俺の幼馴染は転生者らしい 作:平凡
知ってますか? サボネアって、溶かすと食べれるんですよ
ルキアの救出大作戦! を海燕達と考え始めてから、数日後のこと。瀞霊廷に侵入者が現れた。
数日前からそんな騒動があったらしいとは聞いていたが、遮魂膜を突破する手段がないだろうし、どうせ何も出来ないだろうと聞き流していた。
しかし、ついさっき高密度の霊力玉が遮魂膜を突破するところをこの目で確認したのだ。
これには瀞霊廷は大混乱だ。十一番隊の連中は目をぎらつかせていたが。
そして一つ気になることがある。それはあの球体を見た海燕が尋常じゃないほどの引き攣り顔を見せていて、滝のような汗を流しているのだ。明らかに何か知っている様子である。
「海燕。あの術式について知っているのか?」
「あ、ああ……」
そして海燕は話だす。
端的に言うと、あの術式は志波に伝わる術式で使用するには志波家の協力、もとい海燕の妹が必要不可欠らしい。要するに今回の騒ぎに志波家はがっつり関わってしまっているということだ。
そりゃ冷や汗も出るわ。自分の身内が護邸十三番隊に喧嘩を売ったようなものだからな。
まあ、そんなリスクも気にせずに協力するあたり似たもの兄妹のようだ。
「たくあいつら……」
海燕は呆れたように頭を抱えている。
しかし、これは朗報だ。彼らがどのような目的で瀞霊廷に侵入したかは分からない。だが、彼らが騒ぎを起こせば起こすほど俺たちも動きやすくなる。
そう前向きに解釈して、俺たちは作戦を詰めることにした。
□
侵入騒ぎが起きてから数時間後、一角が侵入者と交戦して負傷したと聞かされた。
一角とは斑目一角という。十一番隊の三席であり、あの隊で唯一まともな会話が通じる人間である。そしてよく射場さんも交えて鍛錬したり、酒を飲んだりと公私共に関わりのある人間だ。
そんな奴が負傷したと聞いて、俺はお見舞いに行くことにした。
そして、四番隊に到着した。
隊員に案内された病室に入ると。
「よう」
意外に元気そうな一角がベッドから陽気に挨拶してきた。
「重傷と聞いていたが元気そうだな」
「この程度屁でもねえよ」
「いやひどいぞ。頭を見てみろ。髪がなくなって、光っているじゃないか」
「これは元々だ! テメェ、喧嘩売ってんのか!」
「病室で騒ぐなよ。猿に見えるぞ」
「ウキー!!」
今にも斬りかかってきそうな一角をどうにか宥める。
「それにしてもお前が負けるとはな。そんなに強かったのか、旅禍は?」
「ああ、強かったぜ。鬼灯丸ごとぶった斬られた」
最初は不意打ちか何かでやられたかと思っていたが、一角の話を聞くに真正面からやり合ったようだ。
一角は三席とはいっても自分の信念から昇進を断っており、実力は副隊長クラスと遜色ない。そんな彼を倒すということは侵入者は少なくとも副隊長以上の実力者ということだ。
「狙いは分かるか?」
「ああ。奴らの狙いはお前んところ部下を助けることだ」
「ルキアを助けるだと?」
「ああ、そう言ってたぜ」
ということは侵入者と俺たちの利害は一致しているということだ。
これは探してみる価値はありそうだ。協力できるなら大きな戦力を仲間にできる。
「なるほど。ありがとう一角。退院したら酒でも飲みに行こう」
「おう。まあ、てめぇが生きてたらの話だけどな」
一角は俺がルキアの救出を目論んでいることを何となく察しているようだ。だから、今の情報を流してきた。
「ただ、もう一つ伝えることがある」
一角は改まったように間を開ける。
「俺が戦った死神。そいつは自分の師匠を浦原喜助だって言ってた」
その名前を聞いた瞬間、俺の目の前は真っ赤になった。
□
浦原喜助
それは110年前俺の幼馴染が死んだ事件を起こした男。
ただ、勘違いしてほしくないのが俺は別に憎しみにとられているわけではない。もちろん幼馴染を殺した男に復讐心がないと言えば嘘になる。だが、時間が経ちもう過去のことだ。ある程度自分の中で折り合いはつけてある。
それよりも問題なのは浦原の息がかかった奴がルキアを救出しようとしていることだ。
要するに浦原はルキアを何らかの理由で死罪にしたくないということだ。
虚化なんて大それた事件を起こす男だ、何かしら良くない理由なのは察しがつく。
……俺が思考を巡らせていると、十一番隊の隊士の怒号が聞こえてきた。
おそらく例の旅禍が暴れているのだろう。
その時俺は一ついい手を考えた。
「そうだ。直接聞いてしまえばいい」
そうして俺は騒ぎの方に歩を走らせた。
□
高台から追いかけっこを見物する。
喧騒の中心には何となく既視感を覚えるオレンジ髪とバンダナを頭に巻いたゴツい男がいた。
おそらくあれが件の旅禍だろう。
旅禍たちは追っ手を撒くために入り組んだ道を使い、どうにか逃れたようだ。ちょうどいい、十一番隊の連中がいたんじゃ話も聞かないからな。俺は高台から降りて、彼らのもとに向かった。
「お前らが今騒ぎを起こしてる不届き者か?」
「「!?」」
音もなく現れた俺に驚いたのか、2人は飛び下がり臨戦態勢をとる。
別に霊圧を消していたつもりはないが、霊圧感知の技術は低いようだ。一角を倒した実力者と聞いていたが、思ったより拙いな。
「てめぇ、何者だ!」
「何者でもない。ただの死神だ。まあ、一応三席の地位を頂いてる」
少しは三席って肩書きで油断してくれると嬉しいんだけど、
……どうやら、そう上手くはいかないらしい。明らかに警戒している。本能的に力の差を感じ取ってるのかな?
まあ、どうでもいいが。
「そんなことより、お前らに聞きたいことがあるんだ」
「聞きたいこと……-?」
「お前らは何故ルキアを助けようとしてる? 浦原の狙いはなんだ?」
「ルキアを助ける理由? んなもん決まってんだろ仲間だからだよ。後、浦原さんの狙いとかは全く知らねえ」
バーンと効果音が後ろに見えそうなほど断言した。
惚けている様子はない。どうやら、本当に知らないようだ。ということは彼らはただの手駒で、何も知らないのか。
無駄足だったな。だけど、彼らを野放しにする理由もない。変に動かれてルキアが浦原の手に落ちるのは最悪だ。
「そうか。なら、お前らには用済みだ。捕縛させてもらう」
「っ!」
オレンジ髪に斬りかかると、咄嗟に背中の大剣で受けてきた。
だが、体重の乗っていない明らかな技術不足だ。俺が薙ぎ払うと、オレンジ髪は紙のように飛ばされ壁に激突する。
「くそっ!」
「破道の四『白雷』」
「ぐうぁ!」
「岩鷲!?」
バンダナが煙玉を手に取ったので白雷で手を貫いた。
おそらく目眩しを使って逃げようとしたのだろう。
「面倒なことはしなさんな。どうせ逃げられない」
「くそ!」
さて、捕縛させてもらおうかと応援を呼ぼうとした時、背後から霊圧が近づいてくるのを感じた。
「悪いけど、その子達が捕まると困る」
感じたことがない霊圧だ。
ふり向くと顔を布で隠した怪しい風貌の女だった。どこかで聞いたことがあるような声だが、思い出せない。
「誰だ? まあ、おそらくこいつらの仲間だと思うが、助けに来ても意味はな……なぁっ!?」
いきなり切りかかってきたかと思えば、その剣の重さ鋭さは想像の何倍にも凄まじかった。間一髪うけれたが、油断はできない。
「やるじゃないか。だが、もう油断はしない!」
歩法を使って距離を詰める。そして戦いにおいて致命的になる腕を狙い刀を振り下ろす。反応できるはずがなかった。副隊長レベルでも反応できないほど極めた瞬歩、毎日1000以上ふった斬術、死角はないはずだった。
だが、敵はあっさりと受けたかと思えば、俺以上の速度で背後に回り蹴り込んだ。
俺は肺を失ったかのような息苦しさと同時に岩の衝撃を受けた。
負けた、完敗だ。すべての能力において相手が上だと証明された。だが、何故だろうか、この蹴り痛みずっと感じていたかのような錯覚を覚える。
「すごい速かったし、力強かった。私も本気ださなきゃ危なかった」
……人を評するその声。
俺は失いそうな意識を肌をつねり覚まさせる。そして痛む身体に鞭を打ち、立ち上がる。
「お前、鬼か?」
「うん、そうだよ」
顔を覆っていた布をとると、その顔はたしかに110年前に死んだ幼馴染だった。
偽物かと疑ったが、あの強さを持つ女がこの世に2人もいるはずがない。本物で間違い無いだろう。
生きていたのだ。幼馴染は生きていたのだ。
「……と」
「きゃ!」
喜びの再会といきたいところだが、身体が重くなってきた。限界のようだ。
幼馴染に抱きつくように倒れ込む。俺は幼馴染に「すまん」と呟いて、意識を手放した。
「強くなったね」
そう言って彼女は彼を抱きしめる。その頬には涙の軌跡が見えていた。
この主人公の前世、たぶんヤムチャだろ。