歴戦のレシピ 作:ミッター
トルコはいいところだった。
ケバブ食って、ビール飲んで、風呂入って、ビール飲んで。
比較的軽めのビールが主流だった。
それに引き換えこの国はなんだ。酒が手に入らない。
正確には、地域によるみたいだが、酒を手に入れるため数百キロ移動は出来ない。料理用のアルコールですら押収されそうになった。なんてことだ。無論、暑い。そして、最低限の物資しか届かない激戦区だ。しかも武器弾薬が優先なので食事の半分はレーション。タバコは現地調達出来ているが、どうにも娯楽がない。スマホの電波も微妙だ。普段飲みもしないくせに
「近々に冷えたコーラが飲みたい。」
「ペリエとかでもいいな。」
「もう冷たければいい。」
なんて言っている。現地入り二日めの事である。
現地政府軍の物資集積所の警備を請け負っている訳だが、手当てが結構いい。つまりキケン!
挙げ句、電力供給は不安定で、産油国だったのに内戦で油田施設が損傷、油田があっても採掘出来ていない。そんな場所でギャンギャン発電機を回している。ガソリンでな!
で、先ほど入った素晴らしいニュース。隣の集積所が襲撃され、もとい吹き飛ばされ担当していた分隊はほぼ“消滅”したそうだ。向かってくるトラックが全て敵に見える。俗に言う“トラック恐怖症”である。(そんなものない。)
「と言うか今回の装備、国営から来てるよな。状態がいいな。」
ストーンは結構そう言うことを気にする。神経質では無いが業務裏を気にするきらいがある。
「確かにAK-74Mだもんな。この前のAKMより100倍はいい。」
「しかもほぼ新品だし。何よりプラスチックが多いから軽い。」
「ハンドガンもMP-443ですしね。国営さんも気合い入ってますね。」
口々に今回の装備を誉める。確かに参加した業務の中ではトップクラスにいい。実際、ハンドガンに至っては新品の箱で届いた。
タクティカルベストやピストルベルトも正規軍と同じものが支給されている。つまり行儀よくしとけという意味もある。別の会社がイラクでやらかしたと言うこともあって、釘を指す意味もあるのだろう。
だが一同、気に食わないことがあった。
“なぜグレネードランチャーの弾は焼夷弾なのか”
白燐弾や焼夷弾は条約で禁止されてはいない。が、死にはしなくても後遺症が強烈なので極力使わない。
不思議なモノで、我々は一定の信頼を敵に置いている。信頼して殺しあっていると言える。戦場には謎の“仁義”があるものだ。
つまり、白燐弾・焼夷弾は仁義に反すると。
イデオロギーで戦うテロリストだろうと、どこぞの正規軍だろうと、敬意と信頼をもって相対するささやかなロマンだ。
実際、当分隊では誰もグレネードランチャーをつけていない。
「さて、交代だ。引き継ぎだ。」
大体いつもガースキー、ストーン、ゴードン、イワコフと俺が同じ班で組むのが固定のメンバー紹介なっている。軍歴も年齢も上なのがガースキーなので、基本的にガースキーが仕切る事が多い。さすがエリート様。と言うかこの隊には将校経験者か特殊部隊出身かのどちらかしかいない。
「で、ミッター。今日は何食うんだ?寝る前のレーションは無しだ。」
「地物の野菜をいくらか貰ったから…ピタと野菜の何かだなぁ…窯があればトルコピザでもいいんだが。」
「総員傾注!我々はこれよりピザ窯設営作戦へ移る!総員、行動開始!」
…8時間の哨戒してたよね?
料理すっか!
ファッキンクック!