は、ちょっと……?
いや、かなり大胆になったのかも。
少なくとも、小学生の頃の私が見たら……
だって、パンダの着ぐるみを被って、「おほほほ……」なんて高笑いをして、お店のお手伝いをしました、なんて言っても、その頃の私は絶対に信じてくれないだろうし。
ふふ……
……まなつってすごいな
あの子に会ってから、私、ちょっと強くなれた……?
毎日が、前より明るく見えるもん。
……いつか、私も、誰かにとっての、そんな人になれたらなあ。
『トロピカる部』も、そんな誰かを後押しできる、すてきな部活にできたらなあ……
※
ページ3.
6月〇日、豪雨のち、晴れ!
3年3組 滝沢あすか
……新鮮な驚き。
そう書いた方が伝わりやすいかな。
といっても、これは日誌で、個人の感情をまとめて書くようなものじゃない。
……さて、どうしたものか
書きたいことは、あるのだが……
……部活ではあれだけ悩んでいたものを、我ながら、まるで嘘だったかのような饒舌ぶりだな。
それだけ、私が浮かれているのか。
……いかんいかん。
今は日誌に集中、と。
……
……やっぱ、だめだ
……あのとき、先生に言われて、はっとなったんだ。
『いつも通りの私たち』
まるで、気にしたこともなかったな……
……いつもの私たち……
毎日、遊んで、笑って、たまにムカついて……
でも、話して、わかって……
今も、一緒にいる。
そんな、当たり前のことだったんだ。
……私が、私でいられる場所。
毎日が、新鮮で、楽しく……
生きることに全力でいられる場所。
……今の私の、大切な居場所。
……面倒を見ているようで、いつも面倒を見てもらっていたのは私の方だったのかもしれない。
……もっとも、こんなことは言ってやれそうにないが。
……言ってやるか、ぜったい。
……さて、こりゃ、難題だ。
みんなだって、今頃、苦戦しているに違いない。
……まなつは、どうだろうか。
言い出しっぺのくせに、「書けませんでした」、なんてぬかしたら、明日は気合を入れてやらねば、だ。
もちろん、『トロピカる部』の部長として。
お前たちの先輩、滝沢あすかとして。
※
最後のページ.
6月〇日、あらし、のち、晴れ!!
1年5組 夏海まなつ
「――なによ、まだ真っ白じゃない!」
ローラが、机上に開かれた日誌のページを見て言った。
その横では、まなつが幸せそうに寝息を立てている……
まなつの部屋の窓からは、広大な夜空に、満点の星々がきらめいている。
「まったく。こりゃ夜通し頑張れり、ね」
「くるるん……」
「なに? だったら起こしてやれ? やーよ。だってその方が面白いでしょう」
くるるんは苦い顔をして唸った。
「まったく、偉そうにしちゃって。私の助けがなきゃ、てんでダメダメなんだから……」
ローラが、眠っているまなつの頬を指でつついた。
「……うぅ~ん」
唸り声を上げるまなつに、ローラは思わずクスッと吹き出した。
まなつは、それからにんまりと笑うと、ご機嫌に寝言を口にした。
「あしたも、みんなで、トロピカろ~……」
ローラは「あははっ」と思わず笑いだす。
それから、優しい笑顔を浮かべると、静かにまなつを見つめた。
「……がんばれ」
眠っているまなつは、夢の中である。
まるで、この広大な星空のもと、今か今かと朝を待つ、小さな太陽のように――
(トロピカる部『活動日誌』・おしまい!)
お読みいただき、ありがとうございました。
結局、日誌はどう書いたのか……?
生徒会への提出は無事済んだのか……?
そういったご質問は、皆さん自身で今度まなつたちにぶつけてみてください!
(そんなのあり……?)
きっと笑い話として語ってくれるはずですから!
……そうですよね?
さて、書き終わった今思うことは、……やっぱり原作、好きすぎるなぁ……、ということに尽きます(?)。
いつ見ても元気がもらえる、とても応援したくなる作品ですよね。
今後とも、皆さんと一緒に『トロプリ』を盛り上げていきたいなと思います。
それでは、またどこかでお会いしましょう。
(2021.7.10 筆者)