歴戦のレシピ 作:ミッター
「分隊長、なんで突然、チョコチップなんで?こりゃアメ公の装備だ。しかも武器に至ってもサイトはドイツ製、M4カービンは純正新品アメリカ製だ。」
岩壁の洞窟を利用したこの集積所は一階が物資弾薬の倉庫、二階が居住区、三回が監視台、吹きさらしの四回は対空監視所兼対空銃座。
朝からガースキーの声が響く。あれだ。昔見たアニメ、銀河英雄伝説のムライ中将みたいな声だ。
「現地の営業部が政府軍から受けた仕事だ。民間の長距離トラックに偽装したゲリラのキャラバンを襲撃する。目標は三台。先頭車両は吹き飛ばして、最後尾はお任せ、二台目の物資を回収、お届けする。」
「分隊長、だからって身分を隠す理由はなんでしょうか?」
「いいかミッター。これは反政府軍の物資だ。もし見られでもしたらどうなる?トラックを襲うどころが、逆にトラックが突っ込んでくる。分かるだろ?」
「ミッターさんの言うことも分かりますが、分隊長も納得出来てないじゃないですか。」
「やめようイワコフ。仕事だ。」
ストーンが珍しくなにも聞かなかった。でも、納得しているとはみえない。
「で?こんな地図見る意味もわからない砂漠のど真ん中で仕掛けるんで?」
ゴードンが指差した先が襲撃するポイントになってはいるが…正直、半径30kmは何もない。道路も盛り土はされているが舗装はない。真っ昼間だし。
勢力圏もギリギリあちらさんのエリアだ。先頭車両を吹き飛ばしていいと言うか、先頭車両がピックアップトラックか、護衛の兵士が乗っているんだろう。
「増援を呼ばれても最速で45分かかる。つまりここがいい。そして、この道はゲリラか長距離トラックしか通らない。35km先で交通事故が起きる。つまり通行止めだ。もう反対では政府軍の巡回があると流した。つまりある種の真空地帯になる。」
「分かりやした。で、回収する物資はなんで?」
「文書だ。二台目の荷にゲリラの資金源が記載されている。トラックは処分する。ガースキーの機嫌は直りそうにないな。配置を伝える。」
「ガースキーもだがゴードンも機嫌は良くないね。」
流された。俺の茶々をいれた言動は砂漠の風となった…
かくして出動。乗ってきたトラックを2km手前に隠して徒歩移動、暑い。
キャラバン進行方向の左にある岩山に運転手を狙撃する為にストーンと観測手としてイワコフ。その向かいに無線傍受と監視のイヤリク分隊長。道路脇の岩影にガースキー、ゴードン、俺が伏せる。M4カービンなんて初めて触った。ずっとAKだったからな。しかもフォアグリップ、ドットサイト、フラッシュライトまでついてる。
作戦はゴードンが先頭車両を爆破する手筈になっている。これを合図に重要文書回収作戦が始まる。
「あーこちらイヤリク。前方に砂埃を確認。先頭はトヨタのピックアップだ。形式不明重機が1、運転手と射手以外に5名を確認。」
「了解。チェックポイントで7名は召される。カウント30秒前。」
ガースキーのカウントが無線とリアルの二重音声で聞こえる。
「3…2…1…」
カチッカチッ
凄まじい爆発音と同時に何か降ってきた。いや、さっきまで生きてた何か。
勢いよく飛び出た瞬間、ドットサイト越しに目があった。二台目の運転手だ。助手席にいた奴はゴードンの弾を頂戴するのが見えた。と思いつつ、引き金を引いていた。三点バースト便利。西側装備最高。
なんて考えている間に三台目から降りてきた運転手を視認、同時に首を後ろに仰け反らせて崩れた。多分、ストーンのサプレッサー付きのSR-25だ。スナイパーこえぇ。車体の向こうで三連射が聞こえた。ガースキーが助手席の奴を仕留めたんだろう。
「よし。C-4で荷台を御開帳願え。」
「了解!」
鍵の回りを四角く囲むように大人の粘土を張り付け、コードを刺す。コードの先をゴードンに渡して、三人仲良く並ぶ。
「3、2、1」
カチッカチッ
ガースキーがさっきより早いカウントで爆破、さっきが凄かったせいか花火くらいにしか聞こえなかった。が、確実に鍵は無くなっていた。
順調なのはここまでだった。
フラッシュライトを点けて、荷台に荷台に上がったのはゴードン。ガースキーと俺は両脇に立っていた。
「ガースキー、ミッター、来てくれ。」
荷台から聞こえた声は暗く聞こえた。
暗かった理由はすぐに解った。重要文書なんてのは端から嘘だった。ガースキーが荷台のジェラルミンケースを蹴り飛ばしながら怒鳴り散らした。
「ハメられた!コイツは文書じゃねぇ!現金輸送車だっ!」
倒れたジェラルミンケースから米ドルの束が雪崩落ちた。
「こりゃどうすんです?文書の奪取は聞いてるが、強盗とは聞いてませんよ。俺たちは兵隊であってギャングじゃありませんよ。」
「とりあえず…とりあえず車を回す。回収するだけ回収して撤収するんだ。」
焦った分隊長の声は初めて聞いた。分隊長すら知らされてなかったんだ。最初にどこぞの運び屋よろしく
「契約厳守、名前は聞かない、依頼品を開けない」
とでも言っててくれれば良かった。いや。ケースは10個あったからどの道、開けて確認になっていただろう。
イヤリク分隊長がトラックを拾いに行っている間に三台目のトラックも御開帳した。次は鍵を運転手から拝借して、お行儀よく。
「これもこれだな。」
ビッチリ武器弾薬が積載されていた。旧式のAK-47、74、RPGに弾頭、ドラグノフなんてのが揃っていたがよくよく見ると中国製がほとんどだった。
「どうするよ。なんかねぇか?」
ガースキーと俺が漁っていると、ゴードンが混ざってきた。
「これは掘り出し物じゃないか?」
「いいねぇ…貰っていこう。あって困ることは無いだろう。」
ゴードンが見つけたのはH&KのMARK23だった。しかも新品を1ダース、専用サプレッサーを2ダース。しっかりと“押収”させて頂いた。
その他は全部純正のロシア産なら本社に“返納”しても良かったが、中国製は…結構です
どう見ても爆破したら大変なので、二台ともTNTにリモコン式の信管をセットし、分隊長が回してくれたトラックに“文書”と戦利品を積んでズラかる。
途中の岩山でストーンとイワコフを拾ってスイッチオン。さすがにすんごい爆発だった。三台目のトラックは軽く空を飛んだ。
この日から俺達の班では一人二挺H&K MARK23が揃いのサイドアームとなり、仕事の幅が広がりなおかつ、多々命を救われることになった。
そして、今回の事は現地営業マンと政府軍司令官が結託した本当の依頼だけど、嘘という何とも質も悪ければ、後味も悪い仕事だった。
もちろん営業マンは解雇、司令官は不名誉除隊、本社からは軍に抗議を入れて貰った。
「ま、俺たちはこれが今回の慰労手当てだな!」
「45口径だもんな!下手なサイドアームよりいいよな。サプレッサーもあることだし。」
「今度の休暇でホルスター買おうか。」
「意外と重いんですね…知りませんでした。」
「なんか…懐かしい気がする…」
ストーン以外は上機嫌、騙された事も忘れて久しぶりにはしゃいだ夜だった。